どうやら俺の黒歴史を美少女達に握られたらしい 作:as☆know
そもそも皆さんTwitterやってるんですかね。
そんなわけで、珍しくちょっとつながるお話です。
音楽の感じ方なんて十人十色
歌が上手くなりたい。それが私の悩みだ。
悩みなんて正直私にとっては幾らでもあるけど、ここ最近はずっとこれが小骨のように喉に突っかかる。
「なんであんな風に……はぁ……」
ポピパさんや黒歴史さん、Roseliaさんのライブに感化され、紆余曲折在りながらも皆のおかげでバンドは組めた。本当に色々とあったんだけどね……
バンドを組めたは良いものの、私の逃げ腰になる性格のせいで解散しそうになったり、喧嘩したり喧嘩したり喧嘩したり……思い出すだけで胃がキュッとする。あの時の私は頑張ったと褒めてあげたい……
そんなことを乗り越えてきて、ちゃんとバンドとしてみんなで一歩を踏み出せるところまで来たからこそ。私にとって歌が上手くなりたいという思いは、胸の中で大きく膨れ上がっていく。
透子ちゃんもつくしちゃんもななみちゃんも、最初は私と同じ初心者だったはずなのに、ドンドン先に行ってしまっている様に感じてしまう。
ボーカルと楽器の上達速度を比べるなんて言うのは、本当は間違っているのかもしれない。
でも、それすら正しいのか正しくないのかなんて、私にはわかんない。ただただ心に残っているのは、私だけ置いていかれているという焦燥感。
色んな事が在って、乗り越えてきて、憧れの香澄さんにも助けてもらって。それでも、私の中の芯の部分は変わらないんだなぁ。
情けないというか、どうしようもないというか。嫌になっちゃう。
「はぁーぁ……」
どれだけお風呂の中で大きな声を出そうとして歌ってみても、カラオケの音程バーに合わせて歌ってみても、香澄さんや友希那さんや浅尾さんのようなモノが感じられない。
才能なんだって諦められたらそれでもいいんだけど、あきらめの悪いことに、何かヒントを求めて今日もいろんな場所を彷徨ってる。
練習場所のアトリエでみんなの様子を観察してみたり、神社に行ってお祈りしてみたり、カフェで空想に夢を描いてみたりもしたけど、どれもきっと私の求めているものには直結していないんだろう。
よくよく考えてみれば、最初のアトリエ以外、あんまり音楽関係ないもんね……
「……何の予約も目的もなく来ちゃったけど、良かったのかな」
だから今日は、ある意味一番近い場所なのかもしれない、そんなところに来た。
ライブハウス、CiRCLE。
本来のライブハウスとしての目的だけではなく、スタジオや楽器の貸し出し。更には、銭湯までくっついた凄い場所。カフェとも隣接しているし、なんというか物凄く色々とある。
ネットでの調べによると……ポピパ、Roselia、After grow、パスパレ、ハロハピなど、多くのガールズバンドも愛用している……らしい。一説によるとガールズバンドの登竜門だとかなんだとか。
カフェを通り、自動ドアを抜けると広々としたロビーに出る。休日ということもあってか、大盛況というほどでもないけど、中は多くのバンドマンたちで賑わっていた。
案外、店内にいるのは女の子ばかりじゃないんだなぁ。普通の見た目の人もいれば、なんか凄いアクセサリーを付けた怖そうな人もいる……治安が悪い……
と、とりあえず受付……でも受付って言ったって、私はここに何をしに来たんだ? 歌が上手くなるためのヒントを探しに来ました! ……なんて口が裂けても言えない。絶対。
「……どうしよう」
始めて来た場所ということもあって、何がどこにあるのか全く皆目見当もつかない。
単純にヒントを求めるなら、誰かのライブの様子を見させてもらうってことになるのかな。でも。そもそも今日はそういうライブみたいなのをやっているのかどうか、皆目見当もつかない。
……こういう時は、受付にいる人に話しかけるべきなんだろうなぁ。でもコミュ障の私には何度が高すぎるよ……食券制とかにしてほしい。
…………帰ろうかなぁ。
「あのー……?」
「ひゃあっ!?」
「ご、ごめんねっ!? 困ってそうだったから、つい声をかけちゃって」
「い、いえいえ! 大丈夫ですお気になさらず!」
いきなり背中側から声をかけられたということもあり、その場でぴょんと飛び跳ねるくらいにはびっくりしてしまった……おまけに変な声まで上げちゃったなぁ。恥ずかしいや。
落ち着いて声をかけた主の方に目をやると、なんとも大人と大学生の中間あたりを兼ね備えたお姉さんといったお方。
雰囲気も落ち着いてるけど、ここの店員さんか。もしくはここをよく利用している常連の人なのか。どちらにせよ、声をかけて来たっていうことは相当なコミュ強に違いない。怖い。
「あっ、一応私、ここのスタッフやってるの。困ってそうだったからつい声かけちゃって……ごめんね?」
「いやいやっ、寧ろ助かったというか……」
「ところで、今日はどんな目的で? 何がお探しでも?」
「目的!? え、えと、その、なんというか……」
スタッフさんなんだ……不審者とかナンパじゃなくてよかった。……私なんかにナンパはこないと思うけど。
それよりもだ。まさかまさかの直接一番聞かれたくないところを聞かれてしまった。
いや、でも普通は一番最初にそこを聞くよね。むしろそこに人に聞かれたくない理由を据えてる私が悪いんだけどね……
でもここで諦めたら何のためにここまで来たのかっていう話になってしまう。私だって、覚悟は決めなきゃ……!
「あ、あの……歌が上手くなるヒントを探したいな……なんて」
「ほうほう。歌が上手くなるヒントかー……」
「へ、変なこと言っちゃってごめんなさい! 流石にないですよね……あはは……」
恥ずかしい! す、すごく恥ずかしい!
名前の知らないスタッフさんに向かって、急に変なことを言ってしまって……いったい何を言って要るんだろう。というか、そもそもなんでこんなあやふやな理由でここまで来てるんだ私!
あああーっ! 顔が熱くなる。というか、頭に向かって沸騰してくるような感覚になる。
恥ずかしい!帰りたい! 穴があったら入りたい! そんな思考が頭の中をぐるぐるぐるぐる駆けずり回っていく。
「いや、あるかも」
「……えっ! あるんですか!」
「うん。本当は門外不出というか、アレなものなんだけど……」
「そ、そんなに大事なものだったら全然大丈夫ですよ」
「平気平気! 私が許可しよう!」
「えー……」
大丈夫なのかな……本当に……いったい何を見せられるんだろう。
凄いきれいな笑顔を浮かべるスタッフさんに言われるがまま案内されるがまま。CiRCLE内部をドンドンと進んでいく。
外装だけ見るとそこまで広くなさそうだったのに、こうやって歩いてみると案外広いんだなぁ。なんて思っていると、カラオケルームのように通路の左右に扉が並ぶ場所に案内される。
こっちこっちと手招きをする、スタッフさんの方に向かうと、そこには一室のスタジオ。なるほど、ここは貸し出し用のスタジオルームがある場所なんだ……
「上手……」
防音設備が整っているスタジオと言えども、中で響き渡っているであろうエレキギターの音はドア越しでもちゃんと聞こえてくる。
おそらく、どこかのスタジオを使っている人の出している音なのだろう。ギターボーカルなのかな?
荒々しく聞こえるギターの音も、なんだか中にいる人の音色はすこし纏まっていて、安定感という言葉が似合うような。私はエレキギターのことなんか何も分からないんだけど、そんな感じがする。
そして歌声は、まさに私が求めていたものがそこにあった。上手い、下手の概念とは別にある。心に直接届いてくる。そんな謎のステータス。
本当は盗み聞ぎなんてしちゃダメなのに、ついつい耳を傾けてしまう。本音と建前みたい。
「ここ、覗いてみて」
「えぇっ!? 覗っ、だめですよ!」
「大丈夫大丈夫! この子に限ってはそういうの無いから! ほらっ、音も聞こえるから。しっかりと心に刻み付けなさいな!」
「大丈夫かなぁ……あっ」
扉の中央縦長の長方形にガラスでくりぬかれた部分から、中を覗いてみる。おそらくだけど、さっきから聞こえてくる歌声とギターの音色を奏でる張本人だろう。
一体どんな人が歌って、弾いているんだろう。覗いてしまってごめんなさい、なんて罪悪感と期待感でぐちゃぐちゃになりながら、ガラス窓を覗いてみる。
『未来に期待しないなんてあなたを信じないなんて』
『寂しくて仕方ない』
見たことのある人だった。
耳にかかるくらいの黒髪に、ちょうどこちらからの角度だと見える青色のメッシュ。
少し幼げだけど整った顔立ちは、普段の印象とはとってかわる。マイクに向かって声を上げる姿は、何かが乗り移ったようで別人に見えて、でも変わっていないようで。
半袖のシャツにジーパンとラフめな恰好に、肩から黒のような茶色のギターを下げている。
誰にも邪魔されないような右手の動き。せわしなく動く足元。
何よりも、楽しそうに、曲に浸るように歌うその姿。
嗚呼、目に焼き付いている。
『どうせ あなたといる場所が暖かい』
『傷ついても傷つけたくない』
「浅尾さん……」
「彼も知名度が高くなったなー。昔はただの男子高校生だったのに」
「昔から知っているんですか?」
「そりゃあ勿論。彼には色々と手助けしたからね。それに加えて、昔からこうやって努力は欠かさないから」
「あんなに上手なのに……まだ努力するんですね」
そりゃあ伸びるよねー、なんて溶けるような笑みを浮かべるスタッフさんの顔は、なんだかとても暖かく、弟を眺めているみたいだ。
努力。凡人が努力しても追いつけない人物っていうのは、こういう人なのかな。天才が凡人よりも必死で努力してるんだから追いつきっこないよね。
『自分に期待しないなんて 自分を信じないなんて』
『虚しくてつまらない』
「あー……でも、彼の場合は努力じゃないかもね」
「え……」
「彼は、音楽が凄く好きだからさ。だから、あの子の感覚だと努力じゃなくて楽しんでるだけなのかも」
「楽しむ……」
確かに、一人でギターを弾いてマイクに声をぶつける浅尾さんはとても楽しそうだ。
まるで、目の前に観客がいるみたいに。曲に歌われているんじゃなくて、曲を歌っている。確かな実力と、その曲を知り尽くしているから出来ることなのかな。
曲を楽しむ。音楽を楽しむ。
歌を上手くなりたいと努力するんじゃなくて、楽しんでみる。
考えたこともなかった。みんなに迷惑をかけないように、上手く歌わなきゃってしか考えてなかったから。
『きっと なくせない大切があるから』
『笑えるんだろう君は輝くのだろう』
考え過ぎていたのかな。一番大事なことを、ほんの数分もかからないうちに教えてもらった気がする。
私にとって、Morfonicaのみんなは大切で、絶対に無くしちゃいけない宝物で。私はまだ、みんなの力に慣れてないけど、みんなの前で笑えるようになるころには、みんなも笑えてるのかな。
自分を信じないなんて、虚しくてつまらない、かぁ。
私にも、輝けるときが来るのかな。その時には楽しめるようになるのかな。でも、今楽しまなくちゃ。その先にきっと。
「……あの、スタッフさん。ありがとうございました」
「どうどう? なんか掴めた?」
「はい。色々と、変わった気がします」
「そっか。私も力に慣れてよかったよ。帰り道分かる?」
「すいません……案内してもらえると有難いです……」
「あははっ! いいよー、最後まで送ってあげる」
「愛斗ォー! おーっす!」
「相変わらずやってるねー」
「煩かった」
「ねぇ、君たちノックするってことをそろそろ学ばないかな」
いや、いつものことなんだけどね? いつものことなんだけどさ。気持ちよく歌ってギター弾いてる時に急に現実に引き戻されるとマジでドキッとするんだよね。ほんとに親フラと同義なの。実質親フラ。
「そういやさ。お前ら今日覗いてた?」
「いや? 直で来たけど」
「だよなー」
「なんだよ。ストーカー?」
「いやぁ、なんか変わった視線を感じた気がした」
「自意識過剰」
そんなこと言うなよ。もしかしたら当たってるかもしんないだろ? 当たってたら金寄越せよ。嘘ついたら100万円だかんな。
んー、なんか見られてる気がしたんだけど。やっぱ気のせいやな。気持ち良くてそのまま歌ってたし。見られても特に支障ないしな。ノーミスだったし! 俺、偉い!
過去のお話の書き方が地雷なので、展開は変えずに描写とか加筆修正したいんです。
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今のが好きなので書き直しておk
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昔のが好きなので書き直したらアカン