ソードアート・オンライン 青纏の剣医   作:破戒僧

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第27話 SOS 決勝トーナメント

【2024年10月17日】

 

 えー、今日は『SOS』2日目。

 『決勝トーナメント』の1日目でもある。

 

 午前中、最初1人で、途中から偶然ばったり会ったヨルコさんと一緒に回ることになったものの、普通に楽しく回ることができていたと思う。僕が既に昨日回ってるから、色々案内できたし。

 

 しかしその途中でキリト君からメッセージが入り……この楽しい祭りの中に紛れて、世にも恐ろしい書籍を売っていた店があると知った時は、感情が丸ごと抜け落ちるほどに僕の中に殺意が満ち満ちていくのが感じられて……しかし、その力が振るわれることは結局なかった。

 

 コンディション最悪のところだったが、ヨルコさんに一生懸命励ましてもらって、よし、切り替えていこう、という気分にはなれたので……どうにか大会開始時刻までにはなんとかなった。

 全く、質の悪い連中がいたもんだ……。

 

 

 それはさておき、『SOS』である。

 

 

 午後から始まった『決勝トーナメント』は、無事にというか、大きな混乱もないままに進み、1回戦、2回戦ともに無事に終了した。

 

 以下、試合結果を簡単にまとめてみました。まずは一回戦から。

 

 

『第1試合 キリトVSココア』

 

 ココアちゃんっていうのは、元・中層のプレイヤーであり、グリセルダさんが主にお世話をしていた子だ。最近『攻略組』に加わって活躍していると聞いている。

 

 僕も面識のある子だが、中々強い子だったと思う。

 予選を勝ち抜いてここに来ていることからも、それは明らかである。

 

 もっともそれでもさすがにキリト君には手も足も出ず、開始から1分と経たずに負けてしまっていたけど。まあ、そりゃ仕方ないよな。

 

 ただ、あの子キリト君こと『黒の剣士』のファンでもあるから、試合前からすごい『憧れてます的オーラ』出まくってて、ちょっとキリト君戦いづらそうだったな。

 何度か、明らかにチャンスなのに打ち込んでいかないことがあったし、なるべく痛くないように(SAOに痛覚はないけど、視覚的に)さくっと決めてHPを半分まで持っていってたし。

 

 そしてそれを見て観客席のアスナさんが白眼視になっていたのは気付いただろうか、彼。

 

 あ、ちなみにこの『決勝トーナメント』、ルールは基本的に昨日の予選と同じだけど、1点だけ変更点があり、決闘のルールが『半減決着』になっている。

 あまりすぐ終わるとエンターテイメント的にアレだ、っていう理由からだ。

 

 もちろん、それだと『初撃決着』よりも危険性は増すが、この決勝トーナメントに出場しているメンバーはそこまでレベル差がある人はいないし、極端に一撃の火力があるソードスキルは禁止になっているので大丈夫だろう。

 

 しいて言えば、武器の火力最大の両手斧が多少不安だったかもしれないが……唯一その使い手だったゴドフリーさんは、後から書くけど僕が既に倒したのでもう問題ないし。

 

 

 

『第2試合 ストレアVSキバオウ』

 

 こちらも見ごたえのある勝負だったが……経験の差だろうかね、ストレアさん勝利。

 

 キバオウさんも熟練らしい強さをきちんと発揮してはいたものの、さすがにバリバリ最前線で戦っている彼女には及ばなかったか。

 戦闘センスやステータスも彼女の方が上だったようだし、これは仕方ない。

 

 しかしストレアさん……いつもそうではあるけど、あの露出激しい衣装のまま縦横無尽に動くから、色々と揺れて……うん、まあ、男性ならアレに目が行くのは仕方ない部分もあるんだろうな。

 

 キバオウさんの敗因の1つはそれだという気がしなくもない。

 ムキになってより苛烈に休みなく攻めるから、それをばばっとかわしたりいなしたりするストレアさんの動きもより激しくなるわけで。目がいくわけで。

 

 ちなみに僕も、全く気にならないわけじゃないし、知り合って最初のうちは目をとられることも多かったが……最近は平気である。

 いや、別に強がってるんじゃなくて、もともとリアルがね。そんな感じだったし。

 

 医者なんかやってると、いちいち患者さんの裸ぐらいであたふたなんかしてらんないもの。

 

 時には服の下の裸体の、さらにその中身まで開いて見なきゃいけないのが外科医だ。

 ……いや、まあ、それはジャンルが違うか。

 

 ともあれ、そんな感じでストレアさん勝利。

 あと、会場の男性たちの視線もアレなことになっていたため、MCのユナさんと解説のアルゴさんが若干毒舌でした。

 

 それとキリト君、興味ないふりして横目でちらちら見てましたね。バレバレです。

 アスナさんも気づいてました。後のご機嫌取りがますます大変そうである。

 

 

 

『第3試合 グリセルダVSセバ』

 

 残念ながら、グリセルダさんの『統率』は、一対一の戦いで使えるものではないので、それのお披露目はできなかったものの……普通にレベルの高い者同士の戦いだったので、見ごたえ十分。

 

 『攻略組』に所属するセバさんは、以前僕のカウンセリングに来たことがある上、希望してうちの病院の手伝いをしに来ている子なので、よく知っている。

 

 礼儀正しくていい子なんだが、若干過激なところがあり、以前病院に悪質なクレーマーが来て、サチさんが対応に困っていたところ、『何かキモイんで撲殺(ボコ)りますネ』の一言と共に、愛用のハンマーで笑顔で滅多打ちにして撃退していた。サチさんもちょっと引いていた。

 まあ、アレはそうならなくとも僕が撃退していたので、全然かまわないのだが。

 

 盾持ちのメイス使いで、時に堅実に、時に大胆に攻める、色々な意味で将来有望だなと思った子なのだが……やはりグリセルダさんにはかなわず、1回戦敗退となった。

 

 しかし、そのグリセルダさんの剣術を見ていていつも思うけど、完成度高いわ。

 体さばき、足運び、敵の行動を先読みして防御と回避、パリングなんかを的確に使い分け、その動作1つ1つの無駄がとても少ない。

 

 リアルでは特に武術も何も経験ないって言ってたけど……もともと才能あったのかな。

 

 

 

『第4試合 ゴドフリーVSナツメ』

 

 自分のことを詳細に書いてもアレなので簡単に。

 

 ゴドフリーさんといえば、『血盟騎士団』のフォワード隊のリーダーであり、こないだの会議ではクラディールさんと真っ向からバトルを繰り広げた人物である。

 

 しかし、別に嫌な奴という感じではなく……何というかこう、一直線すぎるというか、熱血極まりないというか、暑苦しいというか……単なる体育会系とでも言えばいいのか、うん。

 

 こないだ会議で意見がぶつかったことも、もう欠片も引きずっていなくて、がっはっはと笑って『今日はよろしくな! 手加減せんぞ!』なんて言ってきたし。

 

 気風はいいが……一度意見がぶつかると、自分が正しいと思っている部分では絶対引かないし、理性や理屈じゃなく感情で動くことも多いから、そこが厄介なタイプだ。

 気合と根性で万事はどうにかなると信じている気配もする。

 

 リーダーシップはあるが、上官に向いていない部分も多々ある……という感じだな。

 

 結論。悪人ではない。ただしタチが悪い。

 

 そんなゴドフリーさんだが、両手斧でパワフルに攻めてくるド迫力のバトルが持ち味だったが……自分で言うのもなんだが、僕相手じゃ相手が悪かったとしか。

 

 かわしたと思ってももう1歩踏み込んできたり、太刀筋を微妙にずらして当ててきたりと、見た目に寄らず器用な戦い方もできる人だった。加えて、その攻撃力ゆえに、盾で防御してもその上から押し通してダメージを与えてくることもできた。

 

 さすがは『血盟騎士団』の幹部クラス。名前だけじゃなかったってことだ。

 

 ……が、普通のプレイヤーならそれで押し切れたであろうけども、僕の防御を崩すには足りなかった。フェイントも追尾も見切れる範囲だったので、パリングかウェポンバッシュで叩き落してカウンターを叩き込む、ということを繰り返して勝利した。

 

 ……ちょっと調子に乗って、エンターテイメント性を出すために色々やったけど。

 

 特撮ヒーローの立ち回りみたいに、無駄に回転して斬り付けてみたり、わざとコートの裾をバサッと翻したり、わざと追撃せずに『見栄切り』みたいにタメを作ったり。

 

 ゴドフリーさんが振り回した斧をひらりとかわして、その上に『しゅたっ』て飛び乗った時が一番盛り上がった気がするな。

 キリト君やケイタ君達の目が輝いていた気がする。そういうのが好きなんだろうか。

 

 そんな戦いの果てに敗北したゴドフリーさんだったが、『いやー負けた負けた!』と、やっぱり気にした様子はなく笑っていた。

 

 

 

 ちなみに、試合中のMCと解説者のトークの中で知ったんだけども……いつの間にか僕についていた二つ名『青纏』について。

 

 名前の由来は、まあやはりというか、僕が主に青い服に青い装備だから。キリト君と同じか。

 

 しかしそれに加えて……こないだの第74層のボス戦において、『武芸百般』をフルに使って戦った結果、終始とは言わないまでも、ずっとソードスキルの青い光を纏いっぱなしで動いていたことも由来であるらしい。

 

 『青』を『纏う』と書いて『青纏』ってことね……誰が考えたんだろうな、ホント。

 

 なお、他の呼び名としては『界王拳』とかも候補に挙がってたらしい。いや、技名だし……そもそも赤だろアレ。

 ……『体術』スキルで『武芸百般』使えばそれっぽくなるかな? 今度ちょっと試してみよう。

 

 

 

 さて、話がわき道にそれたけど、

 

『第5試合 アスナVSシグレ』

 

 シグレさんは、クラインさんと同じ『風林火山』所属のプレイヤー(男)である。

 彼同様、『攻略組』として最前線で戦っているだけあって、その実力は確かなんだが……今回は相手が悪かったとしか言えないだろう。

 

 あと、間も悪かった。

 

 さっきからキリト君が、ココアさんとの戦いでちょっと照れくさそうにしてたり、ストレアさんの試合で彼女の一部分の揺れに視線を奪われてたりしていた結果……アスナさん、おこでした。

 

 そのせいでシグレさん、開幕から手も足も出ないままにアスナさんの細剣に刺され斬られ抉られ、最終的に『フラッシング・ベネトレイター』での9連撃でハチの巣にされることに……

 

 完全に八つ当たりである。

 シグレさんがトラウマになっていないことを祈るばかりだ。

 

 なお、その試合を見たキリト君の顔が一層青くなっていたことは言うまでもない。

 

 

 

『第6試合 クラインVSモグラ』

 

 クラインさんの説明はいいとして……対戦相手のモグラさん。

 彼女もまた、元・中層プレイヤーで、顔見知りである。両手剣使いで、バトル以外にも採取作業が好きな子だったな。

 

 もしこの世界が某ハンティングアクションの世界だったなら、嬉々として彼女は火山や砂漠、雪山の洞窟にこもって鉱石を掘りまくる、いわゆる『炭鉱夫』ライフをやっていただろう。

 

 ……それが高じてか、彼女の装備、『安全第一』って書かれてそうなヘルメットに加え、両手剣『スペードライフ』は、どう見てもスコップにしか見えない形状なんだよな。

 

 ただ、それ以外の装備が……ちょっと布面積が小さいというか、露出が多くて……正直、無防備すぎる感じなのである。上半身の胸鎧はともかく、下半身なんかスパッツみたいだし……クラディールさんは会うたびに苦言をこぼしていた。

 

 で、クラインさんはそんな彼女と戦い、最終的には勝ったものの……その服装と、健康的な色気?みたいなものに勝手に翻弄され、結構な辛勝だったように思えた。

 

 彼女自身は、色気がどうこうとか微塵も思っておらず、正真正銘、ただ単に動きやすいようにっていう理由なんだよな……あの無自覚さというか、自分の格好や周囲の反応への鈍感さは……ストレアさんに近いものがあるかもしれない。

 

 ただ、クラインさんの名誉のために言わせてもらうと……彼の苦戦の理由は、何も色気に惑わされたばかりじゃないと思う。

 

 どう見ても意図的に……彼女の、素肌の部分を攻撃するの、避けてたからなあ。

 

 自分の武器である鋭い刀で、アバターとはいえ女の子を斬りつけるのに抵抗があったのかもしれない。クラインさん、普段は軽いと言うか、お調子者なところあるけど……根っこは紳士的で、優しくて面倒見もいいから。

 

 会場の女性たちの多くに白眼視されていたクラインさんだが、僕はその辺は覚えておいてあげることにしよう。

 

 

 

『第7試合 クラディールVSシュミット』

 

 うん、これはもう……仕方ないとしか言いようがない。

 

 シュミットさんは、元『黄金林檎』のメンバーであり……しかし、最前線の『攻略組』に加わりたいという強い希望を持っていたがゆえに、惜しまれつつも脱退した人だ。

 

 送別会には僕も招待された。グリセルダさんが『向こうに行っても元気でね』って、レアドロップ品の腕輪――VITが20も上がるタンク垂涎の品――を餞別にあげて、シュミットさん感激して泣きそうになってたっけ。いや、その後結局泣いてたな。

 

 『元気で行ってまいります!』って、涙声で敬礼してて……特攻隊みたいで縁起でもない、ってその時ちょっと不謹慎なことを思ってしまったのを覚えている。

 

 その後、『聖龍連合』に入り、現在ではそこの幹部、タンク部門のリーダーをやっている。

 ガンガン腕を上げて、今ではアインクラッド全体でも屈指の堅牢さを誇るタンクとして有名だ。

 

 なので、今大会でも相当期待されてたわけなんだが……流石に相手が悪かった。

 

 だって、その防御を貫通してくるクラディールさんの『斬鉄剣』が相手じゃ……さあ……。

 

 防御が売りのタンクが、その防御が最大の弱点になってしまう相手と当たってしまったのは……もうこれは運がなかったとしか言いようがない。

 

 技量も低いわけじゃないんだけど、それだってクラディールさんが上だったし……。

 

 ……反省会とかでやけ酒するなら付き合おうかな、とか考えていた。

 

 

 

『第8試合 ケイタVSヒースクリフ』

 

 一回戦の最終試合なわけだけど……これはもう勝負にならなかったな、さすがに実力が違いすぎた。

 

 ケイタ君にとってヒースクリフさんは、まさに雲の上の存在、憧れのヒーローって感じの人だから、試合開始前からもうそりゃガッチガチだった。

 実力差だけじゃない部分が理由で、緊張しまくっていた。

 

 それに対してヒースクリフさんは余裕たっぷりの落ち着いた態度。

 それで実力差も開いてるとなれば、もう勝負にはならないのは当然だと言えた。

 

 というか、何か途中から……

 

『踏み込みが甘い!』

『はい!』

『今のフェイントにつられてしまうようでは前線は戦えないぞ!』

『ぐっ……は、はい!』

『もっとだ、もっと全力で打ち込んで来い! 一撃一撃に己の意思を込めるんだ!』

『はいっ! うおおぉぉおおっ!!』

 

 何やってんのあんたら。

 なんかもう、ヒースクリフさんがケイタ君に稽古つけてるみたいになってるし。

 

 しかしヒースクリフさん意外とノリいいのな。某テニスプレイヤーを彷彿とさせる熱血指導だ。

 

 最終的に、疲労困憊になったケイタ君に激励の言葉を送りながら一太刀を浴びせて、決着。

 

 しかし、敗北したはずのケイタ君の表情は晴れやかだった。

 ……まあ、当人たちが納得してるならそれでいいんだけどさ。

 

 

 

 さて、ここまでが一回戦。

 続いて、順次行われた二回戦の方に進もうか。

 

 

 

『第一試合 キリトVSストレア』

 

 この試合に限ったことじゃないけど、一回戦を勝ち抜いた者同士だけあって、見ごたえのある試合だったな。

 

 勝ったのはキリト君だけど、ストレアさんも相当なもので、二刀流スキルをフルに使ったキリト君の攻撃を、途中までとはいえ上手くさばけてたし。

 

 ……例によって胸部装甲が揺れて、対戦相手のキリト君のみならず、会場の男性の皆様の視線をくぎ付けにしてた(無自覚)感じだったけども……しかし、キリト君はそれ以外にもちょっと理由があって、いつもより動きがぎこちないところがあったな。

 

 手数の差が圧倒的であるにも関わらずストレアさんがかなり食い下がったのは、その部分のキリト君の不調が関係していなくもないかもしれない。

 

 何かっていうと……ストレアさん、試合前にキリト君にこんなこと言ってたんだよね。

 

『勝った方が負けた方に何でも1つ命令できるってことにしない?』

 

 ……さて、この『何でも』の部分でキリト君は何を想像したのかわからないが……最初の方特に、彼の剣筋がいつもよりブレていた気がするのは果たして偶然か否か。

 

 ……それと、観客席のアスナさんが笑顔で発していたプレッシャーも要因の1つかもしれない。

 

 ともあれ、キリト君は無事勝利し、次に歩みを進めた。

 

 ちなみに、『何でも1つ命令』の権利をどうするかについて、ストレアさんまた怖いもの知らずなことで、堂々と試合後、コロシアムのど真ん中で聞いてきてて……下手なことを言うわけにもいかず、キリト君は無難に『女性プレイヤー同伴が条件のクエスト手伝ってくれ』と言っていた。

 

 けど結局後で『私じゃダメなの!?』ってアスナさんに怒られてた。

 

 

 

『第二試合 グリセルダVSナツメ』

 

 例によって自分のことなので、多くは語らない。

 勝ったのは僕だった。

 

 特筆すべき点を言うなら……今回の試合、グリセルダさんがいつもの盾持ち片手剣だったのに対し、僕は違う武器……『槍』で戦ったことくらいだろうか。

 

 僕が盾持ち片手剣ではない装備で出て来たことで、ちょっと会場がざわついてたな。

 

 バトル漫画とかなら、本来の武器と違うもので出てきたりした日にゃ、『舐めてるのか!?』なんて対戦相手に怒られるのがパターンだけど、グリセルダさんはそんなことはしなかった。

 

 むしろ、警戒をより一層強めていたくらいだ。

 

 知ってるからね、彼女は……僕に苦手な武器がないってことを。

 

 そして、ユニークスキル『武芸百般』を持っている僕からすれば、そのスキルを育てていようがいまいが、あらゆる武器はメイン武装足りうる力を発揮するということを。

 

 実のところ、そのへんの俗な理由もある。

 この大会はもともと『ユニークスキル持ち』の強さを見せつける理由もあるからね。

 

 キリト君であれば二刀流でソードスキルも使って戦う、アスナさんであれば超早く動く、クラディールさんであれば防御を真っ向からぶち抜く、って感じで、それぞれの強みをパフォーマンスとして見せる……否、『魅せる』ことが大事なのだ。

 

 なので僕は、さっきとは違う武器でこうして戦うことにしたということである。

 

 結果は僕の勝ちだったけど……さすがにグリセルダさん、巧かった。

 何回かヒヤッとさせられた場面があったな。

 

 特に、1回戦で僕がやったみたいに……グリセルダさんが、僕が振りぬいた槍に『しゅたっ』と着地した時なんかは。

 

 盛り上がる観客たちの大歓声の中、グリセルダさんはそのまま槍の上をこっちに走ってきたけど、僕はとっさにその状態でソードスキルを発動して、彼女を振り落とすのと追撃するのを同時にやって……それが決定打になったんだっけ。

 

 しかも、通常と違う姿勢で使ったから、ジャンプして空中で繰り出すことになって……同じく空中にいながら器用にもソードスキルを繰り出したグリセルダさんと、空中で交差する形でお互い最後の一撃を繰り出すという、バトル漫画のラストみたいな決着の仕方だった。

 

 見ごたえはあったようで、観客の皆さんにも喜んでもらえてよかったよかった。

 

 

 

『第三試合 アスナVSクライン』

 

 この試合だが、ちょっとそれまでの試合とは違う感じの試合運びとなった。

 

 というのも、試合開始前に『ちょっと待った!』とアスナさんからレフェリーにストップが入り――あ、今更だけどレフェリーやってるのはノーチラス君である――ルールの一部変更が提案されたのだ。

 

 この試合だけ、ルールを『初撃決着』にしたい、と。

 

 しかしこれは、何か策略があってそうしたというわけではなく……むしろ、正真正銘の真っ向勝負のための提案だった。

 

 僕も使うから知ってるんだが……『刀』のソードスキルには、『居合』系のそれが一部存在する。抜刀の一撃で終了してしまう代わりに、攻撃スピードと威力が高いのが特徴だ。

 

 仮にそれを、クラインさんのユニークスキル『武士道』でブーストすれば、そのスピードと威力はさらに驚異的なものになるだろう。

 

 ここまで言えばわかると思うが……アスナさんが望んだのは、一撃決着のスピード対決だ。

 

 『神速』でトップスピードまで加速した自分の一撃と、『武士道』でブーストされたクラインさんの居合切り……どっちが速いかという、まさに『決闘』と言える勝負である。

 

 クラインさんもその申し出を、俄然やる気を出して快諾。

 

 実行委員会にも伺いを立てて特例で認められ……その勝負は行われた。

 

 まさしく『閃光』の名の通りに、剣の軌道が一条の光になって矢のように放たれ……それを、鞘から抜き放った一撃が切り払わんと迎え撃つ。

 

 交錯は一瞬。次の瞬間には、前後関係が逆転し、2人とも武器を振りぬいた状態で立っていて……一拍遅れて、システムアナウンスがアスナさんの勝利を告げた。

 

 しかし、アスナさんの胴体にもダメージエフェクトである赤いラインは深々と入っていて……本当にコンマ1秒以下の差で決まったんだな、ということがよくわかった。

 

 最後に闘技場の中央で握手して、互いが互いの健闘をたたえて試合終了となった。

 

 

 

『第四試合 クラディールVSヒースクリフ』

 

 クラディールさんからすれば、一回戦と同様の『硬い相手』だが……今回はさすがに、相手の技量が違いすぎた。

 

 防御力以外にも、プレイヤースキルがそもそも段違いであるヒースクリフさんは、単に受けるだけで防御したりはせず、受け流したりかわしたり、攻防に緩急をつけてきたもの。

 

 クラディールさんも善戦したものの、一瞬の隙を突かれて連続攻撃を叩き込まれ、HPが半分を割って敗退した。

 

 ……あと、今回初めて見たけど、ホントにヒースクリフの『神聖剣』って、盾での攻撃もダメージ入るんだな……。クラディールさんも、それで意表を突かれてた感じだったし。

 

 ……ふーむ、なるほど。

 

 …………面白そうだ。

 

 

 

 さて、今日はここまで。

 

 明日はいよいよ『準決勝』そして『決勝戦』である。

 

 ……キリト君とか……。

 

 どうせなら、僕だけじゃなく、見てる方も……そうだな、それこそ対戦相手のキリト君も楽しめる試合になれば一番いいな。

 

 よし、『アレ』、解禁しよう。

 

 

 

 




・反省点その1
ゲーム版から逆輸入したキャラの説明に力を入れすぎた感があるかも……しつこかったりくどく感じたらすいません。
ココア、セバ、モグラのビジュアルは検索すれば出るかも。シグレは……どうだろ。

・反省点その2
折角ユナさんとアルゴさんを実況解説席に置いたのに、日記形式だから出番なかった……楽しみにしてくださってた方々すいません。
でもコレ1試合ごとピックアップすると超長くなりそうなんですよね……
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