ソードアート・オンライン 青纏の剣医   作:破戒僧

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どうも初めまして、そうでない方はお久しぶりです。
作者の破戒僧と申します。

アニメのSAOを見てどうしようもなく書きたくなって筆を執りました。

作者の自己満足が主成分の文章がつらつらと続きますが、少しでも皆さんに楽しんでいただけるものに仕上がれば幸いです。

どうぞよろしくお願いします!


第1章 アインクラッド編
第1話 剣の世界なう


 『ソードアート・オンライン』……縮めて『SAO』。

 

 今、日本において最も話題になっていると言っていいゲームの名前である。

 

 ただのゲームではない。世界初の『フルダイブ型』の『VRMMORPG』である。それゆえに、各種メディアの話題をこれでもかというくらいにかき集めており、テレビ、雑誌、ネットニュースやラジオに至るまで、あらゆる場所、あらゆる情報媒体でその名を聞くことができる。

 

 簡単に言ってしまえば、『VR』……『バーチャルリアリティー』の文字通り、仮想空間に飛び込んでそこで実際に体を動かしてゲームを楽しむことができる、というジャンルのゲームだ。

 

 それまでVRと言えば、せいぜい簡単なパズルやボードゲーム程度のものしかできず、グラフィックや解像度においても、ゲームとしては上出来と言えど、決して『仮想空間』……もう1つの世界、などというような大層なものではなかった。

 

 そもそもさらに数年前までは、目の周りを覆うゴーグル型の液晶モニターを装着して、あくまで『視覚的に』それっぽくしたものを『VR』と呼称してすらいた。

 

 そんな中、ついに開発された『フルダイブ』……すなわち、意識ごと電脳空間に飛び込んで、その広大な世界の中で遊ぶことができるゲーム。

 稀代の天才『茅場晶彦』によって作り出された、世界中のゲーマー全てにとって待望だったゲームジャンル。その先駆けこそが『ソードアート・オンライン』だったのだ。

 

 それを遊ぶことができるのはしかし、限られた者達だけ。

 抽選によるベータテストは1000人限定。正式発売すら、初期ロットは10000本限定という『狭き門』だった。その10倍並べても完売は間違いなかっただろうに、だ。

 

 ある者は徹夜で販売店に並び、またある者はキャンペーンに応募して己の運を信じ、またある者はコネを駆使し……その資格を手にした幸運な10000人は、2022年11月6日、念願の『ソードアート・オンライン』の世界へと飛び込んだ。

 

 頭全体をすっぽりと覆う、ヘッドギアとヘルメットを合わせたような、VR用ハード『ナーヴギア』をかぶり、『リンク・スタート』の合言葉と共に。

 

 

 

 ……それが、終わりの見えない地獄への片道切符だったとも知らないで。

 

 

 

 『これは、ゲームであっても遊びではない』

 

 

 

 同日17時30分ごろ、ゲーム内のプレイヤー全てが、ゲームを始めたものが最初に訪れる――というよりも、ログインするとここにたっている――『はじまりの町』。その中央にある広場に、『強制転移』によって集められた。

 そしてそこで、空中に浮かぶ、赤いローブを着た無貌の人型……ゲームの製作者・茅場晶彦を名乗るそのアバターが全プレイヤーに衝撃の事実を告げた。

 

 曰く、このゲームから自発的にログアウトすることはできない。それは、ゲームの中からの操作によってのみならず、外部からのあらゆる手段をもってしても不可能である。

 

 曰く、ゲームを脱出する方法はただ1つ。ゲームの舞台である『浮遊城アインクラッド』を、最上階である100層まで攻略し、クリアすることだけである。

 

 曰く、もし外部から無理に、例えばナーヴギアを強引に外すなどして強制的なログアウトを試みた場合、ナーヴギアから高出力のマイクロ波が照射され、装着者の脳を破壊する。

 つまりは、脳を電子レンジでチンされて死ぬ。

 

 曰く、このゲームの中で、HPがゼロになって『死んだ』場合、同様にナーヴギアによって現実の肉体の脳を破壊され、死亡する。

 

 つまりは……この『ソードアートオンライン』は、ゲームクリア以外の方法では脱出することができない『デスゲーム』であると、製作者自らそう明かしたのだ。

 

 痛ましいことに――言葉面だけで、声から感情のようなものは感じ取れなかったが――既に200人を超えるプレイヤーが、ゲーム内におけるHP全損によって、あるいは現実世界で強引にナーヴギアを取り外された等の理由で、死亡している。

 

 現実世界のニュース画面を映していると思しきウィンドウまでご丁寧に開いて、そう説明した。

 

 そして最後に、『以上でチュートリアルを終了する』と言い残し、アバターは消失。

 

 後には、恐怖と絶望、悲しみや怒りで阿鼻叫喚となった10000人弱のプレイヤー達が残された。

 

 ある者は崩れ落ち、うずくまり、顔を手で覆って泣き出して助けを請うた。

 ある者は虚空に向かって『ふざけるな!』『GM出てこい!』と怒鳴り散らした。

 ある者は何をすればいいのかもわからず、何もできずただ立っていた。

 ある者は大局を見据え、すでに動き出そうとしていた。

 

 そんな中で、あっけにとられて立ち尽くしている者が、ここにも1人。

 

 

 

「デスゲームって……おいおい、マジですか……」

 

 

 

 チュートリアル終了時……茅場晶彦が配布したアイテム『手鏡』により、プレイヤー達はゲーム開始時に設定したアバターの姿から、現実世界の姿へとその身を変えて――否、『戻して』いた。

 

 すなわち、今こうしてここにいる者達は、現実と同じ姿をしているというわけだが……その条件下において、立ち尽くしているその1人は、20代前半から中盤と思しき青年だった。

 

 イケメン、というほどではないが、それなりに整っている顔立ち。中肉中背の体格。後ろにわずかに流すようになっている、短めの黒髪。

 悪くはないが、取り立てて個性的なところもない……しいて言うなら、やや中性的で『かわいい』系の顔、と言えなくもない見た目。

 

 キャラクター作成時に選べるアクセサリの1つである、眼鏡をかけているのが、他に特徴と言えば特徴だった。

 

 周囲が阿鼻叫喚の中、額に手をやって頭痛をこらえるようにしながら、大きなため息をついている彼は……プレイヤーネーム『ナツメ』。

 

 今はまだ、誰も知る由もないが、この先の『SAO』攻略において、そしてその先の数々の事件において、大きな役割を担うこととなる、1人のプレイヤーであった。

 

 

 ☆☆☆

 

 

【2022年11月7日】

 

 今日から、日記をつけることにした。

 

 この世界、変なところで気が利いているというか、仮想世界を謳っているくせに、妙に現実臭い仕組みやらアイテムがあるな。まあ、この際助かるが。

 

 NPCの店売りで買った、フレーバー要素でしかないのであろうこの日記が、果たして人目につくことがあるのかどうかはわからないが……もし仮に俺がこのゲーム、道半ばで死ぬようなことがあれば、この日記は俺が生きた記録、みたいな感じになるのかね?

 いや、死んだらアイテムとかもろともに消えるらしいしな……この日記も消えるか。

 

 まあそれはいい。この日記自体、僕の精神の安定とか、日々の出来事の整理や記録のためにつけようと思ったようなこともあるし。

 

 …………ていうか文面でアレだけど、一人称『俺』と『僕』どっちにしようかな?

 

 もともとのロールプレイでは『俺』で行くつもりだったんだけど、今なんだかんだで現実と同じ姿になっちゃってるしな……いいか、素で。リアルと同じで『僕』でいこう。

 

 ともあれ、僕はこのゲーム『ソードアートオンライン』に囚われの身となっている。

 

 サービス開始当日である昨日、徹夜で並んで買った『SAO』に、意気揚々とログインして、そのままコレだもんな……へこむわ。

 

 楽しみにしてたし、実際途中まではめっちゃ楽しかったんだけどな……

 職場の連中に『26にもなってまだゲーマーかよ(笑)』とか苦笑しながら言われつつも、有給まで取ってガッツリ遊んでたってのに。

 

 あー……急ぎで片づけたい、取り掛かりたい仕事がいっぱいあったのにな。どうしよう。

 

 あのアバター(自称・茅場晶彦)によれば、外部からの救出は不可能的なこと言ってたな……管理会社がシステムダウンなり何なりさせてプレイヤーの強制排出を行う気配がない所を見ると、実際に無理なんだろうか。

 

 さすがは稀代の天才、そのへんも織り込み済み、対策はばっちりってとこか………………笑えん。何てもん作ってくれてんだ茅場。

 

 ま、毒づいてても始まらないし、もうちょっと建設的なものの考え方をするべきだな。

 

 外から救出してくれるんならそれに越したことはない。ありがたいし……それについてはこっちから何をする必要もない。というか、何もできないんだが。

 

 だが、茅場氏の言う通り、外部からの干渉による救出が不可能だというのであれば、こっちはこっちで動く必要がある。

 

 このデスゲームを……『ソードアートオンライン』を、クリアする必要がある。

それをもって脱出する。それを、今後の予定ないし目標に据えておくべきだ。

 

 あの時言ってた通り、ルールは単純だ。

 

 この『浮遊城アインクラッド』は、今僕らがいる1層をスタートとして、ゴールである100層にたどり着いて、そこにいるボスを倒せばクリア、という構造になっている。

 

 プレイヤーはレベルを上げ、戦闘のためのスキルを磨き上げ、いい武器・防具をそろえて強くなり、並み居る敵を打ち倒してそこへたどり着くことを至上命題として行動するわけだ。

 ……至上『命』題が比喩表現になってないな……ホントに笑えん。

 

 だがこれは、僕のようなゲーマーにとっては、半ば以上慣れ親しんだ、むしろ極めてなじみ深いプロセスである。いつもやってる分、すっと頭に入ってくると言うか、理解できる。

 

 ……もっとも、いつもやってたのはあくまで液晶画面の向こうのキャラクターを、コマンド操作で動かす感じのものだったので、初のフルダイブで、初のMMOで、しかもデスゲームってなると、まあ中々どころじゃなくハードル高い気はするけども……その辺はもう考えても仕方あるまい。

 

 既にもう動き出している人もいるだろう。

 話に聞いたβテスター……正規ロット発売以前の試運転をプレイした人たちなんかはその代表格だろうな。『チュートリアル』終了直後に町から出ていった人が何人かいた、って聞くし。

 

 ま、人と比べても仕方ないし、僕は僕のペースで進めるつもりだけど。

 

 とりあえず、今日はもう休むことにして……あ、ちなみに今僕が日記を書いているここは、『はじまりの町』にある宿屋だ。

 初日の狩りの蓄えがあるので、昨日今日とここに泊まっている。

 

 今日はもう夕方になる。夜のモンスターの行動パターンがどうなってるかはわからんし(夜になるとモンスターが凶暴化するとか、違うモンスターが出るとかいう設定よくあるよね)ので、明日の朝早起きして『攻略』を開始することにしよう。

 

 まずさしあたり……予備含めた武器の調達と、道具の補充だな。

 その後……フィールドに出て、戦闘訓練とレベル上げをしよう。

 

 やることは、いつもと変わらない。

 戦って、強くなって、勝って、クリアする。それだけだ。

 

 ……ただ、セーブ機能がついてなくて、一回ゲームオーバーになると人生のリセットボタンが押されるってだけでさ!(やけくそ)

 

 

 

 


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