ソードアート・オンライン 青纏の剣医   作:破戒僧

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なんとか間に合った……
というわけで今回は間を開けずに新章突入です。

……連続で投稿続けられるかは微妙ですが。

原作が名作だけに作者も緊張してます。『マザーズ・ロザリオ編』開始です。


第4章 マザーズ・ロザリオ編
第67話 ドクターゲーマー(は今回欠席です)


 

Side.キリト

 

 伝説級武器『聖剣エクスキャリバー』ついに発見……というニュースがALOをかけめぐったのが、つい数日前のこと。

 

 『ALO事件』の時、偶然俺が見つけていたアレなわけだけど、ついに誰かが手に入れてしまったか、とちょっと残念に思っていたんだが……どうやら、入手できるダンジョンが発見されただけで、まだ誰かが手に入れたわけではないらしい。

 

 これはゲーマーとして見過ごすことはできないな、と考えた俺は、アスナやリーファ、クライン達を誘ってそのダンジョンに挑戦することにした。ちょうど年末で、ログインしやすいっていう奴も多かったからな。頼もしい限りだ。

 

 新たに俺たちの仲間に加わったシノンも、すっかりALOのアバター操作に慣れて、弓矢を武器にスナイパーとして活躍してるしな。

 

 けど……残念ながら、仲のいいメンバー全員が揃って参加できるわけでもないわけで。

 

「えーっと……クラディールは学校の仕事で、グリムロックも年末で仕事が余計に忙しい、グリセルダさんは割と余裕あるけど、旦那さん……グリムロックが帰ってくるまでに炊事他家事を済ませなきゃいけないから逆にログインできない。で、ナツメとデュークは……海外だったっけ?」

 

「え、何、ナツメ先生達、旅行にでも行くの? いーなー」

 

「いや、聞いた話だと学会か何かに出席するみたいよ? 研究内容の発表とかで」

 

 今俺たちがいるのは、新生アインクラッド22層の湖畔にある、あのログハウスだ。

 

 そう、俺達がまだSAOにいた頃、アスナとの結婚生活を送るためのプレイヤーホームとして購入して暮らしていた、あの家である。後半は、ユイをそこにさらに迎えて、家族3人で仲良く暮らしてたっけな。

 

 俺とアスナは、22層がアクティベートされたと同時に大急ぎでそこに急行し、即決で購入した。

 

 またここに帰ってくることができたんだ……って、すごく懐かしくて、嬉しい気持ちになったっけな。家具とかはまたこれから揃えなきゃいけないけど、それもまあ、楽しみの1つだろう。

 今度は最初から、ユイも一緒に家具を選んだりして、俺達の家を作っていこうと思う。

 

 それと、もう1つ、SAOの時と違うことと言えば……エリカさんがいること、だな。

 

 この家には、リズやシリカ、リーファやシノンなんかの仲のいいメンバーもしょっちゅう呼んでるし、クエストやボス戦の作戦会議や反省会も大体ここでやるようになってるので、半ば俺達の拠点みたいな感じになってる。

 

 なので、エリカさんもここにいることに別に違和感も不都合も何もないんだが……この人の場合、関係性が関係性なので、なんていうかこう……三世代同居してるみたいな感じになるというか。

 

 ゲームのことについて俺やアスナから教わって勉強したり、逆に自分なりにシステムについて研究してみたことを俺達に教えてくれたり、

 

 宿題とかやってる時に色々解説して教えてくれたり(さすが大学教授、超わかりやすくて助かる)……もっとも、エリカさんの持論としては、なるべく勉強はリアルで集中してやった方がいいんじゃないか、って思ってるらしいんだが。VRの中だと、気が散るものがいっぱいあるからって。

 

 まあ、ちょっと外出すれば気晴らしに戦闘やらクエストやらできる位置に建ってるし、ちょっと飛んで最寄りの町とかに行けば、外食とかもすぐにできるしな……『机の上、目の前にマンガ本があって集中して勉強できるの?』っていう環境に近い、と言えなくもない、かも。

 

 あと、ユイとよく一緒に遊んでくれたりもする。

 最初は『ママのママだから、おばあちゃんですね!』なんて言われてちょっと戸惑ってた……というかショック受けてた感じだったが、今ではそんな呼び方なんて気にしてないみたいだし。

 

 むしろどうやら、初孫がかわいくてしょうがないらしく、俺達がクエストとかに出ている間、ユイの遊び相手とかしてくれたりするし……町に連れ出して食べ歩きとかもしてたな。ユイとエリカさんだけの時もあれば、俺とアスナも一緒に行く時もある。

 子育てに協力してくれるお義母さん、か……三世代同居の理想的な形だな。妙にリアルに。

 

 最近では、今度の正月、ユイにゲームの中でどんなお年玉を上げようか試行錯誤を繰り返してたようだし。単にユルドじゃつまらないから、レアアイテムの入手&プレゼントを狙ってるっぽい。

 

 繰り返すが、俺達はそんなエリカさんを俺達は疎ましく思ったことなんて一度もないし、むしろこれからも仲良くやっていきたい。よろしくお願いします、という感じで思っている。

 

 ただ、何かアスナとの今後を見据えて、俺に対しての教育方針を色々考えて、リアルの人生設計ごと組み立ててるっぽい気配があるのは……ちょっと怖いというか、気になったりするんだが。

 

 ……っと、だいぶ話がそれたというか、脱線したな。

 そういうわけで、今回の『エクスキャリバー』を狙ったクエスト参加は、『保護者会』メンバーがほとんど不参加なのだ。ちょっと、いやかなり残念である。

 

 まあ、リアルをおろそかにするわけにはいかないから……しょうがないけどな。そこんところに文句を言うような、非常識というかエチケットレスなゲーマーは、俺の仲間にはいない。

 

 そのへんを踏まえて、俺達の拠点であるログハウスで、今後の計画を立ててたんだけども。

 

 ちなみに今ここにいるのは、俺、アスナ、ユイ、エリカさん、リーファの5人だけ。リズやシリカ、クライン達がログインしてくるまでには、まだちょっと時間がかかるらしい。

 

「『保護者会』以外のメンバーで挑むことになりそうだな。あーでも、ストレアは誘えばこれそうなんだっけ?」

 

「はい、パパ。私と同じで、ある程度自由にネット空間を移動できますから」

 

「でもキリト君、挑戦するならその……早めにしてくれると嬉しいかな。私とお母さん、年末年始は京都の本家に帰らなきゃいけないからさ」

 

「そっか……でも、そこからログインとかってできないのか? アミュスフィア持って行ってさ」

 

「……それがあの家、携帯の電波も満足に入らないんだよ……Wi-Fiのルーターとかもないから、無線環境最悪なの。家の中で、場所によっては携帯とか圏外になるの、平然と」

 

 ……マジか。名家だけあってこう……自然溢れる環境下にあんのかな。

 

 アスナに続けて、エリカさんもはあ、とため息をついて、

 

「有線でのネット環境もなくはないはずだけど……あっても本当に最小限だから、フルダイブ可能な規模の回線が通ってるかと聞かれると……望み薄ね。多少歴史を感じるだけの木造建築しか見るところがない退屈な家だから……物珍しくて最初は面白く見えるけど、3日で飽きるわ」

 

「それじゃあ、ママとおばあちゃんとはしばらく会えないんですか? 寂しいです……」

 

「ごめんねユイちゃん、帰ってきたら一緒にいっぱい遊ぼうね」

 

 膝の上にユイを乗せて頭をなでてあげているアスナ。ちょっと寂しそうだが、手のぬくもりを心地よく感じてか、ユイがふにゃりとした笑顔になっているのと、アスナ自身がセットですごく癒される光景だ……我が妻と娘ながら、世界一可愛いと思う。

 

「んー……なんかアスナさん、年末年始は京都に行くって聞いて、旅行気分で楽しんでくるのかなー、なんて思ってたんですけど、もしかしてあんまり楽しみじゃない感じですか?」

 

 と、リーファが聞く。

 

「全然そんなことないよー……毎年、年始のお食事会とかに出てあいさつ回りとか、色んな人が家に来るから、そのたびに和室で正座して挨拶して、その間ずっと着物脱げないし……特に今年は、SAO事件とALO事件から復帰して1発目の新年会だから、方々にあいさつ回りなんだよね」

 

「こらアスナ、気持ちはわからなくもないけど、実際にご迷惑おかけしたり、お世話になった人だってたくさんいるんだから、そういう言い方はやめなさい。あれだけのことがあったんだから、後始末はきちんとすべきでしょう……本当に余計と言うかアレな用事とかは断ってあげるから」

 

 ぴしゃりと言うエリカさん。

 『はぁい……』と返事を返すアスナだったが、ふと気になることがあったようで、聞き返す。

 

「? 余計とか、アレな用事って? 何か、変な予定入れられてたの?」

 

「……結城本家のババァ共が、お節介にもアスナにお見合いの話を何件か用意してたりとかね」

 

「「「ぅえ!?」」」

 

 エリカさんが呟くように言ったその言葉に、俺もアスナも、ユイも思わず声が出た。

 あと、俺達ほどじゃないけどリーファも十分驚いてたな。

 

 っていうか、え!? あ、アスナがお見合いって……

 

「そ、そんなのダメです! ママの旦那さんはパパなんです! ユイのパパはパパだけです!」

 

「お、お母さん!? わ、私そういうのは……っていうか、ユイちゃんも言ってる通り、私にはキリト君がいるんだからね!? お見合いとか言われても全然……」

 

「え、エリカさん! お、俺、その……アスナに……」

 

「はいはい落ち着いて、わかってるから安心しなさい。ちゃんと先回りして予定ねじ込んだり難癖付けて全部潰しといたから……まあその分、多少多忙なスケジュールになっちゃったけどね」

 

「そっか、ありがとお母さん……にしても、あんなことがあって、まだそんな婚約者とかお見合いとか押し付けてこようとするなんて……もう勘弁してほしいよ」

 

「あんなことがあったからこそ、早いうちにもっといい縁談を見つけて成立させようとしてるのよ、あの骨董品共……結城の家に生まれた以上は、結婚も含めて家の方針で決めるのが当然だとか普通に考えてて、少しでも気に入らない、自分達の思い通りにならないことがあると、好き放題嫌味と皮肉が飛んでくるし、陰口とかも当然のように……本当にもう、古臭いカビの生えた価値観をいつまでも持ち続けるのは勝手ですけどね、こっちにまで押し付けてくるのは勘弁してほしいわ……」

 

 アスナと俺、そしてユイのために怒ってくれるのは嬉しいし、色々と尽力してくれてるみたいで感謝してるけど……時々こうなるんだよな、エリカさん。主に、今まさに話してる『結城の本家』の話題になった時とか……毒舌だし、黒いオーラが背中から滲み出て…… 

 

 自分も何かしら、苦労したというか、大変なことに巻き込まれた経験があるんだろうか? あるんだろうな。

 

「ねえ、いっそのことキリト君一緒に連れてって『この人と結婚します』って宣言しちゃダメ?」

 

「ダメよ、まだ。そんなことしたらあのババァ共に何言われるかわかったもんじゃないわ……男性の魅力と家柄や年収をイコールで結び付けるのが当然の人たちだから、まだ学生だなんて言ったらそれこそ門前払いね。SAO事件の関係者だってこともあるから、偏見ももたれてるでしょうし」

 

「……ひどい話ですね。妹の私が言うのもなんだけど……男の人の魅力はそんなところじゃないのに」

 

「私もそう思うけど、そう言って聞く耳を持ってる連中じゃないのよ。アレらの価値観を一般人が理解するのは難しいから……宇宙人か異世界人だと思ってた方がしっくりくるかもしれないわ」

 

 さっきからエリカさんがキレッキレだな。こっちはこっちでその『本家』の人たちをボロクソに言うのに何も抵抗とかないみたいだし。

 

 ……そういや、エリカさん自身、東北の農家から嫁入りでアスナのお父さんと結婚したって言ってたっけ。その関係で色々苦労した……もとい、させられたのかもしれない。

 

 時々ちょっと過激になるところがあるけど、それ以外は本当に優しい……アスナや俺のことをきちんと偏見なしで見てくれて、2人の未来のこととかも考えてくれる、優しい女性なんだよな。

 

「そういうわけだから、もうちょっとキリト君を……あの連中にも四の五の言わせないくらいの水準まで育ててから紹介することになるわね。だから、まだしばらくは我慢してなさい。大丈夫、色々考えて準備とか進めてるから」

 

 こんな風に、色々裏で企んでるところが少し怖かったりするけど。

 

 いや、変な意味で何か企んでるわけじゃなく、ホントにアスナと俺の未来を考えて、色々暗躍してくれてるってのは知ってるから、迷惑だとも思わないし、感謝してるんだけどさ?

 

 

 

 さて、またしてもあちこちに話が脱線しちゃったけど……結局、今度のエクスキャリバー挑戦は、いつものメンバーで挑むことになりそうだな。参加出来て、そこにエリカさんや、SAO時代からの知り合いを何人か、って感じになると思う。

 

 ストレアは多分、誘えば来てくれるし……サチ達『月夜の黒猫団』も多分大丈夫。

 

 ユナとノーチラスは、よくは知らないけど、最近忙しいって聞いてるから難しいかもだな。

 

 そんな風に話していると、『そういえば』といった感じでリーファが言った。

 

「なんか最近……『保護者会』の人たちの中でも、ナツメ先生とデュークさんが特に入ってこないよね。ここんとこ全然だし……シノンさん、ALOで改めてあいさつしたいのに全然会えないって、ちょっと困ってる感じだったよ」

 

「それは仕方ないだろ……さっきも言ってたけど、何か仕事すげー忙しいみたいだし。海外の学会だかまで行って、発表だか何かするらしいし」

 

 それなのに、こないだのGGOの一件では助けてくれたわけで……いや、あの件については本当に感謝だよな……最後の最後、シノンの部屋であったことも合わせて。

 

 けどリーファの言った通り……ここ最近はほとんどナツメとデュークに会えないんだよな。

 やっぱ医者って忙しいのか? テレビとか噂で聞いた話しか知らないけど、

 

 どうも、ナツメ達は『研究寄り』だっていう話を前々から聞いてたけど、それも関係あるのかな?

 

 そんなことを呟くように言ったら、それに反応したのはエリカさんだった。『あら?』みたいな感じで、俺やアスナ、リーファの顔を順番に見るようにして、聞いてくる。

 

「……あら? ひょっとしてキリト君……だけじゃなさそうね。アスナやリーファちゃんも、リアルでのナツメ先生のこと、よくは知らないの?」

 

「? よくは、って……どこかの大学病院で外科医やってるってことくらいは知ってるけど……」

 

「……そうか……。まあ、メディアに多く露出してるわけでもないし、調べようと思って調べない限りは知る機会もないから、ある意味当然なのかもね……」

 

 そんな風に言って、エリカさんは1人、何やら納得した様子である。

 

 ? 何か気になる言い方だな……まるで、俺たちがナツメのことを知らないのを、エリカさんが意外に思った、って感じに聞こえるけど……

 

 いや、そう言えば、ナツメとエリカさんって、エリカさんの大学のなんとかってシンポジウムにナツメが……講師?ゲスト?として呼ばれたことが、出会いのきっかけだったんだよな。そこで、SAO時代のことをナツメから聞かされて、興味をもってALOに……って。

 

 シノンがナツメに初めて会った時も、ナツメは東北の医療シンポジウムだかの帰りだったらしい。

 

 ……あちこちのシンポジウムにゲストとして呼ばれたり、海外まで行って研究成果を論文で発表したり……あれ、ひょっとしてナツメって、俺達が思ってる以上に、有名というか……すごい医者だったりする、のか?

 

 見ると、アスナやリーファも同じような感じに考えていたらしく、きょとんとしてエリカさんを見ているが……どうやらユイだけは違ったようだ。

 何かのきっかけで、調べてみたことがあったのかもしれない。

 

「それでしたらパパ、私からご説明いたしましょうか?」

 

「え、ユイちゃんは知ってるの?」

 

「はい。その……以前、ナツメ先生とデュークさんについても調べてみたことがあったので」

 

 アスナの膝の上に座ったまま、ユイが皆の視線を受けて話し始める。心なしか、得意げに。

 

「ナツメ先生達のプライバシーにも関わりますので、あまり詳しいところは省きますが……お2人は共に、聖都大学附属病院に勤務している外科医です。ですが、お2人だけでなく、そのさらに上のお兄さんと、さらにご両親の家族5人全員が外科医としてそこに勤務しています」

 

「家族全員医者!? うわ、すご……エリート家系っぽい」

 

「その前の代からそうだったようです。それも、ただ単に医者であるというだけではありません。ナツメ先生のご実家……西神家は、医療業界では非常に有名な家で、祖父である西神壇紅郎先生の代から、外科医として、及び研究者として数々の業績を残してきています」

 

 リアルの家族の名前とか出てきてるんだが、このへんはプライバシー的にいいんだろうか? と思ったけど……ユイがこうして説明していたり、エリカさんが何も言わず止めようとしないってことは、恐らく調べようと思えば調べられることなんだろう。そう解釈して、続きを促した。

 

「成功率5%未満の難しい手術をことごとく成功させ、通称『リアルブラックジャック』の異名で知られた祖父・西神壇紅郎先生に始まり、画期的な心臓・循環器の病の治療法を数多く発案し、治療不可能とされ余命宣告まで受けた患者数千人を快癒に導いたとされる父・西神清十郎先生、母体に負担が大きく命に係わる難産における効果的な対処技法や、妊娠中の母親に対する安全性を確保した投薬医療における研究成果で数万人の母子を安産に導いたとされる母・西神忍先生、臓器移植手術及び人工人体パーツ等を用いた整形外科手術における傑出した技術と研究成果により、身体に障害を持つ数多の患者の人生に光を灯した長男・西神奏一郎先生、医療とVRの技術的連携による医療革新を現在進行形で主導しており、VR技術を医療に応用した最新設備『メディキュボイド』の研究・開発にも携わった医者にして技術者である次男・西神龍馬先生。いずれも各分野において世界レベルの権威、ないし不世出の天才とまで呼ばれた人たちです」

 

 なんか予想以上にすげー人達ばっかりなんだけど!

 え、ナツメの家ってそんなとんでもない家なの? そんなの、話題になっててもよさそうなもんだけど……全然知らなかったぞ? それこそ、俺の仲間たちの誰も(多分)。

 

 まあでも、医療なんて……それこそ、将来医者を目指すっていう人や、あるいは、今まさに治療を必要とする立場の人たちでなければ、そこまで自分から詳しく調べようとすることなんて少ないし……メディアにも露出していない立場の人たちだっていうなら、知らなくてもそこまで不思議じゃない、とも言えるんだろうか。

 

 だとしても、こうして聞かされるとその言葉面だけでも……すごい人たちだってのがわかる。

 デュークなんかとは、普通にゲーマーとして仲良く話したりしてたし、一緒に階層ボスと戦ったりもしてたんだけどな、あの時の『グランドクエスト』や、この『新生アインクラッド』で。

 

 そして、最後に残った1人……西神家『三男』のナツメについてだけども……

 

「中でもナツメ先生……三男・西神千里先生は、手術の腕に加え、これまで医療的に大いに可能性があるとされつつも、研究が停滞状態にあった複数の分野において、短期間のうちに考えられない程に多くの結果をたたき出しており、特に再生医療や難病研究においては、技術検証が追いついていない状態とはいえ、技術理論をわずか3年で30年分進めたとまで言われています。研究成果の一部は既に医療現場で、試験的なものも含めてですが適用されており、難病の治療や症状の軽減、進行遅延に目覚ましい効果が発揮されているとの結果が出ています。先生がこのまま研究を進めれば、数年以内に10を超える難病が『不治の病』ではなくなるとまで言われているそうです」

 

「それだけに、彼があの事件でSAOに捕らわれてしまい、携わっていた研究が進まなくなったと知られた時は、業界では落胆を通り越して悲鳴が上がったそうよ。特に今言った、再生医療と難病研究の分野では、あの2年間で20年分進んだはずの技術ロスがあったとまで言われているわ……もっとも、現在はその分の遅れを取り戻す勢いで研究が進んでいて、日本のみならず世界中の関係機関が彼の研究に注目しているみたいでね……私も詳しい内容までは知らないけれど、今回の学会も、海外で発表するぐらいだから、相当に大きな影響をもたらす学説や治療法なのかもしれないわね」

 

「……すげえ……」

 

 唖然とするしかなかった。俺もアスナも、リーファも。

 

 あいつ……そんなにとんでもない医者だったのか。

 

 何ていうかこう……間違いなく歴史に名前を残すレベルの天才って奴じゃないのか? それこそ……量子力学やVRの分野でいう、茅場晶彦レベルの。

 

 ……そういや前に、デュークがこんなこと言ってたっけ。

 

『うちの弟とは仲良くしておいて損はないぞ? 身内のひいき目が入っている可能性は否定できんが、私の予想では……今後十数年以内にストックホルムに招かれるだろうからな』

 

 ストックホルムってそれ、言わずと知れた……。

 

 あの場ではハハハと笑って済ませちまったけど……あれってもしかしなくても、冗談でも何でもなかったのか……?

 

 けどまあ、だからってナツメとの付き合い方を変えるつもりはないけどな。

 あいつがどんな医者であれ、SAO時代から一緒に戦って来た仲間であることに変わりはないし。

 

 ……ちょっと無意識に緊張するくらいはしちまいそうだけど。

 

 とりあえず……道連れを増やすか。今度、リズとかシリカ、クラインやシノンにもコレ聞かせてやろう。多分知らないと思うし……リアクションが楽しみだ。

 

 ……ヨルコさんは……どうしようか?

 今でさえ、ただでさえ緊張して告白とか何も言いだせないでいるのに、悪化しかねないかも……いやでも、本気で将来のことを考えるなら、早いうちに知っておくべきこと、とも言えるよな。

 

 

 

 とはいえ、俺達の中に誰かそんな……難病とかの患者がいるわけでもないし、医者としてのナツメには、それこそあの頃の『カウンセリング』くらいでしか縁はないんだよな……実際。

 

 これから俺たちの仲間で、病院にお世話になるような大怪我人や、余命宣告受けるような重病の患者が出て来たりしない限りは、さ。

 

 ……自分で言っといてなんだが、縁起でもないな。やめよう。

 

 

 

 




【おまけ】

どうでもいい裏設定。
今回名前だけ全員分出した西神家ですが、名前の元ネタはほぼ全員『仮面ライダーシリーズに出てくるマッドサイエンティスト』からきています。わかったかな?
以下、簡単なプロフィールを添えまして。

・西神壇九郎(祖父) ※故人
 専   門:外科全般
 仮面ライダーエグゼイドの『壇黎斗』と仮面ライダーWの『井坂深紅郎』より。

・西神清十郎(父)
 アバター名:ジエンド
 専   門:循環器科(心臓・血管等)
 仮面ライダーオーズの『真木清人』と仮面ライダードライブの『蛮野天十郎』より

・西神忍(母)
 アバター名:パンドラ
 専   門:産婦人科
 仮面ライダービルドの『葛城忍』より(男だけど)

・西神奏一郎(長男)
 アバター名:ワイズマン
 専   門:整形外科、臓器移植等
 仮面ライダーウィザードの『笛木奏』より

・西神龍馬(次男)
 アバター名:デューク
 専   門:脳外科、神経系、VR医療
 仮面ライダー鎧武の『戦極凌馬』より

・西神千里(三男)
 アバター名:ナツメ 他
 専   門:外科全般、難病研究
 名前の元ネタはなし

 なお、苗字の『西神』も『死神博士』のもじりです。


以上、どうでもいい裏設定でした。
なお、彼らが今後登場するかは未定です(おい)

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