ソードアート・オンライン 青纏の剣医   作:破戒僧

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第59話 いざGGO

 

【2025年12月7日】

 

 昨日丁度休日だったってこともあって、僕ら『保護者会』で選抜したメンバーでGGOに潜り込み、色々と調査しつつ遊んでみた。

 

 ログインしたのは4人。

 

 1人目、僕こと『ロックオン』。もともと作ってたアカウントがあったから、そのままね。

 

 2人目、クラディール先生。以前からこのゲームを気にしてたっていう立場もあるので、いい機会だからと名乗りを上げた。

 

 3人目、グリセルダさん。実の所、ゲーム自体にもちょっと興味あったらしい……相変わらず意外とアクティブな女性である。あと、グリムロックさんが『絶対やりたくない』って言ってたのと、結城教授も『ちょっと遠慮したい』って言ってたから、消去法で、ってのもある。

 

 そして4人目、ストレアさん。もっとも彼女には、戦闘とかメインではなく、ちょっと特殊な仕事を手伝って貰う予定だけども。

 

 以上4人で調査することとなったので、それぞれの自宅で時間を合わせてログインした。

 

 そうして首都『グロッケン』に出たわけだけども……このゲーム、例によって完全ランダムでアバターが作られるから、探すのが大変だった……

 

 ……と、普通ならそうなるんだろうが、対策はばっちりしてあったので問題なし。

 

 一緒にログインしてもらったストレアさんは、見た目が違おうが違うまいが、他者のIDやアカウントを感知して誰が誰だか判別できる。

 

 なので、すぐに3人探して会えたんだが……SAOからALOに入った時も思ったけど、なんかSAOの……というか、現実の姿がそのまま、あるいは近い形でアバターになる確率高くね?

 

 クラディールさんもグリセルダさんも、SAOやALOと……全く同じとは言わないまでも、かなり面影を感じるレベルでは似てるんだけど。

 

 SAOの時のデータに引っ張られてんのかな……?

 

 僕のなんて、もともと別アカウントだったはずなのに……同じローカルメモリに保存してるだけで影響受けるんだろうか? それとも、『ザ・シード』が何か余計なことやってんのかな?

 

 まあいいや。別にそれで困ることはないし……あったらあったで、顔を隠すとか、やりようはいくらでもある。

 

 一応、何があるかわからんから――一時的にとはいえ、キリト君には黙って観察することにしてるし――見た目は可能な限り隠し、名前も普段と変えて登録する、と最初に決めていた。

 

 なお、具体的に言うと、今の僕のアバター『ロックオン』は、SAOからのアバターである『ナツメ』をややロン毛気味にし、髪色を薄いブラウンに、肌の色を色白にした感じになっている。

 

 一方、クラディールさん改め『ディール』は、同じくSAOに近いアバターに、何て言うんだ、あれ……その……天パー? いや違うな……ワカメヘアーとでも言えばいいのか、って感じの髪型だ。あと、無精ひげみたいなの生えてる。ちなみに髪色は黒に近い青。

 

 そして、グリセルダさん改め『ゼルダ』は、面影あるんだけど……ボリュームのある金髪ロングヘアが印象強くて、こりゃ初見でグリセルダさんって気づくの無理そうだ。

 『身軽に動くのに邪魔になる』って言って、速攻頭の後ろで縛ってた。ポニテになった。

 

 そして、その3人を探し当てて引き合わせてくれたストレアさんは、ALOの時にも使った『ロータス』のコンバートである。名前も同じ、見た目も大体同じだ。

 

 ……にしても、僕も『ロックオン』なんて、全然新しい感じの名前じゃなくて……クラディールさんやグリセルダさんみたいに、元の名前ちょっともじったくらいのそれにしとけばよかったかな? ちょっと疎外感ある。

 

 まあ、いいけど別に。

 

 4人で、ゲームに慣れるのを兼ねて、チュートリアル後は適当に初心者用エリアで狩りしてたんだけど……ゲーム自体に忌避感はあんまりなさそうだ。銃を使うとはいえ、相手にしてるのはALOとかと同じくモンスターだし、いつものメンバーでいつもの感じで戦ってるわけなので。

 

 ただ、『こっちの方が使いやすい』って、クラディールさんとグリセルダさんが時たま、近接用の武器を手に突貫していくシーンが多かったけど。

 

 ……いや、気持ちはわかるよ。

 SAOを経験した僕らにとって、戦闘=接近戦みたいなところあるしさ。いくら最近はALOで魔法とか飛び道具も使うようになったとはいえ、ここにいるメンバー全員、メインは接近戦だし。

 

 一応この世界にも、接近戦用の武器とかあるしね。

 手斧とか、鉈とか……ものものしいものが多いけど。

 

 そうでないものだと、『光剣』っていう奴もある。

 一言で言えば、光学銃の剣バージョン。ボタンを押すと、光で構築された刀身があらわれて、それを使って斬りつける……まあ、まんまラ○トセイバーである。

 

 アレ、買おうとすると地味に結構な値段するから、初期装備で用意するのは無理だったけど……興味本位で僕が買ってたので、グリセルダさんに貸してあげたら、楽しそうに使いこなすんだコレが。グロッケン周辺に出てくる、リザードマンっぽい見た目のMobを切り刻んでいた。

 

 クラディールさんにも貸したけど……こちらもきちんと使いこなしたものの、『なんかしっくりこない』とのこと。

 具体的には、『重量感とリーチが物足りない』そうだ。両手剣使ってたもんね。

 

 重量感はともかく、リーチならもっと長い武器もどこかに……いやまて、なんか接近戦前提で話してるけど、あくまで試しに使わせてみてるだけであってだな……いや、もういいかなここまで来たら。好きなように戦えれば。

 

 

 

 そのまま半日ほど狩りに費やした。

 

 途中で、初心者区画を抜けて別なエリアに入り……予想通りといえばいいのか、PK集団に出くわして対人戦を経験することになったりもしたが、事前に予想していたことだったので、動転することなく対処して、見事返り討ちにした。

 

 その際、対人戦で銃を使う……銃口を向け、あるいは向けられ、引き金を引き、弾丸を当てて、当てられて……という経験の中で、クラディールさんは『やはり気分のいいものではないな』という感想に至ったようだ。

 教育委員会で懸案事項にあげられるのもむべなるかな、という感じに思ったらしい。

 

 だからってこのゲームを全否定するつもりはないし、結局はプレイヤーのモラル1つだろう、っていう結論に落ち着くしかなかったようだが。

 それでも、実際に体験したことで、主観的にこのゲームを見れるようになったのは収穫だ、って言ってたな。

 

 それはさておき、流石にSAOやALOとは勝手がだいぶ違ったとはいえ、どうにか僕らはキルされることもなく1日を終えた。

 何回か対人戦を終えて、結構な経験値と戦利品もゲットして。

 

 PK目当てのプレイヤー達が群がってきてくれたのが逆にありがたかったな。

 むしろ鴨葱。貯金箱を割る感覚で全部仕留めさせてもらいましたよ、はっはっは。

 

 使えそうな武器はそのままもらい、残りは売却、その益をそのまま突っ込んで装備を整えた。

 これで明日以降のプレイも余裕持って戦い続けられるだろう。スタートダッシュにしては上出来と言っていいんじゃないかな?

 

 グリセルダさんは、ライダースーツ――特撮的な意味ではなく、バイクに乗る時のスーツ。上下一体になってるツナギみたいなタイプ――に似た防護服を購入。内側に着込める、衝撃吸収素材の保護用プレートも買って仕込んでいた。

 

 それに加えて、接近戦用に光剣と、軍用ナイフ。さらに、半透明の硬質アクリルシールド(暴徒鎮圧用の装備っていう設定らしい)。銃撃戦用のショットガンとハンドガン、サブマシンガンとまあ多種多様な装備を用意していた。ちなみに、ショットガンとシールドはドロップ品だ。

 

 あと、シールドと光剣を装備した時の戦闘スタイルがまんまSAOです。予想できてたけど。

 

 一方、クラディールさんは、プロテクターを全身に装備し、対光学防護フィールドも完備させた重武装で守りを固めていた。あっちこっちに防具がついてるから、甲冑みたいである。

 

 加えて、もともと接近戦型のパワーファイターであるため、高いSTRを生かした武器を好んで使うつもりのようで……遠距離戦用にガトリング砲、近距離戦用に野太刀――めっちゃ長い刀。使う人が使えば騎兵を馬ごと真っ二つとかできる(リアルに)――なんてものを用意していた。

 なお、どちらもPK返り討ちのドロップ品である。

 

 ガトリングの方は、なんかシュワちゃんみたいな見た目のアバターの人が使ってたな……あのまんまハリウッド映画出ても違和感ない感じの。

 

 なお、ストレアさんも一応、プロテクターや防護服、そして新しい武器をいくつか買ったものの……彼女はそこまで気合入れて調整とかはしていない。せいぜい、グロッケンに居ても浮かない程度に装備、というか見た目を整えた程度である。

 

 さっきもちらっと言ったけど、彼女には明日以降、戦闘じゃなく……別なことを頼もうと思ってるからね。戦闘にはあんまり関わらないんだ。

 

 僕も同じように装備を整えた。黒地に青でラインが入った防護服に、その上からボロボロ……というかヒラヒラのマントを身にまとい、それに隠すように、カラビナやフックで武器を装備。光剣やナイフをいつでも取り出せるようにした。

 しかし、メイン武装は今の所、拳銃で行く予定である。サブでスナイパーライフルかな。

 

 とまあそんな感じで、4人そろってのプレイは終了。

 

 最後に、来週予定されているらしい大規模なPVP大会『バレットオブバレッツ』……略して『BoB』の参加登録を4人まとめて済ませて、本日はお開きとなった。

 

 明日以降は、仕事の関係もあるから、夜に入るにしたって時間合わせてってのは難しいかもだな……まあ、レベル上げ、スキル上げも含めて自分のペースでってことで。

 コンバートだから、そこまで能力が不足してることもないしね。

 

 

 

 ――追記――

 

 

 

 例の事件に関係あるかどうかわからないけど、グリセルダさんがあることに気づいた。

 

 『BoB』への参加登録なんだけど、グロッケンの中央にある『総督府』っていう建物の中で、専用の端末を使って行う、という形式になっている。

 何でか知らないけど、ログインせずにオフラインから登録したりすることはできないようだ。

 

 で、3人ともそこで登録したんだが……その際、リアルの個人情報の入力を要求される欄があった。住所とか、電話番号とかの。

 

 と言ってもそれは、参加賞(だったかな?)として配布されるモデルガンの届け先として指定するためのものだそうで。これを入力しないと発送できませんので、というもの。

 まあ、いらなければ別に入力しなくても問題ないし、どっちでも参加登録自体はできる。

 

 で、その時、グリセルダさんが後ろを向いて、次いで何かに気づいたような表情になった。

 

 何かと思って聞くと、『この入力欄を後ろからのぞき込まれたら、個人情報ばれるんじゃない?』とのこと。

 なるほど、確かにリアルの住所や電話番号なんかも割れてしまうだろう。

 

 ……考えすぎかもしれないが、それを元に『死銃』がターゲットと決めた、なんてことは……なくはない、かもしれない……な。

 

 いやでも、背後でそんな覗き込むようにしてる不審者がいたら誰だって気づくだろうし、周囲も『何だアイツ』って思うだろうし……離れた位置から望遠装備を使えば? ……余計目立つな。

 光学迷彩でもあれば別だろうけど……いや、あってもおかしくないな、この世界観なら。

 

 ……ちょっと気になってきたので後で調べてみよう。

 ネットに情報が載ってるかは疑わしいが。このゲーム、情報が閉鎖的だし。

 

 

 

 ちなみに、グリセルダさんがこのことに気づけた理由を聞いてみたら……『夫がこういうのよく気にするのよ』とのこと。

 

 聞けばグリムロックさん、ATMとかでお金下ろしたりする時、体をめっちゃ近くによせたり、鞄とか手荷物を障害物に使ったりして、後ろの人に暗証番号が絶対に見えないようにしてキーを押す癖があるそうで。相変わらず気弱というか心配性な人だ。

 

 グリセルダさんは『そこまでしなくても大丈夫でしょ』って毎度呆れてたらしいが、なるほど……だからスッと『後ろからの覗き見に注意』なんていう発想が出来たわけか。

 

 

 

 ――追記その2――

 

 

 参加賞のモデルガンは正直欲しかったので、入力欄には病院関係の仕事で使ってる郵便私書箱を指定しておいた。これなら、転送されて僕の所に来るから、万が一誰かに見られていても、住所を嗅ぎつけられる心配はない。

 

 グリセルダさんも『実は……』って、参加賞欲しかったらしいので、名義を貸した。

 

 クラディールさんは別に要らないらしいので、入力しなかった。

 

 

 

 


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