どうやら俺の黒歴史を美少女達に握られたらしい   作:as☆know

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熱くて溶けそうですね。モチベも溶けました。


キレてるギタリストにギター渡せば上機嫌

 午後も始まってから長く経つ。

 何事もなく学校も終わった。今日はバイトの予定もない。それでいて家に帰ってもやることも特になし。そんでもって友達と遊ぶ予定もない。簡単に言えば暇確定というやつだ。たまによくある定期。

 

 そんなときにはみんな大好き羽沢珈琲店。おいしいコーヒーと何かを摘まみながらのんびりと時間を過ごしてリラックスタイムを謳歌する。それが俺のルーティンだ。多分、ルーティンの意味履き違えてるな。

 正直な話、You〇ubeで時間を溶かしたりするよりも、そっちの方がなんか優雅な気がするという理由だけである。あと、高確率で友達がいるしね。

 

 

「いらっしゃいませー!」

「うっす」

 

 

 そんな感じで扉を開くと、チリンチリンと綺麗な鈴の音。そして扉を開いた先で激カワ看板娘さんがお出迎えしてくれる。

 いやマジで可愛い。こんなかわいい看板娘がいる喫茶店に通わない理由なんてないんだよな。実際そこそこ通ってはいるし。可愛いは正義。

 

 

「久しぶりじゃない?」

「そんなことないない」

「最後に来たの、先月じゃないの?」

「まだ今日は月初めだってばよ」

 

 

 最近のつぐみは可愛いなぁ。ちょっと意地悪を覚えて余計に可愛くなった。

 アフグロでこんな芸当を覚えている奴なんて俺は一人しか知らない。多分、そいつから意地悪を教えられたんだろうな。なんて言うやつだ、本当に許せない。今度会った時にでもパンでもおごってやろうか。

 

 俺がいつも座る席は決まっている。もちろん、他の人が座っているとき以外に限るけどね。常連だからって我が物顔でいるのはダメ、絶対。

 

 

「……あっ」

「……」

 

 

 まぁ今日は例によって先客がいたんですけどね。知り合いだったんですけど。こんなヤンキーみたいな赤メッシュが知り合いってヤバいかな。

 

 こっちが分かりやすくリアクションをしたのに、そちらさんの方は無反応である。シンプルに悲しい。俺が今メンタルよわよわだったら号泣してその場でふて寝してたまである。むしろそうならなかったことを感謝してほしい。

 

 

「蘭もいたのね」

「悪い?」

「そんなこと言ってないじゃないの」

 

 

 一つ屋根の下。というか、一つ机を挟んだ向かい同士。表情的にもなんか不機嫌そうに見えなくもないが、多分いつも通りの蘭ちゃんである。多分ね、多分。知らんけど。

 

 ナチュラルに同席させていただいたんだけど、それに関しては何も突っ込まれなかったから多分機嫌自体は悪くないのだろう。ほんとに虫の居所が悪いときは座っただけで怒られちゃうからね。マジで目のハイライト消えてるから。

 

 

「ひまりとかは?」

「知らない。モカと巴はなんか隣町にラーメン食べに行くとか言ってたけど」

「じゃあそのうち来るかもな」

 

 

 ひまりが行方不明っていうのはそこそこ珍しい。普段は高確率で誰かと一緒にいるしな。モカと巴でラーメンコンビになってるのはそこまで珍しくもないんだけど。

 

 それにしても、カフェオレ片手にノートとボールペン……あー、なるほどね。完全に理解した。歌詞を書くついでにここに来たって感じだな? っていうか書くためにここに来たって感じだな?

 いやー、流石に名探偵すぎるわ。頭脳は子供で身体は大人だからな。めんたんてん浅尾よ。ラーメン屋にありそうな名前してんな。

 

 

「新曲?」

「ん」

「進み具合は」

「上々」

「珍しい」

「は?」

「すまんかった」

 

 

 だって珍しいんだもん……蘭ちゃんの作曲が順調とか…

 少なくとも俺がこいつと知り合ってから作曲に関して蘭が上々と評したことは1回くらいしかない気がする。曲を生むのは難産とかなんか聞いたことある気がするし、当たり前といえば当たり前なのかもしれないけれども。

 

オリジナル曲とか作るのマジで大変だよなぁ。作ったことないけど、マジでそう思う。少なくとも俺だったらやらない。

 適当にギターでコード繋げてベースとドラムを入れて、そこに主体となる歌を入れるだけといえばそうだけどさ。それだけの曲なんて魅力がお湯を入れすぎたカップ麺並みに薄味だから。

 どうにかして難しいコード進行入れたりだとか、ベースとかドラムに特徴持たせたりだとか。それをやりつつも曲全体としてちゃんとまとめて一つの曲にしなくちゃならないんだもんな。考えすぎかもしれないけど、それでも俺はそこまで考えちゃうから曲は作れねぇや。コード進行とか全然知らんし。

 

 

「そういえばさ」

「はい」

「アンタ、自分で曲書かないの?」

「書かない」

「ふーん」

 

 

 さっきも思ってたけど、そもそも自分たちのオリジナルの曲が作れるってだけで滅茶苦茶凄いんだよな。

 俺らなんて基本的にカバーバンドだから余計にそう思う。俺たちが自分たちの曲を作るよりも音楽で飯食ってる人たちが作った曲の方がクオリティ高いに決まってるんだからさ。作る意味も特になくない? って結論になっちゃうよね。

 

 でも俺だったらここの部分こうするのになぁ~とかこうしたらもっと気持ちいいのになぁ~って思ったりする部分は合ったりもする。たまにだよ! 音楽で飯食ってる人の奴に文句言えるほど偉い立場なんかじゃないから!

 

 

「あんただったら、それなりに良い曲作りそうなのに」

「作曲は出来ても歌詞が書けないからな」

「中二病」

「ブーメラン刺さってんぞ」

 

 

 作詞だけは誰かにぶん投げたいよねほんとに。

 仮にメロディとかが書けたとしても、俺に作曲センスが無さすぎる。それこそオリジナルでゼロから全部やってみろ。マジの黒歴史不可避だ。ひろの二の舞だけは絶対に起こしてはならない。

 

 

「それで? 今日はその背中に背負ってるものでも自慢しに来たの?」

「あっ、気が付いちゃいましたか?」

「そんなでかでかしいもの背負ってたら誰でも気になるでしょ」

「ぐへへ」

 

 

 ちょっと気持ち悪い笑いを浮かべながら、これ見よがしに背中にある黒いケースを指さす。今日はこの子も一緒なんです。今日からっていうのが正しいんだけどね。

 背負ってたギターケースを下ろして、オープンザプライスする。ちなみにこちらのお方、お値段は正式価格で大体13万円。

 

 中から出てきたのは、少し白っぽい木目のボディをしたアコースティックギター。だけど、アコーステックギターにしては少し重い。

 そうなんです。この子、この前キープしてもらっていたエレアコちゃんなんです。ちゃんと買ったよ。だって欲しかったし、何しろよかったんだもん。よかったギターは欲しくなるじゃん。

 

 

「……そんなの持ってたっけ」

「今日買ってきた」

「お金持ちはいいね。ポンポンギター買えて」

「蘭もバイトすりゃいいじゃん」

「あたしはそういうの嫌だから」

 

 

 確かに蘭がバイトしている姿って全然想像つかねぇな。ひまりとか巴とかはガチガチにバイトしてそうなもんだけど。モカはコンビニにいるしな。

 

 そもそも蘭ちゃんバイト始めたとしてもなんかすぐにバックレたりしてそう。

 駄目だよ。反逆の騎士とかし始めたらだめだからね。ちゃんと人として我慢しようね!

 

 

「蘭は新しいギターとか欲しくないん?」

「一本あればいい」

「曲によってギター変えるの割といいよ? 曲の雰囲気変わるし」

「……」

「揺らぐじゃん」

「揺らいでない」

 

 

 嘘だ。普通に一瞬考えこんでいたもの。完全にペンの動き止まったもん。シングルタスクかな?

 

 でも金にものを言わせるわけではないけど、本当にギターによって世界観とかは超絶変わる。

 音作りの概念とかだけではどうにもならない部分はあるからね。ギター本体のサウンドやら味やらは確実に出てくるから。音楽とかあんまり興味ない人には違いとか伝わらないんだろうけど、分かる人には分かる観点でもこだわる価値はあると思うのよ。

 

 

「まぁ見てみてくれよ。俺のおにゅーをさ」

「アコギじゃん。二本目?」

「んにゃ。実質一本目……いや、これはマジだから、マジな奴だから」

 

 

 ほんとにマジな実質一本目なんだからそんな顔で見ないで。冗談の実質一本目じゃないから。

 

 多分、蘭ちゃんが思っている一本目のアコギっていうのは、マジで俺のギターじゃない。あれは父親の持っているアコギを実家から拝借してきて借りていただけだ。

 俺の父親も一応ギタリストだからね。アコギも家に三本くらいあるのよ。よく母親に置く場所ないのに何買ってんだって怒られてたわ。なんだかんだ、ちゃんと置き場所はあるのにな。まさに夫婦喧嘩。もしくは漫才。

 

 

「持ってみる?」

「……じゃあ」

 

 

 別にギターを弾いてみたような顔をしていたわけでもないが、こっちが一本的に触らせてみたかったので無理やりピックと一緒に押し付ける。

 まぁ食ってみろって! マジでうめぇから! みたいなノリで渡しちゃったけど、普通に生音もいいただのエレアコなんだよね。

 

 チューナーなしでも簡単にチューニングをしている姿を見ると、蘭ちゃんも成長をしたもんだと思うよね。最初はこんなの使わなくてもできるとか言ってとんでもないチューニングで弾いてた時も一瞬あったのに。

 

 

「……いいじゃん」

「エレアコでこの生音は中々だろ?」

「悪くないね」

 

 

 普段はロックな深紅のレスポールがバチボコに似合う彼女も、アコギを握らせるだけで何ということでしょう。深夜の街でタバコ吸いながら徘徊してそうなヤンキー娘に大変身。

 なんも変わんねぇな。髪型と恰好があまりにもヤンキーすぎる。ギター弾いてる姿は滅茶苦茶様になってるけど。

 

 ちなみにこの時間帯の羽沢珈琲店は比較的すいているからギターを弾いてもOKだ。まぁ人がそれなりに多くても、俺がたまーにギター弾くことあるんだけどね。

 つぐみのお父さんがコーヒー一杯無料にしてくれる代わりにやってくれって言うから仕方ないよね。正直、こういうカフェでギター弾きながら弾き語りするって滅茶苦茶男のロマンだよな(本音)

 

 

「そーいやさ。蘭ってあんまりアコギで弾き語りとかしないよな」

「あんまりっていうか、持ってないし」

「なんか歌えないの?」

「TABがあれば」

「なんかやってよ」

「そういうの、一番困るんだけど」

 

 

 といいつつスマホで調べてるじゃん。なんだかんだギターを持つと弾きたくなっちゃうよね。わかるわかる。

 イマドキのギタリストってマジで恵まれてると思うわ。スマホで弾きたい曲のTABかコード調べたらちょちょいのちょいだもん。昔の人ってみんな耳コピしてたのかな。やろうと思えばできるけどさ。

 

 

「なんかないの」

「なにが」

「歌ってほしい曲とか」

「んー……天ノ弱とか」

「アコギで弾けるの?」

「バラードみたいにすればええやん」

「……わかった」

 

 

 わかったんだ。自分で言うのもあれだけど、かなり適当言ったぞ。

 バラードアレンジって割と難しい……気もするけど、そんなことないか。なんか適当にアルペジオしてテンポ落としてそれっぽく歌えばバラードになる気もするしな。適当すぎてごめんなさい。決して舐めてはないんです。無知からくる感想なんです。許して。

 

 

「こんな感じ?」

「キテるキテる」

 

 

 ゆっくりと一音一音を刻んでいく。エレキとは違う、アコギの柔らかくもやんわりと広がる音色。それに合わせて蘭も歌い始める。

 いつもは真っ直ぐで力強い蘭の歌声も、ギターの音色に触発されて少し柔らかくなっている気がする。それでもパワフルボイスは健在だ。

 

 なんかアコギを自慢しようと思ってただけなのに、色々といいもんが見れたな。夜に路上ライブしたらお金稼げそうやん……って思ったけど、あまりにもゲスすぎる思考だったので自分でぶん殴って妄想を吹っ飛ばした。

 ……今度、駅前で許可取って弾き語りしたらダメかな。

過去のお話の書き方が地雷なので、展開は変えずに描写とか加筆修正したいんです。

  • 今のが好きなので書き直しておk
  • 昔のが好きなので書き直したらアカン

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