人理修復は、優秀なAチームのメンバーに任せておけばよいのだろう?   作:ねっく。

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この文章について

・これは2018年12月17日(月) 03:30
    に投稿されたモノの、違う世界線バージョンだろう。多分。

・前に投稿された話より粗が目立つだろう。

・作者は誤字報告を歓迎するだろう。

・前話含め、続きの投稿があるかは未定だろう。



if
白紙化逃れた元マスター候補者


僕は、たった一度意識を失っただけなのに。

 

「人理修復は無事、完了しました。」

 

次に目を覚ました時には、ファーストミッションに参加すらさせて貰えなかったような、一般枠の少女が全てを終わらせていた。

 

「……結局何も得られなかった、か。」

 

僕は本当なら今頃、世界を救ったチームの一員としての実績を元に魔術に使うための科学知識の修得や、有望な跡継ぎを生むことが可能となるであろう優秀な名家の嫁。報酬として手に入るであろう金、貴重な触媒。

 

その全てを手に入れられていた筈だった。

 

実際、あの時までは何もかも上手くいっていたように思う。だが、その事実に満足し油断をしてしまっていた。あの日、少しでも頭を働かせていれば、爆発には巻き込まれるような場所にはいなかったのだ。

 

実際、レイシフト自体魔術的な部分はともかくとして、科学的な部分はほぼ無知に近い状態だった。おまけに意味消失という大きなリスクもあることも知っていた筈。一度適当に理由を付けてミッションに参加せず、他人で成功したのを確認してから参加していたに違いない。

 

(まぁ、そんなこと今考えていても仕方ないのだがね。)

 

頭の回転に自信があっても、魔術的な実力を補う手段にはできていない。チャンスを失った反動なのか、せっかく手に入れたマナの結晶を生成する装置も、改造どころかまともに使える気すらしていない。

 

カルデアでの活躍を記録をするつもりだった日記帳も初のレイシフトを予定されていたあの日以降白紙のまま。結局僕は非才な二流魔術師のまま。何も得ることすらできず、こうして空しく帰路についている。

 

……終わったことに固執し続けるなんて僕らしくもない。第一、才能の欠片も持ち合わせていない魔術師が、そんな未練を抱くのは、ただの時間の無駄だ。

 

よし、やろうと思っていた研究は一旦放置して時間を置くことにしよう。

 

偶には、埃を被っている魔導書を使って、我が家のお世辞にも価値が高いとは言えない魔術について学んでみるのも悪くないだろう。気晴らしにはなる。

 

そうと決まれば、食料や触媒を買い貯めておかなくては。

どうせ1か月は外に出ることなどないだろうから。

 

「……はぁ。」

 

頭でそう思おうとしていたが、やはり僕という人間はどうにもならない終わったことへの執着をすぐに捨てきることは出来ないらしい。

これは厄介な荷物を抱えてしまったようだ。

 

なんだかやりきれない気持ちになって僕は一つ、大きなため息を落としてから、我が故郷まで歩み始めるのであった。

 

「やぁ、アンタかい。……信じられるか?

 寝て起きたと思ったら、実は一年経ってましたって!

 ここんところ、退屈だと思ってたとこでこのニュースだよ!

 国連のある研究機関が発表したらしいんだが。」

 

我が故郷周辺までやってきた僕は、パン屋の店主に会うなりそんなことを言われた。

興奮しているのか、話は一方的なもので事情を知っている僕でも理解するのに時間がかかった。

 

そうして数秒考えて何が言いたいかを理解した所で、思い出したのだが今回の件は流石に一般人にもバレてしまっていたらしい。僕は正直それどころではなかったものの、カルデアの魔術を扱える職員たちが難しい顔をして何やら話していたのを覚えている。

 

まぁ、流石に今回は世界規模の変化だ。いくら凄腕の魔術師でも世界を騙して隠しきることは不可能だったらしい。国連なんかもカルデアに死にかけた僕たち46人の将来を断とうとしたという容疑をかけて査問団を送ったりすると聞いているし、今頃あそこは大変なことになっているのだろうな。

 

……しかし、まさか忘れようと思った矢先に一般人に思い出させられることになるとは。冷や水を浴びせられたような気分になって非常に不快だ。

 

嫌がらせで言ったわけでないのは分かっているのだが、かなりのショックを受けていたこともあって思わず頬が引きつりそうになる。

 

「いや、ホントにそうだとしたら誰の仕業だろうな~。

 俺はやっぱり宇宙人が実在していて、

 そいつが実験の為に地球を使った説を押してるんだがよ。

 な、な!アンタはどう思う?」

 

そんなこっちの気も知らないで、目の前の店主はからかうような笑みを浮かべて余計なことを言ってくるものだから思わず手を上げそうになった。

 

「へ、へぇ、そんなことがあったんですね。」

 

まぁ実際に手を上げるわけにもいかないから、いつも通り曖昧な笑みで誤魔化すのだが。

 

「今じゃどこでもその話題ばっかりだよ。引き籠りのアンタは知らなかったろ?」

 

お節介が過ぎる。その口、縫い合わせてやろうか。

 

「そんなことあるわけないでしょう。

 どうせデマですよデマ。話題性はあって面白いかもしれないですけどね。

 冷静に考えてみてくださいよ。

 人間一年も寝続けることなんて不可能ですよ、ふ・か・の・う!」

 

こうなった店主に対して笑みで誤魔化すのも面倒なので真っ向から否定してやる。

科学技術を重宝する癖にこの店主はオカルトマニアでもあるのだ。

 

こういった不思議な出来事にはすぐ食いつくし、そんなことあるわけがない、非科学的だとちょっと批判してやれば――

 

「アンタはいっつもそんなだな。ロマンってもんを知らんのか?ったく。

 あーあ、折角、久々にワクワクすることが起こったってのに興奮も覚めちまったよ。

 やっぱりアンタにゃ話すんじゃなかったな。

 ほら、いつものパンだよ。それ持ったら、とっとと出ていきな。」

 

ご覧の通りだ。人の傷に塩を塗った報いである。いい気味だな。

 

店主の興が削がれたのような表情に少し機嫌を良くした私は市場に寄って当座の食料を買い集めてから、久々に我が工房へと足を向けたのであった。

 

しかし、今ふと思ったのだが、魔術師が非科学的ということでオカルトを否定するのはなんとも妙なものだな。所詮、一流でもない2流3流の魔術師の戯言なので非常にどうでもいいことではあるのだろうが、これを一流と認められた魔術師が言うと恐らく非常に敵視されて面倒なことになるだろう。

 

そう。例えば、元カルデアの所長のマリスビリー・アニムスフィアが言った場合など、ただでさえ他のロードから睨まれているのだから、相当な話題になるに違いない。

 

……自ら地雷を掘ってどうするのだ。

 

僕はまた少し気分を落とした。

 

 

 

……それから数日が経った頃だった。

奴等がこのセカイにやってきたのは。

 

 

「――この惑星は古く新しい世界に生まれ変わる。」

 

 

その宣言を皮切りにして、森にも、街にも、そして我が工房のすぐ近くにすら、謎の生命体が押し寄せたのである。

 

 

 

 

「もっとも優れた『異聞の指導者』がこの世界を更新する。」

 

 

 

 

 

……………。

 

 

 

2018年(仮定) 1月▽日

 

これに並ぶ衝撃はあのカルデアでの経験くらいなものだろう。

それぐらいの衝撃を受けている。

 

……失礼。

今、僕は混乱していてどうも上手く文が書けそうにない。

頭を整理するために暫くこの無価値な文章を書き連ねることを許してくれ。

 

命を奪われることなくよくぞ無事でいられたものだ、と言うべきなのだろうか。奴らは二日前に地上を離れたようだ。

 

あぁ駄目だ。どうも落ち着かない。

 

気を紛らわす為に簡単に状況を整理するとしよう。

 

どうにか己の身を守り切ることには成功したが工房の一部が消滅した。

 

表に出た。工房の外郭として建てた家、それを覆い隠すように存在していた鬱蒼とした森、簡単な魔術に使用する水をいつも調達していた湖。

 

その全てが真っ白でなんの起伏も変化もないナニカへと姿を変えていた。

 

「一体、何が起こったというのだ……。」

 

……あまりの出来事にしばらく放心していた気がする。

現実を認めたくなかったために真っ先に夢や魔術の可能性を疑った。

 

しかし、いくら僕がどう足掻いても目の前に広がる白い平面が消えることは無い。

 

慌てて工房から水晶を取り出して、遠見の魔術も使った。

 

街に行く際には必ず寄っていたパン屋。……消えている。

その近くを通り過ぎていくあの煩わしいゴミのような数の人間達の姿もない。

 

一定間隔で植えられていた街路樹も、森の外に出た日には見なかったことなんてなかった車も、ない、ない、ない、ない!

 

一部の賢明な魔術師の工房を残して世界を象っていたものは、余すことなく消えてしまったのではないか。

 

そんな予感に襲われた。正直なところ、工房も愚かな父が高い金と希少な触媒を積んでまで買ったという効果があるのかも分からない東洋の札が無ければ消えていたかもなどと、愚かしい妄想を抱くほどに自体は深刻だ。

 

突然僕を襲ったこの出来事はどうやら、生半可なものではないらしい。

書いていると何故だか気が楽になり、僕も若干の冷静さを取り戻した。

 

そして、ここまで徹底されていれば、流石に現実を受け入れざるを得ない。

事態にどう対処するべきかに頭を悩ませていたためあまり聞いていなかったのだが、あの声は……忘れようとしても忘れられずに覚えている。恐らくだが、元Aチーム。所長お気に入りだったクリプターのキリシュタリア・ヴォーダイムの声だ。

 

つまり、何が起きたのかは分からないが、今回の件、最悪……。

いや、憶測は避けるべきだ。話したり書いたりして外へ出したが最後、僕はそれに囚われて碌な結果を迎えられなくなるのを知っている。

 

とにかくどうしようもない状態になってしまったため、言っても無駄なのは分かっているのだが、一言だけ。一言だけ言わせてもらいたい。

 

 

「……誰だ、人理修復を完了したと言ったバカは!」

 

 

僕の嘆きは白紙の世界へ虚しく吸い込まれた。

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