どうやら俺の黒歴史を美少女達に握られたらしい 作:as☆know
新しく俺がコーチをすることになった期待の新人バンド、Morfonicaのコーチを担当して早一月ほどが経過した。
自分としても一年ぶりのコーチング。腕によりをかけて……という感じで指導に当たっていたが、感触的には良い感じに良好。
素人軍団の中にも、きらりと光る才能はいくらでもいる。どんなプロだって最初は素人理論だ。磨けば光る原石って素敵だよね。
そもそも、自分って指導者でもコーチでもなんでもない、ただのボッチギタリストだったはずなんだけどね。どうしてこうなったんだろうって言うか、まぁ色々とあったよね本当に。このまま行くと回想になってしまうからやめておこう。
ともかく、Morfonicaの面々とも何度か顔を合わせることで、お互いにそれなりの信頼関係が築けてきた。
ま、ありがたいことにお相手様の何人かが、自分の事を認知していてくれたおかげで強くてニューゲーム状態の難易度でした。有名になって直接的な利益を実感したの。これが初めてかもしれない。
「……そう言えば、ふと気になったんですけど、愛斗さんって一番得意な楽器ってギターなんですか?」
「そうだよ」
練習中ってのもあって不意打ちすぎて何一つ面白くない返しをしてしまった。もうちょっとボケた方が良かった気がする。オーボエが一番得意って言った方が良かったかな。オタマトーンとかだと攻めすぎだもんな。
「……桐ヶ谷さん、まだ練習中ですが」
「いいじゃんか。丁度ひと段落したところだったし」
「大体、愛斗さんが持ってこられるのってギターですよね」
「たまにベースも持ってくるけどね」
広町ちゃん、覚えるのすんげぇ早いからそんなにベース持ってくることは無いけど。
恐らくだけど、このバンドで一番天才肌なのはこのピンク頭の子。ピンク頭の子はベースが上手いって法則が出来ているのかって言うほど上手い。
ひまりとかもモカや蘭に隠れているだけで相当の天才肌。本当にベース上手い。本人の努力も勿論だけど、高校生であのベースが弾けるのは本当に一握りだ。もう一人のピンク頭については……まぁ……あいつは努力する天才だし。
「今日もギターやんね。持ってきたの」
「今日はそのギターなんですね。この前のも同じ茶色だったけど、ちょっと違ったし……」
「あれはテレキャスター。今日のはジャズマスターやんね」
「浅尾さんって何本くらいギター持っているんですか?」
「アコギも含めたら4本かな。普通くらいだよ」
「普通それくらいですよね~」
「いや……4本って結構多くないかな……?」
そんなに多くないよ、多分。ほら、ギタリストってさ、謎にたくさんギター持ってるやん? あれって勝手に増えていくんだよね。
不思議だよね。気が付いたら勝手に増えているんだよ、ギターって。あと、ベースも勝手に増えるよ。これからギターとかベースを始めようとしている人は気を付けた方がいい。増えるから。
「最初から沢山持っていたんですか?」
「初めはこいつだけだったんだけどね。増えるよ。勝手に」
「ふえっ……!?」
「増えないですよね」
「増えるんです。ガチで」
年下なのに敬語で返しちゃった。八潮さん絶対に年下じゃねぇって! ありえねぇって! 俺が子供すぎるか八潮さんが大人っぽすぎるかの二択だもん! どっちもだな。
いやでもね、本当に増えるんですよ(二回目) 不思議だよね。大学にそういう論文提出したら教授とか世紀の大発見すぎてぶっ倒れると思うんだよな。絶対に増えるから。
「そのギターでは満足できなかったと言う事ですか」
「そんなわけでは無いよ。愛人が欲しくなったって感じ」
「言い方が最低すぎないですか?」
「浮気性、って言う事ですか……?」
「そうだね」
「浮気は不味いですよ、愛斗さん。彩さんもいますし」
「ギターの話だからね???」
ぽんぽんと質問に答えた僕も悪かったよ。でもギターの話だからね? 僕の話ではないからね。僕の話ではあるけれども、僕の話ではないから。そもそも愛人も何もまだ固定枠がいねぇよ。独り身悲しいね。
っていうか、質問とかにもちょっと悪意が無いかい? 浮気が発覚した後の記者会見みたいな質問ばかりだったよ? 僕は狩野〇孝さんじゃないからね? そういう質問には面白く返すことなんてできないんだから。
でもやっぱりギターって愛人みたいなもんだよ(最低)
ちょっとギャリギャリした音に浮気したくなったり、滅茶苦茶重い音に浮気したくなったり、曲ごとにとっかえひっかえして最終的にはお前が最高のパートナーだよって戻ってくるんだよ。
16歳にして何百回もそれを繰り返してきたよ。でも多分、大体のバンドマンってそういうもんだよ。僕の周りの女の子たちは全然乗り換えないけど、多分気のせいだよ。
「本命はその子なんですか?」
「なんかもう語弊しか生まない気がするんだけど。メインギターはこの子だよ」
「結局、やっぱり最後には最初の子に戻るんですね。ギターも女の子も一緒と」
「違くないけど違うね」
桐ヶ谷さんまでそういうことを言いだしたら終わりや思うんよ。いや、それは悪ノリをしている顔だってわかるんだけどね。陽キャのギャルが簡単にそう簡単にしたらだめだよ。オタクは簡単に死ぬよ。
「アレだよ? この子の魅力を語りだしたら加古川より向こうの人とか帰られんくなるから」
「加古川って兵庫ですよ~」
流石お嬢様高校! あったまいいね! ボケをシンプルな高学力で潰されちゃうととっても悲しくなるけど、何一つ間違っていないのでこっちが悪いよね! 東京から兵庫まで行くとシンプルに遠すぎるからね。
「でもすごく綺麗にしてある……あっ、でもここにキズ……塗装もちょっと剥がれてる……」
「あー! 見ないで! 見ないで! この子もう長いの! 恥ずかしい!」
「ごっ、ごめんなさい!」
「この子、もう結構傷物だから……」
「自分から語弊を招く言い方にしていくのは何なんでしょうか」
普段からライブで文字通り、振り回したりぶん回し足りしているせいでちょこちょこ当てた傷とかかすり傷とかがあるんです。それでもメンテとかはちゃんと定期的に出しているんです。塗装だって馬鹿みたいに弾きまくれば勝手に剥がれてしまうんです。
それでも傷って直そうとしなけりゃ一生残るよね。まぁ直そうとしていないだけなんですけど。もう歴戦の傷跡ですから。勲章みたいなもんですよ。塗装だって、使ってる感って言う奴ですよ。でも恥ずかしいね。
「いやぁ、でもいい子ですよこの子。もう見た目が好き、フォルムが好き、弾き心地が好き、音が好き、全部好き」
「おぉ……これが歴戦のギタリスト……!」
「変態一歩手前に見えるけどね~」
「ある意味間違ってないと思うよ。ごめん先に言う。語弊です語弊」
なんでこんなに聞く人が聞いたら捕まりそうな言い方しかできないんだろうね。そんなに変な言い回しをしているつもりなんか全くないんだけれどね。これじゃあ、ただ後輩にセクハラしているだけのおじさんだよ。
でもね、このジャズマスターくん本当に良いんですよ。どこぞのJKみたいにギタリストの癖に機材に関することは全く知らねぇが、これだけは言える。音が良い。これを弾けば女を抱ける。抱いたことなんてないが。
「まぁまぁ、君たち。ちゃんと聞こうと思ってこの子の音を聞いたことは無いだろう。ごめんちょっとアンプとシールド貸してくれん?」
百聞は一見に如かずというじゃないですか。この場合は両方なんですけれどね。
そんなわけで、ちょっとウキウキの色が隠せない様子の桐ヶ谷さんから受け取ったシールドをギターとアンプにぶっ刺し、流れでチューニングを済ませる。アンプに腰掛けて足を組んで、しっかりとポジションセット。
「この時点で良い音が出るだろう」
「……透子ちゃんのギターと音色が違う」
「何というか、ちょっと暖かい感じかしら」
「あんまり尖ってないよね~」
音色の感じ方なんて十人十色よ。暖かい色をしたボディからは、テレキャスター程の突き抜けるようなハイ交じりの刺々しい高音でもなく、でも、レスポールのような地響きのようなローの効いた低音でもない、ジャズマスターにしか出しえない唯一無二の音が出る。
「聴いてな」
突き抜けた特色が無い。器用貧乏と言ってしまえばそれまでかもしれない。けれど、こいつには無限の可能性と、こいつにしか出せない世界がある。
足元でリズムを刻んで、グルーヴを効かせたカッティングをさせて見よう。ブルージーのような雰囲気を出しているくせに、丸みと暖かさはこいつの領域内。三連符なんかを絡ませてみれば、髪型を変えたくせに一気にこっちの世界観だ。
少しネックを握る手に力を込めて歪ませてみれば、丸みを帯びた枠から神経にまでエレキの音色が突き抜ける。
まるで暖かい音色が私の特色ですよ、なんて優しいツラをしておきながら、トレモロアームを引っ張れば、巧みにこっちの感情を揺さぶって捻じ曲げる。パワーとテクニックまで両立している始末。
テレキャスにもストラトにも出せない、この絶妙な音色。丸すぎず、ロックをする上で必要なパッションもこいつは兼ね備えている。
器用貧乏なんか言う奴は馬鹿です。全く持って逆。
俺から言わせれば、こいつはテレキャスター、ストラトキャスター、レスポールに次ぐ第四勢力。それだけの世界観と汎用性を持っているのが、このジャズマスターなのだ! 好き!!!!!!!!!!(挨拶)
「……みたいな」
「「「「おぉー!!!!」」」」
見事なまでの拍手喝采。よせやい、照れるべや。
お手本のようなドヤ顔をかましておきながら、いざ期待通りのリアクションが返ってくると嬉しくなってしまうのはギタリストの性って言う奴だ。
ギタリストは全員エゴイストで全員ナルシスト。今日はこれを覚えて帰りましょう。個人の見解です。
「ジャズマスターはガチで天才的なギターです。皆さん、今日はそれを覚えて帰りましょう」
「それ、貴方の腕前ですよね。今のはギターの音色を聞かせるというよりも、途中からギターソロ大会のようになっていましたが」
僕の悪い癖。それは、気持ちよくなると調子に乗ってその場のノリで勝手にアレンジをしたり、要らんテクをねじ込んだりすること。しかも、自分の意思に関係なくマジでノリだけでねじ込むところ。
はい、そうです。とても気持ちよくなっていました。脳内でジャズマスターの音色を聞かせようと踏ん張っていたのは最初の24秒くらいまででした。それ以降はただただ気持ちよくなっていただけです。気持ちよかったですか? はいっ、気持ちよかったです!!!
「どうにかして気持ちよくなってしまったから仕方がないって方向に持っていけんか」
「なんで今日の浅尾さんはそんなに語弊のある言い回しばかりするんですか……」
自分から主導的に黒歴史ぶち込むことってあんまりなかったよね。最近、なんか新時代が流行っているからかな。そんな新時代別に要らないんだけどな。
過去のお話の書き方が地雷なので、展開は変えずに描写とか加筆修正したいんです。
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今のが好きなので書き直しておk
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昔のが好きなので書き直したらアカン