どうやら俺の黒歴史を美少女達に握られたらしい 作:as☆know
一人でいる時も常に誰かに見られてると思った方がいい
俺の名はただの音楽大好き、
身長は178cm体重67kg! 茶髪で髪型はツーブロックにしてるぞ! ちゃんと校則違反! ピチピチの16歳、高校1年生だ!
ただいま俺はテスト終わりの開放感MAXの清々しい気分そのままに、学校の近くにあるバンドハウスの『CiRCLE』のスタジオに1人でいる。高校生活が始まってまだ1ヶ月ちょいしか経ってない5月の中旬にテストがあるなんていくらなんでもおかしい。起訴したい。
まぁそんなことはどうだっていいだろう。今日を迎えるまでに本当に色々あったが、それら全てを発散するために俺はここに来ているのだ。
何をするかって? 決まってんだろう。
「っし!」
左手にはネック、右手にはピックを握り、肩にギターのストラップをかける。
見りゃわかるだろ! スタジオに来たんだからギター弾くんだよ! そのために来てるんだ! それしかやる事なんてねぇだろ!
「うっひょおおおおお!!! 2週間ぶりのギターじゃギターじゃあ! 防音完璧のスタジオで独り言MAXで暴れまくってやるぜえええええ!!!」
独り言とは思えない音量で騒ぎながらアンプのスイッチに指をかけ、電源を入れる。スピーカーとスマホを繋げて音楽を掛け、俺は愛用のギターにピックを当てた。
このギター、その名もジャズマスターと言う。
正式名称は、Fender Vintage Modified Jazzmaster Rosewood Fingerboard 3CS。長い! 英語!
落ち着いた印象を持たせる茶色いボディに、なおかつなんかついている棒がなんかカッコイイと言う理由だけで、中古で5万近い金額をすっ飛ばして買った。俺の初めての相棒だ。
見た目でギターを選んで大金をはたくとは。我ながら安直な考えだったと思うが、今でもその安直な性格に感謝している。
俺のギター、マジかっけぇ卍 すべてが最高卍
「まずはロストワンの号哭行くぜええええええええええ!!!!!」
声たかだかに誰もいないスタジオで大きな独り言を天に向けて吼える。
足でリズムを刻み、激しいイントロを力任せにジャカジャカ弾き、流れるように高音をブッパなす。
あぁ^ ~、たまらねぇぜ。この瞬間のために生きてるといっても過言ではないね。
……ところ話は変わるが、みなさんは知っているだろうか。防音設備の整った部屋でも、ある程度の音漏れはするという事を。
カラオケ屋に行って廊下を歩いていると、よく他の部屋のお客さんの歌声が聞こえたりするものである。隣の部屋の人のカラオケを壁に耳当てながら盗聴するのって、わりとあるあるだよね。
……えっ? ない? 気の所為じゃない? そんなことはないよ。俺が正しいに決まってら。
激しいAメロ、Bメロと続き、さぁ! サビだ! というところで一気に体ごとギターのネックを振り下ろす。
たまんねぇ! 脳からアドレナリンとかドーパミンとかホー〇ミンとか色々出てくるのを感じるね。
そんな感覚に体を支配されていると、ふと、どこからか視線を感じた……気がした。おかしいね、この部屋には僕以外に誰もいないはずなのにね?
視線を感じた気がする方向を、ギターを弾きながらチロッと横目に見てみる。視線の先にはガラスになっているドアの……
「……」
「……」
一部分から、ショートカットに赤メッシュの入った女の子が、すんごい目でこっちを見ていた。
ヨシ。とりあえず、速攻で目を逸らして何事も無かったかのようにギターを弾こう。
そりゃあ、ここにも俺以外の客はどれだけでも来る。たまたま俺の事を少し見ていただけだろう。時間が経てばどっか別の部屋に行くさ。目も合っちゃったし、恥ずかしがってどっか行くさ(願望)
けど、あれってどう考えてもガン見されてたよね? チラ見じゃないよね? 眼光ビーム刺さってたよね?
あれ? 俺、部屋間違えたかな?
人は理解し難い状況が起きた際に、見間違いだろうと自分を落ち着かせようとする心理的働きがあるという。知らんけど。
てな訳で、ギターを鳴らす右手とネックの左手はそのままに。もう一度、バレないようにそっと目線だけドアの方に向けてみる。もはや弾くことに全く重きを置いていないが、仕方がない。
うんうん、気の所為かもしれない。マジかよ。そうだとしたら自信過剰かよ。相手を倒したら攻撃が一段階上がっちまうぜ。勘弁してくれよbrother。
「「「「「……」」」」」
「……」
なんか赤メッシュの後ろにも女の子が
ギターを鳴らす手をそのままに、もう一度赤メッシュその他諸々から目を逸らし、部屋番号をしっかりと頭の中と目で確認する。
うむ、間違ってないはずだ。確かにここの部屋であっている。ちゃんとフロントの人に確認したそのままだ。
てかさっき何人いた? 赤メッシュとピンク髪とロングの赤髪と白いショートと茶色のショート。
5人だな。てかよくあの一瞬の出来事と映像を覚えてんな。衝撃的だったもんね。人間の脳ってすげぇ!(ヤケクソ)
ところで話は二転三転するんだけどさ。人間って怖いもの見たさがあるよね。
ホラー映画とか怖くてもついつい見ちゃうよね。俺は怖いのあんま好きじゃないから見ないけど。
本来ならぼっちの男子高校生がギター弾いて暴れ回ってる所を、赤の他人に見られてスーパー恥ずかしいところ。
ガラスで出来たドアなんかトラウマになって二度と見られなくなるどころか、ガラス製のドアが視界に入った瞬間に叩き割りに行って器物損害、即お縄に頂戴、夕飯はお惣菜不可避だ。
だがしかーし! 我こそは漢、浅尾愛斗、メンタルだけは3人分ある男。
もっかいだけドアの方を見てみよう。なーに、心配することはないさ。やってやろうじゃねぇかこの野郎!
「「「「「……」」」」」
「「「「「……」」」」」
「なんか増えてら」
増えてた。
普通に声に出るよね。
なんか人が一人通れる分くらいのガラスで出来た部分が、ホラゲ並に顔と手でパンパンになってた。
新キャラはロングの銀髪、ロングの茶髪、ロングの水色、ロングの黒髪、紫のツインテール。
なるほど、さっきの人達は髪型のバランスも良かったけど、今度はやけにロング多いな。美人さんたち大集合だワイワイって感じ。ブタさんとワニさんは来なくていいよ。
漢、浅尾愛斗のギターを鳴らす手がついに止まった。
随分とあっさりとした轟沈だった。
「見られた。俺の純情な感情と三分の一的なヤツが見られた」
机に顔を突っ伏して、そのまま力なく腕をでろーんと垂らす。
気がつけば俺は、CiRCLEの外にあるカフェでめちゃくちゃ可愛い女の子達に囲まれていた。
いやー、これが俗に言うハーレムという奴なのだろうか。それともキャバクラかな?
未成年でそんなことしちゃって。全く、困っちゃうなー!アハハ!(涙目)
「あ、あの……すみません!うちの蘭が覗き見なんてしてしまって!」
「ちょっと……あたしは覗き見なんかしてないし。それに、あたしが覗き見になるならみんなも覗き見になるでしょ」
「仲間を売るとはいけませんな~」
「売ってない」
「まーまー、落ち着けって」
「蘭に怒られた~。モカちゃんは悲しくて泣いてしまいます~。しくしく」
「ほんとすいません!」
いやー、賑やかでいいなぁ。目の前で美少女達がイチャコラしている。
息の合った女の子5人の芸当を見ていると、こっちが微笑ましくなってくるよ。
けどごめんね。今はメンタル的に愛想笑いしか出ねぇんだ。名前のわかんない茶髪のショートの子よ。
目の保養とはまさにこういう事を言うのだろう。ありがたやありがたや。よくわからんけど、とりあえず拝んでおこう。心の中で。気持ちって大事。
可愛い彼女が出来ますように。俺にも出会いが訪れますように。
「……さっきからボーっとしてるけど、大丈夫?」
「大丈夫だ、問題ない」
「目、死んでるけど?」
「大丈夫だ、問題ない」
「あこ知ってる! こういうのって大丈夫じゃない人が言うんだよ!」
「あ、あこちゃん……」
アッハッハ、惜しいなツインテの可愛い少女よ。正しくは、フラグを立てる時に使う言葉だよ。
今のは俺の使い方がおかしい? うるさい、こちとらどこかの神様のつるし上げと同じくらい辛い思いをしたんだぞ。正常な精神でいられるかってんだ。
ていうか、なんで俺がここにいるんだよ。急に引きずり出されたけど、俺は被害者だぞ。
「それは私が貴方をここに引きずり出したからよ」
「あれ? 俺喋ってたっけ?」
「声にでてたわ」
「あっ、そうすか……」
はっず。いやマジはっず。穴があったら潜って永住したい。
今日はなんだか黒歴史に黒歴史を塗りたくって、それ黒歴史でサンドしたみたいな日になったな。なに? その食ったら俺が個人的に終わりそうな世紀末の塊。
とりあえず今日は家に帰ったら手も洗わずにルパンダイブして、ガッツリ枕を涙で濡らすとしようかな。予定が決まってるなんてなんていい日だろう。
いや、てか早く帰りたい早く帰らせて。お願い、もうここにいたくないの。もう視線が痛いの。ぼくちんぼっちだから、こういうの慣れてないの。
「そろそろ本題に入りたいのだけど、いいかしら?」
「本題って金ですか? やっぱり金を出せばいいんですか? カーッ! 今どきの若いもんはおっそろしいのう! ほれ! これがワシの全財産の37円じゃ!」
「私たちを一体なんだと思ってるのよ……」
ほら……今時の子って野蛮じゃない?知らんけど。
ゆとり世代っていうの? ほら、なんかあるやん。知らんけど。
けどゆとりって響きを聞くと、なんか平和っぽいよな。そもそも最近の子が野蛮って言ったの俺だけど。
あれ? でも今ってゆとり世代だっけ? さとり世代とかなんかなかったっけか?
……まぁ、いっか☆
それにしてもこの銀髪ロングさん。めちゃくちゃ綺麗である。美人。
てかここにいる女の子みんな可愛い。あぁ、俺今日帰り道でトラックで轢かれそうだな。
俺の人生ここまでだ。全く、未練しかなかった。地縛霊に就職しよう。
「貴方、私達のコーチになって貰いたいのだけど」
「はい。はい?」
「だから貴方には私達のコーチになってもらいたいの」
「はい?」
銀髪ロングさんは、口を開くととんでもないことを言い放った。
一体何言っていやがるんですか、この美少女さん。いくら顔がいいからって、藪からスティックすぎる。
そもそもコーチってなんだよ。俺のギター弾いてるところしか見てないだろうに、なんでいきなりコーチしてくれとか。
いつ見たかって? さっき見られてたわ。ヒャー!(即死)
そもそも俺はコーチ業なんて生まれてこの方やった事なんてないし。それも美少女達相手に何を教えろって言うのか。それを世の中ではセクハラと言うんですよ!
「ギター以外引いてるのもちゃんと見せてもらいましたよ?」
「この際だからなんで心の声がバレているのかは置いておこう。ピンクちゃん、もう一度頼む。俺は今日、ギターしか握ってないんだが」
「まりなさんがね? 今までの来た時に隠し撮りしてた映像を見せてくれたんですよ?」
「あのアマああああああああああああ!!!!!」
さっきまで礼儀正しかったピンク頭の子が、どこか嬉しそうにとんでもない事実を知らせてくれた瞬間、俺の一週間引きこもり生活が確定した。
てか
ブチギレながら説明だけはしておくけど、まりなさんっていうのはCiRCLEの従業員の方だ。俺がCiRCLEを使うようになってからもよくお世話になっていた。
とてもいい人だと思っていました(過去形)
俺が今までヒャッハーし続けた黒歴史を女の子に全部握られてるとか、命握られてるのとなんも変わらんが。
「勿論、私も見せてもらったわ。率直な感想だけど、貴方の弾くギター、ベース、ドラム、キーボード。そのどれもがプロ並みの実力。悔しいけど今の私達よりも断然レベルは高かった」
「さいですか……競ったつもりもないし、単純に恥ずかしいからその記憶は今すぐ消して頂きたいんですけど……」
なんか初対面の人にここまで褒められるとムズムズする。ほんとにやめて欲しい。状況的に褒められてるのか貶されてるのかわからん。
何よりもこの人、無断で撮影した動画を勝手に見てるからね。僕は見られてる立場だからね。もう泣きたい。
「スティック回したり上に投げたりしてたのかっこよかった! あこもやりたい!」
「あたしもスティック回しやりたいぞ!」
「やめて。掘り返すのやめて。ほんとに恥ずかしい忘れて」
「ていうかさ、本当に全部プロ並みの腕前だよねー。まりなさんが盗撮……動画に残しておいたのも納得できるよ」
「ねぇ、盗撮って言ったよね? やっぱり盗撮だって思ってますよね?」
あーあ、本当に全部見られてら。俺が滅茶苦茶一人ではっちゃけてた映像が全部見られてら。
一人でいる時にはっちゃけるやつとかそれもうただのヤベー奴だからね。つまり俺は中二病的なカッコいいわけでもない、ただのヤベー奴だから。Q.E.D。
「コーチの話、受けてもらえるかしら?」
「いやです」
「そう……ちなみにだけど、断った場合はその動画を動画サイトにアップしy」
「喜んでやらさせて頂きます。生きてる中でこの上なく幸せなことでございます。」
「はや……」
まぁそう言うな、赤メッシュ。男にはな、折れねばならぬ時がある。まなと。
動画サイトにアップの単語が出てきた時点で、俺の答えはただ一つ。目の前の強者に従うという選択肢しかないのだよ。
子供たちよ、これが大人だ。相手は大人に見えないけど。
こうして俺はこの女の子たちのコーチとやらをする事になった。
でもそうだな、まず先に半年は家に引き込もれるように備蓄をしておこう。
絶望の中で、俺は将来の俺に対してとりあえず欠片も思ってないエールを送っておいた。
がんばえー。お前の人生ここまでだ。
過去のお話の書き方が地雷なので、展開は変えずに描写とか加筆修正したいんです。
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今のが好きなので書き直しておk
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昔のが好きなので書き直したらアカン