原作とかに出てくる笑い担当のアホっぽいキャラにエグイ過去をもたせたらえげつなくなりそうだと思うのは俺だけだろうか…。 作:テクテク
「ん?」
「を?」
「あれ?」
「………えっと、お久しぶり…です」
三者三様の声をあげる僕の所属する部隊の先輩たちから視線を浴びながら、僕は1月ぶりに会うことになる先輩たちにそう挨拶をした…。
迅さんと話した日から2週間が経とうとしている。
あの時迅さんから聞いた話を自分なりに考え、そして自分に投影してみた。でもやはり迅さんの言っていた通り、何をすべきかという答えにはたどり着けていない。
そうしてもたつく僕を時間は待ってはくれなくて、変えられてしまったはずの日常は表面上、平穏を取り戻し始めてすらいた。
時は流れ続けている。
ゆっくりと、
それでも、確実に……。
そんな移ろい行く時の中、答えにこそたどり着けていない僕だが、その事とは別に気づく事ができた事もある。
そのうちの大きな一つが日常や平和の有り難み…と月並みな言葉で言い表されてしまう事。
しかし非日常を体験した人誰しもが言い、体験したことのない人もなんとなくだが理解できてしまう…いや、理解した気になってしまう事だ。
この事はきっと、
同じような経験をした人にしかわからないのだろう。
有り難みなんて言葉ではとてもたりない、僕の中に渦巻く過去への執着や後悔。今過ごしている日常への安堵と続いて欲しいという願い。なのに感じてしまう現状に対する圧倒的なまでの喪失感。
僕ですら理解しきれないその他様々な感情が混ぜ合わさったこの状態を、誰かに理解されるとは思えない。
ましてや、経験すらしていない人には不可能だ。…僕自身、そうだったのだから…。
迅さんとの会話がなければ僕の思考はこの答えのない問いに囚われ、動けなくなってしまっていたかもしれない。
けれど周りにいる沢山の人達に支えられ、迅さんも含めて人に恵まれた僕はもう一つ、個人的にはとても大きな事に気付くことができた…。
それはよく考えれば当たり前の事で、それでも僕は分かっていなかったこと……、
苦しんでいるのは決して僕だけではない、
ただ、それだけのこと。
そう、僕だけではないのだ。
みんなも悩んでいるし、苦しんでいる。
もしかしたらそれはずっと前からだったのかもしれないし、僕と同じで今回それを知ったのかもしれない。
だけどそれでも、今この事で苦しんでいるのは僕だけではなかった。
僕は考えて考えて考えて、だからこそ全く動けずにいた。
そんな僕と、…とても大切だった彼女やみんなだけを置いて進んでいってしまう時間を、憎んですらいた。そのせいで視野も狭くなり、何も見えなくなっていた。言いようのない孤独感に苛まれていた…。
だけど違ったのだ。
みんなも苦しんでいるのだ。
それぞれが心の中で葛藤しているのだ。
そしてそんな状態でも、少しずつ進んで行こうとしているのだ。
時間は確かに止まらない。
どうしたって進んでいってしまう。
当時は気恥ずかしく無駄に高いプライドが邪魔をして言えなかったけれど、確かに好きだったのだと断言できる彼女を、そして同じように誰かに思われていただろうみんなを残して、彼女たちも一緒に歩むはずだった時間を進んで行く。
歩むことが出来なくなってしった彼女たちと、歩んでいかなければならない僕たち。
放課後、僕の前を1人で歩く彼には、帰り道でいつも一緒に騒いでいる友人がいた。
校内ですれ違った静かにグラウンドを見下ろす彼女には、見ていて恥ずかしくなるほど仲の良かった大切な人がいた。
教室で席が隣同士になったことで仲良くなり、甘酸っぱい空気を醸し出し始めていたその場所に、今は誰もいない。
特段仲が良いわけではなかった人とぎこちなく、しかし懐かしむように何かを話す人をたくさん見た。
みんな苦しんでる。
だけど、みんな進もうとしている。
多分折り合いをつけられている人の方が少ないだろう。
それでも、必死に気持ちの整理をつけようとしている。
彼らは大切にしていた人を、過去に置いて進むのだろうか。
最後には全てを忘れて、生きて行くのだろうか。
それはきっと、否だろう。
忘れることなんてできないのだ。
切り捨てることなどできないのだ。
だけど今を生きていかなければならないから…、
だから、彼らはきっと背負って生きて行くのだろう。
全部全部、彼らは持って進んで行くのだろう。
そして、僕もまた……。
僕が今何をすべきなのか、何をしなければならないのか。
僕はまだ答えを出せていないし、
もしかすると答えなんていうものはないのかもしれない。
それでも、僕は考えることを止めることはないだろう。
残酷なまでに容赦のない時の中、そうして生きていくのだ。
迅さんは言った。
そう簡単に答えは出ないのだと。人生はそういうものなのだと。その中でも、生きていかなければならないのだと。
それはきっと正しいことだ。
少なくとも考えるだけだった僕より、数段正しいことだ。
けれど僕はどうしても、答えも知りたい。
何をすべきか。何をしなければならないか。
そして、今の僕は彼女たちになにをしてあげる事ができるのか。
彼女たちはもういない。だからこれはきっと自己満足なんだろう。
そんな事は分かっている。
それでも何かをしたい、してあげたい。
僕がボーダーに入ったのは彼女が理由だ。
彼女がいない今、僕がボーダーにいる意味の半分は無くなってしまった。
けれど、彼女は僕を信じてくれていたという事実は消えない。嘘つきで、肩書きだけの僕を本気ですごいと褒め、応援してくれていた事実は消えない。
僕は彼女に言った。
苦しんでいる人を助けたい、平和を守るために少しでも力になりたいと。
これは真っ赤な嘘だった。
けれど、彼女はこれを信じてくれていた。
この嘘は、きっと嘘で終わらせてはいけないことだ。
なにをすべきかはまだわからない、だけど進まなければならない。
ただし、今の僕は無気力で以前のように何かをしようとはすぐには思えない。
だから、僕は自分で何をするのかを決めよう。
なにをすべきかという答えが出る時まで、それに全力で取り組もう。
その一つ目として、僕は彼女の尊敬した僕になる。
彼女が信じた僕となる。
そう、決めたのだ。
「…あのっ!1ヶ月間も休んでしまってすいませんでした!僕はボーダーを続けようと思います!だから、これからもよろしくお願いします!!!」
僕の名は唯我尊。
今日から僕がボーダーにいる理由は、
苦しんでいる人を助けること。
平和を守る手助けをすること。
そして、
彼女へついてしまった嘘を、現実のものへと変えることだ。