どうやら俺の黒歴史を美少女達に握られたらしい 作:as☆know
「いただきまーす!」
「熱いから気ぃ付けや」
「うん!」
そんなこんなで鍋が出来た。
あれから紗夜さんにDSを貸してモン〇ンの操作とかを教えたり色々のんびりしながら7時過ぎから夕食開始だ。
いつもは静かな食卓があことリサ姉を中心に賑やかになる。
なんか泣きそうになってくるなこれ。普段の食卓がいかに寂しいかわかる……ってなんで俺独身アラサーサラリーマンみたいな事言ってんだ。でも普段は飯食う時はYouTube見ながら1人でぱぱっと食べるしこういうのはほんとに泣きそうになる。
ぬいぐるみでも買って反対側に座らせて疑似ふたり飯でもするかな。メンヘラかよ。孤独振り切ってんな。
「友希那おいしい?」
「……えぇ。とっても」
「やったね☆」
「やったぜ」
鍋をもぐもぐと食べてる友希那の微笑んだ顔を見ると作ったかいがあるってもんだ。みんな喜んでくれてるし作った料理を美味しいと言って食べてもらえる瞬間が一番料理人冥利に尽きるってもんよ。俺、料理人じゃなくてギタリスト兼ベーシスト兼ドラマー兼ピアニストなんだけどな。というかピアニストって言っていいのだろうか。
友希那さんって普段基本的には無口というか無駄なことには口を出さないからな。
あぁやって表情に出すことは多いんだけど両方来ると非常に嬉しいものがある。紗夜さんはあんまり表情には出さないけど友希那さんって結構顔に出るからね。同じクールビューティでもタイプが別なんだよ!
「お肉も柔らかい……」
「北沢精肉店のやつですからね。それを聞いたらはぐみも喜びますよ」
燐子さんが驚いたような表情をしながら鶏むね肉を頬張る。
鶏むね肉ですら北沢精肉店にかかればパサパサしてない極上の鶏肉が手に入るのだ。しかも高くない。
あそこの商店街もレベルが高いよな。あんがい近くにスーパーとかデパートがあるのに潰れる気配が一切見えずに今のご時世なのに活気に溢れてるのはこういうことなんだろう。最初あまりにも活気に溢れすぎててあそこだけタイムスリップしてるかと思ったからな。まぁあの日は人がたまたま多かったんやけど。
だって肉も野菜もパンもスーパーとかで買うより基本的に美味いし安いんだもん。そりゃこの事実を知ってる人はみんなスーパーじゃなくて商店街に行くわな。主婦や学生の味方すぎる。
「本当はにんじんとかも入れようと思ったんですけどね」
「意味がわかりません」
「アハハ……」
そう。本来この鍋ににんじんを入れたら彩り的にもいいし甘くて柔らかくて美味しいから入れようと思ったんだけど紗夜さんに止められた。
この前のファミレスで好き嫌い克服しようやって話になった時にあこと一緒に抗議してたしな。まぁきのこ類が食えない俺もガッツリ抗議してたんだけど。
紗夜さんあんなクールビューティなのにポテトみたいなジャンクフード好きでにんじんが苦手ってかなり子供舌だよな。可愛い(可愛い)
今度機会があれば紗夜さんにハンバーグでも作ってあげようかな。俺も好きだし。あこも好きそうだし。
機会が来るかもわかんないのにもうワクワクすっぞ!
鍋も一段落付き、鍋特有の〆も作るか〜言って言い出すまでのお腹が少しすくまで待つ時間帯に入る。時刻は8時を回って10分ちょい経つかという具合。
テレビの内容は紅白。だがただ点いてるだけで毎年のように出ているアイドルグループに興味を示すことも無く、みんな今年の思い出なんかを思い思いに語ってる。
「にしてもさ〜。愛斗に出会ったのが今年だとは思えないよね〜」
「嫌なこと思い出させんで下さい……」
「あの時の愛斗さんは今と変わらずにとても激しかったですよね」
蘇るのは忌まわしきあの時の記憶。思いだすだけで身が凍るわ。
今思えば昔から黒歴史を作る天才だったのかもしれないけど、確実に転機はあそこだからな。
あそこから色々おかしくなった。みんなは一人でいる時も常に誰かに見られていると思って行動しような!お兄さんとの約束だぞ!(血涙)
紗夜さん、その激しかったって言うのはちょっと聞く人が聞いたら卑猥に聞こえるんでやめといた方がいいです。
なんならちょっと俺もドキッとしたんでやめて欲しいです。
いや変なことしたわけやないからな!? 俺は無実だ。俺が紗夜さん程の超絶美人に手を出せるはずがないしそもそも誘ったとしても瞬殺される。悲しいなぁ……。
「あの時って誰が一番最初に行って俺の事見つけたんですか?」
「確か〜……友希那さんじゃないっけ?」
あこの発言から自然と友希那さんに視線が集まる。
話題の的になった友希那さんはさっき淹れたコーヒー(砂糖たっぷり)を一口飲んで息を吐く。
友希那さんほんとになにしても絵になるよな、そのコーヒーが砂糖たっぷりのものだとは思えない。なんとも友希那さんらしい。
「えぇ。Roseliaの中では私が一番最初に愛斗を見つけたはずよ。あの時は既に先客がいたけれど」
はえ〜そうなんか。俺が最初に友希那さんを見た時には既にRoselia全員集合してたからな。
形式的にはafterglowが全員集合した後にもっかい見たらRoseliaも全員揃ってたって感じだ。うっ、頭が……。
あの光景は恐ろしかった。ドアが美少女達の綺麗な顔でキュンキュンにつまってたからな。トラウマががががが……。
「湊さんがめずらしく食い入るように何かを見ていたものですから」
「あこも何かあったのかと思いました〜」
「afterglowもいましたしね……」
「まぁ中にいたのはただの一般人男性だったんですけどね」
頭をポリポリかきながら自分用に淹れた砂糖もミルクも入れていないちゃんとブラックのコーヒーを口に含む。
うん、苦い。いつかの思い出と全く同じ味だ。
けれどコレが何かクセになるんだよなぁ。ある意味俺の黒歴史と同じかもしれない。同じ黒色してるし(激ウマギャグ)
非常に恥ずかしい話だ。見られてるこちら側の人間の立場になって欲しい。
ほんとにあの時は何かやらかしたんじゃないかと心配になったんだからな。
結局なんもなかったけどな(そのあと無事だったとは言っていない)
「そこで友希那に目をつけられたと」
「今となっては自分から動画で色々と晒してますし、もうあの脅しの効力もないですけどね」
あの時は確か……友希那さんからのコーチの頼みを断ったらまりなさんにめちゃくちゃ撮られてた俺が暴れながら楽器演奏してる姿を動画に晒すって友希那さんに言われたから泣く泣くRoseliaのコーチをすることになったんだよな。懐かしすぎる。そんなこともあったなぁ……。
「えっ……。まー兄Roseliaやめちゃうの……?」
「……はい?なんで?」
「だって……あの時の約束がなかったらまー兄がRoseliaにいる理由が……」
「あー……確かにそういやそうだな」
元はと言えばあの脅しが効力を発揮してたから俺がRoseliaのコーチをすることになったわけで、動画で顔出しもした今の俺がRoseliaでコーチしなくちゃいけない理由なんてどこにもないんだよな。
「……愛斗」
「愛斗さん……」
「……」
なんか視線が痛い。友希那さんも紗夜さんも燐子さんもなんでそんな目で見るんだよ。そんな心配そうな縋るような目で見ないでくれ。
なんでそんな顔してるんだよ怖い怖い。俺なんかした?
「……ねぇ愛斗」
「は、はい?」
「Roselia……辞めないよね?」
「…………ほぇ?」
……俺がRoseliaをやめる?なんで?
頭の中でぐるぐる回ってた思考が一気に止まって、またすぐに動き出す。
なんでそんな急に話が変な方向に飛躍してるんや。俺なんか変な事言ったか……あっ。
「あー……。俺がもうここにいる理由がないからやめるんじゃないかって、そういう事すか」
リサ姉とあこの肩がピクっと動く。どうやら大当たりの確定演出らしい。そんな怯えないでくれよ……。
「あこ、やだよ……まー兄と一緒にいたい……!」
「あこちゃん……」
「愛斗さん……」
いやいや待ってくれよ。みんなそんな顔で俺の事を見ないでくれ。心臓に悪い。
「やっぱりアタシはさ……愛斗ともRoseliaのみんなともこのままずっと一緒にいたいって思うな」
「えっ」
リサ姉が俺の袖をキュッと掴んでくる。
何この愛しい生物。可愛すぎるんだけど、今すぐ抱きしめたいんだけど。
いや違うそうじゃねぇ。なんでこんなに早く話が進んでるんだ。俺まだなんも言ってなくね?多分だけど。
あっ違うわこれ。これなんも言ってないから駄目なんか。そうだわ。絶対そうだわ。
「愛斗さん?私は……」
「いや俺辞めないですよ?」
「……ほぇ?」
紗夜さんの声を遮って俺が声をあげると、あこが素っ頓狂な声を上げる。
いやいやいや。今更なんで辞めなきゃいけないんだよ。それとも俺辞めた方が良かったか?
「で、でもさっきここにいる理由がないって……」
「俺言ったっけ?いる理由はないけどいなくなる理由もないかなーって」
「皆早とちりし過ぎなのよ」
紗夜さんもそう言うけどさっき凄い目で俺のこと見てたよね。完全に勘違いしてたよね。俺覚えてるよ、女の人のあぁいう顔見るの苦手だからな。
「……あの。リサ姉さん?」
「……なに」
「あの……離して頂けると心臓に優しいんですけど」
「やだ」
いつの間にかLv1袖掴みからLv100腕捕まり手つなぎに階段飛ばしで駆け上がってたリサ姉にその手を離して貰えるよう要請をかけるも無事却下される。
あの、心臓に悪いっすリサ姉。主に紗夜さんからの視線が痛いっすリサ姉。紗夜さんからのジト目はご褒美かもしれないけど友希那さんや燐子さんの生暖かい視線も逆にキツいっすリサ姉。離してリサ姉。
「……今井さん。異性の方にそういう行為は謹んで……」
「大胆な攻めは女の子の特権だよ〜? 紗夜もちょっとくらい攻めないと☆」
「なっ……!」
リサ姉の小悪魔的なジト目で見られた紗夜さんが顔を赤くする。えっ……紗夜さんってそっちの方なの……?俺は応援するよ!愛のカタチはひとつじゃないもんね!
この後、鍋のシメを作って食べ始めるまでリサ姉と反対側の腕に顔を真っ赤にして捕まってきた紗夜さんは引っ付いたままだった。
鍋も片付け、モンハンを初めてからしばらく経っただろうか。時刻はもう数分で年を越すという時間まで来た。
今年は寝ないで年を越すんだ!寝たら起こしてね!って息巻いてたあこも遊んで話してでやっぱり疲れたのか。今はすぅすぅと俺のベッドで寝息を立てている。
起こすか起こさないか究極の天秤にかけてた燐子さんが起こしに行ったしまぁ大丈夫だろう。年越しを寝過ごすって地味に悲しいしな。
「今年ももう終わりっすね……」
「……えぇ。長いようで短かったわ」
「アタシ達全員今年で大分変わったしねぇ……」
「私もリサも紗夜も燐子もあこも。そして貴方も今年一年でかなり成長したんじゃないかしら」
友希那さんがこっちを試すような目でこっちを見てくる。
音楽の面でか、それとも……。
まぁ音楽の面でだろうな。友希那さん音楽以外やとポンコツやし。
確かに今年はプロのスタジオミュージシャンになった年でもあるし、技術的にもコーチング能力的にも飛躍の年だったかもな。
「ふわぁ……まだ年越してなぃ……?」
「おっ、起きたか。まだ越してないぞ」
ゆらりとあこがベッドから起き上がる。燐子さん起こせたんだな。よかったよかった。
寝起きでまだふにゃふにゃだがちゃんと意識は持ってるっぽいな。今年は年越し出来そうだぞ。よかったな。
「ふっふっふ……今年は大魔王あこの勝利なりぃ……」
「落ちたな(確信) 燐子さん。布団掛けといて上げてください」
「ごめんね……? あこちゃんやっぱり今年も駄目だったみたい……」
全く。そんなに年越しまでが楽しかったのか、それとも幸せな初夢でも見てるのか。
にへらとだらしなく口角を上げたまま規則正しく意識を闇の中に落とすあこをご愁傷さまと見送る。
あこも中三とは思えないほど子供っぽいところあるよな。多分日菜さんとかつぐとかも似たようなタイプなんだろうけど。
いつまで経っても少年少女のような人っていいよな。一緒にいると気楽だし元気が出る。来年は年越し寝過ごさねぇように出来るといいな。
近くの神社から大きな鐘の音が鳴り響く。
低く、ただひたすら響くその音色は新年の訪れを告げる鐘の音。
昨年までの思い出に別れを告げ、心機一転新しい出会いと発見に溢れる新年の幕開け。
まぁ正直去年以上の劇的な年はそうそうないとは思うけどな。人生の分岐点じゃねぇのかって思うくらい去年はやばかったし。
「あけましておめでとうございます」
「えぇ。これからもよろしく頼むわ」
ちょうど俺がいつも座っているPC用の椅子に座った友希那さんと目が合い、自然に挨拶を交わす。
今年も、ではなくこれからもと言うのはそういうことなんだろうか。
「えぇ。これからもよろしくお願いします」
そんな微かな妄想に期待を少し込めて、改めて俺はRoseliaに挨拶をした。
過去のお話の書き方が地雷なので、展開は変えずに描写とか加筆修正したいんです。
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今のが好きなので書き直しておk
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昔のが好きなので書き直したらアカン