ソードアート・オンライン 青纏の剣医   作:破戒僧

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第57話 オフ会と書いて保護者会と読む

 

 

【2025年12月3日】

 

 なんか、単にクラディール先生からの話だったはずなんだけど、気が付いたら『保護者会』のメンバーが勢ぞろいしていた件。

 

 いや、単に偶然なんだけどさ……『こないだ聞いたGGOについて話したい』ってことで、僕とクラディール先生で会うことになって、ダイシーカフェに行ったんだよ。

 

 あの店、昼の時間なら人ほとんどいなくて空いてるから。

 

 で、行ってみたら、たまたま近くまで来たからって、栗原夫妻……グリムロックさんとグリセルダさんがいた。

 

 そしたらそこに、ちょっと用事があってきたらしい結城教授まで来て……気が付けば、SAOの『保護者会』に加え、ALOで行動を共にした人も合わせて――ここに龍馬兄さんとクラインさんあたりが加われば完璧だったかもだな――大人メンバーのオフ会みたいになってしまった。

 

 で、折角だから皆さんの意見も聞ければってことで、クラディール先生から話が提起されたので、僕もそのまま報告に移ったわけだ。

 『GGO』を試しにやってみてどうだったか、という報告を。

 

 最近何かと話題になっているゲームだからか、皆さん気になっていたらしい。

 

 プレイしてみた感想としては、個人的には面白いと思う。

 実在する銃火器を使うだけあってリアルさもあり、また近未来な要素もそこかしこにあるので、ファンタジーは肌に合わないという人でも楽しめそうではある。

 

 ALOと違ってレベル制だから、少しずつ自分のペースで強くなっていく、っていう方法も取れるし、銃を使うことで、モンスターに近づかないで戦うこともできる。SAOの時のサチさんみたいに、モンスターに近づいて斬る、みたいなのが怖いって人でもやれそうだ。

 

 ……ただ、やっぱり殺伐とした印象はそれ以上に強かったな。

 

 前情報通り、実在するというよりも……剣や魔法よりもよほど現実味のある武器を使うわけだからして、余計に怖いっていう人もいそうだ。

 

 さっきサチさんを例に出したが、彼女は剣とかそういうのよりも、バイオレンスな表現が嫌いだっていう印象があるし、こっちのゲームは余計肌に合わないと思う。

 むしろ、現実味が薄れるであろうALOの方があっていると思う。今実際やってるし。

 

 加えて、プレイ内容以上に、その仕組みとでも言うべきものがね……殺伐とした世界観を作り上げるのに一役買っているというか。

 

 GGOは、ALOほどではないが、PKというか、対人戦推奨型のゲームだ。

 なぜなら、他のプレイヤーを倒しても経験値が手に入るから。

 

 ALOみたいに、何かの種族に入ることで、敵対している種族とは強制的に敵対することになる、みたいなシステムこそなけれど、代わりに個人個人のバトルが盛んである。

 

 ゆえに、フィールドに出れば、当然のようにPK目的の他のプレイヤーや『スコードロン』――SAOでいうパーティやギルドみたいなもん――に狙われる。

 そして、戦闘ともなれば……人間から銃を向けられるわけだ。

 

 ぶっちゃけ怖い。さっきも言ったが、現実味がある分、余計に。

 

 ある程度、暗黙のルールみたいなものはあるようで、PK狙いのプレイヤーが来ないエリアや、初心者用のトレーニング向けのエリアなんかはあるようだが……絶対にってことはないため、他のプレイヤーのPKがきっかけでやらなくなる、やりたくなくなる、なんてことも普通にありそうだなと思った。

 

 このへんはもう好みとか受け取り方の問題だろうけどね……運営側が設定してる公式のシステムなわけだし、やりたくなければやるな、っていう話になるんだろう。

 

 なお、この時点でグリムロックさんは『絶対にやらない』と断言していた。

 

 まあ、あの人戦闘自体好きじゃないもんな。

 多分だけど、SAOがデスゲームにならなくても、戦闘にはあまり参加しなかっただろう。

 

 さて、GGOの所感だが、殺伐としているという点について続けよう。

 これについて、もう1つ感じたというか、言っておきたいことがあったのだ。

 

 話があちこちにとっ散らかるんだが、僕がGGOをプレイした時のことを話そう。

 

 僕はまず、ゲームの最初に行われるらしいチュートリアル的なものを済ませ、初心者用の銃を手に入れた後、町を出てすぐのところで野良のモンスターを相手に戦ってみた。

 

 GGO世界の射撃による攻撃のシステムだが、銃を構えると『着弾予測円』というものが見えるようになっている。この円に見えた場所のどこかに、ランダムで弾丸が当たる、という仕組みになっているそうだ。

 

 そしてこの円の大きさは、アミュスフィアが観測している脈拍……自分の心臓の鼓動に対応して大きくなったり小さくなったりするそうで……いや、それはまあいいんだ。今は関係ない。

 

 で、戦ってみたんだけど……慣れてからはモンスター相手に苦戦することもなくなった。

 狩りで手に入れた資金を元に武装を整えたり、ドロップしたアイテムを――金はもちろん、武器とかもドロップするので――有効活用していった。

 

 で、これなら大丈夫かな、ってくらいまで訓練した後、別なエリアに行ってみて……そこで速攻で他のプレイヤーに襲撃を受けた。

 

 ……運が悪かった部分もあったんだろうけど、いきなりだったからびっくりしたわ……何発か被弾して、ちょっとヤバそうな所までHP減らされたし。

 事前にそういうこともあるって聞いて警戒はしてたんだけど、油断したかも。

 

 というか彼らは、まだ未熟なプレイヤーに的を絞って、そういうのが通りがかる場所で網を張ってたのかもしれないな……反省、反省。

 

 その対人戦初戦は、負けはしなかったけど、勝てもしなかった。

 個人的には……初心者が、明らかに手慣れた連中に狙われたにしては大金星だったんじゃないかな、と思うけど。

 

 奇襲による狙撃が一番怖かったので、索敵系のスキル上げて、遠視用のアイテムも買って持っといたのが役に立った。あと、光学銃は装備で簡単に防がれるってことを聞いていたので、実弾銃もあらかじめ用意しておいたのも。

 

 総勢何人いたのかはわからないけど、3人仕留めた時点で残りのメンバーは撤退したようだった。

 

 その後も、僕はあくまでモンスターだけを相手にしていたんだけども……よってくるPK連中を何度も返り討ちにしたり、流石に勝てそうにないなと思ったら逃げたり、を繰り返してた。

 

 そうしているうちに感じ取れたことなんだが……皆、必死だと思った。

 いや、必死と言うか真剣と言うか……絶対に負けない、っていう気迫みたいなものを感じたり、負けてHPが全損すると、めっちゃ本気で悔しがってる人がほとんどでさ。中には、死に際に口汚くこっちを罵るようにして消滅した人もいた。

 

 ……必死度合い、ALO以上、SAO未満、ってとこだろうか。

 

 この理由はわかっている。この世界には『通貨還元システム』がある。頑張れば頑張っただけ、リアルで使える電子マネーを手に入れられるのに加え、プレイヤー達はゲーム内で、ある意味で現実の金銭をやり取りしていることになる。

 

 それに則って考えれば、店での買い物は現実の買い物と同じように、現実の金を使っていることになるし、モンスター相手にしても、対人戦にしても、戦闘は現実の金がかかった戦いということになるのである。

 

 プレイヤーを殺しても金はドロップしないけど、所持しているアイテム(武器とか含む)のうち何か1つをその場にドロップすることになるので、それを売って金にできるし。

 

 つまり彼らは、金がかかってるから本気で、真剣で、必死なのだ。

 そういうプレイヤーがあちこちにいるのだ。

 

 ……まあ、それだけで生活できるくらいの金を毎月稼ぐ『プロ』なんてのもいるらしいしな……そういう感じになる人もいるってことか。

 

 ただなあ。真剣になるのはいいんだけど……ゲームに過剰に熱が入るとあんまりよくないことも起こり始めるんだよなあ……。

 

 ゲーム内のいさかいや怨恨とかの問題を現実に持ちだしたり、楽しんでやるはずのゲームで逆にストレスをため込んだり……現実の生活に影響を及ぼすようになるのが一番怖い。

 

 それに、世間一般でも言われているように……現実に存在する銃器を使ったりもすることから、空想と現実の混同が起こる可能性があるのがまた怖い。

 ま……こっちは極論だけどね。銃なんてそうそう手に入るもんでもないし。

 

 結論としては、確かに世間一般で言われているような問題は起こりうるとはいえ……それは他のゲームも同じであるし、早急にどうこうっていうほど深刻という感じはない。

 少なくとも、問題があるゲームだからサービスを停止すべきだとは思わなかった。

 

 けど、『通貨還元システム』の存在もあって、どうしても他のゲームと比べてしまうと、そういうことが起こりうるんじゃないか、と考えさせられるゲームではあった。

 

 他のに比べて、プレイヤー達の必死さとか、本気度合いが違う。ちょっと軽い気持ちで、という感じで入りにくいゲームかもしれない。そうできないことはないが、既存のプレイヤー達が温かく迎え入れてくれるかと言うと……必ずしもそういうプレイヤーだけだとは言えないだろう。

 

 他よりはちょっと過激で、火種になる可能性もある、ちょっと心配なゲーム、ってとこか。

 

 玉虫色の返答になってしまったが、クラディール先生は『君がそういうならそうなんだろう』と、それでも納得してくれたようだった。まあ、多少であれ役に立てたならよかった、と思う。

 

 それを聞いていた他の『保護者会』メンバーも、なるほど、という感じだった。

 みた感じ、やってみようと思った人は1人もいなかったっぽいけど。

 

 恐らく、どこにでもある『過激なゲーム』についての大人たちの意見交換、という場でその日は終わるかと思われた…………のだが。

 

 最後の最後に、結城教授がちょっと気になることを言っていた。

 

 

 

 なんか……近いうちに、キリト君がこのゲームを始めるかもしれない、らしい。

 

 

 

 話は数日前、結城家の朝食の席で、アスナさんが若干落ちこんでいた……ように見えたことに端を発するらしい。

 

 何かあったのかと思って聞いてみたら、その前日のデート中に、キリト君から『ALOの『キリト』をコンバートするかもしれない』と聞かされたそうだ。

 

 と言っても、別にALOをやめるとかじゃなく、一時的に離れるだけだと言ったらしいが。

 

 キリト君……もとい和人君、アカウント1つしか持ってないからなあ……コンバートするなら、SAOからの『キリト』を使うことになるもんな。

 

 アスナさんも含め、皆で楽しくALOやってるのに、やめるはずはないだろうとは思ったけども……まあ、そりゃびっくりするだろう。

 

 しかも、今まで話題にもしてこなかった、全然違うジャンルのゲームだし。

 

 しかしそれだけなら『友達にでも聞いて、ちょっと興味が出たのかな?』とか思っただろうけど……どうもその後に続いた話がおかしい。

 

 なんでもキリト君、誰かに頼まれてそのゲームをやるらしいのだ。

 本人は……『バイトみたいなもん』だと言っていたらしい。

 

 そう、アスナさんが言っていた……と、結城教授が言っていた。

 

 ……頼まれて、ねえ……? 『ゲームをしてくれ』なんて頼むなんて、どういう状況だ?

 

 しかも、『バイト』っていうからには有償なんだろう。それも少なくとも、キリト君が、一時的にでもALOを離れてプレイすることを了承するくらいの金額を提示された?

 

 ……さっきスルーしちゃったけど、GGOの月ごとの『接続料金』は、安くはない。

 そこまでべらぼうなわけじゃないが、他の有料ゲームの月額に比べれば高い。なので、そういう理由でも『ちょっとやってみよう』と思いにくいゲームでもあるのだ。

 

 それを、依頼してやらせる、ねえ……何だか妙な話の気配がしてきたな?

 

 ……『GGO』というゲームについて調べていた段階で、いくつか気になる噂話についても、ネットで拾っていたことを思い出す。

 そのほとんどは、単なるデマとか、都市伝説じみたものだったけど……

 

 結城教授、どうやら話を聞いて、少々『未来の息子』が心配になってきたようだったので……もののついでだ、もうちょっと調べてみようかな。

 

 何かわかればいいんだけど。

 

 ……いや、違うな。

 『何もなければ』いいんだけど……だな。どっちかっていうと。

 

 

 

 

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