どうやら俺の黒歴史を美少女達に握られたらしい   作:as☆know

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エモい空気はエモい雰囲気作りから

 

 

 一定のリズムを一切ズラすことなく、ドンドン、パッと性格にリズムを刻み続けるカホンに習って、ひまりのベースがラインを底上げしてなぞり続ける。

 アガるハイペースなロックンロールを駆ける普段とは違い、椅子や楽器に腰掛けながら、ゆっくり、ゆっくりと淡々と同じリズムを繰り返して空気を作る。

 

 打楽器と低音だけで構成されるシンプルな空間。何にも変化はないはずなのに、場の空気が形成されていくのが肌でわかる。リズム隊の二人が目を開け、視線を合わせる姿も絵になるなぁ、なんて他人事みたいにうっとりと目を奪われていると、正面から空気にピッタリな声色で声を掛けられる。

 正面を向けば、華奢な体にボディの大きいアコギを抱えたまま、少し緩んだ口元で笑いかけてくる可愛い白髪の女の子。その隣に、マイクを右手で握りしめたまま、目を詰むって足元でリズムを取り続ける赤メッシュの女の子。

 シンセサイザーを前から目を離して、口パクで『いつでもいいよ』と伝えてくれる子にウインクでお返事を返して、3カウントをマイクが拾うか拾わないかくらいの声量で。

 

 

「1、2、3、さっ」

 

 

 ギターの入りに合わせて、呼吸を止める。カラッと乾いて間延びをしないセミアコを鳴らすことに指先を集中させ、後は世界一優秀なリズム隊に身を任せて、二人でギターで踊る。

 慣れない厚み。慣れない手触り。慣れない音鳴り。普段触っているのと、実際に鳴らして本番で使うのでは少し違う。その感覚にちょっと震える。

 そこで出番を待ち構えているリードボーカル様に極上の花道を手向ける様に。一つの音も取りこぼさずに張り付ける。細い、細い弦をいつもより強めに弾いてみる。

 

 

『一度はあの光を見たんだよ とてもキレイで』

『でも今思えば汚かった あれはいわゆるBad Day Dreams』

『光が眩し過ぎて周りが見えずただただ日々を』

『棒に振ってたあの日 今だから笑えるよ』

 

 

 目をつむったまま、リラックスした様子で顔を上げて。いつものように、ハリがあって、芯が太くて、でもいつもよりも少し優しい。語り掛けるような、そんな歌声。

 君、そんな器用な歌い方も出来るようになっていたんだね。普段はそういう選曲をしないから、隠れているだけだったんだ。

 そんなリードボーカル相手だと、着いていくのにもちょっと度胸がいるね。なんて、ボーカルの少し奥にいるもう一人のギターを見てみたら、手元は一切ブレることなく、ニマニマと嬉しそうにこっちを横目に見ているじゃあないですか。『うちのボーカル。見くびって貰っては困りますな~』って声があの目から伝わってくる。

 そうだよなぁ、お前はいっつもこんなボーカルの背中を支えているんだもんなぁ。ちょっと羨ましいや。

 

 

『一度はあの幕を開けたんだよ とても重くて』

『プレッシャ一、イヤ味それに勝つために ただ嫌なヤツで』

『そして氣が付くと真っ暗な部屋に 一人ぼっちだった』

『終わった……。もう戾れない……。なんて……。 歩くのも止めた……。』

 

 

 序盤も序盤のAメロだっていうのに、ベースが遊び心のフレーズで少しつついてくる。喧嘩や挑戦状なんかじゃない。それが自然にできる、それだけの腕前なんだ。邪魔にもならず、世界観を崩さず。曲の中に混じるスパイスを、自分で判断して加えられるベース。

 君の頭のどこにそんな頭脳プレイが出来る余地が余っていたのかとっても気になるところだが、そんなベースに少しだけ触発されてしまったので、僕も裏拍に合わせて、バレないように気持ちの良いアルペジオで少しかき混ぜて見たり。

 きっと気が付いているんだろう。気が付かないはずがないもん。

 

 

『でもI'm not alone. I'm not alone』

『We're not, We're not, We're not alone』

『お金じゃ買えないもの手に入れて wow wow』

 

 

 ピッキングを弱め、ボーカルの第一の表舞台。優しく歌詞をなぞる彼女の手を上から引くように、少しだけハモって見たり。

 優しく包み込むシンセの音色に乗せられて、どこまでも行けそうなほどに彼女の声は伸びあがる。それに合わせて、俺らも力を入れて見よう。都合のいい見せ場だけは、しっかりと頂いておくからさ。

 

 

『もう一度光浴びて そして今度は騙されぬように』

『僕らは今目指すよ 慾望に滿ちた青年團』

 

 

 あぁ、正解だったなぁ。この選曲。

 胸の底から透けるような芯がある彼女の歌声に、この曲は良く映える。

 

 僕が下で、君が上、貴方は主人公。そうやって貴方を映えさせるのが我々楽器隊じゃないですか。貴方が輝けば輝くほど、僕は本望。多分、俺ってこっちが好きなんだな。

 

 

『誰かが言った言葉 それすらその時は流して』

『今になって氣付いたよ 慾望に負けた少年團』

 

 

 こうして貴方のために心血注いでいる4人にお邪魔することが出来てとても良かった。心の底から思える。俺の手元で歓喜の声を上げてるギターも見ての通り。

 ルートを象るバンドの先輩を囲むように、単音で周りを包んで魅せてもなお、貴方の声は埋もれない。ボーカルって言うのはお前みたいな人のことを言うんだろうな。美竹蘭ちゃん。最高だね。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「いっえーい! 完璧じゃないっ!?」

「すんごいねぇ君たち」

「予想以上に上手く行きましたなー」

「あ、カメラ止めとくね」

 

 

 右手でベースのネックを握りしめたまま、爆上げテンションでハイタッチを求めてくるひまりさんと自然な流れでハイタッチ。陽キャやほんま。あと、あんまり飛び跳ねないでほしいな。口に出したら死刑だから言わないけどさ。

 

 最近頻繁に練習に出れてなかったのはほかでもない僕だけどさ。君たち、ちょっと目を離した隙に死ぬほど楽器上手くなってないかい? いや、個人のレベルが上がって行っているというよりも、それぞれが自分の中で楽器の熟練度が熟してきているというかそんな感じ。

 蘭ちゃんもまさにそんな感じだったもんね。今までの強みに手札も増えてきた。これは強いよ。自分の色を残して手札を増やすことが出来れば、自分たちのクオリティを維持したまんま良いのが出来るからねぇ。外れちゃうと、どうしてもコレジャナイ感ってのは出てきちゃうもんだからさ。

 

 

「つぐもほぼ即興だったのに上手いこと入ってたよな。アレ、譜面とかも全部自分で?」

「うん。ライブの映像見て、こんな感じだったら丁度良くハマるかなって」

「天才か」

 

 

 天才だなぁ、やっぱりつぐって天才だったんだぁ。俺には絶対に無理だよ。だって鍵盤全く精通してないもん。最近なんて触る機会すら少ないから本当に弾けるのか不安。

 

 今日はいきなりかっこいい感じでビックリしたかな? 俺もビックリしちゃった。

 発端はね、今日は僕なんですよ。どうしてもシックな雰囲気で渋くかっこよくこの曲をやりたかったんですよ。ハマスタのライブを見てから、もうわっかりやすく完全に触発されちゃって。でも、雰囲気的にこういうのが出来そうなバンド……Roseliaはまずイメージと合わないしなぁ。

 パスパレもやろうと思えばできそうだけど、適任化といわれると少し迷う。麻弥さんが全部何とかしそうな気はするんだけど。

 

 そんなわけで白羽の矢が立ったのがAftergrowさんです。決め手はボーカル。蘭ちゃんならワンオクも上手くやってくれるだろうという安心感があった。僕がやったら絶対に燃えるからな。

 

 

「本当……いきなり過ぎ」

「それな。ほんまありがとさん。最高やったよ」

「だろ? うちのボーカル、すっげぇんだからな!」

 

 

 巴が自信満々に出てくるんだね。解釈一致ではあるけれども。

 

 蘭ちゃんが不満げなのも当たり前です。だって『明日これやりてぇ! よろしく!』って言ったの前日の18時くらいだからね。一週間くらい猶予がいるかと思ったけど、まさか次の日に仕上げてくるなんて僕は思ってなかったけど。

 気合を入れて金がないのに機種変更した、無駄に高性能なカメラを詰んだスマートフォンでしっかりと撮影でしちゃってさ。まりなさんに頼んで録音まで手伝ってもらっちゃって。そこまでする予定なんて一切なかったのにね。俺はただ、あのライブみたいにやってみたかっただけなんです……実際、録音していて本当に良かったと思うけどね。

 

 

「まーまー、君も精進したまえ~。うちのぼーかるさまは簡単に負けやしませんぞー」

「俺、お前にボーカルで勝ったことあるっけ……?」

「ボーカルって簡単に優劣付けられるものじゃないでしょ」

「ま、楽器と違ってわかりにくいしなー。味って言えばそれまでだし」

 

 

 僕って歌うことに関しては全然自信が無いから、知り合いのボーカルには全員負けてるくらいの感覚なんだけどもそうじゃないの? ギターだったら誰にも負ける気がしないんだけど、歌においては尻尾撒いて逃げるからな。

 VS蘭だと考えたとしても、いっちばん最初に出会った頃から場数を踏んでないだけで普通に蘭の方が多分上手かったよ。俺だって自分で下手とは思わないけどさ、蘭ちゃんは特に歌は上手い方だったし。

 

 俺は覚えてっからな。蘭の歌うめぇってなった時にすんごいご満悦な顔をしていたモカの顔。あれほど後方P面していることは人間そんなにない。青葉モカって人間がそうなっているって言うのが凄いもんな。いや、人は見かけによらないって奴よ。

 大体こいつ、ひょうきん族な雰囲気出しておいて努力の鬼だし。モカちゃんのおてて見たことあっか? めっちゃケアしてあるから綺麗にはなってるんだけど、最初の方とか指の皮が良くやられちゃってたんだから。今でこそ指先歴戦の戦士になってるけど、それくらい練習の鬼なんだな。才能がある奴が練習をしまくったら、そりゃあこんだけ上手くなるよって話。すんばらしいね。

 

 

「……何、そんなにモカをジロジロ見て」

「いやぁ、おじさん泣きそう」

「情緒が飛んでるね」

「愛斗君もやり切ったもんね」

 

 

 なんかあれだな。後方P面している子の後方P面をしているって無限ループになりそうだよね。どっかで止めておかないとアカンわ。

 あー、もう! 蘭ちゃんがそういうモードに入っちゃったじゃん! こうなったらこの子、コッチコッチになってこっちの攻撃通さなくなっちゃうんだから。もうダメダメ。

 

 

「やり切ったって言っても、ちょくちょくちょっかいかけて来てたし。どうせ残ってるんでしょ、余力」

「ちょっかいかけてた訳じゃないない。蘭ちゃん歌が上手いんだから、ちょっと触発されちゃって」

「それをちょっかいって言うんじゃないのかな……」

「まぁでも、愛斗くんいつもライブではソレ全開でやってるわけだしね……」

「アコギじゃなかったら危なかったよね。出かかってたよね」

「いや、完全に出てたぞ」

 

 

 後半の方とか大分おもらししてた気がする。アルペジオで後ろからなぞったり、原曲に無いフレーズバンバン入れたり、スローテンポでジャズっぽいのを入れられそうなのをいいことに裏拍噛んだリフぶち込んだり色々しちゃってた気がする。

 それでも対応してくれるんだから、やっぱりAftergrowって凄いんだな。うんうん、そういうことにしてくれんか。そうじゃないと、わしがバンド活動に向いていない気分で色々やってくるアホンダラになってしまう。

 

 

「しょうがないじゃん! 楽しかったんだもん! 仕方ないじゃん!」

「素直でよろしい~」

「アタシはただリズムキープしてるだけで良かったけどさ……アレ、楽器隊大変なんだろうな」

「馬越くんとかが良く愚痴ってる理由が分かったよ……毎回本当にアドリブ込みだったんだね……アコギだったから良かったけど、エレキで急に暴れだすと大変だもんね……」

「基本的に、私たちは動かないで置けば範疇でやってくれると思うんだけど……ちょっとヒヤヒヤするよね……」

「ちょっかい」

 

 

 うちのバンドメンバー、もしかしなくても滅茶苦茶頑張ってる? いや、毎回毎回気分によってアレンジするとか言うのは殆ど無いから大丈夫……大丈夫だよね……?

 ……そういや、うちのバンドメンバーってやけにオールラウンダーが多いよな。何かに突出してるんじゃなくて、大体なんにでも反応できるよって言う奴らばっかな気が……新庄あたりは勝手に好き勝手やってる方の人間だし……

 あれ? もしかして、最初っからそういう人選されてたの。偶々だよね? いや、流石に偶々……だってまりなさん言ってたもん。手が空いていた人で一番楽器が上手い人達をかき集めたって。そんな人がたまたま、俺の奇行についてこれそうな人たちだったって、上手いからそういう対応ができるだけだよな? な?

 

 

「ん~! ……楽しかったけど、その分疲れちゃったねー」

「やっぱ、今日は練習無しかー。ま、これが練習みたいなもんだけどな」

「大怪盗モカちゃん、今日の奴も盗んじゃいましょ~」

「ね、蘭ちゃん今日楽しかったでしょ」

「……」

「顔がそう言ってるべ」

「……まぁ、あんたのギターで歌うのは悪くなかった。気持ちも分かった」

「そりゃあ良かった」

 

 

 ま、肝心の蘭ちゃんが楽しそうで何よりですよ。みんな文句言ってたけど、やってる時楽しんでたし。多分、これ僕が弄られてるだけだし。悲しいね。およよよ……いや別に悲しくは全然ないが。

 僕も僕で、普段ガッツリこういう演奏で使う事のないセミアコ使えて大満足です。やっぱり、鳴りも弾き心地もエレキとは全くの別物だからね。良い環境で良い練習、ついでに良い思い出も動画にとって丁度良しですよ。

 

 そんなわけで、ちゃっかりとこの動画をアップロードしたところ、一か月でミリオン再生近くまで伸びる抜群の手ごたえを見せてくれました。最近、自分のチャンネルとか全く動かしてなかったんだけど、知らない間に再生数伸びててビックリしちゃった。銀の楯、いつ届くのかな。




 美竹蘭
 撮影後、三日間くらいずっと機嫌が良かった。

 浅尾愛斗
 あれ? もしかして、俺の買ったエレアコって神なのでは?

 青葉モカ
 三日間くらい機嫌の良い美竹を見てずっとニヤニヤしてた。

 上原ひまり
 なんか、凄いイケメンになった気分……!

 宇田川巴
 ゆったりと打楽器をする機会があんまりなかったので、少しむず痒かった。

 羽沢つぐみ
 即興のアレンジって、弾き手の腕の見せ所だよね!(激うまアレンジ)

過去のお話の書き方が地雷なので、展開は変えずに描写とか加筆修正したいんです。

  • 今のが好きなので書き直しておk
  • 昔のが好きなので書き直したらアカン
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