ソードアート・オンライン 青纏の剣医   作:破戒僧

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第20話 青眼の白龍(違

【2024年10月10日】

 

 こないだのS級食材だらけの食事会(途中から飲み会)は、何か最終的にカオスになって終わってしまったが、いい気分転換になったのは確かだということでひとつ。

 

 翌日の二日酔いさえ治まってしまえば、リフレッシュした精神が残るだけだったし。

 

 で、今日僕は、現時点における最前線である『74層』の、しかも迷宮区に来ていた。

 ちょっと、クラディールさんが素材の採取を手伝ってほしいそうで、それに付き合ってる。

 

 『血盟騎士団』には、というか攻略にすらあまり関わってこないものなので、騎士団の戦力を動かすわけにはいかない……という、彼らしい真面目な理由である。クラディールさんの人望なら、気にせず付き合ってくれる仲間の人とか、普通にいそうなもんだが。

 

 メンバーは、僕、クラディールさん、グリセルダさん、ストレアさんに加え、『黄金林檎』からヨルコさんとカインズさんを加えた6人。

 

 レベル的にも実力的にも、最前線でも戦えるメンバーがそろっていると言える。

 ヨルコさんとカインズさんは、ボス戦はさすがにきつそうだが……まあ、そんな予定はないので気にしなくても大丈夫だろう。

 

 ちなみに、この前半3人の面子にグリムロックさんを加えたメンバーなんだが、最近『保護者会』って通称で呼ばれ始めたらしいことをこないだ聞いた。アルゴさんに。

 ……誰が呼び始めたんだか知らないけど、なんつーネーミングセンスだ。

 

 いや、一周回って面白いかもしれないけどね?

 言われてみれば……『アインクラッド総合病院』の院長に、中層最大のギルドである『黄金林檎』のリーダー、その旦那にして『ACTO』の代表に、『アインクラッド教育委員会』の教育長……成程、確かに『保護者』的な立ち位置の人員がそろってる気がしなくもない。

 

 付け加えるなら、その『保護者』として面倒見られてる『子供』の立ち位置として見られているのは、主に『月夜の黒猫団』のメンバーや、ストレアさん、それにキリト君だそう。

 

 いや、皆さん立派に自立してらっしゃいますよ?

 百歩譲って『黒猫団』やストレアさんはいいとしても、キリト君僕らより絶対強いし、ソロか少人数でガンガン最前線攻略してるじゃん…………何、そういう危なっかしいところを指導して支えてるイメージがある? ああそうかい。

 

 そんな感じで進むこと数時間、レベル上げと素材収集を兼ねて、ひたすら出現するモンスターを狩り続けていた。クラディールさんの必要な素材は、フィールドからの採取なので別枠だが。

 

 しかし、リザードマン系やオーク系、ゴブリン系の……剣とかを使う敵がやたら多く出てくるな、この迷宮区。

 亜人型、特に剣とか武器持ってるようなモンスターは、ソードスキル使って攻撃してくる場合も多いので、動物型よりも余計に気が抜けない部分がある。

 

 しかも、クラディールさん曰く……『迷宮区』というものの傾向、というか特徴として、そこに出現するモンスターの種類によって、どんなボスが出るかある程度予想できるのだそうだ。

 

 例えば、もう随分昔のことに思える第1層。あそこ迷宮区やその周辺の森林地帯なんかには、コボルド系のモンスターが多く出現した。

 そして、あそこの階層ボスは『イルファング・ザ・コボルドロード』という巨大コボルドだったらしい。あとその取り巻き。

 

 アンデッド系のモンスターが多く出現する層のボスは、同じくアンデッド系になる場合が多い。

 獣系なら獣系、ドラゴン系ならドラゴン系、まあそういう感じだ。

 

 ということはこの層は……共通点としては、どいつもこいつも剣とか近接武器を使ってくる、亜人型のモンスターだから……いや、これはこれで範囲広すぎる気がするな。絞れん。

 

 なんてことを考えつつ、安全地帯で休憩してたんだが……そこに、慌てたというか、急いで走って駆け込んできた人が2人。どっちもよく知ってる顔だ。

 

 そうか、キリト君とアスナさん、最近コンビ組んで攻略進めてるって話だったっけ。

 

 聞けば、ちょうどこの先にあったというボス部屋を発見、ちょっと開けて中を覗いて……中には入らず、すぐに帰ってきたらしい。なるほど、懸命だな。

 

 そしたらそこに、またしてもお客さんが来た。

 今度はちと大人数。しかも、よく知ってる顔を戦闘に、赤備えの装備で統一した侍軍団だ。

 

 クラインさんとギルド『風林火山』の面々である。規模としては中小と言える程度のものだが、ゲーム序盤の結成以来、常に最前線を突っ走って攻略のために戦って来た実力派。

 しかもその過程で、誰一人戦死者を出していないという、強者ぞろいの集団だ。

 

 相変わらずフランクな感じのクラインさんが、アスナさんと一緒にデート状態のキリト君を冷かしたり、アスナさんに……こちらは割と真剣に『コイツのことをよろしくお願いします』なんて頭下げて、キリト君と仲良くしてくれるよう頼んだりしてた。

 

 面倒見がよくて他人を思いやれる優しい人なんだよな……その真っ直ぐな性格で多くのプレイヤーに慕われている、僕が知る中でも、屈指の人望を誇るプレイヤーだと言える。

 

 折角なので、情報交換と休憩を兼ねて一緒に食事をとることに。

 

 各々食料は持っていたのに加え、グリセルダさんが今回の探索のために、気合出して重箱に弁当を作ってきてくれたので、皆でシェアしつつ食べた。

 そのお礼として、アスナさんは余分に作ってきたサンドイッチを、クラインさん達は漬物を分けてくれた。しかし『風林火山』の皆さん、弁当がおにぎりと漬物って……ホントに武士のロールプレイっぽいな、狙ってやってるのかな? ……ありそうだな意外と。

 

 アスナさん手作りのサンドイッチをキリト君が美味しそうに……というか、幸せそうにほおばっていて、それを横で見ていたアスナさんが嬉しそうにしていたり、

 それを横で見ている僕らはほほえましいものを見るように、『風林火山』の皆さんはうらやましそうにしていたりした(歯ぎしりしてたのは気のせいだと思いたい)。

 

 その『風林火山』の皆さんは、グリセルダさん手作りの弁当のおかず――家庭の味を、感激しながら食べていたり、

 こちらはこちらで、分けてもらった漬物に舌鼓を打っていた。塩加減が絶妙で、ご飯のお供にもお茶請けにもいいなコレ……僕とクラディールさんに特に好評だった。

 

 グリセルダさん……と、ヨルコさんも、漬物の調達先とかレシピを聞こうとしてたな。

 料理スキル持ちとして気になったんだろうか。もし作れるようになれば……当てにするような言い方になってしまうけど、引き続き美味しいものを食べられそうでこちらもありがたいが。

 

 ……そんなことを考えてたら、ヨルコさんが時折、ちらちらとこっちを見てるのに気づいたんだが……あれ、僕何か口に出してたかな? 人任せで失礼だって思われただろうか?

 

 そんな感じで食事を終え、さてそろそろ休憩も終わりかな、と思っていた時のこと。

 

 三たび反応する索敵スキル……今日はお客さんが多い。

 キリト君達が来た方向とは反対側から、『風林火山』よりずっと大人数の足音が近づいてくる。

 

 現れたのは、黒鉄色の鎧に濃緑色の服で装備を統一した集団……アインクラッドで最大規模のギルドである『アインクラッド解放軍』の、全部で12人・2パーティからなる部隊だった。

 

 よっぽどの強行軍でここまで来たのか、あるいは単に迷宮区の探索に慣れていないからか……そのほとんどのメンバーが、疲れて息を荒くしているように見えた。

 

 『軍』は、25層で壊滅的な打撃を受けてからこっち、攻略からは手を引いて、治安維持や、戦闘能力を持たないプレイヤー達の保護に力を入れていたはずだ。

 クラディールさんとこの『教育委員会』ともそういう形で連携してるし。

 

 しかし、『攻略組に復帰すべき』と考える派閥が根強く残っているのも事実であり、近々具体的な行動に移す気配がある、という情報も聞いていた。アルゴさんから。

 つまり、この連中はその尖兵として、実績作りのために送り込まれているってことかね?

 

 僕らがそんな風に予想を組み立てている中、『軍』の代表者、指揮官と思しき1人が、号令を出して部下たちを休ませると、1人つかつかとこちらに歩み寄ってきたので、とっさに僕ら『保護者会』が、キリト君とアスナさんをかばうような形で立つ。

 

 コーバッツ中佐、と名乗ったそいつは、キリト君がこの先のエリアを攻略済みで、ボス部屋までマッピングも終えていると知ると、そのデータを提供してもらいたいと言って来た。

 瞬間、左右から睨むようにしている僕とクラディールさんの視線に力がこもる。

 

 コーバッツは一瞬たじろいだように一拍置いて、『無論、適切な対価は支払う』と付け足した。

 

 ……多分というかやっぱりというか、こいつ、タダでデータせしめるつもりだったな? 僕とクラディールさんっていう、自分で言うのも何だが、中層以下に影響力を持つビッグネームが2人もいたことで、不本意だけど睨まれないように、後から『買い取る』形にしたようだった。

 

 アルゴさんに聞いた、最近また『軍』の一部が暴走気味だっていう話が現実味を帯びてきたな。

 

 データを手にした後、コーバッツは部下たちを率いて、迷宮区の先へ歩いて行った。

 行き掛けにキリト君が『無理しない方がいい』って、可能な限りやんわり注意したけど、帰ってきたのは『私の部下はこの程度で音を上げるほど軟弱ではない!』という、いかにも聞く耳持たずって感じの石頭返答。

 

 ちなみにそのデータだが、さっきの情報交換の際に僕らも貰っている。無料で。

 

 マッピングの大変さは知ってるから、代金は払うって言ったんだけど、別にいいってさ。

 さっきも、仮にただで寄こせって言われてたとしても、どうせ町についたらアルゴさん経由で公開するデータだからって、くれてやるつもりだったようだ。相変わらず人がいいな。

 

 で、そのデータを見て思ったんだけど……ここからボス部屋けっこう近いんだな。

 さっき行った軍の連中も、そう時間をかけずにたどり着くだろう。

 

 着くだろうけど……まさかとは思うが、そのまま突入したりしないだろうな?

 

 いやいや、さすがにないよな?

 あの人数……たった12人で、しかも疲労困憊の状態で、階層ボス戦とか。

 しかも、経験に乏しく、ノウハウもろくにないであろう身で。

 

 そんなん自殺と同(日記はここで途切れている)

 

 

☆☆☆

 

 

 最初に、異変に気づいたのは……ストレアだった。

 

 何かを察知したように、はっと顔を上げ、『軍』が去っていった方を見つめている。

 その目には……彼女には珍しい、戸惑いのような感情が見て取れた。

 

(……これは……恐怖、絶望、後悔……とっても、多くの……!)

 

 それに気づいたキリトが、何事かと問いかけようとした……その時。

 

「? ストレア? どうかし―――」

 

 ―――うわああぁぁああっ!

 

「「「っ!?」」」

 

 ……安全地帯まで聞こえてきたのは、明らかに人間の悲鳴だった。

 

 キリトとストレアを含む全員が、それに驚きつつも、直前に起こったことを思い出し……今の悲鳴が一体どこで、どういう理由で上げられたのかということに、全員が思い当たった。

 

「馬鹿……っ!」

 

 絞り出すように言うと同時に、まずアスナが、次いでキリトが走り出す。

 それに続く形で、その場にいた『風林火山』と、さらに『保護者会』のメンバーも全員が、2人の後を追って安全地帯を飛び出した。

 

 途中に湧いて出たMobを蹴散らしつつ、すぐにたどり着いたそこは……大きな扉が観音開きになっている、見間違いようもない『ボス部屋』。

 そしてその中で……今さっき見送った『軍』の男達が、予想通りに壊滅状態になっていた。

 

 その光景を見て、カインズはいらだちを隠そうともせずに言った。

 

「本当にっ……たった12人でボス部屋に挑んだのか!?」

 

「1、2、3……っ、10人しかいない……!」

 

 次いで、素早く部屋の中の人数を数えたヨルコが、悲鳴をこらえたように言う。

 先程見かけたプレイヤー数は、カインズも言った通り12人、2パーティ分だった。しかし、今、残っているのは10人。

 

 つまり……すでに2人、ポリゴン片になって砕け散ってしまった者がいるということだ。

 

 それをやったのは、部屋の中央にいる……ヤギの頭に人型の体、尻尾が蛇になっているあの青眼の悪魔だろう。名前は……『ザ・グリームアイズ』。

 

 右手に持った巨大な剣――斬馬刀を振りかざし、部屋の中に灯った青白い炎の光に照らされて咆哮を上げる……第74層の階層ボス。予想通り、剣を使う人型のモンスターだった。

 

 その迫力にすくんでしまったように、『軍』は誰も彼も、倒れたまま、あるいは立っていても足がすくんで動けない者達ばかりだった。

 

「何してる! 早く転移結晶で脱出しろ!」

 

 キリトがそう怒鳴るように言うが……よく見れば、手にその『転移結晶』を持っているプレイヤーが何人かいる。後は、転移先を唱えるだけでこの死地を脱出できる状態だ。

 にも関わらず、そうしないということは……

 

「ダメだ! 転移結晶が発動しない!」

 

「……っ! クリスタル無効化エリア……!?」

 

「ボス部屋にだと!? そんな話は聞いたこともないぞ!?」

 

 その言葉に愕然とするグリセルダと、信じがたいという表情になるクラディール。

 

 しかし、現実に今、結晶による脱出や回復ができず……『軍』は窮地に陥っていた。

 そんな彼らに対し、また1人か2人、命を刈り取らんと、悪魔は剣を振り上げ……

 

「ダメ――――っ!!」

 

 その背に飛びかかったアスナのソードスキルが、悪魔の背を穿った。

 ダメージはほとんど入っていないが、今ので標的を変更したのだろう、『ザ・グリームアイズ』はその身を反転させて後ろを向き、まだ空中にいて無防備なアスナに対して、剣を振り下ろし……

 

「アスナっ!」

 

 しかし、素早くその間に割り込んだキリトが、その剣を受け止める。

 

 咄嗟のことだったため、『弾き防御(パリング)』まではできていないが、自分もアスナも傷を負うことなく防御に成功する。

 

 しかし、再び邪魔をされたことに憤るかのように、悪魔は今度は横凪ぎに剣を振るう。

 だがここで、後ろから2人を追い抜いて前に出たナツメが、青い凧盾を振りかざしてそれを受け止めた。

 

 そして、今度はタイミングが完全に見切っての防御だったのだろう、ギィン! という金属音と共に、『ザ・グリームアイズ』は『パリング』で剣を跳ねあげられ、大きく体勢を崩した。

 

「畜生……もうどうにでもなりやがれ!」

 

 そんな声と共に、クラインが、『風林火山』が、

 そしてクラディールや、グリセルダ達『黄金林檎』が、参戦を決めて部屋に飛び込んでくる。

 

 まだ体勢を立て直せていないボスに向けて、クラインとクラディールが剣を振りぬいてダメージを刻んでいく。

 その間に、グリセルダがよく通る声で『軍』に呼びかける。

 

「このボスは私達が抑えます、今のうちに早く、入り口から脱出を!」

 

「何を言うか! 我々解放軍に撤退の文字はない! 立て! 戦うのだ!」

 

 しかし、部屋の反対側から響いてきた、正気を疑う内容の声がそれを遮った。

 

 驚愕の表情と共に、グリセルダと、彼女と共に『軍』の救助に当たろうとしていたカインズ、ヨルコの2名がその声のした方を見ると……案の定そこに立っていたのは、指揮官のコーバッツ。

 

 この状況で戦闘継続ができるとでも思っているのか、とグリセルダが問うより先に、

 

「全員……突撃ィ!」

 

「おいバカ、よせ!」

 

 カインズの怒号も空しく、軍の兵士たちは、手にした武器にソードスキルの光を灯し、背を向けているボスに向けて、半包囲するような形で殺到する。

 

 命令に忠実……というよりは、いちいち考えている余裕すらないようだ。恐慌状態といってもいい、冷静な判断とは無縁の状態である。

 

 しかし、当然ながら、それら全てが命中したところで、ボスのHPはほんのわずかしか削れておらず……その直後、硬直状態だったボスの動きが回復したかと思うと、再び後ろを向いた。

 

「………………見捨てたい。あのバカ共……」

 

「冗談に聞こえないからやめようか、ナツメ君……」

 

 ぽろっとこぼれたナツメのつぶやき――冗談か、あるいは本音かは本人のみぞ知る――を咎めるように言うクラディール。

 

「つかやべえぞ! またタゲが『軍』の連中の方に……」

 

 クラインが注意を喚起しようとするが、時すでに遅く……振り向きざまに放たれた斬馬刀の一撃は、軍の兵士たちの半分以上を薙ぎ払って吹き飛ばし……一番先頭にいた1人が、ひときわ大きく吹き飛ぶ。剣に引っ掛けられるような形になり……反対側のこちらまで飛んできた。

 

「あり……えない……」

 

 そんな、断末魔にしてもあんまりな言葉を残して……コーバッツの体は砕け散った。

 HP全損、死亡。この世界でも……現実でも、だ。

 

 幸いと言っていいのか、今の一撃で逝ったのはコーバッツだけだった。

 残るメンバーは、全員HPが赤色になっているが、まだ命は残っている。

 

 自分達の指揮官が、無残にもポリゴン片になって散っていった光景に、『軍』の兵士たちの恐慌はさらに深刻なものになっていく。

 

 それを見ていたキリトは、全体に響くように声を張る。

 

「っ……お前らの指揮官は死んだ! 下されていた命令はこれで無効だろ! 早く立って逃げろ、じゃないと本当に全め「だめだよ、キリト!」つ……え? ストレア?」

 

 しかし、それを遮ったのは……今までに見たことがないほど辛そうな表情になっているストレアだった。歯を食いしばり、愛用の両手剣の柄を、ぎし、と音がするほど強く握りしめている。

 

「あの人たち……もう、怖くて苦しくて、動ける状態じゃないよ! 無理に動かそうと、逃がそうとしても絶対にうまくいかない! 余計に大変なことになるよ!」

 

「道理だな……折れた心はすぐには元に戻らん。あの状態の人間に冷静に物事を考えさせるのは無理だ、どうしても感情と本能が出てきて邪魔をする」

 

「じゃあどうしろって……おいおい、まさか……」

 

「……それしかないですかね、これは……逃げられないなら、逃げなくてもいいようにしてしまうしかありませんか」

 

 クラディールとクライン、ナツメがそう続けつつ……再度『ザ・グリームアイズ』を背中から切り付けてヘイトをこちらに集める。

 その後、再びナツメがタンクを行いつつ、2人は攻撃に集中する形に戻した。

 

 その間に……キリト達もまた、今自分達がやるべきことを理解した。

 

 

 ここにいるメンバーで、『ザ・グリームアイズ』を倒すしかない、と。

 

 

「俺とアスナに、クライン達『風林火山』6人、『保護者会』パーティ6人……合計14人か」

 

「ごめんなさい、キリト君。ヨルコとカインズは除外して頂戴。2人ではこのボス相手はまだ力不足だわ……『軍』の人たちの回復・保護作業もしなきゃいけないし、そっちに回すから」

 

「じゃ、さらに2人引いて12人かよ……おいおい、コーバッツのこと笑えねえぞこりゃ」

 

 1人1人は粒ぞろいとはいえ、本来、6人パーティを8つの、48人フルレイドで挑むべき難易度である階層ボスに、そのわずか4分の1の人数で挑む。

 口にすることすらはばかられるような、あまりにも無謀な話だった。

 

 何せ、実際にやったらどうなるかというお手本の光景が目の前にあるのだから。

 

 それでも、これ以上の犠牲を避けようとするなら、それ以外に手はない。

 

 そう理解し……誰とは言わないが、ここで、ある覚悟を決めた者がいた。

 この窮地を乗り切るには……自分が今まで隠していた、ある『切り札』を切る他ないと。

 

 

 

「「「「「「使うしかないのか……あれを!」」」」」」

 

 

 

 ………………

 

 

 

「「「「「「…………えっ?」」」」」」

 

 

 

 ただし、隠していたのが1人だけだとは限らない。

 

 

 

 

 




次回、本作屈指の原作ブレイク開始

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