艦これの世界に引きこもりの青年がやってくるそうですよ? 作:因幡凛空
「ここか」
「そうよ、今からドアをノックするわね」
ノックは大事だな、これは常識だけど。
コンコン、ガチャ
「誰じゃ……って浜風に鹿島、そしてプリンツじゃないか」
「こんにちは!」
「こんにちは、浦風さん」
「……そこにおるのは誰じゃ?」
「この人が今日からここで暮らすことになったから、挨拶回りしてるのよ」
両サイド団子状に纏められた青髪の美少女は浦風。セーラー服に水兵帽という出で立ちだ。セーラー服越しからでも分かる立派な胸部装甲を持っている。しかも袖を捲くっているためノースリーブ状態で、それによってスラッとした綺麗な細腕と脇が目立っているためセクシ-だ。
「俺の名前は加藤リク、今日からここで暮らすことになりました」
「見ない顔じゃが、もしや男か?」
見慣れた反応だな、今更驚くほどのものでもない。
「そうだが」
「なんじゃ、挨拶のときは敬語だったのに、突然タメ口になるんじゃな」
だってその方が親しみが持てるし、敬語だと失礼な気がするし。
「まあいいけん。うちは浦風じゃ、よろしくな」
「こちらこそ」
「ねえ、磯風と谷風はいるの?」
「ああ、あの二人なら今遠征に出向いていて不在じゃよ」
「そう……」
なんだ、しっかりと遠征には出向いているんだな。ここは外界から隔離された感じがしたからてっきり行われてないかと思っていた。
まあそれだとどうやって資源の調達しているのか不明なんだが……。
「というか、リクはどうやってここに来たのじゃ?」
「その事は出来れば秘密にしたいな。あまり気持ちのよいものじゃないし」
俺が前世で死んでこの世界で転生してやってきたなんて言っても混乱するだけだろう。
だからこれは秘密にしておくことにする。同じ鎮守府に住んでるんだからプリンツちゃんが死後の世界とここを行き来できることは知っているかもしれないが、それは彼女とビスマルクさんだけの秘密にしている可能性も否定できない。
とまあ偉そうに秘密にしたいとか言っているが、プリンツちゃんには知られてるし、ビスマルクさんにも知られているのだが……。ああこの子が口を滑らせないか心配だ……。
「リクがそういうなら余計な詮索はせんよ」
「ありがとう」
「あ、あと、これはお願いじゃけん……」
「?」
「もし磯風に挨拶しに回ったとき、料理を振舞うなんて言い出したら絶対断るんじゃぞ……?」
あっ……もう察しだな……。
「あいつの料理は一口食べただけで数時間失神するほどの想像を絶するまずさなのじゃ……」
「分かったよ、丁重に断っておくよ」
「物分りがよくて助かるけん」
物分りがいいも何も、艦これのゲームをやっていたから分かっていたことなんだがな。
「ねえ、浦風もリクの挨拶回りに同行しない?」
「すまん、午後から対空射撃の訓練じゃけぇ、一緒には行けないけぇね……」
「そう、なら仕方ないわね」
「では、そろそろ行きましょうか」
「そうですね!」
「それじゃあ、昼食のときにまた会おうな」
「また後でな」
浦風達の部屋を後にした俺達。ここで俺はプリンツちゃんにあることを耳打ちする。
「ねえプリンツちゃん……」
「はい?なんでしょうか?」
「さっきのやり取り見て分かってると思うけど、出来れば俺が前世で不慮の事故で死んでこの世界に転生した事は話さないでくれよ?」
「なんでですか?」
プリンツちゃんはきょとんとした顔で首をかしげながら俺を見つめる。そんな動作したら浜風と鹿島に感づかれちゃうんだけど……。
「とにかく、この事は俺と君、そしてビスマルクさんだけの秘密にしておくんだ!分かったね!?」
「は……はい」
とにかく、しっかりと言ってはおいたものの、うっかり口を滑らせないか心配だな……。
「二人とも、何を話していたの?」
「ちょっとね……」
「なんでもありません」
「それにしてはプリンツが首をかしげていたけど?」
「まあ、俺とこの子の秘密だよ」
「……まあいいけど」
「余計な詮索はしません」
あとでビスマルクさんにも固く言っておこう……。
前の投稿から間が空いてしまいました……。