人理修復は、優秀なAチームのメンバーに任せておけばよいのだろう?   作:ねっく。

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この短編について。

・この文章はブロローグ部分しか書いていないだろう。

・文章の手直しが終わり、一部設定(聖杯戦争の下り)が捏造されたものとなっているだろう。


本編
プロローグ:打算と誤算


 本日から、僕の所属する組織が人類を救った輝かしい未来に、私の才能を引き継いだ子が生まれた時に備え、日記をつけることとした。

 

 どうも、ご機嫌は如何かな?我が子よ。

 僕の名前は知っているだろうが、一応名乗っておこう。

 

 我が名は

 

 『テオドール=ホルツァー』

 

 ……偉大なる、父の名だ。

 

 もし、だ。万が一、万が一!覚えていないというのならば、今ここで覚えてもらうとしよう。いいか?もう一度だけ名乗るぞ。

 

 『テオドール=ホルツァー』だ。

 

 覚えたかね?

 

 さて、私が今居るのは、カルデアという組織の拠点だ。名前だけだと、ただの星見の魔術使いの組織にしか見えないね。

 

 でも、僕は別に星見の魔術は得意というわけでもないし、天体科(アニムスフィア)で教えを受けた訳でもない。

 

 なら何故僕がここに居るのか。それは、ここが人類の未来を保証するとかいう機関で、その目的を達成するためには相反するはずの科学と魔術を混ぜ合わせてしまう。そんな、ある程度古い家系でプライドの高い魔術師なら、まず首をくくって死んだほうがましとするであろう方法を平然と取っている非常に頭のおかしい機関だからだ。

 

 (魔術師は目的のために手段を選ばないというがその認識は一部誤解だ。

  例えば、科学技術もその一つ。それをタブーとする魔術師が大多数を占めている。

  科学技術で神秘による奇跡を再現するのは奇跡や魔術に対する愚弄であり、

  冒涜に当たるという見方が強いからだ。)

 

 さて、なんでそんな機関に所属しているのかって?端的に言うと、報酬と環境。

 

 それだけさ。僕からすれば多くの魔術師が嫌悪する科学技術は魔術の代用でしかない。1から10まで貴重な魔力を割いて儀式をする?残念ながらそんな力は僕のような、不幸にも2流に生まれついてしまった魔術師にはない。

 

 (2流を自認しておいて、偉大なる父と名乗るのかって?

  魔術師としては2流でも、頭脳はまた別なのさ。)

 

 だが、この科学技術を使って研究を進めようにも、大っぴらにやれば時計塔の魔術師から白眼視され迫害を受けかねないし、こっそりやるために協力者を募るのは、信頼できる友人がいn……じゃなかった、面倒な上に家の魔術が流出する恐れがあるので、難しいのだ。

 

 そこでだ。丁度、聖杯戦争という極東の国で錬金術の大家であるアインツベルンが行うと噂されていた万能の願望器を巡る催し事についてなら、科学を利用してでも勝ち残ろうという者がいるのではないか。(余談だが、カルデアで採用される予定のサーヴァントシステムの元となったシステムが使われていた催しでもある。)そう考えて、記録を漁ってみたのだ。

 

 当然、何かしらのヒントが得られることを期待していたが、結果は大当たりだった。

 

 聖杯戦争そのものの情報は、システム面のことのみで参加者についての情報は全く手に入れることが出来なかったのだが、魔術協会から派遣され聖杯戦争に参加しようとしたが、サーヴァントを召喚する予定だった日の1週間前に怪死した。と、されている魔術師が聖杯戦争に向けて作った代償魔術を生かしたマナの結晶の生成を一瞬で行うという装置。その情報を手に入れることに成功したのだ。

 

 正直なところ、彼の用いていた呪術に関しても偏見はあるのだが、これを使えば魔力の不足や儀式の手間などで用意できなかったマナの結晶を大量に確保することも可能となる。すぐさま、僕は持っている限りのコネと遺産を使い、なんとかそれを手にすることに成功した。

 

 これに手を加えれば、前から構想していた、礼装の作成にも着手することにも近づけるだろう。

 

 そのためにも、改造に必要な資金と全くの素人であった科学の知識が要る。だが魔術師として生きてきた僕に科学者の知り合いなど居るはずがない。仕方なく独学で勉強することにして必要物を用意し、引き籠ろうとしたところで、先代所長の放ったスカウトに引掛けられたのである。

 

 その後、訓練をしたり科学装置についての知識を集めたりしているうちに時は流れ、今に至るというわけだ。

 

 調べてみて驚かされたのはレフ・ライノール技師の力だ。彼は本当に素晴らしい人物だと思う。本当に時計塔でも有名な一流魔術師だったのか疑わしくなるほどに科学と、魔術を組み合わせるのが上手い。……無論、いい意味でだ。特に事象記録電脳魔・ラプラスはいい。カルデアの説明が本当だとするならレイシフトという特殊な状況下で私たちマスター候補生たちの存在を保証するということを行っているのだから。

 

 さて、興が乗りすぎたようだ。話を本筋に戻すとしよう。

 

 もうすぐ、僕が所属するカルデアが誇る優秀なAチームのマスター達を中心とした特異点の調査が開始されることとなる。先程、その調査開始に向けた最後のミーティングを終えたのだが、少し面倒なことに何事もなく終了とはいかなかった。重大な調査に関わるミーティングを前にして、寝ていた奴がいるらしい。所長が、任務から外すと怒りを露わにして言っていたが……。そこで私は閃いた。これは面倒な出来事ではなく、寝ていたという彼女が与えてくれたチャンスだということに気づいたのだ。元々、科学技術についてあまり詳しくない僕は、カルデアという組織の技術を信じ切れていなかった。

 

 なにしろ、最初のレイシフトだ。

 

 いくら実験を重ねていると聞かされているとはいえ、不慮の事故で彼らの言う意味消失とやらを起こしたり、特異点からの帰還に失敗したりすればたまったもんじゃない。だから、最初のミッションには参加しないことを前々から決めていたのだ。そのために、体調を2週間程前から少しずつ崩しておいたし、最初の任務から外れる旨を伝えて、自室に戻ることにした。

 

 それに、一番槍などというシステムはカルデアにはないわけだしね。当然、その程度のことで私が得られる予定である名誉に影響はしないだろう。

 

 幸いなことに、前線で戦うAチームの諸君と違って、僕の所属するBチームやその他大勢のCチームの面々はサポートが中心で今回のミッションに於いて、サーヴァントの召喚予定はない。まぁ、つまりは大局に影響は少ないと判断されているのだ。

 

 だから、所長は簡単に寝ていたマスター候補の彼女を寝ていたという理由だけで、この未来を揺るがす特異点の調査という重大な任務から外せたのだからね。1人や2人サポート役が消えた所で負けるほどAチームのマスター達は、軟な奴らじゃない。僕の不参加もあっさり認められた。まぁ、事前に僕が用意することになっていた補助の概念礼装は作っておいたからね。

 

 優秀なAチームの諸君に、せいぜい有効に活用してもらいたいものだ。僕の礼装が活躍すれば、自然と僕の名声も上がってくれることだろうしね。

 

 そう心の中で笑みを浮かべながら、自室に帰還した。すぐに外着を脱ぎ、自室用のラフな格好に着替える。着替えているうちに少し疲れが出始めたのか、体がだるくなってきたため、そのまま無機質な白いベッドに入りこんでおく。

 

 ただ、体はだるさを感じていても僕の心はむしろどこか浮ついているようで、

 

 「確かに私はAチームの諸君に様々な面で劣っているとも。

  ただ、君たちを矢面に立たせて後ろからちょっと助けるだけで、

  ローリスクで、人類を救う仕事をしたという実績を得て、

  魔術の研究に必要な知識も手に入れ、それを子に相続できる。

  つまり、人理修復が成った時、真の勝者となるのはこの私だ!」

 

 熱で体が変になっていたのか、最初のミッションから外れることに成功して完全に安堵したのか、少し人に聞かれると恥ずかしい事を口走ってしまった気がする。

 

 やがて僕は満足したのだろう。……その後しばらくは記憶がない。

 

 ――次に僕が目を開いたときには、僕には手が付けられない状態にまで事態が悪化していた。

 

 僕が部屋に入って5分ほど経った頃、どうやら最初のミッションへの参加者が集まっていた管制室にて、大規模な爆発があったらしい。僕は、その時にはすでに意識が飛んでいて全く気が付いていなかったのだが、ここの医療部門トップのロマニ=アーキマン氏がここに来て教えてくれた。

 

 どうやら、僕の部屋の警報装置が壊れていたらしく、僕が辛うじて聞こえるのは扉越しの廊下にある警報装置の小さな音のみだったために、気付けなかったようだ。

 

 「全く、逃げ遅れたらどうしてくれるつもりだったかね、この組織は。」

 

 と僕が苦言を呈すのも仕方ないことだろう。

 無論そんな状態で、僕にかまっているわけにもいかない彼は少し苦笑いした後、

 

 「というわけだ。君は早く避難してくれ!」

 

 と言って鬼のような速さで消えていった。

 

 さらっと苦言をスルーしてきたことに少し腹が立ったが、今はそれどころじゃない。

 

 彼が走り去った方へすぐに貴重品をかき集め駆け出した。ふと管制室の面々は無事なのだろうかという疑問が湧いた。

 

 「って、それを考えるのは、まず避難を済ませ切って我が身の安全が確保されてからのことではないか!」

 

 反射的に自分に突っ込みを入れる。

 全く、この非常時に何故僕以外のことを考えているのやら。

 

 だが、その自分自身のことを考えてみるとふと、僕は失念していたことがあったのに気づく。

 

 ……避難する際に通るという第2ゲートとやらの場所はどこなのだろうか。

 

 それさえ分かっていれば、あんな炎で燃えた地獄のような場所に行かずに済んだのだが、こんな広いカルデアの施設をすべて覚えているわけがなかった。

 

 頭にあるのは普段使う図書室と技術スタッフの部屋、自室に食堂、訓練する部屋の場所くらいなものだ。

 

 なので、責任者は真っ先に避難して状況を把握することを優先するだろう、という考えの元で、仮にも医療部門トップのロマニ氏と同じ方に行けばどうにかなると踏んだ。

 

 ――そして見事にアテが外れ、火災現場に突入した。

 

 あぁ、本当にこれが大きな失敗だった。なぜ彼は変なところで無駄に現場主義になってしまったのか、よりにもよって……と思わずにはいられなかった。

 

 そうして、息も絶え絶えには、日頃訓練を施されていたためにならなかったが、かなりの倦怠感に襲われつつ火災現場に到着した。

 

 まさか、前々から体調を崩しておいたツケをここに来て払うことになるとは思わなかった。どちらかというと体調を崩すことよりも、体調を崩しているように見せるための演技力を磨くべきだったと今でも後悔している。

 

 さて、僕が火災現場にたどり着き呆然としていると、え?こっちに来たのか?と言わんばかりの顔で、ロマニ=アーキマン氏が驚いた様子で此方を見た。

 

 まぁ、そうだろう。後から考えてみたのだが、僕は腐ってもここ、カルデアで1年ほど訓練を受けていた身だ。その施設の避難場所くらいは頭に入っているものだと思っていたとしても不思議ではない。

 

 彼は何か言いたげな様子だったが、何かを思い出したようで、すぐに僕から目を離すと周りの様子を見ながら、小走りに奥の方へと進んでいった。

 

 何処に行けばいいのか分からない僕は、親鳥についていく雛鳥のような頼りない足取りで彼を追って奥まで進んだ。

 

 「……生存者はいない。無事なのはカルデアスだけか。」

 

 そこで絶望的な彼の言葉を聞いた。彼の見立てで皆死んでいるなら、本当なのだろう。もしかしたら運よく逃げれた人もいるかもしれないと言ってみたが、彼曰く避難すべき第二ゲートは管制室とは正反対の方向にあったようだ。ここに来るまでに、誰ともすれ違わなかったということは……ますます希望が持てなくなった。

 

 一応、優秀なAチームのマスター達は、もしかしたら無事かもしれない。そう思ったのだがそれも彼にコフィンに入っていた状態なら意識を手放しているため、身の守りようがないと一蹴される。私からはふわふわしてる理想主義者のように見えていたのだが、彼は意外と現実主義なところがあったようだ。

 

 ピンポイントで現実逃避したいときに限って、それを発揮しなくてもよいと思うのだが……。

 

 そう思うと同時にふと、これからのことが頭をよぎった。もし、彼の言うとおりこの部屋にいた人物かつ生存者である人物、は皆無だとする。

 

 すると、僕以外のすべてのマスターが全滅したことにはならないだろうか。

 

 ということは、ここで仮に生き残れたとしても、特異点の調査には僕が行くしかなくなる。つまり本来僕がそこまで背負わなくてよかったはずのリスクである死。それを47等分せず、一人で背負う必要が……いや、サーヴァントを含めて2人?

 

 いや、それでも割に合わない!

 辛すぎる。

 

 どうにかして、僕がレイシフトに行かなくてはならない状態を避けつつ、人類が救われてくれる手段は無いだろうか?

 

 「熱っ!」

 

 火の粉が飛び散ったことで意識が現実に引き戻される。

 そういえば、今からゲートに引き返そうにも時間がないし、周りが熱いせいでそもそもこの部屋からすら出られるか怪しい状態だ。

 

 まさか日記が一日目で終わってしまうとは、などと軽い現実逃避をしながら、周りを見渡す。

 

 すると、先ほどミーティングで寝ていた少女と思わしき人物が瓦礫に向かって座り何かを話しているのが見えた。

 

 気でも狂ったのだろうか。

 

 もし、僕に加え彼女も助かってる場合なら、特異点に僕が行く必要が無くなる。とにかく気が狂ってないことを祈りつつ、一緒にここから逃げる為に彼女の方に向かった。

 

 こうして近づいてみると、彼女の目線の先に別の誰かが居ることに気がつく。

 

 そう、死んだと思っていた優秀なAチームのマスターであるマシュ・キリエライトが瓦礫に埋もれていたのだ。

 

 「君は……Aチームに所属しているマスターのマシュさんじゃないか!

  生きていたのか。ちょっと待ってくれ。すぐに治療魔術を……。」

 

 そのようなことを口走って、僕は彼女の傷を癒そうとするが、所詮は2流魔術師。しかも治療魔術は専門外である。傷があまりに大き過ぎて回復が難航した。

 

 「私のことは……いいです。……助かり……ません……から。

  それよりも、早く……避難……を。」

 

 彼女の方はもう生存を諦めているらしく、早く避難するように勧めている。そうしたいのは私としても山々だがもう放送からだいぶ経っている上に管制室は第二ゲートとは正反対のところに位置する。

 

 キリエライトを治療している間に残り時間も削れてしまった。

 

 辿り着くころにはもう封鎖されているだろう。

 

 せっかく、彼女を治療して矢面に立ってもらおうとしたらコレである。欲張ってしまったせいで今の自分すら危うくなってしまった。

 

 僕は訓練室にある魔術礼装、カルデアを自室に持っていっておくのだったと後悔した。体に瞬間的な強化を掛けれる上に、回復魔術も私が使うものよりはマシなものが使える品。アレが有ればキリエライトを助けたり、避難することだって僕のような専門外にめっぽう弱い2流魔術師でもなんとかできただろうに。

 

 だがまぁ、後悔してももう手遅れであることに変わりはない。

 

 ――中央障壁閉鎖します。

   館内清浄まであと 180 秒です。

 

 「障壁……閉まっちゃいましたね。」

 

 キリエライトが、呟いた。

 

 「なんとかなるよ。」

 

 ミーティングで寝ていた少女が、ほざいた。

 

 「……まさか、避難経路を把握していなかったばっかりに、このようなことになるとはな。」

 

 僕が項垂れてぼやいた。

 

 三者三様の感情に己の心を揺らがせながら(一人だけ負ではなく正の感情をこの期に及んで抱いていたようで、全く心が揺らいでいない者も居たのだが。)燃え上がる管制室での時間を過ごす中、機械音声が淡々と何かをアナウンスする。

 

 だが、その時の僕は自身の輝かしい生涯を振り返っていたため、そんな雑音など全く耳に届いていなかったのだ。

 

 ――該当マスターを検索……発見しました。

   適性番号10 テオドール=ホルツァー

   適性番号48 藤丸 立花

   をマスターとして、再設定します。

 

 ……だから、まさかコフィン外にいる僕が、レイシフトされてしまうとは考えもしなかった。

 

 ――全行程、完了

   ファーストオーダー実証を開始します。

 

 「な、なんだ!?」

 

 カルデアに来た時と同じ妙な感覚に襲われた僕は、何が起きたのかも分からず、混乱し……てはおらず、努めて冷静に目の前に現れた燃え盛る管制室……ではなく部屋を見て、考えを巡らせた。

 

 

 ……本当である。




ここまで読んでくれた方に感謝。
評価してくれた方も感謝。
修正の仕方が少し雑になったのは反省。
(見切り発車で申し訳ない。お許しを……。)
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