どうやら俺の黒歴史を美少女達に握られたらしい   作:as☆know

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下ネタ曲を歌う時は周りに十分注意しましょう

 真っ暗な舞台裏。裏方の人たちの声が飛び交う中、ステージ側からは無数の野郎どもの歓声が束になった力強いアンコールが聞こえる。

 CiRCLE開催の定期ライブでこの騒ぎなんだからたまったもんじゃない。Roseliaの凄さと知名度の高さが簡単にわかる。

 

 ステージから引き上げる友希那さんと目が合う。随分といい顔をし為さってる。

 

 

「ほら、観客があなたたちを待っているわよ」

「いやいやいや、なんつーことしてくれるんすか」

 

 

 ドヤ顔の友希那さんとは裏腹に俺の顔はぴくぴくと引きつっているが、実際の俺の顔は凛々しいものとなっているはずだから引きつっているのは気のせいだろう。うん、そうだ。

 実際の友希那さんの顔は普通に涼しい顔してるんだけど、こんだけ長い付き合いなら俺にもわかる。この感じ、ドヤ顔だ。場を整えたから好きにやれるものならやって見なさいや。そういう顔をしてる。

 

 Roseliaの後はいろいろと出にくいんですよ、という言葉を飲み込んでため息をつく。言葉に出したら負けた気になるからね。いや、バンドの完成度としては負けてんのかもしれないけど、人間負けと認めるまでは実質負けてないってそれ一番言われてるから。

 

 そもそもRoseliaの後のアンコール枠って言うだけで随分な貧乏くじだったんだよ。盛り上がらねぇはずがないもん。もっとすげぇのが出てくると思われるやんこんなん。

 こうなったら緊急会議だ。すっと後ろを振り返りメンバーのバカ共を手招きで集めて円陣を組む。

 

 

「君たち、こうなったらあの曲をやるしかありません」

「あ、あの曲をやるのか!」

「愛斗! あの曲は封印するって約束だったじゃん!」

「愛斗、落ち着くんや! あの曲は戒めの曲や!」

「いや、Roseliaの後にデリヘルは普通に流れ的に不味いっしょ」

「駄目だ! こうなったらこれしかないんだ! やるしかねぇぜ! 行くぞ!」

「「「「おー!」」」」

 

 

 なんかネタバレが聞こえた気がするけど無視しておく。茶番にマジレスぶち込むんじゃねえよ、咬み殺すぞ。草にw生やすのと同じくらいの罪だから。大犯罪だから。

 

 

『わあああああああああっ!!!!!!』

 

 

 

 中身ゼロの円陣を済ませてステージに飛び出すと、割れんばかりの歓声に気圧される。

 めちゃくちゃ温まってる。とてつもなく温まってる。

 

 

「こんばんわ皆の衆Black historyでえええええええええええすっ!!!!!」

 

『イイェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!!!!!!』

 

「今日は最後までありがとォーッ!」

 

 

 右手を高らかに掲げて自己紹介するだけでこの盛り上がりよう、温まりすぎてもはや灼熱まである。エースだと思ったら赤犬だったみたいな。乗るなエース! 戻れ!

 それにしても今日は珍しく野郎どもが多い。女性が多いライブもいいけど、野郎ども中心のバカ騒ぎもこれまた一興。簡単に言えば滅茶苦茶楽しいよね。音楽は性別の壁を超えるしそのうちガンにも効くようになる。はっきりわかんだね。

 

 最近のライブではMCしてる間に裏方さんがギターにアンプ継いだりしてくれるのでこれだけしゃべっている間にもう準備は終わったりしてる。というかもう柳田がイントロ弾き始めていたりしてる。この曲のイントロとってもかっこいいからね、仕方ないね。

 それにしても裏方さんの手際があまりにもよすぎる。まりなさんの同僚さんはみんな化け物なのだろうか。そのおかげでこっちは手間取らずにやりたいことができるのだから感謝感謝である。裏方さんほんとマジリスペクト。

 

 

「みなさんまだ盛り上がり足りないんじゃないですかね! そんじゃあ今日は最高にアガるのよう敷いてきたんで! 最後まで付き合ってくださいませませーっ!」

「いーさんすー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「愛斗」

「はい」

「あんた何してんの」

 

 

 今の状況を説明しよう。CiRCLE地下のライブハウスの控室にて、蘭と紗夜さんと千聖さんの仁王立ち三連星を前にして正座させられてる。

 シンプルだろう? シンプルだけどなんでこうなってるかわからないだろう? 大丈夫だ、俺も全く分からない、気が付いたらこうなってたんだ。

 

 

「愛斗くんが最初普通にハナミズキノサビを歌いだしたからやけにロックなハナミズキだとは思ったわ」

「ハナミズキじゃないですけどね」

「全部聞いたから知ってるに決まってるじゃない」

「あれってアレンジですよね? 自分で考えたんですか?」

「いやオ〇モーノ・ヴァッキーナさんの……」

 

「ぶっ!?」

「うわ、有咲? どしたの急に?」

「い、いや……なんも……」

 

「なんて名前してるんですかその人」

「俺に言わんでください。俺今までの付き合いの中で一番最低な下ネタ言いましたよ今」

 

 

 ごめん有咲、それとここにいる女性諸君。本当にそういう名前しているんだ。最低な名前だけど最高の歌声の持ち主なんだ。あの声と歌い方が滅茶苦茶好きなんだ。凸待ちからハマったんだ。中原君とオリ〇ーノさんは別人だから……仕方ないんだ…… あっ、みんな中原君のようつべぜひ登録してくれな(露骨な宣伝)

 

 イントロのあれはハナミズキであってハナミズキじゃないんですよね。いや、ハナミズキのサビなんですけど。

 だってイントロの感じに滅茶苦茶ハナミズキが合うんですもん。〇リモーノさんのやつ聞いてからもうそれしか体が受け付けないんですもん。やべぇモザイクがずれる。

 

 

「そのあとのあれはなんですか?妙なコールアンドレスポンスをしてましたけど」

「あれはチェンジとノーセンキューって言ってましたね」

「意味は」

「黙秘権行使します」

「意味は」

「黙秘権行使します」

 

 

 蘭からの視線が滅茶苦茶痛いけど、ここで陥落してはいけない。デリヘル呼んだはいいものの地雷踏んだからチェンジしてくれって頼んだのに相手の女がノーセンキューって返した様を再現したんだよ、なんてことを細やかに分かりやすく説明できるわけがないでしょうに!

 ちなみに原曲の歌詞だと『ノーセンキュー!』じゃなくて『No,39!』よ。理由は知らないけどねーwww

 

 

「Aメロからおかしいとは思ってたの。けど、そういう大人な歌詞の曲はどこにでも存在しているから普通にいい曲だと思っていたわ」

「いい曲だったでしょ?」

「Aメロの段階ではですけど」

 

 

 いい曲なんだよね、実際に。メロディラインもキャッチーで完璧だし、何よりもギターの音圧が素晴らしい。ツインギターでやるにはもってこいの楽曲だし、ライブ映えも滅茶苦茶するまさに鳳向けの楽曲なんですわ。

 

 

「『髪型ショートで攻めんのが得意な子』」

「はい」

「まるで蘭みたいだね~」

「」

「モカ」

「ひゃー、こわ~い」

「私も髪型ショートだよ!」

「あたしもショート!」

「あら! 美咲とはぐみもショートじゃない!」

「ちょっ」

「はぐみもショートだよ! 攻めるのは得意かわかんないけど!」

 

 

 仁王立ちsの後ろで核爆弾ドッチボールしてる風に聞こえるんだけど、きっと気のせいだ。うん、そうに違いない。一歩でも踏み出そうものなら地雷の雨にやられて木っ端みじんになりそうだ。

 ちなみに歌詞には何の含みもありませんよ? 僕は原曲通り歌っただけですからね? 深い意味なんてなんもありませんよ?

 

 

「サビですけどあえて何も言いません」

「恥ずかしいんですね」

「あら、言ってほしいのならここで朗読しても構わないけど?」

「なんでもないっす勘弁してください千聖さん」

「『愛斗君の好みのタイプになって帰ってきました』って?」

「マジ勘弁してくださいすいませんでした」

 

「有咲~。デリヘルって結局なにー?」

「なんで私にパスを渡すんだよ!」

「香澄、デリヘルっていうのはねー」

「おたえ。絶対教えちゃだめだぞ」

 

 

 効きます。元有名子役の演技力でのそれは本当に効きます。それに千聖さんが言うと余計にやばいっす。歌詞みたいなメンヘラっぽさよりラスボスっぽさが顕著に出ます。怖いっすマジで。

 後、香澄は純朴なままでいようね。おたえちゃんも余計な事吹き込まないようにね。

 

 畜生、最初に対応してたのが紗夜さんだからって少し侮ってた。隣に千聖さんがいることで崩せそうな紗夜さんと蘭が無敵になりやがる。集団女子怖え。バフがあまりにも強すぎるでごわす。

 

 

「後、その……声のところの演出。あれは良かった」

「喘ぎ声のところ? あれはMr.FanTastiCのライブの丸パクしたの。かっこよかっt痛い! 正座してる無抵抗の相手を蹴るなんて卑怯やぞてめぇ!」

 

 

 恥ずかしがるなら言うなよ! 蘭も恥ずかしいながらちゃんと褒めてくれたんだろうけど、中途半端は一番刺されるからな。

 

 

「それで小柄で年下が好きなの?」

「ロリコン」

「それは原曲の歌詞だろうが!」

 

 

 高一の分際で年下小柄って結構危ねぇラインだぞ! 実際はそれほどでもない気がするけど。今は該当者があこくらいしかいないから余計にそう聞こえるだけだよ! ほんとだよ!

 

 

「女の子たくさん侍らせてるから守備範囲は広いと思ってたけど、まさかあそこまでとはねぇ」

「不潔です」

「それも歌詞だろ!」

「制服とかナース嫌いなの?」

「それは男のロマンだから別」

「キモイ」

 

 

 紗夜さんと蘭の目の温度が氷点下まで下がる。一月の北海道と同じくらい寒そう(小並感)

 

 それに関しては話が別じゃん! ナース服のお姉さんに優しく看病してもらいたいってのは全男性共通の夢じゃんか! 制服にもロマンがあるだろ! スク水にロマンがあるのと同じだよ! あれ、俺変態じゃね?

 

 

「愛斗さん、なんであの曲をやったんですか。曲に関しては差別はしませんけど」

「差別しないなら俺に怒らないでくださいよ。てか千聖さんに関しては多分怒ってないでしょ」

「あら? どうかしら?」

「それとこれとは話が別」

 

 

 千聖さんに関しては絶対に面白そうだから乗っただけだなこれ。この人、こういうことには一切興味がなさそうに見えて意外とノリがいいから怖い。自分に被害が来ないときの悪乗りには一番いい立ち位置で女王様してるからなこの人。

 

 そもそも怒られてるのが俺だけってのがおかしい。他のやつらもノリノリで飛び回ってたのに。

 新庄とか見てみろよ。あいつキーボードいなくても別にいいからって自分からダイブしに行ってたぞ。むしろあいつの方が俺より怒られるべきだろ。

 

 

「そもそもあんた、この前ノリノリで新曲練習したっていってたじゃん」

「そうそう、ベノムね」

「それでいいじゃない」

「いやーこれには深いわけがあるんですよ」

「なんですか。その深いわけって」

 

 

 ベノムも滅茶苦茶かっけぇ曲なんだよな。次のライブでは絶対にやるって決め散らかしてるくらいにはいい曲なんだよ。実際今日も直前まではベノムをやるつもりだったんだよ。

 でもさぁ……

 

 

「今日って男の人のお客さんが多かったじゃないすか」

「確かに多かったわね。珍しいといえば珍しいけど……」

「男が一番盛り上がるのって下ネタなんすよ」

「は?」

「デリヘル呼んだら君が来たって滅茶苦茶かっこいいんすよ」

「……確かに曲はかっこよかったわね。歌詞に目をつぶれば」

「オ〇モーノさんバージョンめっちゃかっこいいんすよ」

「その人の名前はできるだけ出さないで」

 

 

 なんでや! ええやろオリモー〇さん!

 なんだろ、あんまりこの人の名前連呼してるとBANされそうな気がする。もしくは収益化剥奪。

 

 

「つまり? 今日は男性客も多かったしノリもよかったからついつい直前で曲を変更したと」

「実際滅茶苦茶盛り上がったでしょ?」

「男の人は滅茶苦茶盛り上がってたね」

「女性の方は半分くらい顔死んでましたけど」

 

 

 逆に半分の人が付いてこれたのが凄いわ。ゴリゴリ下ネタ曲なのに。割と女の子は下ネタに強いってのはほんまやったんやな。ソースはないけど。

 

 

「それはともかく。女性の前で白昼堂々と下ネタを言ってた愛斗さんには、多少ばかりのお仕置きが必要ですね」

「えっ」

「とりあえず今日の打ち上げの会計は全部お願いしますね」

「えっ」

 

 

 冗談きついぜ。約30人分の会計全部ケツ持ちなんかしたら俺のお給料吹っ飛ぶよ? 僕バイト先がホワイトなおかげでお給料それなりにもらってると思うんだけど、それでも吹っ飛ぶよ? たとえファミレスでも吹っ飛ぶよ?

 

 

「よっしゃ=! 焼肉焼肉ー!」

「裏方の人の分までおごってくれるってよ!」

「叙〇苑! 叙〇苑!」

「焼肉って太らないらしいからいいよね~!」

「ひーちゃんは太ると思うけどね~」

 

「」

「まぁ、アレだよ。どんまい、お前が悪い」

「あっ、愛斗が灰になった」

 

 

 しばらく財布が軽くなりました。南無。

過去のお話の書き方が地雷なので、展開は変えずに描写とか加筆修正したいんです。

  • 今のが好きなので書き直しておk
  • 昔のが好きなので書き直したらアカン

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