どうやら俺の黒歴史を美少女達に握られたらしい 作:as☆know
「ほぇー、すんごい広い」
「でしょ? うちでは、ここでいつもレコーディングしてるんだよ。こう見えても、小さい事務所じゃないからねぇ」
俺は今、とあるレコーディングスタジオに足を運んでいる。初めてのレコーディング現場とやらに、ウキウキわくわくでございます。
なんでかって? まぁその理由を知るためには少し先まで遡らなければならない。まぁまぁ、落ち着いて聞きたまえ……
俺の人生初めての演奏者側に立ってのライブ後、まりなさんに連れていかれ、そこで芸能事務所のスカウトにスタジオミュージシャンとしてスカウトされた俺氏。その場を取り敢えず乗り切る為、考える時間をくださいとその場の勢いで回答し、スカウトの人と連絡先を交換してその場は終えたのだ。
その後、スカウトの人と電話で色々交渉してるうち、事務所に呼ばれて色々とお偉いさんと相談する流れでここに来ています。
正直、話が大きくなりすぎていて、さっさと断ればよかったとは今でも思うけど、色々と深い事情があるんだよ事情が! 嘘です。せっかくのチャンス、断るメンタルが無かっただけです。
「いらっしゃいました」
「おう。入れ」
そんなこんなを思い返して気が遠くなっているうちに、あっという間に偉い人がいらっしゃるところに通されてしまった。
通された部屋には、まさに役職付きの人間が据わるようなごつい仕事席がド正面に鎮座。そして、そこにいたのはオールバックにグラサンをかけた滅茶苦茶いかつい見た目をしたおじさん。ヤバイ。終わった。俺の指は無くなって、この先満足にギターが弾けなくなってしまうのか。
こ、こうなったらヤケじゃ。俺は自分の要件を言いたいだけ言う。そんで首になる。そして人生オワオワリ。これだ。これで行こう。
「ほう。本格的なスタジオミュージシャンではなく、バイト的な感覚で雇って欲しい?」
「はい。高校にいるうちは、やらなきゃいけない事があるんです。俺がスタジオミュージシャンになって、その仕事で今やってる事が出来なくなるのは、どうしても嫌なんです」
「やらなきゃいけない事、というのは、AfterglowさんとRoseliaさんのコーチの件かな?」
「……はい」
「ハハッ。何で知っているんだ? と言いたげな顔だね。そこら辺の情報は、君の行きつけのスタジオのスタッフさんから教えて頂いているからね」
斎藤さんがニッコニコで補足してくれる。ありがとうございます斎藤さん。あいつほんま余計なことしかしねぇな。今を思えば、ライブに俺を出したのもこれが目的かと思えるレベルやぞ。
このとんでもなく怖いおじさんを目の前にしても、全く物おじせずに笑顔を崩していない人こそが、俺をスカウトした斎藤さんです。何度も電話で色々と条件交渉をさせて頂いているんだけど、本当にガチで良い人です。ほんま迷惑かけてます。
「随分と、言うものだね」
「……いや、本当、すいません。生意気で」
「慣れてる。君みたいな奴らの集まりなんだ。音楽に心奪われている人間なんて」
俺がスタジオミュージシャンにスカウトしてくれたのは本当に嬉しかった。だけど、俺はまだやり残したことがある。
俺はまだRoseliaにかけた迷惑も返し切れてないし、Aftergrowだって一人前に出来ていない。先客はあちらだ。雇い主に対して仕事を完遂していないのに、新たに別の仕事が出来たからそれきり、なんて不義理が出来るほど、俺のメンタルは強くない。
彼女らを蔑ろにするという選択肢は、皆無だった。
「君も理解していると思うが、非正規雇用になれば、給料も待遇も正規雇用とは非にならない。理解しているかい」
「……ちなみに、非正規の場合の給料ってどんな感じですか?」
「それに関しては、こっちで用意してあるよ。この書類だね」
斎藤さんが大量のプリント用紙がの入ったファイルから、一発で素早く何かの用紙を引き抜く。
そこには色々な数字やら、カッチコチの難しい日本語が羅列されてあったが、馬鹿でもわかる日本語が右下に。時給という文字の横に、おおよそにして普通のバイトの5~6倍くらいの値段が書いてある。え、時給……これ時給!?
「これはギターの場合の代金だね。君の細かい能力やこれからの売れ行きはわからないから、あくまで仮だけど。ここがベースの時の値段で、こっちがドラムの時ですね。完全歩合制だから、安定はしないけど、ここら辺は浅尾くん次第だね」
斉藤さんがペラペラと髪を追加したり、指で刺したりしている所には、これまた数字が。細かいのをこの場で計算するわけにはいかないが、ベースを弾いた場合でも、普通のバイト代の4倍はくだらない。おいおい、そんなうまい話があるかよ。確かに人件費削減くらいの端くれにはなるかもしれないけど、高校生が持っていい金額か?
正規雇用だった場合の書類と見比べると、確かに額面はかなり落ちている。とはいえ、明らかにインフレの域。
「……これ、評価狂ってますよ。俺、高校生ですよ?」
「ビデオで確認はしたよ。どの楽器も高校生基準ではない基準で、バンドに最低限必要な技術を持ち合わせてる。コスパ的には最強。音に色もある。これでいて、まだ15歳と来たもんだ。伸びしろも十分みられる」
「うちには、君と同じ高校生ガールズバンドもいるんです。その子たちにとっても、いい刺激になると思います。君ほどの実力を持った同世代に近い子は、そうそういませんから」
相手は企業の人間だし、大人の言う事は信頼するなとおばあちゃんが言ってたから、実際どのくらい信用できる話なのかは分からない。けど、言葉通りに受け取ったとしても、まだ理解はできる。ありがたい評価を頂けているんだね。
とはいえ、この場ですぐにOKを出すことも出来ず。まぁ、こっちに出てきて一人暮らしをしているとはいえ、俺はまだ高校生。普通のバイトならいざ知らず、ここまで大きな話になると、流石に両親の了解も得ないといけない。
てなわけで、かなり前向きに検討をするから、その時間をくださいって正直に言ったら、キッチリYESを貰った。親に報告相談って時点で、ほぼほぼ勝ちと踏んだのかな。
……大変なことになっちゃったな。学校にもバイトの新星とかしなきゃないのか。蘭とか友希那さんにも、ちゃんと言っとかなきゃダメだよね。ガチで大変だー!
……というような、そんな過程があったわけだ。じゃあ結局どうなったの? って言うと、あの後、母親に電話したら即OKが出た。父親もどうせ良いって言うらしい。
とどのつまり、スカウトは受けました。これで僕も箔付きだね! うは、俺って有名人? あんまりテレビ見ないから、それっぽい感覚一切わかねぇけど。それに俺はどちらかと言うと、裏方よりの仕事だしな。
「それにしても、スカウトを受けてくれてほんとに良かったよ。これで君を取り逃してたら、色々と将来的に大戦犯になるところだった……」
「いやいや、買いかぶり過ぎですから……」
そんなに評価をしてくれているのは本当に嬉しいんだけど、若干荷が重いよ。そこら辺の高校生よりは、ギターが上手いと自負はしているけれども、全国の猛者共の上澄みのプロともなれば、もう話は一気に変わってくる。うわぁ、頑張ろう……ビッグになろう……
親の了承は取り、AftergrowとRoseliaはどうなのって話だけど、そこに関しては事務所さんが絶対に支障が出ないように、こちらで日程の調節はすると約束をしてくれた。
ま、それもこれも非正規雇用だからできることらしい。そりゃそう。こちらとしては、そっとの方面に迷惑が出なければ、正直どうでもいいからね。プロみたいに慣れただけで十分です。お金ももらえるしね!
本人たちにも、ちゃんと確認を取りに行きました。そしたら、二人とも快く許可してくれました。よかったね。本当に良かった。ガチで一番ドキドキした。
特にRoselia側に関しては、友希那さんスカウトの一件もあったがゆえに、どうしたものかとヒヤヒヤだったけど、コーチ業に支障がないように配慮してもらうのが前提だと、説明したら、友希那さん達も理解してくれた。最初はちょっとアレだったけど。
この話を切り出した時の紗夜さんがめちゃくちゃ怖かったのは秘密な?
このお仕事、基本的には週二らしいからね。ガチで良心的。ホワイト企業すぎる。ちなみに休日出勤もあるらしい。前言撤回、社畜は辛い。
「ここがAスタ。レコーディングスタジオAだね。あとBとCもあるよ。まぁ、同時に3つも使う事なんて、そうそう無いんだけどね」
「なんかこういう感じの部屋、見たことある気がする……」
「あぁ言うごつい機材とかも、あんまり見る機会ないよね」
というわけで、このスタジオ見学も、これからの職場見学みたいな感じのものだったんですね。おそらく、これから俺がこの仕事をする上で、8割以上はこの場所にお世話になるんだろうね。
スタジオミュージシャンって、基本的には表で楽器を弾くって言うよりも、こういう場所でCD音源とかを弾くことが多いもんね。当たり前ではあるんだけど、打ち込みの音源と、実際に演奏された音源は全く違う。その曲のニュアンス、雰囲気を捉えるためにも、ある程度実力の備わっている人物に実際に演奏をしてもらうって言うのは、とっても大切らしい。
斉藤さんがの視線の先には、無数のボタンやらノブがくっついている謎の機材。レコーディングスタジオでよく見る、ヒャ〇インが据わって色々やってたやつだ!
そんでもって、その機材とガラス張りになったやや大きめの小窓の奥には、いつも借りているスタジオよりもシックな雰囲気をしている空間が広がっている。そこには、なんかもうちらっと見るだけで値段のアレソレが分かるような機材が並んでたり……わ、わぁ、プロっぽい! なんか俺、語彙力死んでるな。
いやいや、機材も場所もあまりにもプロすぎるな。もう機材がプロで雰囲気がプロやもん。怖い(小並感)
牡丹が沢山ある奴の横にはシンセサイザーとかも置いてあるし、そのまた隣にはデスクトップPCやら、めちゃくちゃ高そうなどデカいスピーカーやらが威圧感を放ってる。
ヤバい、今すぐギター弾きたい。完全にこの場の空気に当てられてる。斎藤さんに言われるがままだったけど、ジャズマスちゃん持ってきていてよかった。弾かせてくれるよね! ね! ここで生殺しとかいっちゃん悲しいよ! 死ぬまでにクソほど環境の整ったところでギターとか弾きたいじゃない!
「内装はまぁ見ての通りかな。どうよ? 凄いでしょ」
「凄いっす! なんというかプロっす! プロ!」
「そうだねプロだね、ドデカミンだね」
興奮しすぎて語彙力がついにマイナスになってしまった。つられているのか知らないけど、斎藤さんも何故か語彙力がマイナスになってる。なんだよドデカミンって。地味に飲んだことねぇよ。そういう問題じゃないね。
「それじゃお待ちかね……ブース入っちゃおっか!」
「YES! BOSS!」
斎藤さんに手招きされ、ウキウキのステップを踏みながら小窓の奥の部屋に案内される。防音設備の整ったどでかいドアを開けると、そこに広がっている空間は、さっきいた場所よりも広く、ワクワクが沢山広がっていた。本当に広いな。5人くらいが楽器ブンブンしても、誰も怪我しないんだろうなと思うくらいには広い。
備え付きのドラムに、シンセサイザー、クソデカアンプ類が完備されていて、まさにバンドマンのために作られた部屋といった様子。シカの頭が壁に突き刺さっているっていう事以外は、どれを取っても完璧。なんなのあれ。反響とか大丈夫なの?
「それじゃあ……ギター、弾いてみる?」
「……いいんすか」
「なんでギター持って来させたと思ってんのさ」
「そりゃあそうですけど。ここにいるの、俺らだけじゃないですか。斉藤さん、機材とか使えるんですか?」
「いや全く。だからね、ちゃんとエンジニアの人も呼んであるよ」
そんなタイミングばっちりで、スタジオの扉か勢いよく開く。肩がビクンと跳ね上がる。もうね、反射ですよ。プロ野球選手が談話とかで『必死でした。体が何法してくれてよかったです』みたいな意味わからん事言ってるじゃん。あれと同じ。
「どーも~! 呼ばれて飛び出ておじさんですゥ~!」
「斉藤さん。この人不審者……」
「違うからァ~!」
IK〇Oさんみたいなめっちゃおしゃれな格好のおじさんが出てきたんだけど。え、この人ですか? 本当ですか。やっぱり、分野のプロの人って頭おかしいんですね。覚えておきます。
「エンジニアってこの人……」
「御本人自ら説明してしんぜよう! レコーディングエンジニアとは超簡単に言えば、音響の調節とか録音をするすげーオッサンだぞ! こんなんでも頭いいんだからな! あと名前は涌井ってんだ! ワクワクさんとでも呼んでくれ!」
「はえ~」
「てなわけでだ! 安心して好きな曲を演奏してくれたまえ。ほら、行った行った!」
今しがた自分のイメージをぶっ壊しながら頭良いって言われても説得力ないです。ワクワクさん。でも、プロのレコーディングエンジニアさんなんだから、凄い人なんだろうな。頭良いって自分で自負している人、大体ガチで頭いいもんな。
この事務所は斎藤さんといいワクワクさんといい、コミュ力高い人しかいないんか。非常に助かるわ。とっても馴染みやすい。
キャラの濃いエリートおじさんに勧められるがまま、クソデカアンプと、備えつけらしいオーバードライブとディストーションも借りて、それらとギターを繋ぐ。
はてさて、試しに一振り……うっわ! めっっっちゃいい音! おいおい、ワンチャンCiRCLEとかよりもいいんじゃねぇかこれ。オラ、ワクワクしてきたぞ!
これ、曲とかも配慮した方が良いよね。俺も事務所に入った身だし、ある程度ライバルになる同業他社は敵視したりした方がいいのかもしれないわ。やっぱ
「あの……曲決まりまs」
「あー、そうそう。あんまり事務所とか気にしないで好きな曲選んでいいからね! うち、そう言うの大丈夫だから!」
「Catch the Momentでお願いします」
「OK☆」
映画は見てないんだけど、この曲、ちょっとカッコ良すぎるんだよね。もう全てがカッコイイ。リフもソロも全部かっこいい。そこに僕の好きなアルペジオとか入れたら最強です。いや、知らんけどね。ここは譜面通りに弾く場じゃないから! いいの、いいの。気持ちよければいいのよ。
「よーし、じゃあこっちで音確認したいから、音出しお願いね」
「はい!」
プロの環境で弾く俺のギターって、どんな感じなんだろう。うおおおお! 早く、早く弾きてぇよ!
「プロデューサーさんの会ってほしい人って、いったい誰の事なんでしょうかね」
「うーん。新しいスタッフさんとかじゃないの? 今日、レコーディングのはずだし」
頭の後ろで腕を組みながら、日菜ちゃんはどうでも良さそうに返す。
今日はカバーをする、Fantastic futureのレコーディング日。プロデューサーさんが、レコーディング前に会って欲しい人がいるって言ってたから早めにスタジオに向かっているんだけど、その人物がどういう人なのかに関しては、誰も聞かされていない。聞いてみたけど、面白い人だから、会ってみてからのお楽しみって言って教えてくれなかったし……
「新しいメンバー、ってのは考えにくいですかね」
「それくらいの重大事項、裏でやるのならサプライズにして欲しくはないわね」
「サプライズですか!」
「そもそも、あたし達もう5人もいるんだし、新しいメンバーとかいらないんじゃない?」
「ギターだって、日菜ちゃんがいるもんね」
日菜ちゃんの言う通りで、パスパレには
「彩さん……この世界には、ツインギターってのがあるんですよ……」
「ま、麻弥ちゃん! 私もそれくらいは知ってるよ!」
「ギターの二刀流……まさにブシドーです!」
「イヴちゃん、多分ちょっと違うわ」
ホントのことを言うと完全に忘れてた。知らなかったわけじゃないよ! 本当に! 知ってはいたから!
「もしかして、新しいボーカルだったりして?」
「そ、そんな訳ないよ! ……え、ないよね?」
「彩さん! 自分に自信をもってください!」
いやいやいやいや、いきなりスタッフさんに呼ばれてボーカル首だなんて……流石にないない……え、無いよね? 本当にないよね?
私、歌詞もよく間違えるし、ダンスだってヘマするし、MCは忘れちゃうし……えっと、えっと……え、本当に大丈夫だよね? ないよね?
「Aスタで間違いないですよね?」
「えぇ。先に涌井さんが準備してくれているはずよ」
「よーし! じゃあ行こー!」
「ひ、日菜ちゃん! 引っ張らないで~! 待ってー!」
いつの間にか左手の手首をむんずと握られ、引きずられるようにスタジオまで一直線。
勢いよく開けられそうな扉を、すんでの所でビタ止めして何とか食い止める。
ま、まだ心の準備の前準備も出来てないからっ! ま、待って! まだ扉を開くのは待ってー!
「もー、何で止めるのー!」
「まだ早い! まだ早いから!」
「なんかねっ、ドアの向こうからるんっ! って感じがするんだ!」
「それを開けたら、私がクビになるかもしれないからー!」
「彩ちゃん……今までありがとうね」
「え゛」
千聖ちゃん? 今、すっごい真剣な顔してたよね? 私、見逃さなかったよ。ガチの顔してたよね! その顔をして、そのセリフを言うのは物凄く不味いよ! ニコニコしないで! 今、その顔をされたら本当に色々と勘繰っちゃって怖いからぁ~!
「それじゃあ、行きましょうか」
「待ってー! まだクビになりたくないー!」
浅尾愛斗
音楽は好きだけど、プロへの意識はそんなにない。自分への評価が結構低めなので、音楽で食っていけるだなんて心の底では思っていないし、そう簡単なもんじゃないと思っている。
斎藤さん
愛斗をスカウトした人。スーツ姿が似合うビジネスマンで、いっつもニコニコしている。学生相手でも舐めた態度を取らないので、友希那さんをスカウトした人がカスに見えてくる。
涌井さん
レコーディングエンジニアの人、ワクワクさん。ちょっとオカマ口調だけど、体はめっちゃごつい。
丸山彩
ここの事務所所属。初ライブの音響トラブルで色々あったけど、献身的な事務所のリカバリーと本人の努力で這い上がってきた。
過去のお話の書き方が地雷なので、展開は変えずに描写とか加筆修正したいんです。
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今のが好きなので書き直しておk
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昔のが好きなので書き直したらアカン