どうやら俺の黒歴史を美少女達に握られたらしい   作:as☆know

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刺し違えても本家とMADは間違えるな

 

 心地よく耳に引っかかる、電波音がビートを刻み、ドラムが横から飛び出して一気に圧を上げていく。

 更には、ベースまで小気味のいいスラップを挟んでくれるともなれば、歌いださない理由は無い。

 

 

『電波テンポアップして絶賛感電中!』

 

 

 ワァ! っと声たかだかに遠吠えして体ごと頭をトばして見れば、目の前の観衆がつられる様に大声量でのお返事。

 休符も交えながら、歯の浮く様な低音軽めのカッティング。浮遊感際立つ世界観の曲調にはおあつらえ向き。

 

 

『あなたにも わすれたいこと かなしいこと あるのかしらね』

『識らない映画なのに 涙をながすのは ドラマチックが足りていないからよ』

 

 

 カッティングと言えばテレキャスター! なんて言う世間一般の常識に逆らって、手元で自分を固辞し続けているのはジャズマスター。

 曲に合わせてギターを変える。毎回毎回、そんなに使い分けしたってつまらないじゃない。偶には、私だって見てくださいよなんて、単音刻みながらツンツンと肩をつついてくる気がしたから。

 

 

『そんな愚(ぐ)にも付かないこと くだらないこと 考えてばかりね』

『雨が上がれば愛もその横顔も 誰かのものになるのでしょう』

 

 

 ベースの様に単音を刻んでいきながら、少しずつ音階を広げていく。最初は細く、地味に。少しずつ、手を広げて、今度はリズムも打ってみて。厚みも広げて行って。

 

 

『嘘っぱちのファンデーションも全部 今夜のためよ』

『なのに一体全体如何して如何して何故何故?』

 

 

 今度はボーカルに下ハモを入れてみる。今まで上っ面だけで繰り広げられていた空中戦に、足が付く様に。

 ボーカルをなぞるようにカッティングをしてみる。私も一緒とふわり浮きながらダンスするように。それでも、間間でに悪戯気味なリフも付け替えたりして。

 

 

『不安定なカンテラ何処まで行くの』

『あなた一切合切放り去って もう』

 

 

 そのままサビ前Bメロなんてつまらないマネはしたくない。お利口なカッティングから、素早く一気にネックの下から上まで左手をスライド。流れる様に、気の向くままのアルペジオ。

 サビ前にむけての流れ道、いつも感じる、大通りへと道を広げる感覚。

 

 

『冗談じゃ──────』

 

 

 そして広げた風呂敷を細かいカッティングで切り刻む。ここが好機とばかりに、オーバードライブを踏み込めば、眠っていたジャズマスターが一気に目を覚ます。

 親指と人差し指で挟んでいたピックを、弾く様に中指と薬指で持ち替え、彼の調子を確かめるように、ベースと一緒に仲良く弦をぶっ叩く。絶好調と叫んでくれた。どうやら、観客も同じらしい。

 

 

「──ぁないわ!」

 

 

 観客のボルテージは最高潮。俺のボルテージも最高潮。勝ち確演出付きの一撃必殺とは良く言ったもの。

 気持ちよくイカせてくれよ!!!

 

 

 

 

 


 

 

 

 

「それで、貴方は何とサビで歌ったのかしら」

「はい。帝京〇成大学と歌いました」

「流行ってるもんね」

 

 

 いや、流行っては別にいないと思うけどね。コンビニでは延々と某ひとつなぎの財宝系漫画に出てきそうな声で良く宣伝はしているけどね。あれが悪いんだよ。責任転嫁ですよ。でもあれが悪いんですよ。そうして欲しい。

 

 なんなら、今目の前で仁王立ちしている人の方が、よっぽど威圧感あるけどね。

 おかしいよね。いつもこの立場をやられているクールビューティ系ギタリストの方と違って、大分身長は抑えめだから威圧感少ないはずなんだけどね。雰囲気と顔だけでやってるよね。

 

 

「今日、貴方一番手よね」

「はい」

「開口一番、舞台に出る前に『それじゃ、盛り上げてくるからあとよろしく』って言ったのは誰だったかしら」

「でもちゃんと盛り上がt」

「誰だったかしら」

「私です」

「有咲ー。ほっといて良いの?」

「見ちゃダメだぞ」

 

 

 確かに私が言いました。なんなら、ドヤ顔もかましていた気がします。今日はトップバッターだから、舞台をガッツリ湧かせて、後ろに控えているポピパもパスパレもやりやすいようにしようとやった気がします。

 

 でもね、弁解させてほしい。会場はめちゃくちゃ盛り上がったんですよ。

 確かにね? 一番キメるべきサビのド頭のボスで『帝京平〇大学』って語尾にしっかりアクセントまで付けてキメ込んだのは私ですよ。

 おかしいよね。ふざけてなんかいないですよ。僕は音楽に対しては本気のバンドマンですからね。むん!

 

 

「アレ、単独犯だったのか?」

「単独犯て」

「でもさ。コーラス入れてた馬越くんも新庄君も、ちゃんと歌詞は歌ってたよね」

「故意ね?」

「故意じゃないです! ガチですガチ! 僕はちゃんと曲にリスペクトを持って歌う人間ですから!」

「じゃあ、なんで急に帝京平〇大学なんて言い始めたのかしら?」

「流行っているもんね」

「そう」

 

 

 そうです。全てはあの某最近主人公がゴムから神に昇華した系漫画のMADのせいなんです。そもそも、このトウキョウ・シャンティ・ランデヴって曲自体もそこから知ったんですよ

 たまにあるじゃないですか、曲は知らないけどMADで滅茶苦茶有名になるパターンとか。どっかの寿司職人と電車のボカロを組み合わせたら、顔が四角い寿司職人が助走しながらヘイラッシャイって真顔で寿司を突き出してくることだってある訳ですよ。文字に起こしたら意味が分かんねぇな。

 

 

「ミーム汚染ってあるじゃないですか。ある意味あれです」

「しっかり原曲を聞き込めば、問題ないんじゃないかしら」

「はい」

「有咲ー」

「良いか、香澄。あれがぐうの音も出ねぇ正論ってヤツだ。あんまりやると泣いちゃうから気を付けろよ」

 

 

 それにしてもね、あのMADだけは本当に破壊力が高すぎる。もう最初っから一番と二番の歌詞だったんじゃないかって思うほどハマりが良いもんね。嫌だな。二番の歌詞が帝京平〇大学になるトウキョウ・シャンティ・ランデヴって。世界観が宇宙から千葉県に急にシフトするもんな。空気感違いすぎて風邪ひいてしまう。

 

 

「でもさー。サビに入る前のスラップは凄い良かったよね~」

「あれってピックどうしてたの? 普通に持ち替えてた?」

「うん。スラップする前に普通に二回刻むところあったじゃん。あそこの休符で中指と薬指にちょちょいと」

「マーくん、器用なんだね」

「慣れですよ、慣れ。日菜さんもたえも出来る様になるよ」

「ギターでスラップする場面って、あまり無いんじゃないですかね……」

 

 

 そんなことないよ! なんかのソロの場面でビックリどっきりリフとして仕込んでおくとカッコイイよ! たまにピック握れなかったり吹っ飛ばしたりもするから、必要じゃない限りは絶対にやらない方が良いけどね!

 特に今回みたいな一瞬で持ち替えたりするような場面でやろうとすると、本当に脳がバグるから辞めた方が良いよ! じゃあなんでやったの?カッコいいからです。

 

 

「まぁでもアレですよ、千聖さん。あんまりバレてなかったから良いってことにしてくれませんかどうにかして」

「あれだけ大声張り上げて叫べばみんな気が付くんじゃないかしら」

「彩。気が付いた?」

「……え!? わ、私!? 私は……あぁ言うものだと思ってたカナ……?」

「ほら!!!!!」

 

 

 マジかよお前みたいな顔で千聖さんに見下ろされているが、プライドなんて掃いて捨てるものだ。俺は無敵。けどかなり効く。そういう性癖の人だったらご褒美なんだろうけど、残念ながら俺はノーマルだった。

 

 こういう時にね、振る対象って言うのはこの場に2人いるんですよ。香澄と彩ね。

 けれどね、ここで香澄に振ってはいけないんです。あの子は雰囲気はおバカというか、多分世間一般ではおバカの部類の子なんだろうけど、曲のアクセントやコンセプトに関しては死ぬほど鋭いので、絶対にバレる。曲から出てくる雰囲気などを察知できる、ある意味、音楽人が一番欲しい才能を持っているからね。

 

 その点、彩の場合はまだ世間一般よりやや鋭いくらいでとどまってくれているので、振るならこっち。

 偶にとんでもない別方向から的確な考察とかを飛ばしてくるけど、今回はあんまり気にしてい無さそうだった。雰囲気的にも、彩にも少し合わないだろうしね。香澄なら若干適正ありそうだけど。

 

 

「ねぇねぇ。見てこれ」

 

 

 そんなこんなで唯一の突破口を見つけた、なんて思っていたら、横からスマホの画面が差し込まれた。

 写っていたのは、一時間前の一つのツイート。

『黒歴史の浅尾くん思いっきりテイキョウ・ヘイ〇イ・ダイガクって言ってるwwwww』……5000RT、いいねは10万を飛んで4000。現代進行形で両方とも増えていっている。

 

 

「凄いバズってる。良かったね」

「うん!!! 良かった!!!!!」

「思いっきりバレているじゃない」

 

 

 この後、どうにかしてあれは遊び心だったという方向性で進めようとしたが、日菜さんがイン〇タのストーリーに『マーくん、歌詞を間違えて千聖ちゃんに怒られてる☆』って上げてて思いっきりバレた。

 なんで撮影OKのライブでしっかりちゃっかり間違えてしまったんだろう。形ある形で残るな。バズるな。泣くぞ。




 浅尾愛斗
 マジで素でやらかしたのでほんの少しガチで凹んだ。会場はめちゃくちゃあったまってた。

 丸山彩
 Black historyの次の出番だったけど、こっちはこっちでMCで普通にトチったので普通に反省してた。

 白鷺千聖
 前の番でやらかされたのをカバーしようと活き込んでステージに向かったが、こっちのボーカルもやらかしたので、結果二連発食らった。

 市ヶ谷有咲
 流れに乗って香澄がやらかしそうな予感がしたので、滅茶苦茶頑張ってMC回してた。ある意味事故ってた。

 山吹沙綾
 色々察して全部まとめてた。偉い。

 花園たえ
 家に帰ってスラップの練習を始めたらしい。

 戸山香澄
 いつもとなんか雰囲気違って楽しかった!

 パクリです。後これは最近復活したぼくのお気に入りの黒歴史の三次捜索ね。へい、お待ち。
https://syosetu.org/novel/306654/

過去のお話の書き方が地雷なので、展開は変えずに描写とか加筆修正したいんです。

  • 今のが好きなので書き直しておk
  • 昔のが好きなので書き直したらアカン
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