魔導剣史リリカルアート・オンライン   作:銀猫

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#10 ドラゴンパニック

―エリオ・キャロの部屋―

 

「……………………」

 

 

僕、エリオ・モンディアル、10歳。妹のような存在であるキャロと同じ部屋を割り当てられているが、キリトお兄さんやアスナさんのような一緒のベットで寝るなんてことはしていない。

 

そう、キャロも自分のベットで――

 

 

「すぅ…すぅ…すぅ……」

 

「くぅ…くぅ…くぅ……」

 

 

なぜ、僕と同い年ぐらいの少年と寝ているんだろうか?

 

 

―シノン・シリカの部屋―

 

 

「……………へカート、まだここは夢の中なのかしら?」

 

 

明滅するドッグタグ状態のへカートは否定するが、夢じゃないとおかしい気がする。

元々シリカは15歳と若い年齢でまた、女子ということもあり歳も近いシノンと同じ部屋になった。

 

そんなシリカのベットの上にはなぜか青髪の、エリオやキャロよりも幼いぐらいの少女が寝ているのだろうか。

 

 

 

―キリト・アスナの部屋―

 

 

「おはようございます・・・」

 

「おはよう、ユイちゃん」

 

 

まだ眠いのか目をショボショボさせたユイが起きてきた。それにクスクス笑いながらアスナはまだ寝ているキリトの体を揺すった。

 

 

「キリト君、起きて。朝だよ」

 

「あと…5秒…」

 

 

ベタなセリフ――とはちょっと違う言葉を発しているがアスナはサイドテーブルの上に置いてあったエリシュデータを持つとキリトの顔の前に置いた。

 

 

「なんかエリオ君が呼んでたよ。私もシノンのところに行くから」

 

「…おぅ」

 

 

―エリオ・キャロの部屋―

 

 

「エリオ、どうかしたのか?」

 

「あ、お兄さん…」

 

 

部屋に入ってきたキリトはまだ眠そうに欠伸をしていた。ちなみにユイはプライベートピクシーになってアスナと一緒にシリカの部屋へと向かった。

 

 

「ちょっと…」

 

 

そういってエリオは寝ているキャロのほうを見た。

彼女は見知らぬ男子と一緒に向かい合って寝ていた。それになんとなく察した。

 

 

 

「知らないな…エリオも知らないんだよな?」

 

「はい…どうしようかと…」

 

 

ただキャロと寝ているだけだが、害があるのかどうかが分からなかった。だが、このままにしておくのもいろいろと問題がありそうだった。

 

 

「キャロ、起きろ。キャロ」

 

 

優しくキリトがキャロの体を揺らすとほどなくキャロが起き上った。

 

 

「ふわぁぁ…あれ…お兄さん…?」

 

「キャロ、お前昨日誰かと一緒に寝たか?」

 

 

 

まだ眠いのか目を閉じて首を傾けるキャロ。だがすぐにそんなことをしてないと思い首を横に振った。

 

 

「…その子、誰かわかるか?」

 

「…え…?」

 

 

その時、初めてキャロのベットに誰かいるのに気付いた。

改めてみるとグリフィスよりも白に近い髪、体も日焼けなんて知らないような色白で規則正しい寝息は無垢な子供を思わせる。

 

 

「…………誰?」

 

「うぅん……あ…おはよぉー…」

 

 

 

目が覚めた少年は眠たそうに眼をこすり、目の前で驚いているキャロ、そして少し警戒しているエリオとただ腕を組んで立っているキリトに挨拶をした。

 

 

「えっと…君は…?」

 

「え…きゃろぉ…なにいってるのぉ…?」

 

 

どこか間延びした声で少年はキャロの名前を口にした。その時、眠そうに開いた瞼の奥に赤い目が見えた。だが、その眼はどこかで見たことがある気がした。

 

 

「あれぇ…なんでキリトぉがいるのぉ…?」

 

「俺の名前知ってるのか?」

 

 

まだこの世界では六課以外のメンバーとの面識は無いに等しいキリトだったが、彼の名前を知ってるとなると――

 

 

「えー、だってぼくと一緒に昼寝とかしたじゃんかー」

 

 

「…え?」

 

「だってぼく…」

 

 

「「フリードだから/ピナだから」」

 

 

―シノン・シリカの部屋―

 

 

「ピナ…!?」

 

 

キリトと同じように、シリカとともに寝ている空色の髪の少女を起こして事情を聴いていると彼女は自分がピナだと名乗った。

 

 

「え、でも…ピナ、なの?」

 

「そうだよ。SAOの時から一緒だよ」

 

 

確かにピナのような髪と目の色、肌は人らしく若干白いが――

 

 

「うーん、じゃあ、ピナ。SAOでシリカとの一番の思い出って何なのかな?」

 

「それはもちろん、キリトさんとシリカで私を生き返らせてくれたことだよ。シリカがまだプネウマの花を取りに行けるレベルじゃなかったからあきらめてデリートされるのを待ってたんだけど、キリトさんのおかげで生き返れたからね。2人は命の恩人なんだよ」

 

 

シノンの言葉に少女はそう答えた。ユイがシリカを見ると驚きを隠せていなかった。どうやら本当のことでそのことを知ってるのはキリトとシリカと――ピナ自身だ。

 

 

「…一度シャマル先生に診てもらったほうがいいかもね。ピナだとしてもなんで人の体になったか、体に異常がないか調べたほうがいい」

 

 

―医務室―

 

 

「使い魔が人の姿になる、ってケースはいくつかあるけど、後天的になるケースは初めて…しかも2件同時ってのもね」

 

 

シャマルが2人を検査用のベットに寝かせて電極やらを体に張り付けてそう言っていた。

一方キリト達も一度検査をと思ってフリードを名乗る少年とともにやってきたが、同じような状況がピナでも起こってたのに驚いている。

 

 

「けど…あの子はフリードだと…思います」

 

「私も、ピナで間違いないと思います。ううん、間違いないです」

 

 

長年連れ添った感覚なのか、人の形になっても何か感じるものがあったようだ。

 

 

「…結果が出たわ。間違いなく2人はピナとフリード。そして人体にも問題ないみたいね」

 

 

シャマルの検査結果に全員がほっとした。たとえフリードやピナではないにしても、体に異常がないのなら安心だった。

 

 

「けどなんで急に…」

 

「…キューブ…」

 

 

キリトが口にした単語。それは先日、ユイがアスナに渡してそして全部隊の民間魔導師がALOフォームを取得するという事態を引き起こしたアイテムのことだ。

しかしユイもあれは『アスナのライベントライトにALOフォームを導入する』ために渡したのだ。

 

発光し、ほかのプレイヤーにもALOフォームがインストールされる原因はユイにもわからなかった。

 

 

「もしかしたら、あれが原因かもしれない」

 

「確かに…あの粉々になった時のエフェクトで使い魔だった2匹…ううん、2人に何かあったのかも…」

 

 

その時いたアスナも、その時の映像を見たユイも同意した。

 

 

「ところで、2人は元に戻れるの?」

 

 

「えっと…こうかな?」

 

 

フリードがそういって何かを試すと、一瞬フリードの体が光って白子竜へと戻った。同じようにピナも目を閉じ、祈るように手を組むと体が光り、空色の鮮やかな子竜へとなった。

 

 

「キュクル!」

 

「ピュア!」

 

「……相変わらず何言ってるかわからないわね」

 

 

どうやら人の言葉が喋れるのは人の姿をしているときのみのようだ。

だが、これである程度の問題は解決できたはずだ。

 

 

―部隊長室―

 

 

「なら、買い出し頼んでもええか?」

 

「買い出し?」

 

 

一応フリードとピナの件を報告したキリト達にはやてはそういった。グリフィスに通信で何かを言うと彼は一枚のカードを持ってやってきた。

 

 

「子竜の姿ならまだしも、何度か人の姿で行動することもあると思うんや。エリオとキャロの服を借りるとしても、予備も少ないからな。なら買いに行ってきてくれへんか?」

 

 

確かに民間委託のキリト達は訓練を合同でやる以外はほとんど自由時間だ。

そう長いこともいるかわからないが、局員がデスクワークを置いて行くよりもこっちのほうが効率が良かった。

 

だが生憎なことにキャロは前に所属していた部署への用事があるため、行くことができない。

ちなみに他にも主なメンバーは他の部署やら先日の邪神との戦いの後始末などに用事があったりと忙しいそうだ。

 

「経費はこの中にあるから2人を連れて頼むな。あ、そうや。ちょっとみんなこれに目を通してくれへんか?」

 

 

はやてが翻訳してくれたのだろう、日本語で書かれた通知書が手渡された。日付と時間、それと場所が書かれていた。

 

 

「大演習場?」

 

「そや、昨日全部隊へと通達されたんや…キリト達全員と部隊長と補佐…まあ、私とグリフィス君やな。全員を管理局最大の訓練場である地上大演習場に連れてくるようにやと」

 

「なんかあったのか?」

 

 

だが、ライマの言葉にはやても少し首を傾けて考えていた。

 

 

「うちらはリーファとライマの所属手続は事前申請はもう終わって…正直に言うて呼ばれる理由が見当たらないんや」

 

「全部隊って、どれくらいの人数なんだ?」

 

「一個大部隊、少なくとも数百人近くや。まあ、保護した非戦闘員を引いても一個部隊並やろうな」

 

 

それほどの大人数を動かすのには何か訳があるはずだが、まったくもって心当たりがない。強いて言うのなら先日の邪神がALOのモンスターということで調査ということぐらいだが、それならわざわざ全員を一箇所に集める必要もないのだ。

 

 

「まあ、その日はみんなはうちと一緒に行動するということや、覚えといてな」

 

―車内―

 

「「うわぁ…!!」」

 

 

あまり町の中の様子とかを見たことがないフリードやピナは摩天楼や町の姿に一々喚起していた。ちなみに車の運転は寝起きのクラインがしていた。

 

 

「なんで俺が…」

 

「仕方ないでしょ。私たちの中で車運転できるのがあんただけなんだから」

 

 

キリトが持つのは二輪免許のため、四輪は運転できない。そのため、必然的にクラインしか無理だった。だが今朝は早朝訓練がないためゆっくりと寝ていた所を起こされたせいか若干機嫌が悪かった。

 

 

「ところで、シリカやキリトはわかるがなんでシノンやアスナまで?」

 

 

民間委託でフリードが一番なついているのはキリト、そしてピナのマスターであるシリカが買い出しに同席するのはわかっていた。だがそこにアスナやシノンがいる理由はあまりないような気がした。

 

ちなみにユイはキリトの膝の上にちょこんと座っている。

 

 

 

「あんた…フリードはともかくピナの下着まで選ぶ気?」

 

「…ああ、なるほど」

 

 

ピナは♀、そうなれば人の形になれば少女。そして服装もそれに見合ったものとなる。だがキリトもクラインも男だ。子供用とは言え女性服売り場にいるのはいささか問題がある感じがする。

シリカ一人ではいろいろと難しいこともある。

 

リーファとライマはライセンス取得のため、頭痛薬を持ったはやてと先に出かけた。

 

「それにキリト君もクラインさんも…単色で統一しそうだから…」

 

 

乾いた笑みを浮かべてアスナがそういった。それにびくりとキリトとクラインが反応した。

確かに2人の私服はキリトは黒、クラインは赤をメインにした格好だった。というよりももともとの世界でもそんな恰好ばっかりだ。

 

2人のイメージカラーだから問題がないが、フリードもピナも単色ではあまり似合わないだろう。

 

 

「お、あ、あの建物じゃね?」

 

 

声を半音ほど高くしながらキリトが目の前の建物を指さした。

 

―デパート―

 

 

「じゃあ、私とキリト君でフリードの服買ってくるから」

 

「わかったわ」

 

 

キリト、アスナ、ユイ、クラインでフリードの服を先に購入し、シリカ、シノンでピナの服を選択するようだ。

 

 

 

「じゃあ、20分くらいで行くからね」

 

 

このデパートでは子供服店は同じフロアにあるが男女別の店になっているため手分けしたほうが早かった。

 

 

 

―男子服売り場―

 

「うわぁ…!!」

 

「こりゃ…」

 

「分かれてるのも…」

 

「納得ですぅ!」

 

 

1店舗とはいえ、結構な大きさの店だった。一通り見て回るとしても結構な時間がかかるだろう。だが今回は幸いなことにフリードの私服を数着のため、それほど多くはない。

 

 

「じゃあ、キリト君たちは下着を持ってきてね。私とフリードは服を選んでくるから」

 

 

そういうとアスナとフリード、ユイは並んで服売り場のほうへと歩いて行った。

 

 

「ああ見てると、2人の母親みたいだな」

 

「ユイの時もそうだったけど、アスナは面倒見がいいからな」

 

 

 

一方そのマザー・アスナは

 

 

「うーん…フリードは白い髪や肌だから、あんまり暗い色は似合わないかな…」

 

「服はこれから夏ですから、薄いほうがいいですね」

 

「…………」

 

 

いつの間にか両手に服を持っていたアスナとユイはフリードの体に合うかどうか着させていた。フリードはなんとなく着せ替え人形のような気持ちがわかったような気がした。

 

 

フリード及びエリオの服を数着選ぶのに40分掛かったと追記しておこう…

 

 

 

―女子服売り場―

 

 

「……遅いわね」

 

「…そうですね」

 

 

店内にある靴を履き替えるために置かれている椅子にシノン、シリカと膝の上にピナがちょこんと座っていた。既に下着や服は見繕っているため、暇だった。

 

 

「ごめん、遅れちゃった!」

 

 

急いできたのか、アスナが若干息切れしてやってきた。その後ろには荷物を持ったクラインとキリト、そして手をつないでいるユイがやってきた。

 

 

「まあ、アスナならいろいろと凝ったものを選んでると思ってたからね、ゆっくり吟味させてもらったわ」

 

 

そう言ったシノンの近くの籠の中にはいろいろとピナの服やキャロの服がたくさん入っていた。ちなみにキリト達の服は既に購入していた、民間委託の面々は時間が有り余っているため、一度日常用品を買いに出かけていた。ただし、その時ピナはフリードと一緒に留守番していたが。

 

 

「ところで…」

 

 

女子の服の会計を終えた時、シノンが少し伏し目がちに聞いた。

 

 

 

「フリードは?」

 

「「「「「「…え?」」」」」」

 

 

 

 

―デパート:同階―

 

 

「ここどぉ……」

 

 

キリト達と行動していたはずのフリード。だがちょっと近くにあったディスプレイに気を取られているとはぐれてしまい、そして人混みに流されて迷子になっていた。

 

 

 

「大丈夫ですか?」

 

「ふぇ…?」

 

 

―子供服売り場前―

 

 

「なんで見失うのよ!!」

 

「「「「「「申し訳ない/です…」」」」」」

 

 

 

フリードの服を選ぶのに時間もかかったせいか、シノンは少しカリカリしていた。

 

 

「まあまあ、シノンさん…まずはフリードを探しましょう」

 

「シリカ、あれ」

 

 

 

嗜めるシリカにピナが指差した先には安心したように駆け寄ってくるフリードと彼を連れてきたであろう一人の女性がいた。

 

 

「フリード!!」

 

「寂しかったよぉ!!」

 

 

そう言ってフリードはキリトに抱きついた。よしよしと慰めているとアスナがその女性に頭を下げた。

 

 

 

「すいません、お手間を……」

 

「…………あ、あの…もしかして…」

 

 

 

言葉を止めたアスナ、そしてその女性にキリトは不思議に思い、顔を上げた。そしてクラインたちもその女性を見た。

 

 

 

「アスナさん…ですか?」

 

 

茶髪の髪を結って、ゆったりとした修道服のようなものを着た2~30代ほどの女性――

 

 

 

「「「ユリエールさん!?」」」

 

 

この中でキリト、アスナ、ユイは一番関わりがあるといっても過言でない女性。

SAO時代では『アインクラッド解放軍』のギルドリーダーだったシンカーの副官として戦い、そしてはじまりの街でキリトたちに救援要請を出した人物だった。

 

 

その名前を聞いて打ち上げで顔を合わせたクラインとシリカも驚いていた。一方、あったことがないシノンは当たり前だが誰だかわかってなかった。

 

 

―喫茶店―

 

とりあえず、積もる話もあるためデパートにある喫茶店へとやってきた。

 

 

「お久しぶりですね…まさか私たち以外にもこちらに来ている人がいるとは…」

 

「こっちも驚きですよ。まさかユリエールさんが…ん?私たち以外?」

 

 

キリトがユリエールの言葉に引っ掛かりを覚えた。私たち以外ということは彼女以外にも誰か一緒に飛ばされている人がいるということだ。

 

 

「私とシンカー、はじまりの街の教会にいたサーシャさん。あと数人のSAO・ALOやほかのVRMMOプレイヤーが聖王教会で保護されてます」

 

「そんなにいたのか…」

 

 

「その中にGGOってVRMMOのプレイヤーはいたかしら?」

 

 

古巣、とも言えるVRMMOでありもしかしたら知り合いがいるかもしれないと思ったシノンがそう聞くとユリエールは少し考えていた。

 

 

「GGOは…確かいなかったかと。ところであなたは?」

 

「あ、自己紹介がまだだったわね、私はシノン。SAOに参加はしてなかったけどALOに参加してるわ」

 

「ご丁寧にどうも。私はユリエール、SAOの時にキリトさんたちに助けてもらいました」

 

 

 

だがユリエールやシンカーがミッドチルダにいるということは既に大多数のVRMMOプレイヤーがこの世界に送られてきたということになる。

 

 

「ところでユリエールさんはなんでここに…?」

 

「この喫茶店で保護されたというSAOプレイヤーと待ち合わせを。もう大多数のプレイヤーがこの世界にやってきてるようで、騎士団で保護しようか…と、来たようです」

 

 

そう言ってると店に入って来た2人の女性、見たところ背が高い方の女性は部隊の隊員でもうひとりの少女がプレイヤーのようだ。

局員のほうは股下まで長い赤いストレートヘアーに金の瞳、管理局の服がなんとなく似合わなかった。

一方女性はパッと見はどちらかというと西洋風の顔つきでブロンドのような赤茶の髪、黒い瞳で格好がキリトたちのようなラフなものだった。

だが身長的にはリズよりも小さい。

 

 

「お待ちしてました、騎士団民間委託局員のユリエールです」

 

「最高評議会付き情報処理部のセイです」

 

「SAOプレイヤーのヒノメです。ユリエールさんって…まさか軍の副官だったあの?」

 

 

流石にSAOプレイヤーだとユリエールは軍の中心人物の一人として有名のようだ。

それにユリエールが頷くとセイがちらりとキリト達の方を見た。

 

 

「聞いた話だとあなたひとりだと…」

 

「ああ、いえ。彼らも私たちと同じ漂流者で先程偶然再会しまして…今後ほかの部隊と連携するのなら…と」

 

「え、ええ、ええええええ!!!!?」

 

 

するとヒノメが大声を上げて驚いていた。その驚きの先にはキリトとアスナがいたことでなんとなく理由を察知した。

 

 

「きききききキリトさんにアスナさん!?はわわわわわおおおお会い出来て光栄でsしゅ!」

 

「お、お着いてください」

 

 

あまりの慌て様にアスナが微笑ましくそう宥めたがヒメノはまだ緊張しているようだ。

 

「え、えっと…ヒノメ、大丈夫?」

 

 

セイがそう別の意味で心配そうにポンっと手を彼女の肩に乗せると「あう」とよくわかない音を出して卒倒した。

 

 

「……大丈夫なんですか?」

 

「…人見知りらしいけど、ここまでになるのは初めて見た」

 

 

ユリエールの言葉にセイがそう言った。とりあえず、ソファに彼女を寝かせるとセイとユリエール、そしてキリトたちによって飛ばされたメンバーのことについて話し合っていた。

 

 

 

 

 

 

「…SAOだけではなくALO、GGOにFMO、KLO…VROMMOゲームはほとんどですね」

 

ユリエールの言葉に聞いたことがないゲームがいくつか出てきた。だが彼女はMMOトゥディというVRMMOゲームの情報サイトを経営するシンカーと生活しているため、そう言ったゲームの情報があるようだ。

 

 

「本当に、なんで俺たち飛ばされたんだろうな」

 

 

クラインがしみじみとつぶやいた。約一年前までは命をかけたデス・ゲームから終わってやっと普通の生活に戻って、やっとそれが当たり前だと思えてくるほど平和だったのに。

 

 

一通りの打ち合わせが終わったがヒノメはまだ気を失っていた。

 

 

「ヒノメ、起きて。ヒノメ」

 

 

セイが呼びかけるがヒノメは全く目を覚まさない。

 

 

「仕方ないですね、ユリエールさん、車ですか?」

 

「いや、電車です。これだと帰れませんね…」

 

「うちで引き取る?」

 

 

困り果てたユリエールにアスナが総提案した。幸いにも車にはあとひとり乗れるが、それならまた、はやての悩みの種が増えることになるだろう。

 

 

「仕方ないな…」

 

だが、そんなことを知らない一同。キリトは彼女を背負い、立ち上がった。

 

 

―六課:医務室―

 

 

「ほわぁ…ふぇ?ここどこ?」

 

ヒノメが目が覚ますと、見覚えがない医務室のような場所で寝ていた。あまり快適とは言えないベットの上で呆然としてると金髪の女性がひょこっと顔を出した。

 

 

「あら?目が覚めたかしら?」

 

「え、あ、は、はい…あ、あの…ここは?」

 

「機動六課の医務室…そうね、キリト君たちがいる部隊って言ったほうがいいかしら?」

 

 

その名前を聞いてヒメノはまた顔を真っ赤に慌てていた。それを見てシャマルが面白そうにコロコロ笑っていた。

 

 

「SAOってゲームで彼とアスナちゃんのファンだったみたいね」

 

「な、なななななんでそれを!?」

 

「喫茶店で2人を見て卒倒したって聞いたわ」

 

 

それを聞いてヒノメはシューと頭から湯気を立ち上らせている。キリトたちからは面識はないと聞いていたので、おそらく彼女から見て彼らは憧れの存在だったんだろう。

 

 

 

「あ、そうそう。さっき騎士団の方から連絡があってあなたが希望すればここにいてもいいって」

 

「ふぁ!?」

 

「うふふ、希望しておいたから安心してね?」

 

 

シャマルのいたずらっ子のような笑みにヒノメは完全に顔を真っ赤にさせ、気絶した。

 

 

 

―食堂―

 

「え?中堅プレイヤー?」

 

 

珍しくクライン、ヴァイスと男3人でご飯を食べていたキリトはクラインの言葉にそう返した。この2人、性格的に似ているためかウマが合うようで何度か酒を飲みに行ったりもしているらしい。

 

アスナとユイはリイン、キャロ、フリード(人型)とご飯を食べている。

 

 

「ああ、さっき思い出した。エギルに頼まれて中堅プレイヤーのレベル上げの手伝いに行った時にあのヒノメっての見かけたことがあったぞ。一回切りでほかのやつの担当だったから詳しくは覚えてないが」

 

「へぇ、風林火山で…ね」

 

「なんっすか、その風林火山って?」

 

 

VRMMOゲームに参加したことがないヴァイスがそう聞いた。

それに少しクラインは誇らしく、そしてキリトはため息をついていた。

 

 

「俺の作ったギルド…まあ、SAOにおけるチームみたいなものだ。身内しかいなかったけどな」

 

「まあ、実力はあった。最前線において唯一一人もゲームオーバーにならなかった最少人数ギルドだからな」

 

「クラインって、案外すごい人なのか?」

 

「いや~それほどd「そんなことない」」

 

 

クラインの言葉にかぶせるようにキリトの言葉。それに目に見えてクラインが落ち込んでいるがヴァイスはスルーすることにした。

 

確かに風林火山を攻略ギルドとしてまとめ上げたり、攻略組としての腕はキリトやあのヒースクリフも認めるほどだが、その軽い性格かどうしてもすごい人に見えないのだ。

 

 

「ひでぇよ…キり坊…」

 

「ALOのラグナロクの時に美女に鼻の下伸ばしてたお前がすごい訳ないだろ」

 

「うっ…」

 

 

ズバッと言い切ったキリトにクラインがさらに落ち込んだ。

そんな彼らのテーブルに近づく人影――ヒノメ、シャマルとシリカになぜか人型になっているピナだった。

 

 

「ああ、あ、、あ、あの…」

 

「クス…ヒノメちゃん、緊張しすぎよ」

 

「ん?ああ、もう大丈夫なのか?」

 

 

シャマルがクスリと笑っているが、鈍感なキリトはそれに気にすることなく話しかけた。

 

 

「ははははい!あ、あの!私ヒノメといいましゅ!!はぅ!!////」

 

 

緊張しすぎで更に噛んだことに顔が真っ赤になった。その様子を見て先程まで落ち込んでいたクラインが肘でキリトをつついて小声で耳打ちした。

 

 

「おいおいキリトぉ~、またSAOでたぶらかしたんじゃないのか~?」

 

「んなわけ無いだろ…彼女とは面識はない」

 

 

ブラッキーとしてソロで行動していたキリトと関わりのある女性は、シリカといった偶然助けた相手やリズみたいな攻略上のつながりのある人物、恋人のアスナ。そしてGGOで出会ったシノン。

 

ビーターという汚名で彼が誰かと組むことも少なかった。

 

 

「えっと…ヒノメでいいかな?どうして俺の名前を…」

 

「SAOの時に、私の友達を助けてくれたので…それで噂とは違う人なんだと思ってエギルさんから色々と…」

 

 

その言葉になぜかキリトとクラインはサムアップして「HAHAHAHAHA」と高笑いしている黒人系の男性の笑顔を思い浮かべていた。

 

一層のボス攻略の顛末やキリトの覚悟を知っているエギルからすればキリトの人柄をよくわかっている。だがふと、彼女の言葉の中に気になる単語があった。

 

 

「君の友達…? SAOで俺が助けた…?」

 

 

攻略組ならともかく、中堅プレイヤーを助けた覚えがあまりない。

それになぜかシリカがアハハと少し乾いた笑みを浮かべていた。

 

 

「えっと…その友達っていうのは、私なんです…」

 

「え、シリカが!?」

 

 

それは驚きだった。どうやら喫茶店の時はお互いにSAOの友人だとはわからなかったようで、先ほどシリカがSAOの時のことを聞いて、判明したらしい。

 

 

「けどなんでわからなかったんだ?ここまで外観的に特徴あんのによ」

 

 

彼女の髪はブロンド色、どちらかというと洋風な顔をしており、エギルほどではないが特徴的という顔立ちだった。

それともSAOの時はリズのようにいろいろとカスタマイズしていたのだろうか。

 

 

「あ、あのその…私人見知りで…よく、顔を隠す装備をつけてたから…」

 

 

つまり、シリカは顔を覚えてなかったのではなく顔を知らなかったらしい。

今でも顔を真っ赤にしているのを見ると、結構無理をしているみたいだ。人見知り的な意味で

 

 

「ん?でもクラインは彼女のこと知ってたんだろ?」

 

「あー、正確には彼女と組んだやつが『すげぇ刀使いがいるんで、うちに引き抜きましょう!』って言ってたんだ」

 

 

刀使いはエクストラスキルの一つだ。そこまで剣士スキルをあげるとなると、本当に相当な実力者に違いない。だがなぜクラインは彼女を風林火山に引き入れなかったのか。

 

 

「…まあ、引き抜こうにもプレイヤーネームしかわからなくてな。中堅エリアを見て回ったけど見つからなくて諦めたんだ」

 

「い、いきなり『うちに来ないか』って言われて怖かったんです!」

 

 

どうやらそのメンバーのアプローチが悪かったようだ。そう言えば風林火山のメンバーはそういう女性メンバーとの会話や関係に不慣れなのを74層の安全エリアで見たのを思い出してキリトはため息をついた。

 

「…とにかく、これから宜しくな、ヒノメ」

 

 

そう言ってキリトは右手を差し出した。彼女はドキドキしながらそれを手に取ると、ゆっくりと握手した。

 

「は、はい、よろしくお願いします!」

 

 

「キリトくん、何してるのかな?」

 

「「「「!!!!!」」」

 

 

某ゲームの発見時のSEが流れそうなほどの恐怖がその場にいたメンバーに襲いかかった。

「ギギギ」と錆びた鉄のようにキリトが振り返るとそこには素晴らしく綺麗で輝いていそうだが背後には炎のような黒い何かがメラメラと立ち上っているアスナが立っていた。

 

 

「あああアスナさん、何かを怒ってるんですか?」

 

「んん?別にぃ~、ただ、なんでヒノメさんの手を握ってるのかな~かな?って」

 

 

 

どうやら彼女のいた席からは握手が手を握っているように見えてしまったのだろう。そしてとある過疎村の鉈少女のような語尾にダラダラとキリトは汗を流した。

そしてそんな彼女をみてヴァイスとシャマルはなんとか平静を装っているがその手は震えており、シリカに至っては顔を真っ青に半泣きになっていた。

唯一無事なクラインは「ああ、またか」と過去にもあったアスナの嫉妬にため息をついていた。ちなみにピナはどういう状況か理解していないようだ。

 

 

「あ、あの!!」

 

 

そんな中、声を上げたのは未だにキリトと手を握ったままのヒノメだった。

アスナはニコリとしたままキリトから彼女に視線を移した。

 

 

「し、失礼ですが…アスナさんとキリトさんって…その…付き合ってるんですよね…?」

 

「うん、そうだけど?」

 

 

アスナの答えになぜかヒノメはどこかホッとしたような顔をした。それにキリトもアスナもわからないといった顔をした。なぜ彼女はアスナとキリトが付き合ってると聞いて安心していたのか。

 

 

「なんで安心してるの?彼のことが好きじゃなかったの?」

 

「はう!? す、好きとかじゃなくて、その、あ、好きですけど、だけど、違う、ファンクラブのひとりとしてというか……」

 

 

なにか聞き捨てならない言葉があったきがするが、キリトから手を離したヒノメは人差し指を合わせてモジモジしていた。が、すぐに本題を思い出したのか少しうつむいていた。

 

 

「人から…聞いたことですけど…その…キリトさんと恋仲になった人がSAOで…亡くなったと聞いて…」

 

「っ…!!」

 

 

正確には違うがそれに当てはまる人は、一人いた。

 

 

 

【ありがとう、さようなら】

 

『月夜の黒猫団』の紅一点、サチだ。転移結晶無効トラップによって壊滅した月夜の黒猫団、そしてそのリーダーであるケイタの自殺がキリトの心に大きな傷をつけた。

それこそ、一人でボスに挑む無茶をするというほどまでに。

 

そのための無茶なレベリングにキリトはSAOプレイヤーの最強の一角を担うことになったのは皮肉な話だ。ちょうどその頃にシリカを助けたためか、月夜の黒猫団の話も何人かのプレイヤーが知っていたので、彼女もそれを聞いたんだろう。

 

 

「その、不謹慎かもしれませんけど…また、誰かを好きになることができて…良かったなって…」

 

 

「…おい、何の話だ…」

 

 

すると、ずっと黙っていたヴァイスが驚いた様子で口を開いた。シャマルも同様に信じられないような様子だった。

 

 

「え、あの…」

 

「クライン、お前たち何をしてたんだ…? ゲームオーバーになったらコンティニューするんじゃねぇのか…? 不謹慎? 亡くなった? まさか…現実で死んじまったっていうのか…?」

 

「ヴァイス…」

 

 

周りの喧騒が消えた。明るいムードメーカーのようなヴァイスの口から聞こえたありえない単語と、それが信じられないような雰囲気に周りが気づいてしまったのだ。

 

 

「どうなんだよ…おい!! まさか本当に命張ってたっていうのか!? そんな遊びで――」

 

「遊びじゃない!!」

 

 

今にも掴みかかりそうなヴァイスにキリトが吼えた。誰よりもVRMMOという世界で『生きて』きたキリトだから言える、否定できる言葉だった。

 

だが、それより一層本当の『命懸け』があったことが分かってしまった。

 

 

「何事や?」

 

 

そんな緊張感に支配された食堂に、ツカツカと歩いてきたのははやてとリーファ、ライマだった。ライセンス取得が思いの外早く終わったのか、食事にしようと戻ってきたようだった。

 

 

「キリト君、説明しや。何があったんや?」

 

「………」

 

 

道を開けるように左右に分かれた局員には目もくれず、まっすぐと騒ぎの中心になっているキリトたちの元へとやってきたはやては部隊長らしく、緊張感のある言葉で聞いた。

 

 

「…アスナちゃん、クラインさん、あんたたちも答えれへんのか?」

 

「…そうですね」

 

「まあ、2人が答えないってのなら俺たちが言うことができないな。あの世界の功労者は2人だからな」

 

 

ゲームクリアに貢献したのは攻略組だが、その中で一番危険な域まで達したのはヒースクリフと一騎打ちをしたキリト、そして実質ゲームオーバーになってしまったアスナだった。

 

そんな2人を差し置いてペラペラとしゃべるのはクラインの武士道に反するようだ。

 

 

「じゃあ、代わりに一つ聞くわ… 答えれないのは私たちが信用できないのか、それとも答えたくないのか…『答えれないのか』」

 

 

どうやらはやては初めからSAOのことに関してなにか普通と違うことだと認識していたようだ。ヴァイスやシャマルのように慌てるわけでもなく、ただの『確認』をしてるだけ。

つまり、こうなることも予測していたようだ。

 

 

「…これだけは言える。俺たちははやて達を信用してる…だけど…」

 

「もうええわ。その答えだけで。この話はここで終わりや、答えたくないことを掘り返す必要もないみたいやしの…それでええか?」

 

 

上司として、はやてはヴァイスに聞いた。彼は渋々ながらも、引き下がった。

だが、それで丸く収まるはずはなかった。先日の模擬戦で圧倒したことも含め、徐々に民間委託者達と機動六課で亀裂が走っていることに、キリトたちは――その場にいた全員は感じていた。

 




ユイ「いきなりの展開ですね…」
まあ、軋轢を走らせるのは考えてましたからね。それが原因でより一層ティアナの嫉妬が燃え上がります。

ちなみにこの話、少し無理してます。
ユイ「えっ? どういうことですか?」
この話の前、本来ならとある戦闘があったんですよ。掻い摘んで説明するとSAOのボスが出てきて「なぜあいつが…」という流れでしたんですけど、既に邪神を出してるのでその必要がなくなったんです。
たっだ、その際とあるロストロギアが発動するということになってたのを辻褄を合わせるためにキューブにしてるんです。

というわけで地雷を踏み抜いてしまった彼女
ユイ「軋轢の原因ですね」
本人は知らなかったとは言え、やってまいましたね。
彼女が感想欄に出てくる唯一のオリキャラ、地雷のヒノメ
地雷「変なこと言わないでくださいっ!!」
そしてあとがきまで進出。
一応今現在の予定ではライマと彼女が機動六課のオリキャラですね。まあ、今後数人増える予定です。

ユイ「そして使い魔の擬人化ですか…ほかの人の使い魔もですか?」
一応、やるつもり。あ、ちなみにフリ×ピナです。ショタロリです。

ユイ「そういえば、あのセイって方は…?」
ん~、立場的にはベアとかと同じかな。まあ、彼女についてはおいおい分かるだろうですし。

次回#11 民間魔導隊
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