どうやら俺の黒歴史を美少女達に握られたらしい   作:as☆know

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デュエットと言えばラブソングのイメージだがそうでも無い

 月曜日は憂鬱だ。前にもこれ言ったことがある気がするな。却下で。

 

 そんな訳で今日は月曜、時刻は朝。

 絶好の登校日和だ。学校休みてぇけど。

 俺は相棒を走らせながらいつもの学校とは違う方向に行く。

 羽丘でもないぜ?そう、ヤベー奴の巣窟、花咲川女子学園に向かっている。というかもう既に着いてる。マジで行きたくねぇ。

 事前に教えて貰ってた駐車場にバイクを停めて、フルフェイスのヘルメットをつけたまま登校する。

 顔を見られるか不審者に見られるか。俺なら後者をえらぶ。

 学校に迷惑かけようが俺が無事ならいいのだ。

 クズ野郎やないか、まぁ通報なんてそうそうされないだろうけど。

 

 

「やっと来たわね!ようこそ花咲川女子学園へ!」

「俺的には来たくなかった、あと彩は離れろ」

「制服のマーくん……ぐへへ……」

「お前大丈夫?元から大丈夫じゃないけど頭のネジついに全部吹っ飛んだか?」

「彩ちゃん……その顔はアイドルがしていい顔じゃないわ……」

 

 

 そんな訳で校門に行くと例の如く美少女達に迎えられた。

 他の子からジロジロ見られるのは羽丘で慣れた。よく言ってるけど慣れって怖いよね。

 本来異常なことをおかしく感じないとか頭おかC、もうこれわかんねぇな。

 

 いつまでも知り合い共に構ってる訳には行かないので早々に校門から全力で逃げだし、頭の中にぶち込んでおいた地図を頼りに回るべき部屋を回り、校長先生の話や他の先生に挨拶を済ませて待機室で休ませてもらう。

 

 花咲川はマジでやべぇ。

 どれくらいやべぇと言うと私的まともな人が燐子さんと紗夜さんと美咲くらいしかいねぇくらいやべぇ。

 他はダメだ。まともな風に見える人もいるがどこか頭のネジが外れている。

 人によっては頭にネジがついていなくてパッカパカ状態の奴もいる。彩、こころ、香澄。ボーカル三人衆お前らのことだからな?

 

 ホントにこいつらが同じクラスじゃなくて心の底から安心している。

 それと俺が配属されるらしいクラスが香澄のクラスで安心していた。

 何故過去形かって? 香澄だけでもやべぇのに同じクラスに有咲以外(ここ重要)のポピパにはぐみとイヴちゃんまでついてくる欲張りセットしてたからだ。

 沙綾がまとも枠に入るとはいえあのノリにはついていけんから大人しくサボるのは確定である。

 沙綾はリサ姉みたいにノリには乗るタイプだからな。メリハリつけてるとはいえ非常に不味い。

 今日アコギ持ってきておいてよかった。屋上の行き方覚えとかないとな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな訳で花咲川も月曜は例によって朝礼。

 だが羽丘と違い校長先生は話を一瞬で済ませあっという間に朝礼は終わったかのように思えた。とりあえずこの時点で校長有能。

 だが本当に羽丘と違うのはここから。

 舞台袖の脇で控えて待ってたら何故かいきなり先生に呼ばれ、言われるがままついて行くと何故か体育館のステージに立たされ俺が一言も話すことなく自己紹介が済まされていく。

 とりあえず一礼はしておこう。よくわからんけど。

 そしてわざわざ紹介してくれた校長先生から放たれる衝撃の一言。

 

 

「そんな訳で1曲弾いてもらいますか?」

「えっマジですか」

「時間に余裕がありますからね」

 

 

 お前関西人だろ?なんかおもろいこと言えや!くらいの横暴である。

 無茶ぶりにも程がある。そもそも今日エレキ持ってきてねぇし!ワンマンやれってか!

 いやだぞ!俺はシンガーソングライターじゃねえんだ!やるならせめてバンドじゃなきゃ寂しくて死んじゃう。

 

 

「いやいやいや、機材もないですし」

「校長、機材準備終わりました」

「うせやん」

 

 

 俺と校長先生が話してる間に機材の設置が終わってた、完璧に。

 何?マンガ?アンプとかクソ重いしドラムセットも完備してるしシンセもあるし一瞬すぎん?プロかよ。

 

 

「いやでもメンバーが」

「うちの学校に知り合いの生徒がいるんだろう?大丈夫大丈夫」

「いやそんな自分の楽器を毎日持ってきてるようなバカ……」

 

 

 ……いるわ。0.5秒で考えを改めた。

 いるわ。恐らく四六時中楽器持って来てるやつ。

 いるわ。そして恐らく今ギターケースやベースケース背負ってるやつ。

 もう見えるもん。でかいもん。

 

「すいません先生。突然で申し訳ないですけど戸山香澄と北沢はぐみと松原花音と市ヶ谷有咲呼んでください、楽器も一緒にってお願いします。あと花園たえにギター貸してって言っておいてください」

「任せとけ」

 

 

 にしてもこの学校の教員ノリ良すぎだろ。校長先生といい頭の柔らかい人ばかりだ。羽丘もかなり柔軟な対応してくれたが花咲川に至ってはもうスライム並み。凄いというか怖い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「愛斗くん来たよ!はい!おたえのギター!」

「サンキュ、まさかとは思ってたけどやっぱりたえもそういう枠なんだな……」

「な、なぁ……なんで私まで呼ばれたんだ?イヴとか燐子さんいただろ?」

「おもろいから」

「てめぇ」

 

 

 単純に弾くだけなら燐子さんの方が上手いからね、完全にふざけましたありがとうございます。

 まぁ香澄のせいでアドリブが多いポピパに所属してんだしこういうのには強いだろう。はぐみと花音さんも選んだ理由はそこにある。今楽器を持ってそうな人ってのが大前提なんですけどね。

 

 てかハロハピのライブってほぼアドリブとか聞いたことあるけど本当なんだろうか。ポピパは流石に曲とかは決めてるけどアドリブが多いってだけだし。

 そういう意味ではポピパとハロハピの面々も天才である。

 俺はアドリブに強いというか大概の曲は弾けるだけだからな、初見でもTAB譜さえあればなんとかなる。いきなりクソムズイフレーズが来ても気合いでなんとかするしな。

 曲自体知らん場合はどうにもならんけど。

 

 

「で、なんでお前もいるの?」

「マーくんいる所に私ありだよ!」

 

 

 呼んでもないのにちっこいピンク頭が何故かそこにはいた。ドヤ顔で。可愛い。

 

 

「いや、香澄がいるからもうボーカルはいらないんだけど」

「えっ」

 

 

 そう、ボーカルだけやべーのが3人いるのだ。

 しかも君に届けをやる予定だったし彩歌えるのかお前。

 

 

「そもそも君に届けやろうと思ってたんだけど彩って歌えるの?」

「マーくんが歌ってたの何回か見てるから大丈夫!」

「おい」

 

 こいつ地味に爆弾発言しやがった。レコーディングの時にちょっと遊んでたのバレてたのかよ。

 畜生、ムカつくがそれなら好都合だ。香澄には悪いが今回はギターに専念してもらおう。

 

 

「……ってかはぐみと花音さんは君に届けの譜面しらねぇじゃん、今から手書きで間に合うかな……」

「用意してあるよ!」

「どこまで先読みしてんだ先生ェ!」

 

 

 しかも流し見したら簡単になるようにアレンジしてあった。

 これならはぐみと花音さんレベルなら初見でも譜面見ながらなら弾けるし叩けるレベルだ。

 

 

「てなわけではぐみと花音さんこれ流し見しといてくれ!大丈夫簡単だから!」

「わかった!」

「ふえぇ……なんでこんなに展開早いのぉ……」

 

 

 いつまでもピュアな花音さん可愛い。

 でもこの弱肉強食の世界ではこれに慣れなきゃ駄目なんだ。俺は諦めた。

 

 ここまでの展開、約2分。うーん早すぎる。

 これは花音さんもふえぇしてしまう。可愛い。

 まぁ時間に余裕がない訳では無いがこちとら本気でバンドしてる女の子達だ。

 彩がMCで場を盛り上げてる間に、楽器隊は音出しや機材確認を慣れた手つきで即行で終わらせる。

 俺は男だけどな、にしてもたえのギターいい音が鳴るわぁ。

 ジャズマスターとは違う音色、実に新鮮である。気持ちいい。実にナイスな音だ。

 

 にしてもみんなこの手際の良さよ。

 こんなんで花音さん以外初心者だったとか信じ難い。

 有咲はキーボードやってたんだっけ? そこら辺聞いたことないから今度聞いとこう。俺がそれまでに覚えてればの話だけどな。

 

 スタンドマイクの前に立ち、ピックをポンポン掌で遊ばせる。

 

 

「マーくんちゃんと歌ってね?」

「なんでバレてんの」

「なんでもお姉さんにはお見通しなのだ!」

 

 

 自信満々にそれ相応の大きさをした胸をふんぞり返してドヤ顔してくる。

 威嚇する小動物に似た何かを感じる。可愛いのがむかつく。

 てかなんでバレてんだよ……。今日は本職ボーカルが2人もいるしコーラスに徹しようと思ってたのに。

 

 

「それにいっつもツインギターは正義って言ってるじゃん!ボーカルでも同じだよ!」

「そうだよ!私もいるしトリプルボーカルだよ!」

「お前は今回コーラスだろ」

「そうだった!えへへ……」

 

 

 香澄は相変わらず頭のネジが飛んでいる。こうやって見ると彩はかなりマシな部類なのかもしれない。

 だがツインボーカルの話は、彩にしてはびっくりするほど的を射たド正論だ。

 同性同士のダブルボーカルより異性同士の方が高低差も合って曲が映える。

 しかもよりにもよって君に届けって男でも女でも歌いやすい高さだからな。

 原曲は男性ボーカルだけどそれにしてはかなり高い音域だ。まぁ、俺は歌えるからいいんだけど。

 

 

「皆さんお待たせしました!急な出番になりましたが、マーくん歓迎ライブということで!1曲歌わせてもらいます!」

 

 

 ……こうやって見るとうちの彩もアイドルしてんなぁ。もう場馴れ感が凄い。余計な一言あったけど。

 歓迎される側なのに演奏するんだな。まぁ弾くの好きだしいいけど。

 横目にそんなこと思いながらはぐみ達に声をかける。

 

 

「みんな大丈夫か?」

「うん!はぐみに任せて!」

「キラキラドキドキなライブにしよー!」

「まぁ、やるからにはやってやるよ」

「う、うん!私も頑張るから……!」

 

 

 こう見ると急造とはいえほんとに頼もしいメンツである。

 底抜けの明るさを放つ香澄とはぐみに対してバランスを取るように静かなやる気を見せる有咲と花音さん。

 こういうのも悪くねぇな。うちのバンドは基本みんな動きがうるせぇし。

 

 

「じゃ……」

「行くよ?」

 

 

 お互い目も合わせずにマイクを通さず言葉だけで確認を取る。

 幼少期4年間一緒にいただけなのに何故かお互いの考えてることが酷く簡単に手に取るようにわかるみたいでくすぐったくなる。

 

 そんな気持ちを振り切るようにギターの適当な弦を弾き、アンプに近づけフィードバックさせる。

 こうするだけで観客に始まるという緊張感を出させて一気にムードが出てくる。

 

 

 

『『君に届け』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー素晴らしい演奏だったよ!」

「わざわざこんな場を設けて下さりありがとうございました」

 

 

 ライブは無事大成功。

 俺も彩も全くハモらせる気はなかったしパート分けとか全然話してなかったのにグダることも無く無事完走しきった。

 バックの勢いも素晴らしく、はぐみや花音さんもしっかり弾きってくれた。

 

 出来ることならまた彩とやりてぇな。

 毎回思うけど誰かと歌うのめちゃくちゃ楽しいんだよな。楽だし、サビもくっそ気持ちいいし。

 

 

「いやーいいんだよいいんだよ!君達の事務所の方にも依頼されてたしね!」

「……は?」

「あれ?聞いてなかったのかい?音源だけ欲しいから色々と機材提供させてくれって君の事務所の方が……」

 

 

 うちの事務所音源だけ切り取って何に使う気だあの野郎。

 

 まぁどうせYou○ubeにあげる程度だしこの程度でキレてたらあの事務所ではやっていけない。ちゃんと一線は引いてるから変なことには使わないだろうしな。

 

 でも風呂隠し撮りしてたわ。

 やっぱりそろそろ事務所変えるのも視野に入れよう。うん、そうしよう。

 校長先生のお礼も済ませ、ステージ脇から出る。

 生徒全体の移動ももう終わりがけで体育館にはほとんど人が残っていない。

 

 

「おかえり!」

「……おう、ただいま」

 

 

 ちゃんとうちの彩さんは待ってたんだけど。

 なんか少し安心した。

 最近彩に頼りすぎてるな、そろそろ親離れならぬ彩離れしないと。

 

 

「じゃあ戻ろっか!」

「おう、お前と学年違うけどな」

「戻ろっか!」

「おい話聞いてたかお前、そっちは2年の校舎だろ。腕から手を離せ、おう。そうか戦争かわかったぞ離れろ彩あああああああああああ!!!!!」

「一緒の教室に行くのおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

 

 ……前言撤回。

 俺が離れるんじゃ無くてこいつを離そう。じゃなけりゃこいつ永遠に追ってきそうだ。

 

 この後、彩は先生に見つかり無事引きずっていかれた。残当。

 ちなみに君に届けの音源はlive限定CDに入れられ1000枚刷ってたCDはわずか17分ほどで完売。無事再販が決定した。

 うちの事務所やっぱ頭おかしいわ(白目)

 

過去のお話の書き方が地雷なので、展開は変えずに描写とか加筆修正したいんです。

  • 今のが好きなので書き直しておk
  • 昔のが好きなので書き直したらアカン

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