第1話 何か転生しちゃったんですけど
2019年1月24日未明、1人の男子大学生が息を引き取った。死因は一酸化炭素中毒。彼が下宿していたアパートが火災に遭ったのだ。眠っている間の出来事で、本人は苦しみを感じていなかったという。
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はい、というわけで俺、岡本伸一19歳は気が付いたらいつのまにか死んでいて、マジで絵に描いたような閻魔大王の前に引き出されてました。
「はい、君が岡本伸一君ね。若くして殺してゴメンね〜。一応運命で決まってたんだけど、やっぱり若者殺すのは忍びないね〜。」
いや〜、そういうセリフは殺す前に言って欲しかったし、何なら思い止まって欲しかったんだけどな〜。
「はいじゃあ生前のプロフィール確認ね〜。岡本伸一君。1999年2月26日神奈川生まれ、2019年1月24日、下宿先の京都で火災に遭い死去。享年19。中学、高校は野球部に所属、大学は一般の入学試験を受けて京都の有名私立大学に進学。興味本位で合気道のサークルに入り、下宿先近くのコンビニでバイト。アニメとパワプロと映画が好き。嫌いなものは口うるさいババァ。あっ、女友達は多いけど彼女ができないのが悩みだったんだね〜。ご愁傷様。」
こいついっぺんぶっ殺していいですか?
「さてさて、まあ君文学部だったんだよね?だったら薄々勘付いてると思うんだけど、僕の後ろでグルグル回ってるコレ、輪廻の輪。」
あっ、そうなんだ。てかデケーな。普通にみなとみらいの巨大観覧車ぐらいはあるわ。
「ということで、今から転生してもらいまーす。」
どの辺が"ということで"かはわかんねーけど、転生か………。何か楽しそうだな。今度こそ彼女欲しいな〜。
「前世はフツメンだったけど、今度はそこそこなイケメンに転生させてあげるよ。彼女作り頑張ってね〜!」
うおっ!何か猛烈な勢いで下に引っ張られる〜!!!
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あれからちょうど20年経った。こっちで付けられた名前はユリアン。パッと思い浮かんだのは銀○伝とウルトラ○ン80だね。閻魔の言葉に偽りなし、身長は180センチくらいあってまあまあなイケメンフェイスに生まれました。髪の毛はミンツ君みたいな亜麻色じゃなくてフ○デリカみたいなくすんだ金髪を適当に整えてる。ちょうどどこぞのマヨラーな副長くらい。(V字にはなってねーからな!)こっちの世界の親父もお袋も早いこと亡くして8歳で天涯孤独になった時はどうなることかと思ったけど、ご近所さんの手も借りつつ何とか自立もできて何とか収入も安定してる。職業は………万事屋。
いいじゃん!?やりたかったんだもん!!某漫画の主人公みたいに自堕落な生活を送るつもりは無いけどさ、かっこいいじゃん!"困ったことがあったら金さえ積めば助けます"ってさ!
ウッフン!……んでもってここはどこかというと、バトランドって王国の王城の城下町らしい。何か中世ヨーロッパみたいな世界観なんだけど、城下町の外には魔物とかいう未確認生命体がウヨウヨいて、魔法なんてもんもある世界。俺はちょっとだけ魔法の才能があるらしく、回復呪文のホイミってやつを使える。回復呪文っつっても自然治癒力を爆上げして痛みを和らげる感じ。怪我したらちゃんと休まなきゃならんのは前世もこっちも変わんねーな。
流石にこの世界に"和"な要素はほぼ皆無なようで、俺は基本的に裾の長い白っぽいローブっぽい服に(語彙力)紺色のマントを付けて、腰には樫の木をチマチマ削ってヤスリでピッカピカに磨いた木刀を腰に挿してる。まあ木刀って本当に便利なんだよね。高いとこの物届くし、もちろん武器になる。某イチゴ牛乳大好きな主人公が愛用するのもわかるってもんだよ。最初は完全にパクリでこのスタイル始めたけど、もう離れられねーわ。
業務内容は基本は雑用ばっか。やれあれを届けてくれ、やれ無くし物を見つけてくれ、やれどこどこの修理をしてくれ……。あとたまに魔物退治。まあそんなこんなで色々降りかかってくる依頼を片付けてたらこの前は王宮の壁面のペンキの塗り直しなんかもやっちゃった。んでこう見えても俺って結構几帳面だから、その仕事ぶり王様に直々に褒められても〜有頂天っすよ!王とパイプできたのはでかいよね。報酬弾むし!
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〜そんな春のある日、ユリアンの元に王宮からの呼び出しがかかった。〜
「さてユリアンよ、この前の壁のペンキ塗りの仕事は実に見事であったな。」
「ありがたきしあわせ。」
目の前にいる王様にとりあえず恭しくしておく。まあ何か国家間での揉め事とかは無いみたいだし、民衆が困ってる的な話も聞かないから、暗君ではないんだろう。
「そこまで硬くならずとも良い。してそなた、近頃イムルの村で子供が次々と行方不明になっとるという事件を知っておるか?」
じゃあお言葉に甘えてちょっと崩すか。
「はあ。確かに耳にしました。」
そういやこの前城下町共用の井戸でおばちゃん達がそんな話してたの聞いたわ。怖いよね。誘拐とかだったら胸糞もんだね。
「誠に由々しき事態じゃ。何としてもこの事件の原因を究明せねばならん。そうは思わんか?」
「はあ、そうですね。」
「そこでわしの勇敢な兵士たちが捜索に向かったわけだが、まだ手がかりらしい手がかりも掴めておらんようだ。そこで、追加で人員を派遣することになった。」
「なるほど。」
「その中にライアンというこの城随一の屈強な戦士がおって、奴もそれに加えたいと思うたのだが、なにぶん口下手でな。城の兵士達はその事を知っておるから問題は無いが、調査のために他の民たちと言葉を交わすこともあろう。その時に苦労するのではないかと思ってな。実績は申し分ないだけに外すのも惜しい。そこでだ………。」
「え〜、美人なねーちゃんならともかく、むさいおっさんと二人旅なんて願い下げですよ〜。」
要するにあれだろ、コミュ障のおっさんのために通訳になれって事でしょ?そのために2人で旅に出ろって事でしょ?ギブミービューティフルレディーズ!!
「2000ゴールド出すと言ってもか?」
「はい!喜んで引き受けさせていただきます!!」
ゴールドっていうのはこの世界の通貨で、だいたい1ゴールド=100円くらいの価値だ。つまりざっと20万転がり込んでくる計算になる。電化製品っていう金食い虫が無いこの世界においては軽く3ヶ月は食っていけるくらいの大金だ。
「そうか、引き受けてくれるか。ではライアンをここへ。」
〜そしてライアンと呼ばれた戦士が進み出た。鍛え上げられつつも引き締まった肉体。顔には青くてゴツいヒゲが蓄えられている。他の兵士とは違って赤く塗装された皮の鎧と兜をかぶった見た目年齢45歳だが、実年齢は33歳という男性である。〜
「では、2人で事件を何とか解決してくれたまえ。期待しておるぞ。」
〜そう言って王はユリアンに金貨の入った袋を渡した。〜
「前金の500ゴールドじゃ。残りの1500は成功報酬ということにさせてもらう。」
「りょーかい!!」
〜そしてユリアンはライアンに向き直り、手を差し出した。〜
「まあ、とりあえずヨロシコ。」
「………。」
〜ライアンは期待半分、不安半分という表情でとりあえず出されたユリアンの手を握り返した。
こうして、後に天空の勇者伝説と呼ばれる物語の幕が、バトランドの地から幕を開けたのである。〜
ユリアン
Lv.3 HP26 MP7
呪文 ホイミ
性質としては(戦士+武闘家)÷2+ちょっぴり賢者って感じです。