まあトンネルを出てからの道のりは平坦で良かったんだが、少し魔物が強くなった。きりかぶおばけとバブルスライムである。
きりかぶおばけはマジで見たまんま、切り株に顔がついてて、何か"そんな木の根元に枝なんか生えるか?"ってとこから生えてる枝を伸ばして攻撃してくる。そしてこいつの枝に生えてる葉っぱは薬草らしく、たまにこれ使って回復しやがってなかなか厄介だ。
バブルスライムは理科の実験で作ったスライムを床に叩きつけた残骸みたいな姿した緑色のスライムの亜種で、そのベトベトな身体ぶつけて攻撃してくるんだが正直キモい。その上に毒持ちで身体に入れば体力を奪われ続けるというのも相まってマジで近寄りたくない。でもゴロゴロいるし草原の中だと目立たないからマジで草原ごと焼き払いたい。誰か巨○兵持ってきて下さーい。
そして運悪くもその毒を身体に受けてしまい、高熱が出てしまった俺はライアンに負ぶわれてイムルの村の宿屋に入った。
「おーい、大丈夫か〜ユリアンん。」
「ああ、早く毒消し草頼むわ。」
ライアンが猛スピードで毒消し草を買って来て、すり潰して俺に飲ませてくれた。体から毒素がすぅっと抜けていく感覚がする。
「サンキュー、だいぶ楽になったぜ。」
「あぁ、そいつはぁ良かったぁ。」
うぉー、いま「血の色を誤魔化せるなぁ」って幻聴聞こえたよ。思っクソポプテピピ○ク思い出しちゃったよ。
「して、ユリアン。聞き込みは明日にするか?」
「そうだな。ちょっとまだ体怠いしな。」
「ところでさっき妙〜な話をぉ聞いたんだが。」
「何?」
「ここの宿屋の風呂、覗き魔がいるらしぃ。」
「何だって?そいつは羨まけしからん!今日この宿に女泊まってんのか?」
「あぁ、美しいシスターがひとぉり、隣の部屋にいるぅ。」
「よし、口説こう。」
「おぉい待てぃ!どこをどう考えたらそうなるのだ?ご婦人を守るのが先決でぇあろう。」
「じ、ジョークだよぉ、何?俺が本気で口説こうとしてたとか思っちゃってるぅ?」
「そうでないなら額から今流れ出した汗は何の汗だろうなぁ?まさか昼間の毒のせいだとはぁ言うまいなぁ。」
「ま、まあ取り敢えずは疲れを癒しながら夜を待とうぜ。」
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夜、仮眠を取って疲れを癒した俺たちは取り敢えず宿屋のシスターを不埒な輩から救うべく、見張りを開始した。シスターはこの宿に2連泊しているようで、昨日も視線を感じていたらしい。50ゴールドで調査を引き受けた。
「うーん、ますます羨まけしからん。」
いやぁ、体型を隠す修道服着ててもボッキュッボン目立ってたもんな。ライアンの視線も釘付けよ。ほんまええ身体じゃったのう。
「そろそろ昨日不逞な輩が目撃された時間だぁ。」
もう、俺がさっきから下ネタかまし過ぎるせいでライアンちゃん拗ねちゃったよ。全然俺の話に反応してくれねぇ。流石に「縦筋とか見えたのかなぁ?」はマズかったか?でもこいつ顔赤くしてたからな?中坊かこいつは!?
しかしそうこうしているうちに宿屋に向かって30代くらいの男が周りをキョロキョロと見回しながら歩いてきた。
「あいつ怪しいな。」
「あぁ、間違いないだろう。」
男は宿屋の温泉の裏の茂みに身を潜め、枝を掻き分けて中が見えるようにしている。俺とライアンは気付かれないように気配を消して忍び寄り、男の肩に手を掛けてそのまま後ろに引き倒した。そのまま俺は木刀を眉間に突き立てる。
「お〜い、あんちゃん。俺の目のつけてた女の裸覗こうなんざぁいい度胸じゃねえか。」
「ひ、ひぃ〜!!」
俺は渾身の若○さんのモノマネを炸裂させて詰め寄る。ついでに情報収集もやっとくか。
「バトランド城に引き渡されたく無けりゃあ、この村について知っていることを今すぐ吐け。3秒以内に吐かねぇとドタマ、ブチ抜くぞ。はーい1!」
そのまま俺は木刀を頭に叩きつけようとする。男はすんでのところで躱した。勿論○魂の松平片栗○のネタである。
「2と3は!?」
「知らねぇなぁ、そんな数字ぃ〜。男はなぁ、1だけ覚えときゃあ生きていけるんだよぉ〜。」
「さっき自分で3秒って言ったじゃねーか!」
ライアンはさっきからツッコミもせずに成り行きに任せている。何か言うだけ無駄だと悟ったんだろうな。
「んで?何か教えてくれないの?」
「わ、分かったよ。この村の地下牢にパンを万引きして捕まった余所者の男がいるんだが、どうも幼児退行を起こしてるらしいんだ。」
「他には?この村で頻発してる子供の失踪事件についてとか。」
「俺も聞き齧りなんだが、どうやらガキどもが居なくなるのは決まって放課後らしいぜ。」
「なるほどね。もう2度と覗くんじゃねーぞ。」
俺は男を解放してやった。
「野放しにして良いのかぁ?」
「まあこの村の奴だしな。ここで下手にチクったりしたら村八分にされちまう。情報ももらったし、チャラにしてやろうぜ。さーてシスターの依頼も完了したし、風呂入って寝よーぜ。」
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翌朝、早速俺たちは街に繰り出して情報収集を始めた。しかし目立った情報は集まらない。子供たちの年齢もバラバラで、強いて言えば全員この村出身の男の子というくらいしか共通点もなさそうだ。気持ちは分からんではないが、消えた子供の母親のヒステリーに付き合うのもそろそろ飽きてきた。
「なかなか上手いこと行かぬものであるなぁ。」
「そだねー。」
「もう粗方聞き尽くしてしまったなぁ。」
「いや、まだあるよ。」
「何処だ?教会も商店も村人にも聞いて回ったが。」
「ガキのやる事を1番知ってるのはだーれだ?」
「…………?」
「だからライアンはあいつに"ノロマ"とか言われるんだよ〜。」
あいつと言うのは俺らより先にこのイムルの村に到着していたライアンの同僚の兵士で、ライアンのことを小馬鹿にしていた奴だ。
「ガキは放課後に遊んでる時に居なくなったんだろ?なら一緒に遊んでるガキに聞くのが一番じゃねーか。」
「しかし子供の言うことを真に受けるのは……」
「ガキっていうのは純粋なんだ。見たまんまを言ってくれるさ。だがまだ言葉足らずだから何言ってるか分からん時があるだけなんだよ。」
「子、子供かぁ………。」
「なんだライアン、お前ひょっとしなくても子供苦手だな?」
「ま、まあなぁ。」
「ま、俺に任しとけって。」
そして俺たちは村の子供たちが通う学校に向かった。
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そこでは、20歳になる青年が子供たちと一緒に遊んでいた。子供が苦手な私は、一歩引いたところで校長と立ち話をしている。昨日は余りにも下品な事を言うものだから何度殴ってやろうと思ったか知れないし、多分私のモノマネであろう口調で覗き魔を問い詰めていた時は剣に手がかかりそうにもなったが、今の子供と無邪気に戯れている彼を見ればそんな気持ちも吹っ飛んでしまいそうだ。
「ふぃー、疲れた。坊主、元気だなぁ。」
彼は一緒に遊んでいた男の子の頭を撫でてその場に腰を下ろした。
「お前、ププルとは仲良しだったのか?」
ププルというのは行方不明になった子供の名前である。
「そうだよ。」
「そうか。心配だよなあ。実はな、お兄ちゃんはププルを探してくださいって頼まれてんだ。何かププルについて知ってる事教えてくれないか?」
「うーんとね、ププルがいなくなった日はね、ププルは秘密基地に行くって言ってたよ。」
「秘密基地?」
「ププルは僕以外にも仲良しのお友達が沢山いるんだけど、そのお友達たちと一緒によくその秘密基地で遊んでたんだ。」
「坊主は秘密基地知らないのか?」
「うん。今度教えてくれるって約束したんだけど、僕風邪ひいちゃって寝込んでたんだ。その日はアレクスおじさんと遊びに行ったんじゃないかな?」
「アレクスおじさん?」
「うん、"冒険王に俺はなる!"って言うおじさんだよ。」
「思わぬところで繋がっちまったなぁ。」
「どうしたの?」
「いいや、こっちの話だ。それで?」
「ププルが居なくなったのはその日だよ。その次の日にアレクスおじさんパンを盗んで捕まっちゃったんだ。」
「ちょっと待てよ坊主。ひょっとして他にいなくなった子供たちってみんなププルの友達なんじゃない?」
「そうだよ。」
「よし、わかった坊主。貴重な情報ありがとな。ププルも他の子供たちもみんなまとめて俺が連れて帰ってきてやる。」
「ほんと?」
「ああ、任しとけ。じゃあな、お兄ちゃんは仕事のお時間だ。」
「バイバーイ!」
ようやく私にも事件の概要が見えてきた。
「ライアン、待たせたな。とりあえず、牢屋に向かおうか。」
私は1つ頷くと、彼の後に付いて牢屋に向かった。