どうやら俺の黒歴史を美少女達に握られたらしい   作:as☆know

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ギャップ萌えは正義

 

 無駄に広い教室に仕切りを引いてキッチンと客室を分ける。

 キッチン側の部屋では忙しなく控えめにお皿が当たるカチャンカチャンという音と注文を復唱する声が飛び交う。

 

 その中で俺は、ロッカーの上に置いたIHにフライパンを置きチキンライスを大量に炒めていた。

 

 

「オムライス3つチキンライス1つなー!」

「おけーい!」

 

 

 卵3つを片手で割り、サッとかき混ぜ、熱したフライパンにサラダ油を引いて卵をぶち込み半熟のスクランブルエッグを作り、お茶碗で綺麗に固められたチキンライスの上に綺麗に乗せる。

 

 はい、まるでプロがナイフでサッとやってパカッと開いて半熟の卵がうまそー!的ななんちゃってオムライスの完成。

 シンプルだが味は保証するぜ。試作で作ったら大好評だったしな。

 

 現在、俺は気が狂ったようにひたすらオムライスを作っている。ご飯と鶏肉をケチャップで炒め半熟のスクランブルエッグをひたすら作る作業。

 この単純作業は気が遠くなる。

 別に単純作業が大嫌い!という訳では無いがとにかく暇なので右耳は注文を聞くためにフリーにしたまま、左耳にイヤホンを掛けてひたすら木べらを動かす。

 

 

「オムライス2つなー!」

 

 

 前言撤回。

 単純作業でも終わりが見えないとやっぱきついわ(手の平返し)

 あああああああああああああああああああああああ!!!!!!!終わんねぇええええええええええええ!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マーくんのいる教室ってここでいいんだよね?」

「うちの事務所が調べた限りここで合ってるはずよ」

 

 

 今日は文化祭最終日、開催場所はマーくんのいる桜ノ宮高校だ。

 

 マーくんのいる高校ということはマーくんいる教室では彼がなにかしてるということ!

 なにをしてるかは聞いてないからわかんないけど彼がいるなら行かないという選択肢はない。

 

 なんで聞かなかったのって?……サプライズだよっ!うん!

 決して忘れてたとかじゃないよっ!

 

 

「……というか普通にそこら辺の生徒さんに質問するか、本人に直接聞けば良かったんじゃないですかね……」

「その生徒さんから愛斗くん本人に私たちがいるって情報がバレたら意味が無いじゃない」

「事務所の人が調べてもあんまり変わらない気がするんスけど……」

 

 

 とにかく教室は割れたし結果オーライ?だよ!

 あれ?終わりよければすべてよしだっけ?

 まぁいっか!

 

 

「マナトさんは何をしているのか楽しみです!」

「てかここじゃない?マーくんの居る教室って」

 

 

 みんなで話してたら何時の間にか着いてしまった。

 うわぁ〜ここがマーくんの居る教室……なんか緊張してきた……。

 ここは一息置いてから……。

 

 

「御用改めであるー!」

「マーくんいるー!?」

「ちょっとぉ!?」

 

 

 イヴちゃんと日菜ちゃんが行っちゃったよ!?どうしよどうしよ……あわわ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「浅尾ー!次、接客なー!」

「畜生!なんてブラック企業だ!」

 

 

 キッチンで働き続けた後、10分休憩を挟んですぐに接客とか鬼すぎる。

 なんて愚痴を言いつつ執事服に着替える俺はやはりお人好しなのかもしれない。

 

 ピチッとしたスーツのような服に蝶ネクタイを身に着け、珍しく髪をワックスでセットする。

 ツーブロックで髪の毛短いから普段はあんまりセットとかしないんだけどなぁ。寝癖もつかないし。

 やる機会自体ほとんど無かったしワックスつけてセットとかめちゃくちゃ久々にやるわ。入学式とか生徒手帳の時の写真撮影以来じゃないか?

 

 そんなわけであんまり髪のセットの仕方とかも分からないので、普段からガッツリ髪の毛とかセットしてるチャラい友達に協力を依頼して髪の毛をセットしてもらう。

 ついでに香水も貸してもらった。

 まぁきつい匂いは俺が苦手だから軽く手首に付ける程度だけど。こういうのは軽く香る程度でいいんだよ。

 香る水って書いて香水って読むんだから香るを通り越して匂いがキツかったりするのはナンセンスだよな。オシャレ全くしない男の自論だけど。

 

 

「浅尾ー!客来たぞー!行ってこーい!」

「へいへーい!」

 

 

 キッチンと客室を別けている仕切りの間から体を通して入口にいるお客さんの元に向かう。

 

 

「御用改めであるー!」

「マーくんいるー!?」

「ちょっとぉ!?」

 

 

 一瞬で足がピシッと固まる。

 すんごい聞き覚えのある声が聴こえたでごわす。

 でもきっと気のせいでごわす。この馬鹿な頭が何か勘違いしてるでごわす。そうに決まってるでごわす。

 もう少し近くに行ってしっかり確認してみるでごわす。

 

 

 あっ確定だわ、これ(諦め)

 真っ白な髪色をしたブシドーの精神を持つサムライとライトブルーの髪色をした短髪の天才ちゃんがそこにはいた。てことは他に3人いるだろうな。

 まぁ良いだろう。ここまでは想定できてた。

 俺もそこまで頭お花畑をした馬鹿じゃない。寧ろパスパレが来るのは既定路線である。

 てな訳で執事スイッチをオンにして仕事を全うしにかかる。

 てか、普通に接客すればいいしな。

 

 

「あっ、マーくんいるじゃん!」

「いらっしゃいませ。5名様でよろしいでしょうか?」

「な、なにかいつもと雰囲気が違います……」

 

 

 営業スマイル全開で対応しにかかる。

 普段とは違う雰囲気に日菜さんとイヴちゃんも困惑している。

 ふはは!俺の術中にハマるがいいわ!

 

 

「えぇ、大丈夫よ」

「ご案内致します」

 

 

 うーん流石は元子役、というか普段からお嬢様オーラ全開の千聖さん。

 

 このアドリブにも即座に対応、それ相応の態度で返してきよった。

 だがしかし、この土俵に持ち込んだ時点で俺が彩に抱きつかれる確率は0に等しくなる。

 何故かって?流石に人の目を気にしてくれるだろ!(願望)

 それにいつもと違う俺だったら彩も困惑するだろうしな。

 てか実際に彩は俺の術中にハマっているのか、俺が来てから一言も喋ってないしな。

 

 

「……」

「お客様?」

「あっ!はい!」

 

 

 てかめっちゃポケーっとしてる。

 何してんだこいつ。声をかけたらビクって跳ねるし熱でもあるんじゃねぇのか?

 

 

「ちょっと失礼」

「ふえっ!?」

 

 

 一旦執事スイッチをオフにして彩の頭を掌で触ってみる。

 なんか顔が真っ赤になってどんど熱くなっ……ってあっちぃ!あっつ!

 火傷するかと思ったわ!

 

 

「お前やっぱり熱あんぜ、保健室行く?」

「んにゃっ!?いい!大丈夫だよっ!」

「そう」

 

 

 彩は無理することが多いけどここで無理やり連れてったら後で行きたかったって泣くからな。

 

 まぁ時間たって治ればよし治らなけりゃ後でおんぶでも抱っこでもして連れてきゃいいべ。

 今だに顔を真っ赤にしてポケーっとしている彩を席に連れていくと既に4人は席に座ってメニューを見ていた。早いな、てかほっときっぱなしかいな。

 

 

「ご注文は」

「私ポテト!」

「パンケーキ」

「野菜スティックを!」

「味噌汁でお願いします!」

「オムライスがいいな!」

「畏まりました」

 

 

 パンケーキと野菜スティックは分からんでもないがうちのカフェ味噌汁まであるのかよ……。無駄にメニュー充実してんな……。

 てか彩復活早いな。

 今だに顔赤いけどもう元気になってる。えがったえがった。

 

 結局このあとは何事も無く終わった。

 彩にめちゃくちゃ写真撮られたり結局彩に引っ付かれたりしてクラスメイトから視線だけでぶっ殺されるかと思ったけど気の所為だから。

 

 何事も無かった。いいね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、行ってくるね!」

「おう、行ってら」

 

 

 暗い舞台袖で軽く言葉を交わし、ピンクのツインテール達を見送る。

 彩達が舞台に姿を現すと、観客席から割れんばかりの大歓声が聞こえる。

 流石は現役アイドルバンド。知名度はダンチである。

 

 

『皆さんこんにちは!Pastel*Palettesボーカル担当、丸山彩です!みんな!三校合同文化祭最終日!盛り上がってますかー!』

 

 

 彩がマイクを客席に向けるといえーい!という声がとんでもない圧で変えてってくる。

 こんなに人いるのに良くアガらねぇな、彩の癖に。

 まぁこんなんでアガってたらテレビなんかには出られねぇよな。

 2番手でよかった。多分、1番手よりかはプレッシャーかからねぇだろ。

 こんだけ人いたら変わらん気がしてくるけどそれは気がついては行けない。ちょっとトイレ行っとこうかな〜?

 

 

『今から始まるライブで!みんな最高の思い出を作ろうね!』

 

 

 シューンというイヴちゃんのキーボードが聞こえてくると、麻弥さんがタイミングを見て、軽く3カウントを入れる。

 

 

 

『行くよ?』

 

 

 

 彩の言葉とウインクで会場のボルテージがいきなり上がる。

 それに合わせるかのようにファンファーレとギターとキーボードがスタート。

 

 Q&A リサイタル! 毎回思うけど彩の行くよ?が可愛すぎるんだよな。

 あんなこと言われたら行かない訳には行かない。こんなんだからダメなんだよお前とか言うな。いちばん俺が理解してる。

 麻弥さんと千聖さんがバックでしっかりリズムキープすることで日菜さんとイヴさんがある程度暴れられる。

 アイドルガールズバンドと侮るなかれ。

 誰が仕込んでると思ってんだよ、俺が仕込んでるんだぞ。

 

 

 

『I Love You?』

 

 

 ただちょくちょくこういう所でこっちを見ながらウインクしてくるのはやめて欲しい。

 心臓に悪い。非常に心臓に悪い。

 観客席からは普通にウインクしてる風にしか見えなくて毎回ボルテージマックスになるから良いんだけどね……。

 あれ?まだライブ始まってないのになんか疲れてね?気の所為かな?

 

 

『みんなありがとー!次の曲行くよ!』

 

『ふわふわ時間!』

 

 

 彩が手拍子を煽って日菜さんがイントロを弾く。

 煽り方上手いな、ちゃんと客の手拍子が走らないように気を使ってるし。

 ほんとにこういう所は成長してるよ。

 ボーカルとしてここまで役目を果たしてるとかエグいよ。俺には出来ねぇ。

 にしてもほんとに脳がとろけそうな歌声だ。

 一日の終わりに聞けば幸せになりそうだ。

 

 この曲はちょっと苦い思い出がある。

 まぁ全然苦くないけど。

 パスパレに音源を渡すためにレコーディングしてた時、余りにもギュインギュインやりすぎて、これ日菜ちゃん弾けないよ〜って初めてワクワクさんに引かれた楽曲である。

 

 仕方ねぇんだ。俺にはもうエクストリームふわふわ時間が染み付いちまってるんだ。

 今度やる時ふわふわ時間でもカバーしてみようかな。

 あそこからさらにエクストリームにしてやろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それじゃあ……もう最後の曲になっちゃいました。あっという間でしたけど皆さんと過ごしたこの文化祭、とーっても!楽しかったです!』

 

 

 俺も楽しかったよー!私もー!という声がそこら中から聞える。

 流石ほぼ男子校、と女子高。ノリの良さだけは最高である。

 

 

『今はまだ、あの人にも届かないかもしれないけど……。私達!もっと皆さんに応援して頂けるような存在になります!最後の曲っ!聞いてください!』

 

 

『もういちど ルミナス』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 率直な感想。死ぬほど泣きそうになった。うん。

 普段あんなキャピキャピしてる彩があんな曲歌って感動しない訳には行かないよね。

 まぁライブ前だし3日連続で泣くとかプライドが許さないから泣かなかったけど。

 いやーでも来るもんはあるよね。

 少なくともあんな曲見せつけられたら下手なもんは見せらんねぇわ。そもそもテレビにも出てるバンドのあとなんだから元々生半可な覚悟で立つつもりはないけど。

 

 歓声に応えながら引き返してくる彩がこっちに近づいて来る。

 俺の存在に気がつくと懇親のドヤ顔を見せてきた。

 あのドヤ顔は「私でもやれば出来るんだよ!」って顔だな。

 

 

「見てた!?」

「おう、もちろん」

「私だってやれば出来るんだから!」

「おう、しっかり見てた」

「だからマーくんも……」

 

 

 そういう口を塞ぐように右手で真正面から頭を撫でる。

 

 

「おう、見ててな。負けるつもりはないから」

 

 

 こういう時には男として覚悟を見せてかっこつけるべし。

 今のアドレナリン全開で興奮状態にある俺に敵なんかいねぇ。

 

 今までで一番凄いの見せてやるよ。

 お前ら全員一生忘れられねぇ最高のライブを見せてやる。

 

 あっ今のカッコいい……カッコよくない?

 厨二病極めてるわマジ今日は行ける気がしてきた!

 

過去のお話の書き方が地雷なので、展開は変えずに描写とか加筆修正したいんです。

  • 今のが好きなので書き直しておk
  • 昔のが好きなので書き直したらアカン

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