どうやら俺の黒歴史を美少女達に握られたらしい   作:as☆know

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女の子は何かと集まりたがる

 

「合同練習ぅ?」

「そう! 合同練習!」

 

 

 夏休み真っ盛りの7月下旬、家で蘭に頼まれた曲のアレンジをしてる真っ最中にひまりから電話で羽沢珈琲店に呼ばれ、着いたらこれでした。

 羽沢珈琲店に着き、流れるようにブラックコーヒーを注文して着席した0.2秒後に、ひまりから合同練習という謎の単語を聞かされた俺は素っ頓狂な声でその単語をオウム返ししてしまった。

 

 これでここまでの状況説明は完璧である。ほんでもって、もう当たり前のようにAftergrow全員いる。お前らほんと仲良いな。

 

 

「んなもん、どことどこがよ」

「私たちとー、ポピパとー、それにRoseliaと、パスパレとー、あとはハロハピ!」

「待って。俺の知らんバンドが2つくらいある」

「お前、ポピパとは面識あるだろ?」

「嘘でしょ? ポピパってどこだよ」

「香澄ちゃんたちのバンドだね。はい、お待たせしました」

「ありがと。で、香澄ちゃんって誰やっけ」

「忘れちゃったの~? ほらー、猫耳みたいな髪型のー……」

「よーし思い出した」

 

 

 あいつか。Black historyとして、初めてLIVEに出た後に控え室にしれっといたあいつか(とってもわかりやすい思い出し説明)

 ハロハピに関しては全然わからん。会えばわかるかもしれんけど、名前だけでは全く分からん。なんだよハロハピって。31種類のアイスクリームをそろいるアイス屋さんの新規フレーバーにありそうなニュアンスしてるな。うまそう。

 

 

「で、なんでそんなことをわざわざ呼び出してまで」

「あんたも出るの」

「One more please」

「あんたも合同練習出て。あんた個人でも集められるならあの時のメンバー集めてもいいから。どっちでもいいから出て」

「拒否権を行使……」

「ちなみに強制だよ!」

「Really?」

 

 

 んな事だろうと思ってたよ。ノータイムでわざと英語で聞き返したらとんでもない返事が帰ってきた。だって、そうじゃないとわざわざ呼ぶ意味がないもんね。電話で言ったら、速攻断ってぶっちしちゃいそうだもんね。さっすが、わかってるー!

 それに、拒否しようとしたら拒否権はないときた。困るぜひまりちゃん、こっちは冗談抜きでとんでもねぇ数の弱みを握られてるんだから、お前ら相手には下手に動けねぇのに。まぁ夏休みはバイト増やしてる訳でもないから暇っちゃあ暇なんだが。

 なんか、女の子に囲まれるのも怖いじゃん。裏に怖いお兄さんが居そうで。上手い話には裏があるじゃん。

 

 てかRoseliaもパスパレもいるんだね。パスパレはスケジュールが合ったらワンチャンでそうではあるけど、Roseliaはこういうのは出ないもんかと。

 まぁでも、リサさんが友希那さんと紗夜さんを上手く丸め込んだのかと思えば納得か。多分、合同練習で得られるものはゼロじゃないとか、そんなことを言ったのかな。後で聞いてみよう。

 

 

「っても、アイツら集まるかなぁ……」

「あいつらって、あの時のバンドのメンバーの人達? 愛斗くんLINE持ってないの?」

「持ってない事も無いけど……あれ以来あんまり連絡取ってないや」

 

 

 凄いナチュラルに半笑い半苦笑いするじゃん。ふざけんなこれが陰キャのリアルだわ。君みたいな陽キャとは違うの! 女の子のコミュニティ成型能力と一緒にしちゃダメだよ。

 そもそもあれ以来すぐ夏休みに入っちゃったし、特別会う機会もなかったからなぁ。完全に疎遠ルートではあった。

 

 

「あっ、でも私、新庄くんのLINE持ってるよ?」

「え?」

「私も馬越くんの持ってる!」

「モカちゃんは柳田くんの~」

「アタシも土井の連絡先持ってるぜ?」

 

 

 なんでみんな連絡先を持っているんだい? しかもそんな示し合わせたように各楽器別れて……あれか! あのみんなで盛り上がってたやつか! あいつら女と連絡先交換していたのか! 許すまじ、許せんマジ。しかも名前まで覚えられているとか許されん。いいなー! 名前呼び! 俺も割としてもらってるけどさ。

 

 

「いやいやいや……まぁ連絡先持ってても、連絡つくとは限らんし……」

「土井のやつ、おっけーだってさ」

「は?」

 

 

 は?

 

 

「新庄くん、大丈夫だって!」

「馬越くんも来れるって!」

「モカちゃんが言わなくても結論は分かってるであろう、まーくんよ~」

「柳田は来れない」

「来るって~」

「ちくしょおおおおおおおおおおおお!!!!!!」

 

 

 なんだこれ。外堀がガンガン埋められてって、気がつきゃ何処にも逃げられない完全包囲網ってか。もう完成済みで脱出不可能プリプリズンってか。バカタレ。何であいつら揃いも揃ってフッ軽族なんだよ。人間か? 人間かぁ……

 

 

「……ちょっと俺トイレ」

「愛斗くん、トイレはうちのお店にあるよ」

「なんで外に出ようとしてるの愛斗くん」

 

 

 おかしい。これ以上ない自然な退出の流れだったのに。お金を置いて、振り向いて完璧だったのに。

 畜生こいつら流石幼馴染。完璧なタイミングで両腕を掴んできやがる。息の合い方が半端じゃねぇぜ。これが本当の、両手に花ってな! ガハハ!

 

 

「いや、膀胱炎になるんで」

「まぁちょっとぐらい大丈夫だって」

「いやいや、お前ら付いてないから知らないんだろうけどな……」

「まーくん、セクハラは駄目ですぞ~」

 

 

 巴は俺の肩をしっかり掴み、モカがしれっと横から退路ふさいでくる。

 気が付けば、俺の目の前には例の赤メッシュが両腕を組んで仁王立ち。俺より身長低いくせに、なんでそんなに威圧感があるんだよ。蘭ちゃんが大きく見える。デカい、デカイぜ! これが本当の四面楚歌ってか! ガハハ!

 

 

「行くか行かないか、決めて」

「じゃあ、行かない方向で……」

「行くか行かないか、決めて」

 

 

 あれれー? おっかしいぞー? 二択でNOを選択したはずなのに、なんでもう一回初期画面に戻ったんだ? 勇者よ、冒険に出てくれないかのあれじゃん。実質、選択肢は一個しか残されていないパターンですか? そんなことあってたまるか。ゲームじゃあるまいし。

 

 

「じゃあ、NOで……」

「そんな選択肢はないよ?」

 

 

 いやん、耳元でそんなにいい声で囁かないで。お前、顔もスタイルも良くて声まで良いのかよ。あ、なんかいい匂いした。シャンプーの香り。

 こいつ、いつの間にそんな色仕掛けみたいなこと覚えやがった。そんな耳元で直接ASMRなんて強すぎる。お父さんはそんな風に育てた記憶はありません! まぁひまりの父親じゃないから知るはずないんだけど。

 

 

『どうか!』

 

 

 俺の右ポケットからいきなり爆音のCQCQ。えぇ、着信音です。携帯の着信音とかアラームが爆音名乗ってどうにかならんか?心臓止まってまう。つぐなんかすんごいびっくりしてたぞ。少し飛んでた。

 

 そんなつぐにとって代わった巴に左肩を持たれ、右肩にはひまりの頭を乗せたまま、いきなり来た助け舟のスマホを好機とばかりに取り出し、渾身のイケメンボイスで応答する。

 でかしたぞ電話してきたやつ。ここで電話を長続きさせてしれっと『わり~ちょっと長くなりそうだから席外すわ~』って言ってそのまま逃走パターンに入れるぞ。我ながら完璧な作戦。勝ち確!

 

 

「MOSHIMOSHI?」

『もしもしマーくん? 私!』

「詐欺だな」

『違うよ! ちゃんと画面に名前出てるでしょ!』

 

 

 もしかしなくても、さっきのフラグだったのか? フラグだな? そうだな、よし。

 

 ちょっと暖かい板から聞こえてきた声は、ピンクの頭をしていそうな声。そういや、着信相手の名前を全く見ていなかった。えっと、丸山彩……テメェ!(豹変)

 俺の嫌な予感レーダーが警報を鳴らしまくってる。うるさいなぁ。フラグなんかへし折るものって習わなかったのかよ。一本や二本何のその。小枝が何本も重なろうが、俺には関係ないんよ!

 そもそも、こいつまで合同練習の話をし始めるとかじゃなければいい訳だしな! ガハハ!

 

 

「どしたんいきなり」

『あのね! 今度、ガールズバンドのみんなで合同練習って言って、みんなで集まるんだけどね!』

 

 

 よし、切るか。大丈夫、後でちゃんとフォローしておけば大丈夫。突然後ろからガチムチのラガーマンたちに、突撃お前の昼飯寄越せって言われたって言えば信じるだろ。

 

 ……が、左斜め後ろから素早く伸びてきた左手が右手をガッチリブロック。更に、右斜め後ろから伸びてきた左手により、通話をスピーカーモードに切り替えられた。何だこの連携プレー! こいつら仕込んでんのか!

 ってか当たってる! 当たってる! 謎クロスのせいで密着度エグイ! でかぁぁぁぁぁい!!!!! 南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏。母ちゃんの顔。母ちゃんの顔……!!!

 

 

『マーくんも来るよね!』

 

 

 スピーカーモードによって俺らの輪の中で響く、現影木アイドル丸山彩の可愛らしい声。会心の一撃。絶対零度。つのドリル。トドメ針。目の前で仁王立ちしたままの蘭は、勝ち誇った顔をしていた。

 これあれだわ。世間一般では主に詰みって言われるやつだわ。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 時刻は現在9時前。おはようございます。少し遅めの朝です。

 いつもの様に現場に早入りしているわけでございまして。何故だか、備付の機材以上にレパートリーの揃った豪華な機材たちに完璧に、一瞬「あれ?」と疑問を覚えつつ、まぁ気の所為かと早速相棒のジャズマスにシールドを差し込んでおります。

 

 

「んー、朝っぱらからええ音やぁ!」

 

 

 やっぱり、朝ギターに限るよね! ジャキジャキ音は健康に良い!

 指でピロピロとつまんだり、少し弾いたりするだけで、この子は良い子だもんで元気に返事をしてくれる。音出しからそのポテンシャルを発揮してくれるんだから、ただのチューニングですらノリノリでやっちゃうよね。

 

 音を確認するのと今すぐにでも弾きたい衝動を宛てがうように、軽く5連カッティングを三回ほど……うーん! よっしゃチューニングは完璧!

 

 さぁ、今日弾くのはロスタイムメモリー。あの有名なカゲロウプロジェクトの楽曲だね!

 カゲロウプロジェクトの楽曲は、その全ての楽曲の歌詞にストーリーが組まれていて、アニメ化した時にはその話毎のストーリーが入った曲が主題歌になってたらしいゾ。今、wikiに書いてあった。ストーリー性のある曲は厨二病を擽るんじゃ^~。

 ちなみに俺はカゲロウシリーズの中でも如月アテンション、チルドレンレコード、アディショナルメモリー、ロスタイムメモリーが特にすこ。夜咄ディセイブとかちょっと離れるけどREDとdazeもすこ。もう、全部すこ! すこ!!!

 

 王道で言うんなら、このロスタイムメモリーは本格的にギュンギュンやるロックな曲であるので、一番似合うのはテレキャスターだったりするんだけど……本日の相棒はジャズマスターくん。

 王道とは違うがまた一味違ったジャキジャキ感を演出してくれるわけですよ。まぁ聞いてくれれば解かるぜ!てなわけで弾こう! ほな行こう!

 

 

「っしゃいくぜえええええええええ!!!!」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 今日は待ちに待った合同ライブの日! バッチリ二回目の目覚ましで起きれたから遅刻もしなかったし、他のみんなも時間通りに集まってる。沢山の人が集まるから、迷惑にならないようにつぐみちゃんのお店で集まるって話だったけど……30人ってなると凄い人数……あれ?

 

 

「ねぇ、千聖ちゃん千聖ちゃん。マーくんと麻弥ちゃんもいるんだよね?」

「麻弥ちゃんなら、早入りして機材の整備をしてるはずでしょう」

「マーくんは?」

「あー、浅尾だったら、今日は早入りするから後からゆっくり来てくれって言ってましたよ?」

 

 

 そう教えてくれたのは、マーくんが所属してるバンドの子。ここにいる男の子は、ほぼほぼマー君と同じバンドの子しかいないもんね。確か名前は……土井くんだっけ?

 麻弥ちゃんはよく早入りして私たちの楽器の機材を整備してくれてるし、いつものことといえばそうなんだけど……マーくんもそんなことしてるのかなぁ。

 

 

「マーくんが先にスタジオに入ってるなんて、なんだか不思議な感覚だね」

「あれ? そうなんですか?」

「愛斗くんはコーチがある時はいつも前入りしていますよ!」

 

 

 ……え! そうなの!

 ひまりちゃんも巴ちゃんも逆に驚いてるけど……こっちもびっくり。

 Pastel*Palletsでいる時は、いっつも最後に来てたから……お仕事って言ってたから、誰も気にしてはいないんだけどね。プライベートだったら先に来るタイプだと言えば、そんなような覚えもある。そう言えば、大体家に私を呼びに来るときも、ちゃんと時間ピッタリに来てくれたっけ。

 

 

「おねーちゃんの時もそうなの?」

「そうね。一番最初にスタジオに入るようにしていると、確か本人も言っていたわね」

「毎回一番手に来るから、みんなに突っ込まれるのにねー☆」

 

 

 日菜ちゃんが紗夜ちゃんにも聞いてるけど、どうやら本当みたい。なるほど、Roseliaの時もAftergrowの時も、マーくんは早入りしているのかー。なんというか、気になるというか。私だって、マーくんが早入りしている所を見て見たいというか。いやいや、今日見れるはずなんだけどね。なんかこう、もやもや……いやいや。

 

 

「あれ? パスパレの時には、愛斗くんって早入りしてないの?」

「マナトさんはいつも、レコーディングが終わってからいらっしゃるので、私たちより早入りしてきたことはないはず、です!」

「それなら、彩さん達にとってはおもしろいもの見れるかもしれないですね」

「香澄達もじゃない?」

「ハロハピもだな」

「なになにー!? 呼んだー?」

「面白いものって聞こえたわ!」

 

 

 普段からマーくんとつながりのある人たちは、なんだか悟ったような、アレの事ねって言いたげな表情をしている。私たち含めた、それ以外の人たちは首をかしげるばかり。香澄ちゃんやこころちゃんやはぐみちゃんは目をキラキラ輝かせてるけど……

 面白いものってなんだろう。一人でワンマンライブしているとか、かなぁ? でも、珍しいって言ってたもんね……?

 

 

「行ってみればすぐにわかりますよ!」

「全員揃ったのなら、移動しましょう。時間は限られているわよ」

「うん。それじゃあ、とりあえず行こっか☆」

 

 

 私の知らない彼の一面に少しもやもやしてたけど、なんだか楽しみ度が上回ってきた。

 せっかく、対等に練習ができる機会なんだもん。楽しまなきゃ損だよね!

過去のお話の書き方が地雷なので、展開は変えずに描写とか加筆修正したいんです。

  • 今のが好きなので書き直しておk
  • 昔のが好きなので書き直したらアカン

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