どうやら俺の黒歴史を美少女達に握られたらしい   作:as☆know

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初代アホピンク襲来編
プロになれるかは正直運次第


 雨が降り続ける日々に終わりは来ないが、もうすぐ6月が終わる。2日ほど前には、気象庁から梅雨明けが発表されたらしい。

 梅雨入りしていたかすら覚えてもいないのに、急に明けたと言われても実感がわかない。昨日の天気すら覚えてないのに、雨が増えたとかよくわからないよな。

 

 昨日の晩飯とか覚えてないやろ? えっ、それは流石に覚えてる? 俺、あんまり覚えてないんだけど、どういう事?

 えっ? 俺がそういう性格してるから、どうせ天気とかも覚えてないだろうって? 当たり前だろボケナス。

 

 んなこたぁ、どうでもいいんよ。

 みんなは、CiRCLEで定期的に行われているミニライブの存在を知っているだろうか。俺がコーチをしている、RoseliaやAfterglowなんかもちょくちょく出ているライブ。

 ここらへんの地域の特色やここ最近の流行りもあって、ミニライブに参加している過半数はガールズバンドなんだが、ミニライブ事態にそう言った制約は無いらしい。ガチガチの野郎共で固められたバンドも頑張っています。そもそもの母数としては、男の方が多いはずなんだけどね……昨今は比率がバグっています。

 実力もみんなすごいからね。軽音楽はカッケェので仕方がない。性別なんて細かい話だよな。

 

 で、なんでいきなりミニライブの話をしたのかというと……

 

 

「愛斗くんはさ。CiRCLEのミニライブに出たいとか思ったことないの?」

 

「ずっと思ってたんだけどさ。愛斗って、バンド組んでライブ出たいとか思わないの?」

 

 

 ほぼ同時期に、ひまりとリサさんにこんなことを言われたからです。

 そりゃあ、俺だって青春よろしくバンドを組んで、それでライブに出て、観客を沸かせたいとは思いますよ。思うよそりゃあ。男の子だもん。一度は主人公になりたいんだからな。

 現実でバンドを組んでライブとかに出られさえすれば、会場を沸かす自信はある。小学生からギターを始めている音楽暦に物を言わせた楽器スキルにものを言わせれば、きっと大丈夫。確証は無いけど。

 おい、イキリとか厨二病とか言うな! 楽器歴=自信になってるだけだから!

 んで、そんなようなことを思ってたら、俺の黒歴史開示機(月島まりな)

 

 

「私が知ってる楽器の上手いフリーの子が何人かいるからさ、この子たちを集めてバンド組んで、ライブに出ればいいんじゃないかな! というか、目星は付けてあるから!」

 

 

 とか言い出しやがった。他人事だからって簡単に言いやがって。

 彼女の言う事にも一理はあるよ。この中途半端な時期に一からバンドメンバーなんて集めていられないし、Roseliaみたいにフリーの実力者を捕まえて、仮メンバーでもバンドを形として形成するのが一番早い。 

 俺がライブをするんだったらバンドを作るなんか面倒なことしてられないし、まりなさんの言う通りフリーの人を捕まえて仮のバンドを結成してライブに出た方が手っ取り早い。

 

 にしても話が進むのが早すぎるよな。あれ? この人、誰から俺がライブに出たがってるみたいな話を聞いたんだ? 俺、この人には何も言ってないもんな。

 え? もしかして、盗聴とかされてない? 大丈夫? 個人情報管理終わってない? 隠しカメラは全部潰したはずなんだけど。まだあるとか言われたら、俺もう泣いちゃうよ。 

 

 

「ちなみにだけど、今現在揃ってるメンバーはね……ギター、ベース、ドラム、シンセサイザーの子が1人ずついるね! 補足だけど、このメンバーを集めれるのは今回限りだと思うから、やるなら一週間後の次のミニライブしかないよね~。あ、そうそう! ギターとベースとシンセサイザーの子はコーラスできるけど、まだボーカルがいないんだよね! そう! ボーカルがいないんだよね!」

 

 

 もう畳みかける様に情報ぶつけてくるやん。用意周到とかご都合主義とか、そんなちゃちなレベルじゃないぐらい準備が良すぎる。ご都合主義でもここまで進んでたらガチギレするぞ。この人シンプル怖い。

 

 もうこの時点で俺がボーカルとギターをやるのが確定してる。そもそもコーラスしかできないってなんだよ。歌えてるじゃねぇか。歌えるやろそれはもう。

 ……いや、ボーカルとギターは確定だよ。ギターだけならともかく、どうせボーカルは俺にやらせるように根回ししてるよこの人。そういう顔してる。

 ボーカルだけやるって手もあるけど、それは無理。マイクを握っていない方の手が騒がしくて、きしょくなる。ギターで手をふさがないと、大変なことになっちゃう。カラオケの時の様子を見てほしい。ナルシストもビビるレベルの手の動きしてるから。

 

 

「いやいや……そもそも、一週間しか時間はないのに、それでバンドで曲合わせて完成なんていうのが無理……」

「んー? 君の実力なら、全然できる範疇だと思うけど?」

 

 

 Oh……shit! 俺としたことがバンドを組んだことがないから、そこら辺の感覚がわかんねぇじゃねえかBABY! RoseliaとかAfterglowを参考にしようと一瞬考えたけど、あの人たちは練習の鬼と圧倒的息ぴったり幼馴染軍団だから参考になりゃしねぇ! よってなんもデータはない。畜生!

 とはいえ、俺一人の話だけでいえば、余裕で間に合う。覚えるし。ただ合わせでのアレが分かんねぇってだけだ。

 

 

「それで、何の曲やるのか決めてるの?」

「……へっ? あっ、そういや……」

 

 

 こういう時に助かるのがスマホの音楽アプリ。自分の近い記憶外から取り出せるこいつなら、面白い曲を引っ張ってくれるだろう。普通の音楽でも勿論いいけど、なんだかそれだと面白みがない。普通のミニライブでなんで面白みなんか求めてるんだこいつ。

 

 俺がボーカルって事でかかる音域による制限とかは、特にないはずだ。実は、音域はそこそこ広いんです。蘭とかには全然負けちゃうけどね。低めの所は苦手だけど、高いのは好きだよ。気持ち良いからね。粉雪がギリッギリ出るのが自慢。

 うーん、どうしようかな。音楽アプリをスクロールしてガンガン曲名を流してみるも、イマイチ今の俺にピンとくるものがない。

 どうせだったら、ギターが派手な曲とかやりてぇよな! 観客の度肝を抜いてやりたい!(自己顕示欲MAX)

 いやーどうしたものか。いきなりピンとくる曲名こねーかなぁ……

 

 

「……いいじゃん」

 

 

 スクロールを進める指が止まる。画面にはドラマツルギーの文字。これは大有り中の大有り。

 音域的にもかなり歌いやすいし、も○ーさんのギターカバーを丸コピしてるからこの曲ギターならいつでも弾ける。しかもジャズマスター的にはめちゃくちゃ主戦の曲! 最初で最後の場面でも悔いのない選曲!

 

 

「決まったみたいだね。それじゃあ。セッティングとか面倒なことは色々全部私がやっといてあげるから。また明日、ギター持ってスタジオに来てね!」

「いやー、何から何までありがとうございます! まりなさん!」

 

 

 よっしゃあ! 家に帰ったらギター練習するぞぉ! これは腕が鳴るぜよ。

 ……ボイストレーニングも少しだけしておこ。一週間で勘が戻るといいなぁ。人前で歌うの、あんまり経験ないからなぁ。

 

 こんな経験は初めてだが、自分の初ライブとなれば話は別。小賢しい羞恥心をゴミ箱にレーザービームで世界滅亡させ、俺は来るミニライブに向け準備を開始せよ。

 なんか理想通り物事が進みすぎてる気がするが、まぁまぁ気の所為だろう。

 そもそも、俺は今まで本当に散々まりなさんに黒歴史をバラされ続けてきたのだ。偶には彼女からいい気分させてもらってもいいよね! ガハハ!

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 当日なんだけど。一週間一瞬過ぎない? もう来たの? 体感キュー〇ー三分間クッキングなんだけど。

 あの後、一緒に組んでくれることになったバンドメンバーとの顔合わせも、本当に何事もなく終わったし。いや、何故かメンバー全員揃って、既にドラマツルギーやれるようになったのはびっくりしたけど。

 そんな都合のいい都合もあって、一週間という短い期間ながら、内容は濃く、体感は一瞬で曲も完成してしまった。すげぇ楽だったし、割と完璧に仕上がってよかったよ。もっと大変だと思ってた。なんなら時間余ったから、おまけで2曲くらいできる様にしちゃったけどね。一回きりだけど、やっぱ思い出って必要だからさ!

 

 でもあれだな。あれは許せんな。

 ミニライブに出るには、バンド名を決めなきゃいけないって言うルールがあったらしいんだけど、俺が知ったのは登録が済んだ後の話。当たり前だ。そこら辺の登録は、全部まりなさんがやってくれたんだから。

 そこで登録されていたバンド名は『Black history』。クソボケェイ! 絶対許さん。覚えてろ。

 

 

「緊張しとるん?」

「……大丈夫よ」

 

 

 そんなことを考えている間に、ミニライブは始まる。舞台裏で黙々と楽器のチェックや手入れをしている間に、ドンドンと参加メンバーの出番が終わっていく。裏からでもわかる。観客の声援が凄い。

 俺達の出番順は何故か大トリ。Afterglow、Roseliaと来て、我らがBlack historyと来る。蘭たちは多分、今だに俺が裏にいる=こいつも参加する、なんて思っていないんだろう。だって誰にも言ってないからね。言わないでもいいかなって。

 

 

『さぁ、行くわよ!』

 

 

 そんなこんなで、もうRoseliaのライブですか。本当に速い。自分が思っている夜も緊張しているのかな。

 ケースに入れて手入れしていたジャズマスターを取り出し、舞台袖に向かおう。Roseliaの次には俺らの出番だ。こういう形ではあるがバンドマンになった以上、大事な大事な初陣を黒歴史で終わらせるわけにはいかない。

 厨二病全開にして、バフかけまくって伝説のライブにしてやらぁ!

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

『トリをやらせてもらいます。Black historyです。よろしくお願いします』

 

 

 人生で初めての空気は、少し生暖かかった。

 Roseliaで跳ね上がった熱量にもほとぼりが見え、残暑がまだまだ見えますよねといった具合。彼女らを求めて客席は満員御礼。知らないバンド相手に最後まで残ってくれている。素晴らしい方々が揃っているようで。奥の方には、既に出番を終えたAftergrowのメンバーもいる。いつもならすぐに控室に戻って何か話しているはずなのに、今日という日に限って観客席にいる。しかも、後方腕汲みPしてるやつもいる。頭の白さで誰かわかるぞ。

 

 ライブの規則とか暗黙の了解とか、そう言ったルール的な事はよく知らないので。事務的にさっさと自己紹介を済ませて、準備に集中。余裕癪癪だったはずなのに、気が付いたら結構キている。初めて見る景色に興奮が半分、締め付けられるような感覚が半分。

 

 家やスタジオとは全く訳が違う。音響が違う。どこかから跳ね返ってくるはずの音が、観客に吸い込まれていく。この感覚、ここに立たなきゃわかんないんだろうな。

 広すぎる自分のスペースにワクワクが止まらない。ここか。ここが今の俺の立ち位置なのか。いいじゃん。最高じゃん。つま先でトントンと叩いたって、ビクともしねぇ。

 

 自分に気合を入れる様に、行くかと独り言をぼやく。自分の周りを見回せば、いつでも行ける。そんなご様子。緊張とかしないさらない? そっか、俺以外普通にステージ経験者か。いいな。ずるいな。俺もそっち側に行くからな。

 

 

「行きましょか」

 

 

 隣のギターに声をかけ、3コールを背に受ける。ディレイの波状的音圧を耳で感じながら、ピックを握り直そう。

 

 さぁ、ここから始まるのが俺の伝説。腹の底から全部見せましょうや。だからさ、せめて楽しんでってくださいよ。主演、俺による最初の最後のドラマ。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 驚いた。普段からここのミニライブは定期的に見に来るが、まさかこんな逸材がまだ眠っていたとは思わなかった。

 

 

『僕ら今 さあさあ 喰らいあって 延長戦サレンダーして』

『メーデー 淡い愛想 垂れ流し 言の愛憎』

『ドラマチックな展開をどっか期待してんだろう』

 

 歌唱力も文句なし。高校生レベルながら、歌の乗せ方にはセンスを感じる。肺活量と声量には難点ありだが、その部分は後からどうにでもなる。スキルで伸ばせないところを持っている。そこが重要だ。

 

 

『君も YES YES 息を呑んで 采配は そこにあんだ』

『ヘッドショット 騒ぐ想いも その心 撃ち抜いて さあ』

『まだ見ぬ糸を引いて 黒幕のお出ましさ』

 

 

 吸い込まれるようなトーンを絞っての付点16分での速弾きリフ。そこから、足元でトーンを上げながら、違和感なく繋がれるアルペジオ。そして、ボーカルに合わせて裏をかたどるようなカウンターメロディのリフ。このアレンジ自体はどこでも聞いたことが無い。恐らく、自作のギターアレンジなんだろうが、難易度は語るまでもない。少なくとも、高校生がギターのネックを振り下ろしながら弾けるものでは。

 

 見ての通り、何よりも特筆すべきはギタープレイの練度の高さ。ハッキリ言って、逸材。組後世のレベルを、遥かに凌駕している。

 安定したストローク。リズムが一切ブレないカッティング。難度の高いアルペジオ。そのどれもを歌いながら、更には楽器には目もくれずに弾ききっている。どれだけギターを弾き込んでいるギタリストでも、ほんの一部にしかできない芸当。

 

 

『その目に映るのは』

 

 

 ギターに集中させれば、ボーカル時の雰囲気とは一転。内々に秘められていたようなものが蠢く。まるで、ギターに取りつかれたような。その域まで見える。

 そう。何よりも、彼のギターには人を引き込む魅力がある。所謂、カリスマ性という言葉で片づけられるものなのだろう。立ち姿、弾き姿、立ち振る舞い。何よりも、彼のギターから鳴り響く、直接心を躍らせる音色。シンプルなカッティングが、こうも素晴らしく聞こえるか。

 

 

「どうですか? 彼のギター」

「……貴方は」

「しがないスタッフです」

 

 

 暗闇の中から気配を消して現れた女性は、こちらににこりと微笑みかけ、ステージを見つめていた。どう、か。

 

 

「箱でのライブとはいえ、この舞台でスラップ、タッピング、ヘッドピーン……ここまでのギターテクを全面に押し出して、全てミスタッチなくこなす。しかも歌いながらです。あの手首の柔らかさから来るカッティングやミュート、ハーモニクスなど基礎の応用のスキルレベルも非常に高い。いや、そこを抑えられているからこその、あのバカテクなんでしょう」

 

 

 我々のような人物に対して、一長一短のバカテクだけを見せつけて我が物顔をするバンドマンは何人も見てきた。だが結局、そんな中で基礎に重きを置いていたバンドマンは、ごく少数に過ぎなかった。何より、彼らが人を弾きつけていたのは手先のテクニックだけであり、誰も彼らの出す音には気を引かれてなどいなかった。

 

 

「なによりも……彼には表現力がある。私含め、聴き手の心を掴み、ギター一本で自分の世界を表現出来る力がある」

「わかりますか!? そうなんですよ! 彼のギターって凄いんです!」

「あ、あぁ……」

 

 

 なんか凄い人だなぁ、この人。ほったらかしておいたら、延々とステージのあの子のこと語ってそうだ。俺もやるべき音をさっさとやって帰った方が良いのかもしれない。

 

 会場はまさに彼のギターに当てられて熱気の渦。鳴りやまないアンコールに、マイクを握る彼は少し恥ずかしそうな顔をしていた。

 

 

『じゃ……アンコール貰ったんで、もう一曲カバーやります……ロケットサイダー』

 

「少しよろしいでしょうか」

「えぇ、勿論」

「あのボーカルの子と、少しお話をさせていただきたいのですが。実は私、こういうものでして……」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「愛斗くん凄かったね! ドラムを叩きながら歌えるのは知ってたけど、ライブでもあんなに歌えるなんて知らなかったよ」

「ほんとに凄かった! アンコールの曲もすっごいキラキラしてた!」

「ちょっと待ってくれんか? つぐみちゃん? 俺、その時のこととかあんまり覚えてないけどさ。多分、その時の俺はちゃんと歌ってたと思うんだよね。あとお前誰や! 可愛いね。一緒にセッションしないかい?」

「あのー、うちのボーカルにナンパされたら困っちゃうんですけどー……」

 

 

 初めてのライブで二曲続けてのギターボーカルは普通にハードでした。もう汗だく。息も上がっちゃってもう。本当にもう。無理。

 満身創痍状態で帰ってきた俺を出迎えてくれたのは可愛らしい女性陣でした。知ってるバンド2つに、知らないバンドも混じってる。すんごい約取れ。でもお前誰や!

 

 なんだね、ちみは。変なおじさんでもなく、頭に猫耳ついてるみたいな髪型してるけども。なんもわからんけど、なんか直感でわかるぞ。君、さてはおバカの国の民だな? 良いんだ、言わなくても。俺にはわかるんだ。君からは、ひまりや先代アホピンクと同じ雰囲気をビンビン感じる。

 

 

「いつの間にバンドなんか組んでいたの?」

「いやー、まりなさんがフリーの人達集めてくれていたので……」

「……あの人、そんなことも出来るんだ」

 

 

 本当にそう。集めてきたメンバーが凄すぎる。初めて音合わせした時、なんか一発でカチッとハマったというか、一発で合わせてきたとんでもない人達ばかりだ。聞くところによると、みんな同級生らしい。ここら周辺の高校生は逸材しかないのか。

 ドラムの土井くんは、巴とあこともう一人、猫耳少女にさーやと呼ばれてる子に。

 ベースの馬越くんは、リサ姉らベース組に。

 ギターの柳田くんは、紗夜さんらギター組に。

 シンセの新庄くんは、つぐみ達に。白金さんも一緒にいるけど話せるのかな?うちのメンバーはみんな気さくだから大丈夫だとは思うんだけど、あの子だけは何というか……チャラ男だから……

 

 みんな、それぞれのパートの人達に囲まれ談笑している。盛り上がってくれたもんな。それぞれ、聞きたい話や話したい事なんかもあるんだろう。みんな年も近いだろうしね。

 俺はというと、なんかバチバチしだした友希那さんと蘭の輪から抜け出し、カラカラになった喉に潤いを求めて、置いてあった緑茶をグビっと行く。

 

 

「────-ッハ。うんま……」

 

 

 ライブ終わりのお茶って、世界一美味しいな。今日も又、学びを得てしまった。

 人生初のライブ、本当に良かったな。なんかもう、疲れ切ってるせいで小学生並みの感想しか言えないのが悔しいけど。アンコールもして貰えてうれしかったよ。ちゃんと受け入れて貰えてよかったなって。

 いや、コール食らった時、心配すぎて舞台袖のスタッフさんとRoseliaガン見してたけど。笑顔でOKサイン出してくれてよかった。

 時間が空いたからって練習しておいて良かったな、ロケットサイダー。過去最高の出来だったよ。バフって存在するんだな。

 

 自分のギターと歌声で観客を沸かせるって事が、こんなにも素晴らしいものだとは。またやりたいな。ガチ最高だった。

 元々、音楽で食って行こうなんて思ってなかった。プロの歌手やバンドマンに慣れるだなんて思えない。俺よりすごい人なんて、日本を見渡せばごまんといる。希望的観測で、好きを職業に。それこそ、スタジオミュージシャンとかになれたら……なんて思うけど、それも無理だと思ってた。

 けど、そんな気持ちもちょっと変わってしまいそうなくらいには、最後まで夢たっぷりの体験だったな。アドレナリン、パネェ。

 

 

「お疲れ、浅尾君」

「まりなさん……お疲れ様です」

「浸ってるねぇ。どうだった?」

「いや……最高でした」

「ふふん。そうだろう、そうだろう」

 

 

 いつの間に控室にいたんだろう、この人。神出鬼没なのにも程があるよね。忍者か何かかと思ってしまった。

 でも、今日に関しては感謝の感情しかない。この人のおかげで、知らないことを教えてもらえたしな。ここまでの人生で間違いなく最高の体験ではあった。ありがとう、まりなさん。まだギリギリ過去の事は許せない。

 

 

「今、ちょっといいかな?」

「はぁ、まぁ」

「ちょっとこっち……ここで待っててね!」

「は?」

 

 

 言われるがまま、手を引かれ。連れてこられたのは控室のほんの少し裏。少ししか動かないんかい。

 ……ま、今日くらいはいいや。ちっとくらいの無茶苦茶であれば笑顔で迎えよう。今ならサイン300枚くらい書いちゃうぞ~! あ、サインとかも決めておかないとな。ガハハ!

 

 

「あの、浅尾愛斗くん……でいいかな?」

 

「……?」

 

 

 ……いや、誰だこの人。

 待つこと一分。殆ど待っていない。そんな中で登場したのは、マジでミリ単位とも知らない、スーツを着た男の人。

 え、誰ぇ? 本当に誰ぇ……? ここってそういう合コン会場。もしくは裏の怖いお兄さん? 違うんです。僕はウキウキでライブを楽しんでいただけなんです。許してください。

 

 

「はぁ、俺がそうですけど……」

「あぁ、君がそうだね! というか、ここには君と僕しかいないもんね! いやー、さっきのミニライブ見てたよ。本当に、素晴らしい演奏だった!」

「あ、ありがとうございます……」

 

 

 本人と確認が取れた瞬間、すんごい勢いで距離詰めてくるやん。家に売り込みをかけてくる怪しい商品のセールスマンか? もしかして、今回のライブでファンとか出来ちゃったり? 流石に違うだろ。ファンが出来たから裏に呼んで来たよって、どういう展開なんだよ。

 

 

「あの……それで、自分にどういう要件で……?」

 

 

 このままだと埒も空かないので、思い切って聞いてみる。そしたら、相手のスーツに兄ちゃん、忘れてました! みたいな感じで自分の社会人っぽい鞄をごそごそし始めて。

 

 

「おおっとぉ! 私とした事が、興奮しすぎて、肝心な事を忘れていましたっ……私、こういうものでございます」

 

 

 一気に社会人モードになったスーツ兄ちゃんから、すっげぇ綺麗な姿勢で名刺を渡される。いやぁ、どうもすいやせん。名刺の貰い方もわからないような、ケツの青いガキでして。

 両手で貰えばいいのかな、こういうのって。卒業証書方式が正しいんかな。それで行こう。それなら習ったもんね! すっげぇ笑いをこらえられてるけど。違うんじゃん、これ。

 もう良いもんね! 読んじゃうもんね! オメェ誰だ! 見せてみろ! うーんなになに……芸能事務所 スカウト担当……

 

 

「……芸能事務所?」

「Exactly」

「スカウト?」

「はい! 是非、我が事務所でスタジオミュージシャンをやってみませんか?」

 

 

 棚から牡丹餅どころか、夢が落ちてくることってあるんだな。




 浅尾愛斗
 ボーカルは初挑戦だったけど、意外と何とかなった。声量が無いので、少し走り込みを始めたらしい。
 ライブ中は隙あらば頭は振るし、ギターを弾きながら飛び跳ねるし、何なら飛び回る。ボーカルをやっているので、多少は落ち着いている。偉いね。

 湊友希那
 愛斗くんが歌を歌えることは知らなかった。ポテンシャルは有るけど、まだまだ甘いわね。

 美竹蘭
 歌を歌えることは知っていた。まぁ、まだまだ負けるつもりは無いけど。

 戸山香澄
 すべてに完全初見。CiRCLEのライブに参加したら、あんまり見ないレアものの生物を発見した。セッションするために連絡先を交換したらしい。

過去のお話の書き方が地雷なので、展開は変えずに描写とか加筆修正したいんです。

  • 今のが好きなので書き直しておk
  • 昔のが好きなので書き直したらアカン
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