会談が終わったとき、俺は体のコントロールを手放した。正確には勝手に離れてしまった。
だがその後のレミールの行動には、傍から見て不審な点がない。いや、俺から見れば不審だらけだが。というのも、「体が勝手にしゃべった」とか「記憶がない」などと騒いだりしなかったのだ。レミール本人には体を乗っ取られた自覚がないのか、あっても周囲に気取られないように自制しているのか。そこまでは分からないが、とりあえず俺には都合がいい。
その後は人目に付かないところで体のコントロールの横取りを何度も試みたが、まだ成功していない。これには困った。レミールの行動を制御できないと、悲劇が避けられない。
今日のレミールは、皇帝の私室に来ていた。
「レミール、この世界のあり方について、そしてパーパルディア皇国について、どう思う?」
もし日本人が言ったら、「お前は厨房か」とツッコミを入れたくなるような台詞だ。
「はい、陛下。多くの国がひしめく中、皇国は第三文明圏の頂点に立っています。多数の国を束ねるために『恐怖』を与えていますが、これは非常に有効であると思います」
「そう、恐怖による支配こそ、国力増大のためには必要だ。神聖ミリシアル帝国やムーは、近接国と融和政策をとっている。そんな軟弱な国より、我が国が下に見られていることは我慢ならない」
俺から見ればとんだ
「そういえばレミール……フェン王国と日本についてはどうなっている? そなたの口から聞かせてくれるか」
「フェン王国を現在侵攻しております。先日ニシノミヤコを落とし、そのときに二百人ほどの日本人を捕らえました。日本の大使を呼び出して我が国の要求を伝えたところ、曖昧な返事をしたため、捕らえた二百人を人質として要求を呑むよう迫りました」
「ほう……珍しいな。いつもなら殺処分で教育するのに」
「はい。特に軟弱そうだったので、人質で屈するか試してみました」
悪かったな、軟弱そうで。しかし
──ピピピッピピピッ……。
左腕のブレスレットが点滅している。
「公務の呼び出しだろう? ……今は私的に話をしていただけだ。そこの魔信を使っていいぞ」
「何事だ」
『日本の外交官が
「わかった。今行く、待たせておけ」
魔信を切った
「陛下、たった今、日本が急遽会談をしたいと申してまいりました。陛下の御慈悲を賜ろうとやって来たのかもしれません。行ってまいります」
「蛮族とはいえ、国の存亡がかかれば必死にもなるか。アポなしの非礼は許してやるがよい」
蛮族蛮族か。お前らの方が蛮族だよ。