終末で生きる 作:ユウナギ
バトルライフルのスコープを覗き込む。走るクリーチャーの頭へレティクルを合わせる。
距離は約300ほど。風も強くない。
狙いを外す要因もなく、怪物は地に伏せた。
あっさりとした末路だ。
「しけてやがるな……」
先程、狩り尽くしたクリーチャーの巣であった小規模なスーパー。人の立ち入った形跡もなく、久々にご馳走にありつけると思ったのだが、
「ここまで空振りとはな」
軽く店内を見たが結果はもぬけの殻。半永久的に食える缶詰が3つと水の入った密封瓶が2本が成果だ。
仕方がない。食えるだけましか。あとで本格的に探すとしよう。とりあえずバックヤードへ。
中に入り、背負ったリュックを下ろし、中からお手製の鳴子と缶切り、
フォークを取り出す。鳴子は3組。スーパーの入口。裏口。俺のいるバックヤードの前の通路。3箇所に設置する。
飯ひとつ食うのにも警戒が必要なこんな世だ。悲しいね。落ち着いて飯も食えやしない。
といっても、ここらのクリーチャー共はほぼ狩りきったはずだ。多少は安全だろう。
俺は早速手に入れたばかりの缶詰のひとつに缶切りを突き刺し、手早く封を切る。手に入れた缶詰はどれも印刷が消えてしまっている。中身はチリビーンズ。俺の好物だ。当たりを引けたな。
それにしても、旧文明の人間はこんな美味いものを毎日食っていたかと思うと羨ましいね。
缶詰は量がある。1ポンドはあるんじゃないだろうか。どの缶詰もだ。そんなに量を食べない俺にはぴったりだ。
最後の1粒までしっかり食べる。缶は潰してリュックの中へ。空き缶も資源だから売れる。
食事を終えたあとは、探索だ。先に食事を終わらせるのは俺のポリシー。曲げたくないね。
先ずは今いるバックヤードから。スチールデスクの引き出しやロッカーを漁る。デスクからはめぼしいものはなかったが、ロッカーからは、ありふれた中口径自動拳銃が1丁。ほかにマガジンが3つ。どれも9mm弾、20発しっかり入っている。
バックヤードから出て、本格的に店内を漁っていく。
ほとんどが風化してしまっているが、時々保存状態がいいものがある。缶詰や完全密封された瓶や缶だ。これらはそれなりには見つかる。自分で食ってもいいし、町に持ち込んで売り払ってもいい。交渉材料にも使える。
店内はあまり広くなく、缶詰などのスペースもそれほどなかった。棚にはなかったが、棚の下に引き出しがあり、その中には状態の良い缶詰が沢山あった。数えれば、13個。これだけでも、結構重たい。
まあ幸せな重さだ。甘んじて受けよう。
飲み物の方は本当にしけていた。紅茶とコーヒーの缶が1つずつだけ。そのうえ俺はコーヒー党だ。紅茶は切羽詰まった状況じゃなきゃ飲まない。紅茶は専ら交渉用に使っている。
ほかには袋に入ったままの男性用衣類が2着。缶に入った飴が1缶。パウチされた肉が3つ。
まずまずといったところ。あとはまだ生きている自販機を見つけたが、旧文明の硬貨をあいにく持っていなかった。
壊しても良いのだが、こういうのは機械系に強い奴らを連れて来れば全部バラしてくれる。中身は山分けだが、パーツをそいつらに売り払える。結局はとんとん以上ということさ。
手製の地図と手帳にここの詳細を書き込んでおく。地図を正確につくることも重要だ。 情報を売ることも出来る。
こんな世界だ。どんなことも金になる可能性を秘めている。なんでもやれることはやっとくもんさ。
いつか俺の役に立つ。
「さてと、行きますか」
ここは掃討したとはいえ、クリーチャーの巣だった場所だ。あまり長居はしたくないな。
地図の距離的に一番近い町は、北にあるそれなりの規模を誇る町がある。そこでは必要のないものを売り払うか交換する。なかなかきちんとした市場があり立派な経済活動が行われている。手に入れたものを売り払うには最適だろう。
次はここにしようか。
とりあえず歩き出す。コンパスを取り出して、方角を確かめる。変な方向へ行ってしまったらいけない。
今向かっている町は水が豊富ということで知られている。生水はあまり長持ちはしないが、生活に使う分には関係ない。そのため、農業が可能な数少ない町だ。
そういった数少ない町では食料よりも、武器や衣類、機械パーツが売れる傾向があった。新しく手に入れた自動拳銃(名前はわからないが両方同じものだった)は普段よりも高い価値を持つ。
特にマガジンは貴重だ。旧文明産の銃を使い、戦う以上、それなりに数が必要だが、あまり出回らない銃は本体以上に値段が張る。俺の使っているバトルライフルは北のガンスミス製なのでマガジンは数を用意しやすい。マシな方だ。
マガジンは金代わりにもなる。銃弾と合わせて、このくそったれな世界で流通する比較的ポピュラーな通貨だ。
メインは缶のプルタブが通貨となっているが。
食料、銃、弾薬。この3つが最も価値があり、多く出回っている。……なんでプルタブが通貨なんだろうな。よくわからん。
おっと、そろそろだな。煙が上がっているのが見える。夕飯の煙だ。あと1時間もあればつくだろうな。缶詰もいいが、温かい飯がたまにゃ食いたいもんだぜ。
先ずは拳銃を売り払ってなんか掘り出し物でも探すとしようか。飯はじっくり吟味してからだ。