ライアンと一緒に王の前から解放された俺たちは、とりあえず城にいる人間に片っ端から声をかけて情報収集に勤しんだ。(もちろん主に俺が。)まあ王様も言ってたことだけど、目立った情報は集まらなかった。連れ去られた子供の母親にも話を聞いたが、遊びに行ったら帰ってこなくなったってことくらいだ。これは発生地であるイムルの村に行くしかねーかな?
城を出た俺たちはとりあえず俺の家に戻った。旅支度しないとな。
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「ささ、どうぞ上がってください。」
ユリアン殿に促され、私、ライアンは彼の家の敷居を跨いだ。二階建ての普通の家の一階部分は彼の仕事部屋であるようだ。入り口を入ると正面はカウンターになっていて、その奥には本棚や工具箱があった。そして彼は普段依頼人を座らせているであろうカウンターの前の椅子に私を座らせ、紅茶を淹れてくれた。
「あー、気が急いている所悪いんですけど、出発は明日にします。今日は城下町で情報集めて終わりになろうかと思います。」
私もそうするつもりだった。了承の意を伝えるために頷いておく。最初は軽薄なだけの男かと思っていたが、彼と僅か2時間行動を共にしただけでその認識を改めざるを得なくなった。
まずこの男はなかなか強い。一見ひょろっとしているが、適度に筋肉のついた引き締まった良い体をしてる。実際の戦闘を見たわけではないので実力自体は未知数だが、少なくとも私の足を引っ張るということはなさそうだ。それに、人の話を聞くのが上手い。まあ私が下手だからというところもあるのだろうが、初対面の相手でも臆せず話しかけ、巧みな話術で相手の心を掴んで次々とく情報を引き出す様子は、私には魔術のように見えた。
どうやら少し女好きでズボラで面倒くさがりなところがあるようだが、この男とはうまくやっていくことができる、そんな気がしている。
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一服した俺たちは早速城下町に繰り出して情報収集に努めた。手始めに声をかけた爺さんがヨボヨボの足腰で「付いていきたい」とか吐かしやがったが、「
しばらく街を散策していると、街の娘のフレアがえらく憔悴した様子でウロウロしていた。結構な美人なんだが残念ながら人妻で、旦那のアレクスは「冒険王に俺はなる!」ってどこぞのワンピの主人公みたいなこと吐かしてしょっちゅう家を空けている。その旦那の外出中に家の掃除などで今まで何度か依頼を受けているというわけだ。
「フレアさん、えらく慌ててますがなんかありました?」
「ああ、ユリアンさん!実はアレクスが家に戻らないんです!!」
「おいおい奥さん、あの野郎が家開けるなんざいつものことじゃねーか。とぼけてもらっちゃあ困りますよ。」
「いえ、もうあの人が出て行ってから2ヶ月になるのに全然手紙も寄越さなくて………。」
「2ヶ月?そいつはちーっとばかし長すぎるな………。」
「はい。今からちょうどアレクス探しを依頼しようとしてたところで………。」
「悪いが今ちょうど依頼受けてるところでだな………。」
そう言って俺はライアンの方を振り返った。するとライアンは鋭い目つきで睨み返してくる。何だ?あれか?受けろってことか?まあ俺も美人さんの頼みには弱いからなぁ〜。
「旦那どこ行くって言ってました?」
「確か、湖に囲まれた塔の謎を解く!って言ってイムルの村へ………。」
「分かりました。ちょうど今やってる依頼もイムルに用があるんで、何か分かったらお伝えします。成功報酬で200ゴールドで良いですかね?」
「はい!よろしくお願いします!」
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夕方まで歩き回ってみたが、ほとんど有益な情報は得られなかった。どちらにせよイムルに行くしかねーわな。
〜そもそもバトランドは、東西と南の三方を山に囲まれており、北側には大河が流れている。形成されている平野は東は広く西は狭い。その平野の東側の川から少し離れた地にバトランド城とバトランド城下街が広がっている。
そして、大河を挟んだ対岸の草原地の真ん中にポツンとあるのがイムルの村だ。そのイムルの村の西には湖に囲まれた陸地に塔が建っている。しかし地上部には入り口がないため、様々な言い伝えや伝説が残っており、それこそアレクスのような冒険家がその謎を解こうと躍起になっているが、この塔の中に立ち入ったものは未だいない。イムルの村の南東には鬱蒼とした森が広がっており、大人でも近寄るものはまずいないという。
そして、バトランドからかなり西にはイムルのある対岸へと渡るトンネルが掘られている。〜
ライアンとは明日の朝イチに城の前に集合するように話をつけ、取り敢えず家に戻って明日の支度をする。とは言っても、まあ日用品を詰め込むくらいだ。ライアンは鎧と兜つけて盾持ってるけど、あれってものっそい重いんだよね。
あれよ?1番安くて軽い皮の鎧でも8キロくらいあるからね?着とくだけなら余裕だけど、あれ着て素早く動き回れるかと言われるとノーと言わざるを得ない。まあ、魔物の攻撃も当たらなければ良いわけで、全力で回避すれば何とでもなるというのは何回かの戦闘で学んだ。もちろん当たったらエゲツなく痛いけど。
そういや初めて魔物と戦ったのは3年前だっけか………。
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3年前、バトランドからイムルに渡るトンネルが改修工事で立ち入り禁止になったから、その間だけイムルに渡るためにバトランドから1番近い大河の岸辺から渡し船が出ていた時期があった。そして俺は、イムルから作物を売りに来た商人をその船着き場まで護衛する仕事を250ゴールドで請け負った。船着き場までは歩いて2時間程度、魔物は人里の近くはあまり好まず、平野の西側に多く生息しているから、運が良ければ魔物には出くわさない距離である。
しかし、その日はツキが無かったのか、商人を船着き場に届けてバトランドへ帰る時に、スライム2体とはさみくわがた(何かちょっと鬼みたいな形相な上にちびっ子くらいのデカさある。)1体に出くわした。
「わーお、こいつスライムじゃねーか。んじゃあここはあれか。ドラクエの世界観なのか。齢17にして初めて知ったぜ。」
ドラクエなんてやったことはないが、流石に青くてプルプルした玉ねぎに愛くるしい顔が付いてりゃあ察しはついた。俺は腰に挿してた木刀をゆっくりと引き抜いて肩の力を抜き、上段の構えをとった。
すると、スライムが1匹ものすごい勢いで突進して来た。俺はスライムの突進の軌道から体を少しずらし、タイミングを合わせて木刀を振り抜いた。スライムは木刀に弾き飛ばされて3回地面にバウンドして動かなくなった。
次にはさみくわがたが襲いかかって来たが、これも木刀を振り抜いてはさみくわがたのツノを叩き折る。そしてそのまま地面に落下したはさみくわがたの頭に木刀を突き立てて仕留めた。
そこへもう1匹のスライムが突進して来た。はさみくわがたの脳天にぶっ刺さった木刀を引き抜こうとするが間に合わず、背中にまともにタックルを受けた。その衝撃で2歩よろめく。
「おいおい、可愛い顔してなかなかパワフルじゃねーか。」
俺ははさみくわがたの脳天から木刀を回収すると、今度はこっちからスライムに飛びかかり、そのまま脳天を叩き割った。
辺りに他の魔物がいないことを確認して、手拭いで木刀についた汚れを落とす。その時、魔物の死骸が微量の光を放って消滅して、後にはゴールドが残された。
「ふーん。なるほどね。」
散らばったゴールドを回収すると、8ゴールドになった。スライムが1匹2ゴールド、はさみくわがたが1匹4ゴールドだった。
パパパパッパッパッパ〜!!
急に俺の脳内に謎のラッパ音が流れた。すると、脳内に
「ユリアンは、レベル2に上がった!
最大HPが3、最大MPが2あがった。
ちから+1 すばやさ+1 みのまもり+2
かしこさ+1 うんのよさ+0」
という謎の文字群が現れた。
「レベル、上がったわ………。」
こうやって俺の初の戦闘は終了した。
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ってなんか昔のこと思い出しちゃったな。まあ明日も早いし早くなるか。
俺は布団を敷いて眠りにつく。腹が減っては何とやらとは言うけど、やっぱり何より寝るのが大事だからな………。