ソードアート・オンライン 青纏の剣医   作:破戒僧

69 / 81
第69話 絶剣……は、ちょっとおいといて

 

 

Side.アスナ

 

 それを聞かされたのは、数日前。

 正月ムードもそろそろ消えてくる、1月のある日のことだった。

 

 年末にやった『エクスキャリバー』のクエスト大変だったねとか、もう冬休みもおわっちゃうねとか、そんな感じのことを話してた時……どんなきっかけだったか、その話題になったのだ。

 

「『絶剣』……?」

 

「ああ。そっか、アスナ……と、エリカさんに話すの初めてだったっけ」

 

 いつものログハウスで、お母さんと一緒にログインしていた私は……どういう流れでだったかはちょっと思いだせないけど、たまたまその時いたリズから、その話を聞いた。

 

 少し前から、11連撃のOSS……『オリジナルソードスキル』を賭けて、挑戦者を募ってはデュエルを繰り返す、『辻デュエル』なるものを繰り返している、凄腕の剣士について。

 

 通称『絶剣』。

 『絶対無敵の剣士』を略して『絶剣』であるらしい。

 

 なんとも大層な名前だと思うけど、実際それだけの強さを持っており、今までその『辻デュエル』で1度も負けたことがないという話だった。

 

 加えて、そのデュエルの賞品にもなっている『OSS』からも、その実力の程はうかがえる。

 

 『OSS』は、ALOにソードスキルが実装された後に、追加でアップデートで実装された仕組みの1つで、その名の通り、自分のオリジナルのソードスキルを作って使えるようになる、というものだ。『ぼくのかんがえたさいきょうのひっさつわざ』的なのを。

 

 そこだけ聞くと夢が広がっていい感じに聞こえるけど……これがそんなに楽なもんじゃないのよね……手の込んだ、強力なソードスキルっていうのは、それだけやるのも大変なわけだから。

 

 この『OSS』を作成というか登録するには、一度、自分の手でそのソードスキルの動きを完全に実行し、その動きを『登録』する……という形になる。

 

 そうすることで、それ以降、システムのアシストを受けて、楽にその剣技を繰り出せるようになるわけ。

 

 しかしそのために、最低一度は自分だけの力でその大技を再現する必要がある。行ってみれば、アシストなしの完全マニュアル操作で。

 

 なので、この『OSS』は作る段階で既に相応のプレイヤースキルを要求される。

 

 本来、システムのアシストなしでは難しい技を、アシストなしでやれなければ使えるようにはならない……そういう矛盾のようなシステムを抱えているので、普通の人が気軽に使えるシステムとは、ちょっと言い難いのである。

 アシストなしで簡単にできるなら、普通に剣振って出せばいいだけだしね。

 

 一応、私も『スターリィ・ティアー』っていう、5連撃の細剣用OSSを作って使っている。

 

 他には、サラマンダーのユージーン将軍が、『ヴォルカニック・ブレイザー』っていう、8連撃のOSSを作って使っていたはず。確かこれが、ALO内で最大の連続攻撃数を誇るOSSだったはず……だったんだけど、それを抜かされた形になる。

 

 『11連撃』。これが本当なら、私が知る限り、ALO内部で最大の連続攻撃数のOSSだ。

 そして、それを可能にしたっていうことは……相応の剣の腕を、その『絶剣』さんとやらはもっている、ということなんだろう。

 

 そして、さらに驚いたことには……その『辻デュエル』で、なんとキリト君すら負けてしまったというから、本当に驚かされた。

 

 キリト君は……ひいき目を抜きにしても、私が知る中では、ALOで最強のプレイヤーの1人だ。いや、個人的には、『1人』じゃなくて、『最強』だと思ってるけど。

 

 そのキリト君がまさか負けるなんて、正直驚かされた。

 

 リズからはその時、それ以上のことは聞いてなかった。キリト君と同じピュアファイターだったのか、それとも魔法とかアリだったのかも。プレイヤーネームも、種族も聞いてなかった。

 

 そもそも、『絶剣』なんて今まで聞いたこともない名前だし……それだけ強いプレイヤーが、今までどうして話題になっていなかったんだろうか? キリト君に勝つくらいの強さだっていうなら、相当にこのゲームをやりこんでいるはずなのに。

 

 だからこそ、っていう言い方も変かもしれないけど……正直、興味がわいた。

 なので、今度皆で……それこそ、キリト君とかも一緒に、他の都合のつく人全員で、その『辻デュエル』が開催されているっていう、世界樹の根本に行ってみることになった。

 

 11連撃のOSS……最強の剣士『絶剣』……どんな人なんだろう? ちょっと楽しみかも。

 

 

 

 ……ただ、ちょっと蛇足を。

 余談だけど、私はこの『11連撃』という数は、現在のOSSの最大連撃数だとは思っていない。

 

 実際に見たことがあったり、知っているわけじゃないけど、たぶん、いや確実にそれ以上の連撃数のOSSは存在すると思っています。

 

 理由は2つ。

 というか正確には、それができそうな人を2人知ってる。

 

 1人は、キリト君。

 

 キリト君は、ALOでもっぱら片手剣1本でのプレイを主体としてるけど……SAOをやっていた人なら皆しっている通り、彼の本領は二刀流だ。

 かつてALO事件の時に、ユージーン将軍を相手にした戦いの時にも披露したって聞いてる。

 

 そのキリト君なら、『二刀流』のOSSを作ることも可能だろうと思う。

 

 SAOにおいても、実践レベルで二刀流を使えるまでに研鑽し、さらに何十回、何百回と二刀流のソードスキルを使って来た彼なら、その動きを体で覚えているはず。

 

 すぐに、ないし一発でとかは難しくても、時間をかけて思いだせば、それを再現できると思う。

 

 そして、私の旦那様は……ゲーム的に面白そうなことであれば、二の足を踏む人じゃあない。

 ゆえに、再現して作っていてもおかしくない。SAO時代にこれでもかって程に使っていた、『二刀流』のソードスキルの数々を、このALOで……『OSS』として。

 

 16連撃の『スターバーストストリーム』や、27連撃の『ジ・イクリプス』……あれらの絶技を。

 

 そして、もう1人は……ナツメ先生だ。

 理由は簡単。あの人、OSS作るの超得意だから。

 

 あの人ほら、SAO時代からむしろ得意だったから。ソードスキルのマニュアル操作。

 

 ユニークスキル『武芸百般』がまさにそんな感じだったから……そもそもナツメ先生にとって、ソードスキルってアシストなしで出すものだったもんね。

 そしてその状態で、4つも5つも平然とソードスキル連続発動させてたわよね。

 

 そしてさらなる根拠として……うちのお母さんが、お歳暮代わりにOSS貰ったって言ってた。

 あの時はちょっと何言ってるのかよくわからなかったなあ……聞いて理解した後はもっと驚いたけど。何してんのよナツメ先生……。

 

 そのOSS『シアーハートアタック』は、この間見せてもらったんだけど……あれですでに9連撃だったし。対人戦特化だったけど、その分かなり強力で……PK目的で襲ってきたプレイヤーを、またたく間にHP全部消し飛ばしてリメインライトに変えてた。

 ……お医者さんが本気で殺人技作ると、あんな風になるんだな、って思った。

 

 ……今思うと、ナツメ先生ってOSS、最大で何連撃の作ってるんだろう? 聞いたことなかったな……今度聞いてみようかな。今まだ海外だけど。

 

 キリト君と同様に筋金入りのゲーマーだから、むしろ面白がってOSS作りまくってそうだし……案外、11連撃とか余裕で超えてそうな気も……。

 

 

 

 それはさておき、日を改めて今日、その『絶剣』を見に来たわけです。

 

 私とキリト君に加え、リズやシリカちゃんといったいつものメンバーに、お母さんとヨルコさん、グリセルダさんとグリムロックさんも一緒に来ている。結構集まったわね。

 

 ナツメ先生はさっきも言った通りまだ海外。デューク先生も同じ。クラディール先生は仕事。残念だけど、来られなかった。

 

 それはさておき……

 

「ちょっと……リズ?」

 

「うえ? 何、アスナ?」

 

「絶剣って……女の子じゃない!?」

 

「……あれ? 言ってなかったっけ?」

 

 姿を現したその『絶剣』は……私と同じくらいか、むしろもっと小柄なくらいの、かわいらしい女の子だった。種族は……羽と髪の毛が紫色だから『闇妖精(インプ)』だと思う。

 

 装備は、重厚な鎧とかは何もつけてない……回避タイプかしら?

 武器は、腰にさしてる片手剣だけ、みたい。

 

 キリト君が負けたなんていうから、てっきり私、すごい強そうな筋骨隆々の、歴戦の戦士みたいな見た目の人なんじゃないか、って思ってたんだけど……っていうか、

 

「ねえキリト君? もしかしてキリト君が負けたのって……」

 

「ち、違うぞアスナ!? 俺は別に、女の子だからって全然手加減も油断もしてなかったって! ……少なくとも、後半は……(ぼそっ)」

 

 思わず『じ~っ……』という感じの目で睨んでしまう私。それを受けて、しどろもどろになって弁明するキリト君。……まあ、キリト君がそう言うなら、信じるけど……。

 

「次、挑戦する人、いませんかー?」

 

 すると、『絶剣』の女の子が、そう言って周囲を見回していて……しかし、ギャラリーからは誰も名乗りを上げる様子はない。

 

 『お前行けよ』『やだよ、勝てるわけねえじゃん』なんて会話はあちこちで聞こえるけど。

 

「……っていってるけど、アスナほら、行かないの? キリトの仇取るんでしょ?」

 

「言ってないわよそんなこと!? でもまあ……ちょっと興味あったのはたしかだけど……」

 

 例の『絶剣』が女の子だって知って、ちょっと勢いがそがれたというか……

 

「じゃあお兄ちゃんもっかい行けば? リベンジ、リベンジ」

 

「んー……正直、無策で挑んでもちょっと勝てるとは……やるなら対策とか練って、色々準備してから挑みたい。……『二刀流』使うのもアレだし(ぼそっ)」

 

「パパもママもやらないんですか? じゃあ……おばあちゃんは?」

 

「んー……そこまで興味はないのよね……。対人戦ってどうも……グリセルダさんやヨルコさんはいかがですか?」

 

「私もちょっと、対人のデュエルはそこまで好きじゃないんですよね。イベントで大人数のレイド戦とか、ボス攻略とかだったら楽しそうだしやる気出るんですが……」

 

「君は昔から指揮官肌やら冒険家肌みたいだからね。ヨルコ君も同じかい?」

 

「あ、はい……そうですね。対人戦はあまり……」

 

 と、そんな風に皆で話していて……ふと気づいた。

 いつの間にか、『絶剣』よりも……私たちの方に、ギャラリーの視線が集まっていることに。

 

「お、おいアレ……『ソードファミリー』じゃね?」

 

「え、マジ!? スプリガンの男に、ウンディーネとシルフの女……うわ、マジだ! 『シルフ五傑』のリーファって子もいるし……」

 

「『黒ずくめ(ブラッキー)』に『バーサクヒーラー』、『キラークイーン』に……あれ? でも『青ざめた盾(ペイルガーダー)』はいないっぽいけど……」

 

 ……これってアレよね? こないだ話題になった……私とキリト君や、お母さんとナツメ先生が1つの家族として扱われてるっていう……『ソードファミリー』なんて、名前までついてる……。

 

 そしてちらっと横を見れば、結構大きめのダメージ受けてお母さんが頭を抱えていた。話に聞くだけじゃなく、実際に目に、耳にするとさすがにきついのかも。

 収まるどころか広まってるっぽいし……どうしようホントにコレ。

 

 そんなことを考えてたら、ついにはさっきまで注目の的だった子まで、こっちに興味をもって、

 

「あれ!? もしかして今話題になってる、超強いって一家の人?」

 

「あー……いや、話題かどうかはわかんないけど、たぶんそう……かも? 一家、かなあ?」

 

「うわー、そうなんだ! え、もしかしてデュエルに挑戦しに来てくれたの?」

 

 と、目をキラキラ輝かせて、ずいっとよってくる『絶剣』の子。

 ちょ、近い近い。何かグイグイ来るわねこの子……ストレアさんばりに積極的かも。

 

「あ……っと、そっちのスプリガンの人はもう1回戦ってるよねー……えっと、じゃあ、お姉さんが挑戦者なの?」

 

「え!? ええと、その……ど、どうしようお母さん?」

 

「私に聞いてどうするの……自分で考えて決めなさいな」

 

 と、噂のダメージが予想外に大きかったのか、声から疲労がにじみ出ているお母さんが言った。

 

 すると、それを聞いた『絶剣』の子が、お母さんを見て、なぜかまたびっくりしたように

 

「え!? お母さん!? 若っ! お姉さんかと思った……えー、家族ってそういう……」

 

 お世辞……じゃなさそうね。声の感じからして、ホントに驚いてるっぽい。

 まあ、若い風に見えても、所詮はアバターだから……外見は完全ランダムで決まる結果としてこうなってるわけなんだけど。操作感とかの問題で、体格だけは現実の体に近くなるけどね。

 

 ただ、そんな風に褒められた点については、普通に嬉しかった様子で……ちょっと元気を取り戻した感じに見えた。

 

「あら、ありがとう……もういっそそっちで通そうかしら? ALOではよく言われるし……そうね、そうすればちょっとは噂も……否定したり消すんじゃなくて、焦点をずらす感じでやれば、少しはましになるんじゃ……」

 

「ちょっとちょっとちょっと、お母さん落ち着いて。戻ってきて。何恥ずかしいこと言いだそうとしてるの」

 

 やめてよ、いくら噂が悩みの種だからって私との関係ねつ造しようとするの。

 

 第一もしそうしたところで、お母さんとナツメ先生の関係の邪推がマシになるとは思えないんだけど。ナツメ先生と私(とキリト君)の関係が、親子から兄妹に変わるくらいしか想像できない。そしてお母さんはナツメ先生の奥さんのまま。

 

「あら、別にいいじゃない。せっかくゲームの世界なんだし。これもロールプレイって奴でしょ、一種の」

 

「年考えてよ。そもそも、ゲームの中だけとはいえ、母親を姉と呼ぶことになる私の身にもなってほしいし……娘としてなんかこう、言いようのないやるせなさみたいなものが……そもそもお母さんだって、もっとリアルに近い、年齢相応の見た目のアバターなら、そんなこと思わないでしょ?」

 

 思わずそう言ってしまったら……その直後、ちょっとムッとしたような表情になったお母さんから……逆襲が飛んできた。

 

「あら何よそれ、現実の私がアバターより老けてるとでも言いたいのかしらこの娘は。そんなこと言ったら貴方だって現実の方がちょっとふっくらしてるじゃない」

 

「にぇ!? な、何言うのよ!? 現実に忠実です! だよねキリト君!?」

 

「うぇ!? 俺!? え、ええと……ど、どっちもかわいいと思うぞ?」

 

 と、しどろもどろになりながら言う旦那様。急に話題を振って驚かせてしまったみたいだったけど、そこは素直に『そうだね』って言ってくれてもいいのに……

 

 ……とか思ってたら追撃が飛んできた。

 

「あら、よかったわね、上手い具合にお茶を濁してくれたわよ? よくできたお婿さんが来てくれて私も嬉しいわ」

 

 ……うん……そんな風に言われたら、こっちも反撃に力が入るのは仕方ないと思うんだよね。

 

「何よもう! お母さんだってこの間、気の緩みとかたるみとか言ってたけど、お母さんこそリアルで気以外のところが物理的にたるんできてるのしってるんだからね!」

 

 ……カチン、と、効果音が聞こえた気がした。お母さんの方から。

 

「……あら、いい度胸じゃない。言うようになったわねアスナ……けどそこまで言われたら、お母さんももう簡単には引き下がれないわ。覚悟はできてるんでしょうね?」

 

 そう、額に青筋を浮かべ、静かな声音で言うお母さん。…………抜刀しながら。

 

 『ちょっ……やる気ですか!?』『え、エリカさん!?』とかなんとか周囲で、キリト君やリズたちが騒ぎ出すのを聞きながらも……私は落ち着いて、同じように抜刀する。

 しながら、同じような静かな声で言い返す。

 

「あら、お母さんこそいいの? 私、自分で言うのもなんだけど……お母さんとは、剣士としてのキャリアが違うんだけど」

 

「そんなもので人生経験の差を覆せるとは思わないことね、お子様の分際で」

 

「そのお子様相手にマジになっちゃうんだー、大人気なーい♪」

 

 周囲からは『何だ、何だこの殺気……』『やばい、絶対怒らせちゃいけない2人が同時に怒ってる……』『ママとおばあちゃん、怖いです……』『お、俺ちょっと用事思いだした!』『いや、別に俺ら関係ないんだから逃げる必要はねーだろ……気持ちはわかるけど』なんて話し声が聞こえるけど、気にしなくていいわね。今は。ユイちゃんは後できっちり遊んであげてフォローするけど。

 

「グリセルダさん、ちょっと審判と、試合開始の合図お願いできますかしら?」

 

「あー……はい、わかりました。じゃ、もうちょっと広いところに出ましょうか……」

 

 グリセルダさんの了承を合図に、私とお母さんはどちらからともなく、広場の中央まですたすたと歩きだす。ギャラリーのど真ん中でデュエル始めるわけには行かないからね。

 

 ふふふ……考えたら、お母さんとガチでデュエルするなんて初めてかも……ちょっと楽しみね。

 

 ふと横を見たら、同じようにこっちを見返しているお母さんと目が合って……なぜか、2人共くすりと笑ってしまった。……似たもの親子、なのかもね。やっぱり。

 

 

 

「あ、あのー……ぼ、ボクとのデュエルは?」

 

「「後にして」」

 

「あっハイ」

 

 

 

 




ユウキ、ついに登場!
しかしまさかの蚊帳の外。

……最近、結城親子が元気で困る。

そしてナツメ、まだ留守。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。