私/俺が第1外務局に行ってみると、無表情の
「急な来訪だな。まあ国の存亡がかかっているのだ、その気持ちも無理はなかろう。皇国は寛大だ。今回のアポなしの非礼は許して遣わそう。して……前回皇国が提示した条件、検討の結果を聞かせてもらおうか」
「事前連絡なしに訪問したことをまずはお詫びします。事は国の将来を左右する重大事ゆえ、お互いの理解に
俺はピンときた。グラ・バルカス帝国を相手にした時を思い出す。おそらく
篠原は鞄からノートPCを取り出すと、開いて
「それは……魔画か?」
ノートPCでプレゼンテーション映像が再生される。おそらく篠原が持っていた日本紹介の映像を再編集したのだろう。東京の空撮から始まり、海上自衛隊の観艦式、陸上自衛隊の総合火力演習、航空自衛隊の航空祭(ブルーインパルスの演技まであった)等の映像が次々と映し出される。
初めて見る映像に、
「いかがですか。多少は日本のことを理解していただけたでしょうか?」
「フ、フハハハ……」
「この魔画はどこで手に入れた? ミリシアルか、それともムーか?」
今度は
「文明圏外国にこのような魔画が作れるわけがなかろう。おそらくムーの魔画を借りて、自国の物と偽っているのだな」
ダメだ、こりゃ。「文明圏外=蛮族」という固定観念から逃れられないようだ。
俺はなんとか体のコントロールを横取りしようとする。だがうまくいかない。
「このような姑息な真似をするとは……やはり教育が必要だったか」
「アマノキでは容赦はせぬぞ」
さすがに
「それはお止めください。アマノキを攻撃するというのであれば、我が国もフェン王国に滞在している国民を守るため、武力を行使せざるを得ません」
「蛮族ごときに皇軍が止められると思っているのか!」
「……では降伏する場合は白い無地の旗を振ってください。日本国はいくら軍人であっても、無闇に殺傷することを望みません。くれぐれも現場の方々に通達の徹底をお願いします」
「降伏……? 皇軍に降伏しろだと?
控室にはエルトがいた。速記者がいたのだろう、議事録らしいものを読んでいるようだ。
「蛮族が……滅亡に向かって突き進むか」
だから蛮族蛮族言うな!
「……文明圏外の相手は大変ですね。日本は滅亡の危機にさらされているということが、まったく理解できていないようで……おや、降伏方法はお伝えなさらなかったのですか?」
「皇国を侮辱した罪だ。フェン王国では降伏などさせてやらんことにした」
「それはまた……お厳しいことですね」
なるほど、ゴトク平野で連中が降伏せずに全滅したのはそういうわけだったのか……待てよ、この場合は全滅させない方がいいんじゃないか?
「……」
「レミール様?」
「……」
「レミール様、どうかなさいましたか?」
「白旗だ」
「は?」
やった! 横取りに成功した。
「現地部隊に通達せよ。もし降伏する場合は無地の白旗を振れと」
「降伏……ですか?」
「そうだ。必ず通達せよ」
「は、はい」
エルトは
──コンコン
扉がノックされた。
「入れ」
若い男が書類を持って駆け込んでくる。その顔色はひどく悪く、やけに緊張していた。
「どうした?」
エルトが尋ねると、男は息を整えるように大きく深呼吸し、ゆっくりと話す。
「今回のフェン王国の戦いに際し、観戦武官の派遣の有無を列強に調査いたしました。神聖ミリシアル帝国については、今回も派遣をしないとの回答でした」
「いつものことですね。ムーはいつ派遣してくるのですか?」
男は口ごもり、書類に目を落とした。
「……? どうしました?」
「その……ムーは皇国への観戦武官の派遣はしないと回答してきました」
「珍しいですね、ムーが派遣をして来ないとは。戦闘情報の収集癖がなくなったのでしょうか?」
「…………」
男が言葉を選び、目を泳がせている。
エルトが書類をよこすように手を差し出した。
「何がありましたか?」
「ムーは……日本に観戦武官を派遣したことが判明いたしました……」
「……え? ええ!?」
そうだった。このときムーは既に日本と国交を結んでいたんだった。……ムーか、何とか利用できないだろうか?