どうやら俺の黒歴史を美少女達に握られたらしい   作:as☆know

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甘く詰め込みすぎた年末年始編
小学生の時大体クラスに一人はめっちゃ花言葉に詳しい奴がいる


 12月24日。

 

 世の中ではクリスマスイブと言われている日だ。

 世のカップルたちはこの日と明日に向けて引くほどイチャイチャするんだクソッタレ爆発して燃え尽きちまえってマーくんが最近よく言っている。

 マーくんもなろうと思えばいつでもカップルたちの仲間入りできるのに。頑なにガードを崩さないんだもんなぁ。

 あのガードは鉄壁だよ。最早色仕掛けでは絶対に破壊できないよね。変化球で行かないと変化球で。

 

 

「そんな訳でどうしよっか」

「それあたしたちに聞くんだね〜」

 

 

 千聖ちゃんと日菜ちゃんと事務所のお偉いさんとかしか今ここには居ないんだから当たり前じゃん!

 

 ここは事務所。

 今ここには私、千聖ちゃん、日菜ちゃん、そしていつも私とマーくんをくっつけるのを手伝ってくれる事務所の人達が集まっている。

 

 題材はもちろん。クリスマスの計画について。

 明日は他のバンドのみんなでCiRCLEに集まる約束をしてるから作戦の決行日は今日になっている。

 

 

「にしてもこの大イベントの時の計画がここまで決まらないとは……」

「浅尾さんのガードがいかんせん硬すぎますね……」

「もー無理なんじゃない?」

「日菜ちゃんやめてよぉ……」

 

 

 うぅ……自信がなくなって来る……。

 そもそもあれだけアタックしてるのに全く振り返ってもらえないってマーくんがホントにびっくりするくらいの鈍感な人か故意に無視してるしか思えない。まぁ私の経験上マーくんは絶対に故意で無視してるけど。

 マーくんって素直にならないんだよね。何かの拍子に急に素直なところを見せることはあるんだけど、それ以外では基本的に上手いこと逃げてるか無理やり丸め込んじゃうんだよね。

 もー悪い癖だよ。そこも可愛くていいんだけどね、えへへ……。

 

 違う違う。そうじゃなかった。

 

 

「それで結局どうするのー?」

「ヘリで愛の告白大作戦はどうなの?」

「まだそんな勇気が……」

 

 

 いつも突撃してはいるけど、マーくんと面と向かって告白する勇気はまだない。

 告白しても受け取ってもらえる確証がないし今の距離感を壊すのが私だって怖い。

 ていうかマーくんには早く素直になって欲しい。

 出来れば告白は男の子からして欲しいんだもん!

 

 

「いつも通り布団に潜り込んだらダメなんですか?」

「合鍵もこの前壊されていつの間にか合鍵の型自体も破壊されちゃいました……」

「バレたのね……」

「ううん……おっぱいに挟んで取れるものなら取ってみろ!ってやってみたらすっごい無表情で突っ込まれて……」

「ぶっ!」

「そのまま壊されちゃったと」

「うん……」

 

 

 あの時のマーくんすっごく真顔だった。

 もう何も考えてない無の表情で突っ込んでくるんだもん……ドキドキしちゃうよ……(アホ)

 

 そんな訳でもう紆余曲折した作戦だとマーくんには通用しないんじゃないかと思い始めてきた。

 実際にマーくん相手にはどんなに凄い作戦で行っても簡単に弾かれる。だいたい布団に巻かれてほっぽり出される。

 マーくんの匂い……ハァハァ……(重症)

 

 ……はっ!違う違う。

 

 だからそろそろまたちがう方法から攻めなくては行けないって話だ。

 何よりももう家で既に待機系の作戦は取れないんだけど……。

 

 

「あっ、家の鍵は最悪ピッキングすれば……」

「さ、流石にダメだよ千聖ちゃん!」

「今更感あるけどね〜」

 

 

 不法侵入になっちゃうよそれじゃ……(今更)

 ともかくなにか新しい手は無いものか。

 クリスマスイブという大イベントにも関わらず何も行動を起こさないのは流石に不味い。

 リサちゃんとかに気づかれた日には……はわわ……。

 な、何とかしないと!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 12月24日。

 

 世の中ではクリスマスイブという日だ。

 世の中のカップルたちはこの日と明日に向けて引くほどイチャイチャするんだクソッタレ爆発して燃え尽きちまえ。

 非リアには非常に生きづらい世の中である。リア充なんてみんなして爆発してしまえばいいんだ。

 うちの学校の生徒とか見てみろ。特に男子。特に工業科。

 みんなして出会いがねぇだのクリぼっちだどうのこうのでみんながみんな同じように阿鼻叫喚している。

 工業科は女子の絶対数が少ないから出会いの数が一気に減る。

 

 まぁ俺は明日CiRCLEでやるクリスマス会に行くからクリぼっちは回避してるんだけどな。

 残念だったな諸君。俺は黒歴史を大量に召喚することでクリぼっちを回避したのだ。つまり勝ち組!ふはは!お前ら図が高ェ!頭を垂れろォ!

 

 クリぼっち回避するだけで失ったもんデカすぎじゃね?とか思ったそこのお前。

 何一つ間違ってないから今すぐ前言撤回しろ。いいね?

 間違ってないからいいじゃんだと? 間違ってないからダメなんだろうが!

 いいか!? 俺に現実を見せるな!俺に悲しいリアルを見せるな!

 

 あとイブはぼっちじゃんとか言うな。あんだけ女の知り合いいるのにぼっちとか言うな。俺は基本的に自分から誘うことは絶対しないんだよ。

 

 なんでかって?恥ずかしいだろうが!

 性格男の女友達を遊びに誘うことなら出来るだろうが、ただの美少女達を遊びに誘えとかお前頭リア充か陽キャかよ。

 そんな無茶ができるはずがない。てか普段女の子達だけでキャピキャピしてるところに入りに行く勇気がない。

 普段はコーチングの過程でいるだけだからな。オフになったら話は別だよ。

 恥ずくて無理無理無理のカタツムリだ。

 

 

 

 そんなクソッタレた日ももう終わりが近い。

 時刻は6時を回って7時に入ろうかというくらい。そろそろ夕食を作り始める時間だ。というかもう作ってる。

 

 

「……うむ。完璧」

 

 

 野菜や肉がキュンキュンに入った少し小さめの土鍋にスプーンを入れ、そのまま冷まさず直に口に入れる。

 野菜や肉の旨みが出た完璧な1品だ。

 机の上に木の鍋敷を置いてそこにごとんと鍋を置く。

 

 今日は少し贅沢な一人塩ちゃんこ鍋。

 ちゃんこ鍋ってうめぇんだよな。なんであんなシンプルな鍋が美味いのだろうか。

 具材は安売りしてた白菜やもやし。更に余ってた豆腐と油揚げも入れる。そこにみんな大好き北沢精肉店で買ったバラ肉と肉団子を入れれば完成だ。

 

 これをテレビやYouTubeでものんびり見ながらちゃんちゃんこにくるまって何時間もかけてゆっくり食うのが至福の時である。

 夏場は甚兵衛、冬はちゃんちゃんこ。

 なんか和服好きなんだよね。なんかほら……かっこよくね?(厨二病並感)

 

 ちなみに1人鍋は先週にキムチ鍋をしたので今年2回目である。

 キムチ鍋めっちゃ美味かった。〆のキムチ雑炊は神。

 今日の〆は塩ラーメンだ。いやー楽しみだなぁ!鍋って〆が鍋全体の存在意義の半分くらい占めてるよな。

 

 

 ピンポーン

 

 

「あーい」

 

 

 取り皿とおたまと箸を運んでると最近音を変えたチャイムの音が鳴る。

 こんな時間に誰やねん。A〇azonで商品を頼んでたわけでも無いんだけど。

 

 小皿とおたまをまとめて机から冬仕様に様変わりしたこたつの上に先に置くと、そのまま玄関に向かう。

 

 

『……マーくんいるよね?』

 

「えっ、なんでいんの(困惑)」

 

 

 ドアについてる覗き穴から外を見ると、そこには真冬のとっくに日が落ちた真っ暗な外で入口のライトに照らされたもはや親の顔より見たんちゃうかというくらい見てきたピンク頭の姿があった。

 

 取り敢えず風邪を引かせる訳にはいかないので速攻で家に入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん〜!おいしー!」

「まだまだあるからゆっくり食えよ」

「うん!ありがとー!」

 

 

 コトコトとスープが沸騰している土鍋に白菜と余っていた鶏肉を一口大に切って加えながら後ろで肉団子をはふはふしながら頬張る彩に声をかける。ちなみに俺が既に着ていたちゃんちゃんこを着せといた。サイズはかなり違うけど毛布みたいであったけぇだろ。あれでとりあえず風邪をひく事はないかな。鍋食ってるし。

 

 一瞬で家の中に入れたは良いものの飯を食ってねぇとか言うからなこいつ。ちょうど一人用にしてはかなり多めに作ってたし、冷蔵庫にも食材は余ってたからちょうど良かった。

 ちなみに何しに来たか聞いたら『マーくんが寂しいと思って!』とか言いやがったので頭にチョップ入れといた。

 

 畜生悔しいけど人一人いるだけでもめちゃくちゃ変わるよ。しかもこっちが黙ってのんびりしてても気まずくならない相手だからな。

 鶏肉に火が通り、白菜もいい感じでしなしなになってきた所で土鍋をテーブルの上に移す。

 

 

「おかわり!」

「へいへい」

 

 

 目をキラキラさせながら取り皿をこっちに差し出してくる彩に呆れながらも何故か安心感を覚える。

 そうか、これが実家のような安心感ってやつか。違うな。なんか不味い気がするからこの感覚を覚えるのはやめておこう。うん、そうしよう。

 

 お肉が沢山欲しいという彩の要望に応えて8割白菜ともやしをぶち込んで肉の代わりに油揚げを入れた取り皿を彩に手渡すと文句を言いながらパクパク食べ始めた。

 白菜ともやしもうめぇんだから食え。食い盛りの運動部所属男子中学生みたいな事言ってんじゃねぇ。

 

 まぁそう言いつつ俺は肉団子頬張ってるんですけどね。超ジューシーくっそ美味い。

 やっぱり北沢精肉店のお肉は最強である。

 同じ肉のはずなのにスーパーで買うよりも美味いし全然安い。

 あそこって牛だけじゃなくて豚と鶏まで扱ってるんだよな。マジ主婦の味方。主婦じゃないけど。

 

 

「あっ!Roselia!」

「ほんとだ」

 

 

 二人で特にめちゃくちゃ会話を交わすというわけでもなくのんびりと温まりながら鍋の中身を消化していると、ふとテレビを見てた彩が急に声を上げる。

 

 特に驚きもせずに画面に目を向けるとそこには何故かRoseliaのライブの映像が。

 クリスマスイブの音楽特番でのコーナーでガールズバンドが特集されてるのか。パスパレも出るんじゃねぇかな。

 

 

「おっ、出た」

「こういうのに選んで貰えると凄く嬉しいよね」

 

 

 そう言いながら画面を見る彩は子を見守る母親のような顔をしていた。

 画面では彩を中心としたパスパレのメンバーがそれぞれの定位置で楽器を演奏している。

 この会場は前にも見たな。

 あれか、思い出したわ。

 

 

「これちょっと前の野外ライブの時のか」

「うん!冬なのにすっごく熱かった!」

「お前もすっかりバンドマンに染まったな」

「えへへ……」

 

 

 そう笑いながら照れくさそうに頭をかく彩を見て少し笑みがこぼれる。

 コーチをしている俺から見てRoseliaやafterglowが成長していく様を嬉しく思うのと同じようにパスパレの中でリーダーをしている彩にも思うことの一つや二つあったのかもしれない。

 まぁあのメンバー濃いからなぁ。

 イヴちゃんと麻弥さんはまともだけど日菜さんと千聖さんはまともじゃないからな。千聖さんはまとも寄りのまともじゃないだからな。見てればわかるだろ。

 

 そんな訳で鍋を食いながらおこたでぬくぬくしてテレビを見るという、クリスマスイブと言うよりか年末のおばあちゃんみたいな事をしていた。こんなクリスマスもたまにはいいかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁ〜、お腹いっぱい……」

「流石に〆までしっかり食べ切ればなぁ」

 

 

 〆の塩ラーメンまで食べてお腹いっぱいとばかりにベットに凭れこんで寛ぐピンク頭がアイドルだとは思えない。そこら辺のズボラな女子高生にしか見えん。というかそれだわ。

 

 洗い物はもうちょい落ち着いてからでもいいかなぁ。取り敢えず今はこの満腹感とあったかおこたのぬくぬくに浸っていよう。

 

 

「……あれ?マーくんお花なんて置いてたっけ?」

「ん?あ〜……あれ?」

 

 

 そういう彩の視線の先にはキッチンの横の小窓付近に置いてある、綺麗にラッピングされたプラスチック製の鉢に植えられた3本の綺麗なピンクの胡蝶蘭。

 

 そういやあそこに置きっぱなしにしてたわ。てかこいつが家に来ると思わんかったし完全にあそこに置いてるの忘れてたなぁ。

 今日24日か。うーん3日くらい早いけどまぁええか。見られちゃ仕方あるめぇ。

 

 よっこいしょとおっさんみたいな声を出しながらおこたという魔性のぬくぬく機から根性だけでなんとか抜け出し、小窓付近に置いてある胡蝶蘭の鉢を両手で持ち上げるとそのままおこたに戻ってくる。

 

 

「ほい、ちょっと早いけどおめでとう」

「……何が?」

「誕生日、もう近ぇだろ。もう見られたしな」

 

 

 持ってきた植木鉢をそのまま彩の方に向ける。

 ピンクの胡蝶蘭は彩への誕生日プレゼント。

 最初はブレスレットとかリングとかみたいな手軽に身につけられるアクセサリーを考えてたんだけど、あんまり身につけるようなやつだとファンになにか勘ぐられるかもしれない。パスパレに迷惑はかけたくないしな。

 

 そんな中で何がいいかな〜と考えてた時に花屋で綺麗に植えられていたこのピンクの胡蝶蘭を見つけたのだ。

 誕生日用にとラッピングしてもらったらめちゃくちゃ綺麗になったのでアクセサリーに比べても見劣りすることは無いだろうし、花が嫌いな女の子もそうそういないということでこれに決定した。

 誕生日に花をプレゼントってロマンチストかよ。正直くっそ恥ずかしいわ。

 

 

「このお花……私に?」

「おう」

「……ほんとに?」

「いや誕生日プレゼントだから当たり前だろ。嫌だったか?」

 

 

 やべぇ。プレゼント選び失敗したかもしれねぇ。

 流石に花は古典的すぎたかもしれない。そもそも俺にロマンチストなプレゼントは似合わねぇもんなぁ。

 

 どうしよっかな〜。この胡蝶蘭綺麗だし家で植えとくかな〜。

 そうするか、プレゼントなんかなかった、いいね?

 

 現実から目を背けるように目を瞑ってそんな事考えていると、両手で持っていた植木鉢がふっと手元から離れていく。

 目を開けて目の前を見てみるといつの間にか立っていた彩が胡蝶蘭の植木鉢を胸の前で抱き締めながら何故かポロポロと涙を流していた。

 

 

「な、泣くほど嫌だったか……?」

「ううん……嫌なわけないよ。このお花大切にするね」

「……お、おう。無理してない?」

「してない」

「アッハイ」

 

 

 泣いてるのは彩なのになんかすっごい怖かった今。なんで、僕そんな彩ちゃん初めて見た(困惑)

 

 

「それじゃ晩御飯も貰っちゃったしそろそろ帰ろっかな」

「珍しいな。今日はなんもしてこないのかよ」

「お望みとあらば今すぐベッドにi」

「よし帰れ、送ってやろう」

 

 

 いつの間にか泣き止んでまた元の調子に戻った彩を遮るように帰宅を促す。

 てかなんでさっき彩は泣いてたんだよ。全く皆目見当もつかない。女心は難しいってはっきりわかんだね。

 

 

「送ってく」

「ううん。事務所の人が外にいるから」

「そうか。ならいい……」

 

 

 ……ん?事務所の人が外にいる?

 なんで。何しに。

 

 

「彩」

「なーに?」

「なんで事務所の人が外にいるんだ?」

「……それじゃあ帰るね!お花ありがとう!バイバイ!」

「あっ!てめぇ!」

 

 

 そのあと全速力で逃げてった彩を外に出て捕まえに行くのと、家でこたつでぬくぬくするのと天秤にかけた結果、俺は後者を選んだ。今日は特に変なことしてないしまぁいいだろう。許してやる。

 

 後日、彩がTwitterに俺からのプレゼントであるピンクの胡蝶蘭を写真付きでツイートしたらめちゃくちゃバズった。

 ちなみにめちゃくちゃ来たリプの内容とかはあえて言わない。

 なんだよ花言葉って。んなもん初めて知ったわ。

 男が花言葉知ってるなんてそうそうあるわけがねぇだろうが!

 




ピンクの胡蝶蘭の花言葉。みんなも調べてみてね!

過去のお話の書き方が地雷なので、展開は変えずに描写とか加筆修正したいんです。

  • 今のが好きなので書き直しておk
  • 昔のが好きなので書き直したらアカン

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