ソードアート・オンライン 青纏の剣医   作:破戒僧

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今回からちょっと、うちの主人公の……今まで出てこなかった面がちらつき始めます。
これまた作者の思い付きというか、いつもの拙い設定能力なので、無理やりになってないかなど恐々としつつ投稿です。
どうぞ。


第9話 ここ動物病院じゃないから

【2024年2月23日】

 

 今日、キリト君が見慣れない少女と一緒に尋ねて来た。

 

 少女っていうか、幼女っていうか……中学生か、下手したら小学生に見えるかも、ってくらいに小さな女の子だった。明るい茶髪をツインテールにしていて……なぜか、酷く落ち込んでいるような感じに見える子。

 

 元気のない様子だったので、僕もサチさんもてっきり『カウンセリング』の依頼に来たんだと思ったんだが……どうも違ったらしい。

 

 キリト君がその子をここに連れて来たのは、その子の『使い魔』の蘇生のためだった。

 

 このSAOには、詳しい条件なんかは不明だが、『ビーストテイマー』と呼ばれる存在がいて、仲良くなったモンスターと一緒に戦ったりできるそうだ。

 

 数は少ないようだが……僕も、今までに何度か見たことがある。

 アニマルセラピー的な効果でもあるのか、それに該当するプレイヤーは、他のプレイヤーよりもストレスの度合いが軽度である場合が多い気がする。

 

 ……その反面、テイムしたモンスターを大事にしているあまり、それが失われると、いわゆる『ペットロス』的な感じになって、深い心の傷を抱える者も多いようで……何件か、そういうケースのカウンセリングも請け負ったことがある。

 

 どうやらこの少女……シリカちゃんもそのケースのようだが、彼女の場合は事情が異なる。

 

 というのも、ごく最近の話だが、死亡した『使い魔』を蘇生させるアイテムが発見されたためだ。

 

 第47層の『思い出の丘』という、そこら中に花が咲き乱れているお花畑エリアがあるんだけども……そこで採取できる特殊なアイテム『プネウマの花』を使うと、死亡から3日以内に限り、使い魔を生き返らせることが可能なんだそうだ。

 

 で、それはいいんだが……何でそのシリカちゃんをここに連れて来たんだろうか?

 ここ、動物病院じゃないんだけど。蘇生のお仕事とかはやってないし、もちろんプネウマの花も置いてないよ?

 

 ……あ、そう。ダメ元で置いてないかと思って一応来たのね、キリト君が紹介して。

 まあ、ここ、最近調薬系スキルかなり成長させてるサチさんのおかげで、ポーションとか薬類も性能のいいのが結構色んな種類置いてあるもんね。

 

 でも残念、ないです。

 

 聞けば、シリカちゃんはこの層……35層でギリギリやっていける程度のレベルらしい。

 『迷いの森』で迷子になって、モンスターに襲われて……そこで、使い魔のピナを失ったそう。

 

 なので、47層なんていうずっと上の階層でやって行けるだけの能力は、とてもじゃないが持っていない。ゆえに、できることならそこまで行かずに済ませられないか……ってことで、もしあるとしたらここだろう、ってことで来たわけだ。

 

 しかし何度も言うように、ここにはプネウマの花はないので、あきらめて47層に取りに行くほかない……と、結論は出たんだが……その後、ちょっとキリト君と秘密の話をした。

 

 シリカちゃんの相手をサチさんに任せて、別室で『相談がある』と持ち掛けられた。

 

 どうやらキリト君、単にシリカちゃんを助ける以外にも、ちょっと裏の目的、みたいなものがあるようで……それに手をかしてくれないか、とのこと。

 

 ここに来たのは、プネウマの花を置いてないか確かめるため……っていうのは、それもなくはなかったものの、どちらかと言えば建前。

 実際には、僕に協力を要請することの方がメインの目的だったんだそうだ。

 

 キリト君は、時々僕と一緒に狩りに出ることもあるし、お互いのレベル上げに付き合ったりすることもある。彼、基本ソロで、他のギルドとかと一緒に行動することがないからって。

 

 ゆえに、助っ人として頼むには十分な実力を持ってる、と判断したんだろう。

 

 なるほどね……そういうことなら手を貸そうか。

 対価として、今度素材の採取あたりに付き合ってもらうことにして……明日、彼とシリカちゃんと一緒に、47層に向かうことにした。

 

 

 

 ……それにしても、キリト君の話を聞いて思ったけど……

 

 やっぱりいるんだよな、残念なことに。

 どこにでも、そういう―――

 

 

 

 ―――救いようのない連中ってのは、さ……

 

 

 

☆☆☆

 

 

Side.キリト

 

 病院の店番をサチに任せ、俺はシリカとナツメと一緒に第47層『思い出の丘』に向かった。

 

 一面に花が咲き乱れているこのエリアは、モンスターさえ出なければ、ブルーシートでもしいて弁当持ってきて、ピクニックにでも来たいくらいにのどかで奇麗で安らげる場所だ。

 

 ……景観に反して、悪意を感じるくらいに気色悪い見た目の植物系モンスターが跋扈するんだが。

 

 一回、油断したシリカが突っ込んでいった結果、触手にからめとられてあられもない姿になり、俺に対して『見ないで助けてください!』という中々に無茶な注文を……いや、見てないよ?

 シリカのスカートからちらっと覗いた、清純さを感じる白い輝きなんて……ごめんなさい。

 

 ちなみにその時のナツメは、もうちょっと放置した後で助けていた。

 装備している、俺と同じ片手剣――ただし、俺と違って左手には盾装備――で、一刀のもとに斬って捨てていた。

 

 なんですぐに助けなかったのか……というか、むしろナツメなら位置取り的に、シリカが捕まる前に引っ張り戻すなり、捕まってすぐに助けるなりできたんじゃないかと思う。

 

 そしたら、こういう答えが返ってきた。

 

『事前に注意しろってちゃんと言っといたのにわかってないのでちょっと反省させました』

『キリト君が貸した装備品のおかげで、危ないダメージが入ることもなかったですし』

 

 ……予想外にシビアというか厳しいと言うか、子供を叱る、あるいは躾ける大人の目線だった。

 

 まあ確かに、花畑の中から隠れて近づいてくるMobがいるから注意しろ、とは最初に言っていたから、それを忘れてはしゃいだシリカにも問題があるんだけどな。

 

 その後、情報に合った岩の所へ行き、『ビーストテイマー』であるシリカが近づいたとたん、それを察知したかのように咲いた『プネウマの花』を採取、帰路についた。

 

 ……そして、間もなく町につく、というところで、それはやってきた。

 

「っ……ロザリアさん!? 何でここに……?」

 

「はぁい、シリカちゃん。お目当てのレアアイテム……『プネウマの花』だったかしら? 上手く手に入れられたみたいでよかったわ」

 

 ハイディングのスキルによって隠れていたのは、少し前までシリカとパーティを組んでいた女性、ロザリア。そして……彼女がヘッドを務めるオレンジギルド『タイタンズハンド』のメンバー達。

 女ボスを中心に、屈強だったりそうでもなかったりする男たちがたむろして現れ、俺たちを半円状に取り囲むように立つ。

 

 この犯罪者集団の目的は、今しがたシリカが入手してきた『プネウマの花』。レアアイテムであるそれを強奪し、売り払って金に換えるつもりなのだ、

 

 ついでとばかりに、装備品や所持品まで脅し取ろうと『命が惜しければ~』なんて、使い古された脅し文句まで並べ立てて来た。

 

「そっちのあんまり強そうじゃない騎士様2人も災難だったわねえ? こんな子にたらしこまれちゃったせいで、身ぐるみはがされることになっちゃうんだもの」

 

 ……どうやら、獲物を見定める目や、金の匂いを嗅ぎつける鼻は達者だが、人を見る目はないらしい。俺とナツメが……まあ、顔は知らなくても仕方ないかもしれないが、相応の装備に身を固めている以上、そこから実力を察することは難しくないはずなのに。

 

 まあそれはいい。こいつの目が節穴でも、別に困らないし。

 

 実のところ、俺はこいつらの襲撃を予見していた。

 というより、シリカに協力した目的の1つが、こいつらと接触することだからだ。

 

 俺は数日前、『タイタンズハンド』によって壊滅させられ、財を奪われた挙句に、リーダーを除いて皆殺しにされたギルド『シルバーフラグス』の生き残りから、こいつらの壊滅を依頼された。

 

 全財産をはたいて買った『回廊結晶』を渡され、コレを使って『タイタンズハンド』の全員を牢獄送りにしてほしい、と。大の男が泣きながら、何歳年下かもわからない俺に泣きついてきた。

 

 俺はその依頼を受けて……ちょうど、こいつらの標的にされているシリカに出会い、さらにその後、ロザリアが現れてシリカに(正確にはこれからシリカが手にするであろうレアアイテムに)目を付けたのをそばで見ていて……ピナの蘇生とこいつらの壊滅、2つの問題を一度に解決する作戦を思いついた。そのために、ここにシリカを連れて来たのだ。

 

 ……いや、違うな。目的は『3つ』なんだが……今はいいだろう。

 

 さて、こいつらを壊滅させる方法だが、簡単である。何もしなくていい。

 ただ、思う存分こいつらに攻撃させていればいい。

 

 『タイタンズハンド』の実行犯担当の男共は、各自武器を使って思い思いに俺を攻撃した。ソードスキルまで使って本気で殺しに来た。

 

 が……レベル差がありすぎて、一方的に攻撃しているのに、俺のHPはろくに削れない。休まず頑張って切り付けても、スキル『戦闘時回復』のおかげで、そのダメージもあっという間に回復してしまい、水の泡になってしまう。……こんなことを何時間続けても、俺は殺せない。

 

 どう頑張っても、そもそも無抵抗の俺を殺すすべがないとわかって愕然とする『タイタンズハンド』のメンバー達。

 最初の威勢はどこへやら、狼狽する様子は滑稽にすら見える。

 

 今更になって俺が、攻略組のトッププレイヤーの1人である『黒の剣士』『ビーター』と呼ばれる存在だと、偽物でも何でもなく本人だと気づいたらしいロザリアは、ターゲットをもっとやりやすい方に……俺よりは弱そうに見えるらしいナツメと、確実に弱いシリカに変えたようだ。

 

 隙を見て2人を確保して、人質にでもしようとか考えていそうだが……そううまく行くはずがない。こいつらの実力では、シリカは危なくても……それを守っているナツメに勝てるはずがない。

 

 ずっとソロで攻略を進めている俺だが、チームないしパーティを組んで動くことが全くなかったわけじゃない。クライン率いる『風林火山』や、グリセルダさん率いる『黄金林檎』、一時期コーチを務めていたこともある『月夜の黒猫団』などと一緒に行動することもあったし、共通の目的のために、アルゴやアスナと一時的に組むこともあった。

 

 それと同じ感じで、ナツメともたまに組むことがあったんだが……その時に肩を並べて戦闘をこなした経験から、俺はこいつの実力を知っている。

 実力と、それから……こいつの持つプレイヤースキル、その『特異性』もだ。

 

 まあ、その辺はさておき……こいつらじゃナツメに勝てやしない。シリカは安心だ。

 

 ……ただ、俺としては、そう言うの抜きにしても……ナツメ(とシリカ)に襲い掛かるのはやめてほしい、と思ってるんだがな。俺の『3番目の目的』に反していることは自覚しつつ。

 

 いや、だって……仕方ないだろう? そんな気分にもなるさ。

 

 

 

 ナツメの、あの……『タイタンズハンド』の連中に向けられる、ゴミを見るような冷たい目をみたら。

 

 

 

(……そらみたことか)

 

 隙を見て(そんなもんないが)ナツメとシリカに襲い掛かった男が2人、あっという間にナツメに叩き伏せられていた。

 

 切りかかったところを剣でいなされ、それで体勢を崩したところに、左腕の盾で一撃。

 それを素早く2回。たったそれだけでゴロツキ2人が吹き飛んだ。

 

 盾打(シールドバッシュ)はシステム上の扱いからダメージ判定はないが、その衝撃は伝わる。ナツメのような高レベルのプレイヤーが使えば、それだけでも結構な脅威だ。痛みはないしHPも減らないが、実際に体を吹き飛ばされる衝撃は、心身によく響く。

 

 唯一の望みだった人質も不可能とわかり、本格的に絶望するロザリアをもう一押し脅し……それでようやく『タイタンズハンド』は全員降伏した。

 

 『回廊結晶』で開いた、青い光が渦巻のようになっている門を通って、その向こうの監獄に消えていく、重い足取りの『タイタンズハンド』のメンバーを見送る。

 ……ようやく終わった。この後、シリカに……おとりに使ったこと、謝らないとな。

 

 ……そして、最後の一人がコリドーの奥に消えるまで……ナツメの目に宿った、剣呑で冷徹な光は、結局ずっとそのままだった。

 

 

 

 俺が、この依頼に際して、目的にしていたことは……3つ。

 それは、ナツメの所に最初にシリカを連れてきて、採取にまでナツメを巻き込んだ理由の『3つ目』……最後の1つにも関わることだ。

 

 そのうちの2つ、ピナの蘇生と、『タイタンズハンド』捕縛については、ナツメにも話した。

 

 しかし、その最後の1つだけは……最後までナツメに内緒にしていた。

 

 何で内緒にしていたか? ……言えるわけがないだろう、ナツメを観察するのが目的だった……なんて。

 

 この『観察』っていうのは、戦い方を見てその技術を盗むとか、そういう殊勝な意味じゃない。

 

 率直に言ってしまえば……ごく稀にナツメが見せる、いつもの彼とは違う『黒い』雰囲気……その謎というか、正体みたいなものを見極める、というものだ。

 

 俺が最初にそれを見たのは、もう何か月も前になる。

 ナツメと一緒にとある層のフィールドダンジョンの探索を進めていた時だ。1人ではきつそうだったので、ちょうどそこでとれる素材を狙っていたナツメを誘って、2人で探索していた。

 

 その帰り道、物盗り目当てのオレンジプレイヤー2人に襲われた。

 

 俺たちも2人だったため、2対2……正確には、1対1が2つという形での戦いになった。

 

 ステータス的に俺たちの敵じゃなかったものの、対人戦という状況にそこまで慣れていなかった俺は、理性がブレーキをかけて攻めきれずにいて……それを察した敵のプレイヤーが、調子に乗って大胆に襲い掛かってくる形になっていた。どうせこいつは怖気づいて、俺を殺せない、と。

 

 同じようにナツメの方も、そんな感じになっていた…………と、俺は思っていた。

 

 だが、何合か打ち合い、どんどん相手のプレイヤーの攻撃が大胆になってきて、口汚くこっちを罵って挑発してくるようになった頃……状況が一変した。

 

 それまで防御一辺倒で、口で、あるいは手加減した攻撃で説得していたナツメが、突如攻めに転じ……そのまま、一呼吸で相手プレイヤーの両手両足を切り落としたのだ。

 

 その斬られたプレイヤーはもちろん、俺や、俺と戦っていたそいつの仲間も、一瞬誰も何が起きたかわからなくて硬直してしまって……その一瞬でナツメは、今度はこっちに踏み込んできて、俺が戦っていた方の奴も同じようにした。

 

 そして、『部位欠損』を起こし、地面に這いつくばることしかできなくなったその2人に、あろうことか追撃をかけ……HPをレッドゾーン、全損ギリギリのところまで追い込んで……そこで連中の方から降参してきたんだ。涙ながらの命乞い、と言った方がいい有様だったが。

 

 そしてその時だ。俺が……ナツメの目が、恐ろしく冷たいものになっているのに気づいたのは。

 あの目を……まるで、つまらないゴミを見るかのような冷たい目を、あの時初めて目にした。

 

 いつもの、他のプレイヤーの心を支え、悩みを解決するために親身になって話を聞き、真摯にアドバイスを返し……今までに、100や200じゃないプレイヤーの心を救って来たナツメ。

 その目の優しさは……あいつに救われた1人である俺だからこそ、よく知ってる。

 

 その目に宿る暖かな光が、見る者を安心させる柔らかな笑顔が……あの瞬間、消えていた。

 あまりにも、いつものナツメと……俺がよく知るナツメと違っていた。

 

 その後ナツメは、逃げられないように2人を縛った挙句、主街区に放り込んで放置した。

 

 このゲームでは、主街区などのエリアにオレンジプレイヤー……即ち犯罪者が入ると、鬼のように強いNPCのガーディアンが現れ、追い回され……捕まると監獄送りになるのだ。それを利用して、オレンジ2人を監獄に叩き込んだ。

 

 それを見送ったナツメの目は、元の優しい目に戻っていたけど……俺はしばらく、ナツメの目を見るのが怖かった。

 

 その後、ナツメとは何度か一緒に攻略(というか探索というか)に出たし、訓練に付き合ってもらったことなんかもあったんだが……あの時と同じ目を見ることは1度もなかった。

 

 正直、俺の気のせいだったんじゃないか、と思ってすらいた。

 

 両手両足を使えなくして拘束した、というのは……HP全損未遂も含め、ちょっとやりすぎだった気がしなくもないが、単に相手を手っ取り早く無力化しただけ、って見方もできなくはないし。

 

 けど……俺は今回の件で、ひょっとしたら、と思っていた可能性を試すことにした。

 

 ナツメの『あの目』は……オレンジプレイヤーを前にしたときに出てくるんじゃないか。

 狙ってオレンジに出くわして確かめるなんて不可能だったから、今まで未検証だったが。

 

 結果は、ズバリ的中。

 

 最初こそ、ただ苛立っているだけの、しかしいつものナツメの目だったんだが……横目でちらちらと見ていると、次第に……俺が無抵抗で『タイタンズハンド』の連中に斬られまくっているあたりから、目から光が消えてきて……同時に、怒りや苛立ち、不安と言った感情すら抜け落ちていき……最後には『あの目』が出来上がっていた。

 

 俺は、ナツメに協力を依頼する際に『小さい子の前だから、前みたいに刺激が強いのはなるべくなしで頼む』って頼んでいた。

 多分、そうしてなきゃ……シールドバッシュじゃなくて、前みたいに『切断』していたと思う。

 

 ナツメは、オレンジプレイヤーに悪い思い出でもあるんだろうか? このゲームの中で、何かあったのか? オレンジに何かされたのか、あるいは、カウンセリングの仕事の中で何かが?

 

 あるいは……もしかしたら、リアルで何か過去に……

 

 ……やめよう。考えても答えは出ないし……他人のプライベートの詮索、特にこういう明らかに地雷臭のすることの詮索はマナー違反だ。それが、リアルに絡むならなおのこと。

 

 ただ今は、まだ俺は、ナツメの抱えている事情やら心情の全てを知っているわけでも、理解しているわけでもない、と……そんな、当たり前のことだけ覚えておこう。

 

 いつの日か、それを理解することができたら……願わくば、もしそれでナツメが何か苦しんでいるようなことがあれば……かつてナツメが俺を助けてくれたように、今度は俺がナツメの力に、少しでもなれれば……なんてな。

 

 

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