ソードアート・オンライン 青纏の剣医   作:破戒僧

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いつの間にやら50話まで来ました……皆様のご愛読と応援に感謝しつつ、これからも書いていきたいと思います。勢いとSAO熱の続く限り……

ここから一気にALO終盤まで駆け足で行きます。


第50話 グランドクエストという名の茶番

 その日、ついに開幕した『グランドクエスト』。

 

 世界樹内部の大空洞に、サクヤ達シルフ勢21名、アリシャ達ケットシー勢21名、そしてゲスト参戦枠とも呼ぶべき、キリトやナツメ達7名が加わり、49人での攻略が始まった。

 

 前情報の通り――幾人かは以前に失敗した経験もある――凄まじい数のガーディアンが襲い来る中、事前に何度も確認し、訓練した戦術の通りに、シルフもケットシーも駒を進めていく。

 

 両陣営のタンク部隊が、前方から突撃してくるガーディアンを抑え、攻撃部隊と後方からの魔術部隊が一掃する。

 

 より多くの数が纏まっている所には、ケットシーの秘密兵器である『ドラグーン隊』……テイムしたドラゴンを駆る彼らが、一斉にブレスを吐きかけて消し飛ばしていく。

 

 シルフ達も負けていない。見事に統率された部隊が、サクヤの指揮のもと、縦横無尽に……しかし、完璧に連携して攻撃を加える。そこにさらに連携して放たれる強力な風と雷の魔法が、龍の息吹もかくやという勢いでガーディアンを切り刻み、焼き滅ぼし、道を切り開く。

 

 それらの先頭に立って猛威を振るっているのは、やはり……キリト達だった。

 

 SAOという、HP全損が現実での死に直結する地獄のような世界で、彼らが磨き上げた剣術は、シルフ・ケットシーの精鋭たちが揃えられている部隊をして、一線を画すほどのレベルだ。

 

「おぉおおお―――っ!!」

 

 縦横無尽に飛び回り、剣を振るって恐るべき速さでガーディアンを切り刻むキリトを筆頭に、

 

「次、11時方向に行きます! 行けますか、エリカさん?」

 

「問題ないわ、合わせてついていくから好きに動いてちょうだい!」

 

 シルフ五傑の名に恥じぬ剣の冴えを見せるリーファ、その背中を守る形で連携して戦うエリカ、

 

「とりゃああぁーっ! どんなもんだっ!」

 

 種族特性ゆえに、単発の火力ならキリト以上のストレアは、ソードスキルの名残を思わせる剣技でガーディアンを両断し、

 

「ストレアさんちょっと前に出すぎです! 10秒以内に元の地点まで下がって範囲攻撃による迎撃用意! ナツメ先生、デュークさん、フォローを!」

 

「あ、ごめん、ヨルコ。了解」

 

 やや後方に位置取って戦っているヨルコは、師譲りの指揮能力で、状況に応じてメンバーに適切な指示を出し、位置取りや戦力分布を調整する。

 

「おっと……それ以上近寄らないでくれたまえ」

 

「あー、っと、あっちからも出て来たか。何て数でしょうねホントに……」

 

 手にした弓矢『ソニックアロー』から、猛烈な速さで炎の矢を連射するデュークに、盾で的確に攻撃を防ぎつつ、カウンターとして放つ剣撃でガーディアンを切り裂いていくナツメ。

 SAOでも猛威を振るった精密攻撃は健在で、冗談のような頻度でクリティカルが発生している。

 

 そしてどうやらそれは兄弟共通の技能だったようで、デュークが放つ弓矢の一撃もまた、連射速度から考えるとおかしいほどにクリティカルが付随している。

 

 2人の周囲だけ、通常の戦闘のエフェクト光と明らかに別種なそれが巻き起こっていた。

 

「にしても……古参だとは聞いてたけど、デュークも強かったんだ……なっ!」

 

 前線のガーディアンの密度が上がってきたため、切り払いつつ、一旦ヨルコの指示で後退したキリトが、そう聞いた。

 

 現在、彼はナツメと肩を並べ、SAOの時と同様、アタッカーとタンクという形で連携して戦っている。懐かしく、そして抜群に戦いやすい連携だった。

 そして今回はそれに、遠距離版のナツメとも言うべき、デュークの支援まで加わっている。

 

「まあ、私の場合はプレイヤースキルに物を言わせた形だがね、器用さには自信があるんだ」

 

 軽口を叩きながら、1秒間に2~3発のペースで矢を連射し、その全てがガーディアンをの装甲の頭部の隙間に吸い込まれてクリティカルの光が飛び散るのを見て、キリトは戦いながら唖然とするという器用なことをしていた。

 

「ナツメもそうだったな……それに、集中力も。やっぱ医者ってそのへん鍛えられるのか?」

 

「どうでしょう? まあ、外科医が手術中に集中力切らしたら患者が死にますから、そのへんはむしろ持ってなきゃ困る技能ですが……他人の水準と比べたことはないので何とも」

 

「……パパ、お話し中すいません」

 

 その時、キリトの胸ポケットに隠れていたユイが、神妙な声音でキリトに話しかけて来た。

 

 その声から、大体の事情を悟ったキリト。その近くにいる、ナツメとデュークも同様だった。

 恐らくは……悪い予感が当たったのだと。

 

 そしてそれを裏付けるように……これまでを上回る規模で、前方にさらに大量のガーディアンがPOPした。

 

 後方にいるシルフやケットシー達からも驚きの声が上がるが、恐らくは以前も目にした現象だったのだろう。双方の領主が檄を飛ばすと同時に、すぐに動揺は収まり、迎撃体勢にシフトしていく。

 

 しかし、同じように落ち着いているように見えても、実の所違った理由から静かにしているナツメ達は、目を細め……ユイが、そこに報告を続けて言った。

 

「15秒ほど前、グランドクエストを実行しているプログラムに、GM権限による割り込みを観測しました。あらかじめシステムに設定されていた、半自動のもののようですが……後付けで難易度の変更と、追加のPOPが実行されたようです」

 

「あーあー……やってくれましたね、やっぱり」

 

「須郷……っ!!」

 

 予想していたこととはいえ、キリトは、ALOを純粋に楽しもうと頑張っているプレイヤーを裏切る所業に、憤りを隠せない様子だった。やはり運営は……須郷は、このグランドクエストを最初からクリアさせる気はないのだ。世界樹直上に届かせないための、単なる防壁兼、ALOにプレイヤー達をつなぎ留めておくための、鼻先のニンジン程度にしか思っていないのだ。

 

 シルフの陣営の中にいるサクヤと、前線を支えているヨルコとエリカからも、一瞬だが、事態を把握したような鋭い視線が寄こされる。

 

 それを受け取ったナツメとデュークは、ため息を一つついて、

 

「残念だ。ああ残念だ……こんなことをされては、私達としても手段を選んではいられない」

 

「ええ、本当に。出来ることなら、状況が状況だとはいえ、普通に正々堂々ゲームを楽しみたかったのですがねえ……相手が下衆ならば、まともな方法で相手できなくなるじゃないですか」

 

 暗い笑みを浮かべ、デュークがコンソールを操作する。

 

 

 

 そこから先の展開は、混沌、としか言いようがなかった。

 

 プレイヤー達にとっても、ナツメ達元・SAO勢にとっても……GMにとってもだ。

 

「ま、また出やがったぞ! あのでかい奴だ……あんなに!」

 

「落ち着け、アレはリーチと攻撃力だけだ! 落ち着いて回避して反撃すれば怖くない!」

 

 それまでよりも巨大で、あきらかに強力なガーディアンが襲って来た。

 

 が、デュークが無駄データを大量に送り付けて添付し、稼働を阻害するDOS攻撃を片っ端から行ったため、その動きが著しく阻害される。

 

 結果、攻撃の速度や頻度にムラがあり、フリーズしたように大きな隙を頻繁にさらすため、速度が自慢のシルフ達に蹴散らされ、あるいはまとまっていたところをケットシーの『ドラグーン隊』のブレス攻撃で焼き払って一掃されていた。

 

「あの1体だけ色の黒い奴を攻撃しろ! 誘爆して周りの奴全部道連れにして消滅するぞ!」

 

「おぉ、これは逆に楽でいいネ! ドラグーン隊、ブレスで各個撃破だヨ!」

 

 また、どう考えても突破させる気がないほどの密度でガーディアンがPOPした際、ストレアがそのデータをこっそり転写して、デュークが手を加えたものを紛れ込ませた。

 

 その『色違いのガーディアン』は、攻撃して撃破すると数秒後に大爆発を起こし、周囲のガーディアンを道連れにして消滅する特性を持っていて……それを利用して、妖精たちはガーディアンを次々減らしていく。

 

 爆弾扱いした『色違い』を適切な場所に誘導して爆破することで、逆にペースを速めるのに成功していたくらいである。

 

「ま、まただ……またガーディアンがいきなり強くなった! 畜生、こんな……」

 

「いや待て、ほら見ろ! いたぞ『指揮官』! あいつを倒せば全部弱体化する、一気に行くぞ!」

 

 ガーディアン全体の強さがいきなり上がることすらあった。

 

 しかし、ストレアとデュークが先程の『色違い』と同様にして……ガーディアンの中に、明らかに装飾が豪華なガーディアンを発生させた。その1体を倒すと、周囲のガーディアンが軒並み弱体化し、先に進むのがむしろ楽になるほどだった。

 

「しかし、よくもまあこんだけ好き放題ハッキングできるもんだな……劣化版とはいえ、SAOを管理してたのと同じ『カーディナル』なんだろ? そんなに簡単にできるもんなのか?」

 

「このゲーム、SAOの基幹プログラムをホントにそのまま使ってるからね。劣化版だから、製品化当初のセキュリティホールの自動修復もされずにそのまま残っててさ。だから、あらかじめここが脆弱だって分かってて、そこにピンポイントで効くプログラムを作っておけば一発なのよ」

 

「なまじ高性能であるがゆえに更新と強化を怠った結果だな。確かに外部からアクセスしてリアルタイムでデータの書き換えを行うなどはほぼ不可能だが、こちらにはオリジナルのカーディナルの仕組みに精通したストレア君がいた。彼女の機能と、彼女に聞いた情報を最大限生かした結果だ」

 

 キリトの疑問に、ストレアとデュークが得意げに答える。

 

 図らずも、須郷達のずさん……とまでは言わずとも、茅場晶彦から盗んだプログラムをそのまま使っていた考えのなさや横着精神に救われた形であり、やや複雑な心境だった。

 

 キリトからすれば、今自分たちがやっているのは、チートそのものである。

 最も、そうでもしなければ……というか、正攻法では絶対に突破不可能な形に設定している須郷達の思惑を外すためには、そうしなければどうしようもないというのはわかっているため、あまりいい気分ではないが、キリトはその対応法に甘んじていた。

 

 GM権限を使った不当な調整に、こちらもウィルスとハッキングによるチートで対抗し、それをGMが察知して対抗策を撃たれる前に、キリト達はガーディアンを蹴散らして強行突破していく。

 

 そしてついに、キリトとナツメが、シルフとケットシーに先んじて、到達地点である扉の元にたどり着いたところで……しかし、

 

「……!? 開かない……?」

 

 ゴールのはずの扉の前に立っても、押しても引いても叩いても、その扉が開かなかった。

 

 そうしている間にも、後ろからガーディアンは迫ってくる。今は、リーファやヨルコ、さらにシルフとケットシーの先鋒部隊といった面々が抑えてくれているが、もう時間がないのは誰の目にも明らかである。

 

「何でだ……何が足りない? 何かのギミックか? それとも、クエストフラグが必要なのか?」

 

「違いますパパ! この扉は、単にGM権限によってロックされています!」

 

「……!? ユイちゃん、つまりそれは……」

 

「プレイヤーには絶対に開けられないようになってるってことだよ、ナツメ!」

 

 ユイとストレアの口から知らされた事実に、キリトとナツメは言葉を失う。

 

 ALOの全プレイヤーの夢の扉と言える『グランドクエスト』。その、最後の最後に用意されていたのは……お前らにクリアさせる気はないという、これ以上ない悪辣なGMからの拒絶だった。

 

 もっとも……AIであるユイやストレアがいなければ、その事実を知ることもできず、失敗後、『何かのクエストフラグが必要だったんだ』と、涙を呑んで次の挑戦のための準備に移ることになったのだろう。普通のALOのプレイヤーであれば……諦めるのでもない限り、そうしたはずだ。

 

 それを理解し、キリトは愕然としつつも、その目は、怒りに燃えていた。

 一方でナツメは、はぁ、と大きくため息をついて……目から光が消えた。

 

 そしてその後ろで、デュークが本日何度目かになるコンソール操作を行う。

 

「やれやれ……管理者区画がロックされているのは想定していたが、まさかグランドクエスト自体を空手形にしているとは……もう、どういうチートを使おうと罪悪感も湧かんな。やむを得まい、キリト君、例のカードを。ユイ君、ストレア君、手伝ってくれたまえ」

 

 そしてデュークは、キリトからカードを受け取ると、その内部データを転写、さらにそれをコンソールに反映させてメニュー表示にする。

 

 目の前の扉は相変わらず、堅く閉ざされたままだが……ユイとストレアは、目の前にデータによるいくつかの『道』が開かれたのを感じ取った。2人は素早くその中から、事前に決めていた行先に連なるものを選択し、

 

「パパ! カードのデータ元……ママのいる区画に転送します!」

 

「わかった、頼むユイ! ナツメ、そっちも……」

 

「お任せを、他の未帰還者は我々で何とかします。兄さん、エリカさん」

 

「ええ。でも……リーファちゃんとヨルコさんがまだ追いついていないわ、どうする?」

 

「……残念だが先に行くしかあるまい、これ以上はガーディアンに追いつかれるだろう……可能性としては会議でも話していた範囲だ、我々で何とかしよう。ストレア君、頼む」

 

「わかった。キリト、そっちも上手くやってね! じゃあ……転送!」

 

 その瞬間、扉を開くというプロセスをきれいに無視して……そこにいた6人の姿は掻き消えた。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 まあ、予想してはいたが……世界樹の上にあるとされていた『空中都市』なんてものはなく、何もない無機質な空間が広がっているのみだった。

 

 ……これ、多分もうちょっとで、シルフとケットシーの皆さんや、ヨルコさんやリーファちゃんも上がってくると思うんだけど、どうしようかな。暴動が起こるんじゃないか?

 ……いや、まずはあの扉が開くようにしなきゃダメか。

 

 とりあえず僕らは、研究区画と思われる場所に忍び込んだ直後、手近なコンソールを使って中枢にアクセスし、兄さんがあらかじめ作っておいたウイルスやハッキング用ツール、それにストレアさんのAIとしての能力を駆使し、端末から可能な範囲全ての権限を掌握。

 

 そうできない範囲については、一時的にデータをロックしたりウイルスをばらまいたりして、まともに対処できないようにした。外部からの干渉もシャットアウトする。

 

 加えて、研究施設にいた、須郷の手下と思しき研究員たちを力ずくで排除していく。

 権限が凍結されているため、なすすべもなくやられていくナメクジ共。

 

 ……何でこいつら、全員ナメクジの化け物みたいな見た目のアバター使ってるんだ?

 手とかの代わりに触手伸ばしてコンソール弄ってたみたいだし……色々な作業をするのに多腕が都合がよかったとかだろうか? だとしてももっとマシなデザインあるだろうに。

 

 まあ、人間って感じしなくて、躊躇なく切り刻めたから良しとしようか。

 ……人間に近い見た目でも、躊躇なんぞする気はなかったが。

 

『お、俺達が誰だかわかってんのか!?』『お前らなんてシステム権限でいつでも排除できるんだぞ、二度とALOがやれなくしてほしくなかったら……』なんて、ピントのおかしい虚勢を張っていたので、ちょっと痛い目を見てもらったら、すぐ大人しくなった。

 

 途中で、こいつらのアバターの各部が人体のどこに対応して、どういう感覚設定になっているかっていう設計図みたいなのも見つけたからね。加えて、こいつらのアバター設定のセキュリティ、他に比べて緩いのなんの。

 

 そもそも内部からのハッキングや干渉を受けるって発想がなかったんだろうな。

 

 それを利用し、ストレアさんにペインアブゾーバーをいじってもらい、痛みを感じる設定にした上で……適当に痛い目を見せたわけだ。なるべく効率的に。

 

 外科医なめんなよ、人体のどこをどうしたらどう痛いかくらい把握してるんだからな。

 

 GM権限だけが頼みの彼らは、拷問に耐えるような殊勝な心構えは持っていなかったようで、1分もしないうちに『話す! 話すから助けてくれよぉ!』『全部ボスの命令だったんだぁ!』って、泣きが入った。

 

 そして、必要な情報を全部吐かせた挙句、各自が持っている権限も全部取り上げた上で、管理者領域の一部をいじって簡易的な牢獄を作り、あらゆる権限を取り上げた状態でそこに幽閉した。

 

 ……それこそ、設定いじってログアウトすら不可能にしておいた。

 

 SAO経験者としては、『ログアウト不能』という状況にはちょっと思うところがないでもないが、こいつらの場合はそんなに時間をかけずに解放されるから……ちょっとの間くらいは許容してもらおう。つか、しろ。

 

 現実世界で『アミュスフィア』を外したりコンセント抜いたりすれば出られるけど、こんな違法実験のためにダイブしてるんだ、それなりに秘匿性のある場所で使用していることも考えられる……もしそうなら最悪、誰にも見つからずに放置される可能性もあるな。

 

 まあ、『アミュスフィア』は安全装置がしっかりしてるから、脱水症状とかで本格的にバイタルがやばくなったら、回線切断で自動ログアウトが発動するだろう。

 

 そう伝えたら、震えあがって命乞いをし始めた。

 ……? いや、だから、命は助かるから安心しろって言ってんのに、何でもっと怖がるんだよ。わけのわかんない連中だな。

 

 ……それとこれは全然関係ない話なんだけど、人間は長時間座ったままの姿勢でいると足に血栓ができやすくなる『エコノミークラス症候群』というのがあってね? それがもし心臓や脳に流れていって重大な血管に詰まったりするとね? それを考えると、もしこの中に安楽椅子とかリクライニングシートとかからダイブしてる人がいるようなら……あー何人か震え出したな。

 

 

 え? 助けないよ?

 

 

 悲鳴を背にその部屋を出てデューク兄さんに合流。

 しかし、作業は難航しているようだ。SAO未帰還者自体はすぐに見つかったものの、相当に高度かつ複雑なシステムによってロックされているらしく、かなり苦戦していた。

 

 出来ないことはないが時間も手間もかかるそうだ。ストレアさんも手伝ってそれか……

 

 それなら、もっと高機能なコンソールを探して使った方が早いか、と思っていた時、突然ユイちゃんが現れ、キリト君とアスナさんがピンチだから助けてほしい、と伝えて来た。

 

 2人は無事に再会できたのはよかった……けど、ピンチってか。

 

 すぐさまストレアさんがシステムを操作し、キリト君に持たせた保護プログラムを逆探知。その場所を空中に映し出して……

 

 

 そこには、自分の剣で串刺しにされて床に縫い付けられているキリト君と、鎖で両手を吊り上げられる形で拘束されているアスナさんが映っていた。

 

 

 直後、僕は……怒りで心が凍り付きかけて……

 

 

 

 ……しかし、その隣で、僕をはるかに上回る怒りを燃え上がらせているエリカさんがいたため、冷静に戻ることができた。

 

 

 

 ……よしわかった。だいたいわかった。

 

 モニターには、キリト君とアスナさん以外に、もう1人……金髪に長身の、やりすぎて不気味なくらいに整った顔の男が映っている。

 その整った顔は、なんというかもう……下卑た感じの表情に歪んでいたのだが。

 

 多分あいつが須郷で間違いなさそうだ。キリト君……さすがにGM権限を直接行使されちゃ、対抗できなかったか。

 

 よし、それならプランBだ。

 いってらっしゃい、エリカさん。

 

 彼女を送り出したところで……今度は僕の方に不思議なことが起こった。

 

 電子音が聞こえて……何かと思ってウィンドウを出してみたら、メッセージが届いていた。

 こんな時に誰だよ、と思って一応確認してみると……差出人の名前は、なんと……

 

 

 

 『題名なし from:ヒースクリフ』

 

 

 

 


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