テンプレ能力は扱い辛い。   作:パパんバン

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なにがあったんやコレェ!?
歓喜しつつ戦々恐々としながらの投稿です。難産だった……







風紀委員のお仕事ってボランティアなんですか?

 

 

 

 

 

 ――嗚呼。

 

 

 差し込む夕焼け。

 瞳に映るその景色は、真っ赤に染まっていた。

 

 心象(セカイ)が――脳内(ココロ)を侵していく。

 

「……(おさま)ってくれ、頼む……!」

 

 穿つように(イタ)む頭。鈍色のコンクリート壁の物陰に背中を預け、俺は大きく息を吐く。鈍い痛みが喉を貫いた。

 心象が暴走していた。肌の下で『ソレ』が突き破る様にして暴れ狂っている。やってしまったと、間違えてしまったと。俺は直感的に察しながら小さく呻き声を漏らした。

 ……嗚呼、本当に。本当に気持ちが悪い。

 

「……あのクソヤロウ、変なもん見せやがって」

 

 思い描くのは陽光に跳ねる色彩。そして――携えられた白黒の細剣(レイピア)

 頭の中を、精密に組み上げられた、調べ上げられた多次元へと至った『設計図』がぐちゃぐちゃに掻き乱している。

 基本骨子、構成材質、創造理念――成長経験。それらが俺の心象を容赦無く犯していた。

 

 俺には――()()()()()、アレは"重過ぎる"。

 

『登録』しただけでこれだ。投影なんぞした日には――どうなるかわかったもんじゃない。あの剣は、いったいどれだけの業物だというのか。ギチギチと、金属の擦れ合う様な音が、身体の中から響いていた。

 段々と収まっていく暴走に、俺は震える呼気を吐き出しながら悪態をつく。

 

「……畜生が」

 

 右手が、小刻みに震えている。ゆっくりと、絞り出すようにして吐き出した吐息は何処か血の味がして。

 

 半身の鈍い痛みが――頭をクリアにしているのが。

 本当に、気持ち悪かった。

 

 

 ――そんな、翌る日の出来事。

 

 

 

 

 

 ▽▽▽

 

 

 

 

 

「――ところでシェロ」

「んだよ。俺早く帰りたいんだが」

「アンタどこの部活入るか決めてるの? 決めてないなら一緒に見て回らない?」

「無視か」

 

 翌々日。なんやかんやで達也が風紀委員入りを果たした次の日である。服部刑部少丞半蔵と模擬戦とかも行われてらしいが――なんやかんやって便利だよな、面倒事とか(なんやかんや)無かったことにできるし。

 

「……家の事情により丁重にお断りさせて頂きたく思っている次第にして候――」

「じゃあ見にいきましょ」

「聞けよ」

 

 態々二重敬語にまでしたっていうのに。文法上は間違いだけども。

 意気揚々と俺の手を掴みながら引っ張っていくその姿は、穴というにはあまりに嬉しげで――って痛ぇっ!?

 

「って、エリカ握る力強ぇ。痛いんだが」

「……? だってアンタ逃げるでしょ?」

「純粋な目でなかなか酷いこと言ってくれるじゃねぇか」

 

 しまいにゃ泣くぞお前、マジでゴリラかよ。そう言ってエリカの手の拘束から逃れようと手を払うと尚一層強く握り閉められた。いやバキバキなってんだけど!? 折れるんだけど!?

 

「離せ離せ。別に逃げねぇよ」

「……チッ」

「やだ俺信用なさ過ぎ」

「当たり前でしょ」

「……せやな」

 

 舌打ち一つ。紅色の瞳でこちらを睨め付けるエリカに辟易としつつも、俺は過去のやったことを思い返して思わず納得してしまった。

 煽った代償に手を離す最後に全力で握りつぶされたが――気に留めずに俺は右手のハンドバッグを担ぎ直して、フリーになった左手を軽く振る。ゴギリと人体から鳴ってはいけない何かが砕ける音が聞こえたが、そんなものは無かったことにした。気にしたら負けだと思う。

 ついでに振った衝撃であらぬ方向に捻れた左手首はなかったことにした。気にしたら死ぬと思う。

 

「……ハァ」

 

 思わず溢れた溜息。曰く溜息を吐くと幸せが逃げるという諺があるらしいが、元々幸運が最低ランクぶっちぎっている俺には関係あるはずもなく。

 

「ほら、さっさと行くわよ」

「あいよー」

 

 陰鬱とした心持ちではあるが、拒否権など与えられていない俺はエリカの後ろを追うことにした。

 個体差からして違うからね。仕方ないね。

 

 そんなこんなで体育館前。魔法科高校の敷地内にいくつか存在するその内の一つである。

 エリカの希望でここに来たのは、まあ彼女が千葉の娘という立場であるというのもあるが――剣を納めている者である以上、ここの剣道部、或いは剣術部の腕前を見に来た、というのが大きいのだろう。

 

 ――と、そんなことを考えつつ物思いに耽っていた。

 

「――ちょっとぉっ!! シェロアンタなんとかしなさいよ!!」

「……えぇ」

「はや、早くして! ――ってアンタどこを触ってんのよ!?」

 

 面倒臭い。

 ギャァー!! と女の子がしてはならないであろう叫び声を上げるエリカに思わず溜息を吐いてしまう。これこのまま置いて帰っていいだろうか。駄目か。

 だが何もしないと後に何をされるか分かったもんじゃない。別にエリカが怖いというわけではない。違うったら違う。ケーキ奢りとかそういうのを避けたいだけなのだ。もう僕のお財布はボロボロなのだ。そういうことにしといてやる。

 

 仕方なしに地面を足に叩きつけ領域干渉を発動。地鳴りのような音が響く。

 イメージは重力の増加、エネルギー保存則をブッチ切って発動したソレは幻覚としての『圧』を生み出した。

 

 押し競饅頭している集団が怯んだのを確認して即座に歩法を刻む。タタタンッと小気味いい音とは裏腹に刹那で距離を詰め――全力疾走。歩法踏んだ意味は特にない。

 

 足元から掬い上げるやうにして女子の輪を掻き分け、中心部で揉みくちゃにされていたエリカの手を掴む。周囲が立ち直りかけているのを見て時間がないと判断。

 

「――走るぞ」

 

 全速力。俺はエリカの手を掴みながら、目的地も定まらぬまま目散に駆け出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――静寂。

 

 段保有者の、有数の剣士が互いに刀を突きつけ合うという一種の非日常に、思わず場の空気が変わったの感じ取る。

 

 場所は第一高校第二体育館。耳伝いではあるが、闘技場とも呼ばれているらしく、運動部でも一際武闘派なクラブが居を構えているのだという。

 まぁ言ってしまえば、エリカの目的地という訳だ。

 

「面白いことになってるじゃない」

 

 薄く笑みを浮かべ、先程まで怒り心頭状態だった筈のエリカが僅かに高揚しながら身を乗り出した。

 つい先程まで型通りの演武を見せられて、僅かに不満げだったのだ。

 あれだけ苦労させられたのだ。目的地の目の前から時間が経てば経つほどに遠ざかっていくというジレンマ。その上で観れたものが自身の望むものではないのだから仕方ない気もするが。……というか、巻き込まれてたのは八割エリカで、それを救出するのが俺だった。殆ど風紀委員の仕事だった。仕事しろバカ野郎共。

 機嫌の戻ったエリカに安心しつつも、はー、と息を零しながら隣のエリカに問う。

 

「アイツらのこと知ってんのか?」

「まーね。とはいっても直接の面識はないけど。……ていうかアンタも剣士なら大会くらい確認しときなさいよ」

「却下で」

「……知ってたけど、アンタはそういう奴よね……」

 

 まぁいいわ。と頭痛でもするのか、眉間を指で揉みしだきながら頭を振った。

 

「女子の方は壬生紗耶香。一昨年の中等部剣道大会女子部の全国二位の才女。男の方が桐原武明。こっちは一昨年の関東剣術大会中等部のチャンピオンよ」

 

 ――ハ! と、裂帛の一声。

 

 交錯は刹那。大上段振り下ろしと下からの切り上げ。相打ち――いや、僅かに剣道部の壬生の方がうまい。桐原の剣先は壬生腕に、壬生の剣先は桐原の右脇下、胸肩の動脈部分――致命傷のルートを上手く逃したか。

 

 飛び交う言葉と、哄笑。壬生の言葉に桐原は唇を三日月に歪めながら。

 

「――真剣だったら、だぁ? 見損なったぜ壬生!! だったらお望み通り()()()勝負してやるよ!!」

 

 突きつけられた竹刀を弾き飛ばし、引き下がりながらCADをタップする。オレンジのサイオンを撒き散らし、魔法式が展開。

 

「ゼェアッ!!」

 

 一足で両者の距離を詰め、魔法を帯びた竹刀を逆袈裟に振り抜いた。息を飲みながら壬生がその剣閃を避ける。

 避けた、避けたはずだ。だが、女の――壬生の胴に細い線が走っていたのも純然たる事実。

 

「どうだ壬生、これが真剣だ!」

「ちょっと、桐原くん!?」

 

 ――あっ、これまたあかんやつや。

 

 周りに風紀委員は見当たらない。そしてこのレベルの剣術の巧さ。下手な奴では止めることはまず無理だろう。

 不自然なほどの冷静さ。周囲に広がる動揺の波に一切呑まれることのない自身の精神構造に嫌気がさす。

 

 ではどうするか。風紀委員を呼ぶ? 否、それでは碌な解決にはなるまい。ならば当事者たちが落ち着くのを待つ? 論外だ。激昂した武闘家ほど手のつけられないものはない。ならば俺かエリカが動くか? だがCADもないこの状況でできることなど、たかだか知れて――

 

「……エリカ?」

「っ、何よ」

 

 その瞳に、息を飲む。

 紅く、燃えている。当然か、あの行動は剣の道を志すものとしては看過できないことなのだろう。

 ……ああ、くそ、面倒くせぇ。

 

「エリカ、あとで珈琲一杯な」

「えっ――」

 

 今にも飛び出しそうなエリカの肩を掴んで止め、俺は大きく息を吸い込んだ。

 嗚呼、もうホント。なんでこんなことになったのやら。

 

 

 

 

 

 

「――こっちです十文字会頭ッッ!!」

 

 

 

 




次話、デート回。
珈琲を用意してお待ち下さい
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