悪役転生にもほどがある!   作:無虚無虚

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W朝田vsレミール

 私/俺が第1外務局に行ってみると、無表情の朝田()と篠原が待っていた。

「急な来訪だな。まあ国の存亡がかかっているのだ、その気持ちも無理はなかろう。皇国は寛大だ。今回のアポなしの非礼は許して遣わそう。して……前回皇国が提示した条件、検討の結果を聞かせてもらおうか」

「事前連絡なしに訪問したことをまずはお詫びします。事は国の将来を左右する重大事ゆえ、お互いの理解に齟齬(そご)があってはなりません。最初に我が国について説明させていただきます」

 俺はピンときた。グラ・バルカス帝国を相手にした時を思い出す。おそらく朝田()と篠原は時間稼ぎを命じられたのだろう。

 篠原は鞄からノートPCを取り出すと、開いてレミール()に見せるように置いた。

「それは……魔画か?」

 レミール()は戸惑ったようだ。俺がレミール()の記憶を読めないように、やはりレミール()も俺の記憶を読めないらしい。

 ノートPCでプレゼンテーション映像が再生される。おそらく篠原が持っていた日本紹介の映像を再編集したのだろう。東京の空撮から始まり、海上自衛隊の観艦式、陸上自衛隊の総合火力演習、航空自衛隊の航空祭(ブルーインパルスの演技まであった)等の映像が次々と映し出される。

 初めて見る映像に、レミール()は食い入るように見入っている。そして再生は終わった。

「いかがですか。多少は日本のことを理解していただけたでしょうか?」

 朝田()がドヤ顔をせず無表情のままだったことに、俺は安堵(あんど)感を覚えた。

「フ、フハハハ……」

 レミール()の反応が予想外だったのだろう。朝田()と篠原が、ギョッとした表情をする。

「この魔画はどこで手に入れた? ミリシアルか、それともムーか?」

 今度は朝田()と篠原が戸惑ったような表情になる。やれやれ、ポーカーフェースとは程遠いな。

「文明圏外国にこのような魔画が作れるわけがなかろう。おそらくムーの魔画を借りて、自国の物と偽っているのだな」

 ダメだ、こりゃ。「文明圏外=蛮族」という固定観念から逃れられないようだ。

 朝田()と篠原も呆れたような顔をしている。だからポーカーフェースをしろ!

 俺はなんとか体のコントロールを横取りしようとする。だがうまくいかない。

「このような姑息な真似をするとは……やはり教育が必要だったか」

 朝田()と篠原はピンと来ていないようだが、俺は内心で冷や汗をかく。くそっ、なんで横取りできないんだ!

「アマノキでは容赦はせぬぞ」

 さすがに朝田()と篠原にも通じたようだ。

「それはお止めください。アマノキを攻撃するというのであれば、我が国もフェン王国に滞在している国民を守るため、武力を行使せざるを得ません」

「蛮族ごときに皇軍が止められると思っているのか!」

 朝田()と篠原も時間稼ぎに失敗したと悟ったようだ。

「……では降伏する場合は白い無地の旗を振ってください。日本国はいくら軍人であっても、無闇に殺傷することを望みません。くれぐれも現場の方々に通達の徹底をお願いします」

「降伏……? 皇軍に降伏しろだと? ()れ者が! 貴様らこそ命乞いの用意をしておけ!!」

 レミール()はそう言うと、一方的に席を立った。

 

 控室にはエルトがいた。速記者がいたのだろう、議事録らしいものを読んでいるようだ。

「蛮族が……滅亡に向かって突き進むか」

 だから蛮族蛮族言うな!

「……文明圏外の相手は大変ですね。日本は滅亡の危機にさらされているということが、まったく理解できていないようで……おや、降伏方法はお伝えなさらなかったのですか?」

「皇国を侮辱した罪だ。フェン王国では降伏などさせてやらんことにした」

「それはまた……お厳しいことですね」

 なるほど、ゴトク平野で連中が降伏せずに全滅したのはそういうわけだったのか……待てよ、この場合は全滅させない方がいいんじゃないか?

「……」

「レミール様?」

「……」

「レミール様、どうかなさいましたか?」

「白旗だ」

「は?」

 やった! 横取りに成功した。

「現地部隊に通達せよ。もし降伏する場合は無地の白旗を振れと」

「降伏……ですか?」

「そうだ。必ず通達せよ」

「は、はい」

 エルトは怪訝(けげん)な顔をしている。だが構うものか。これでまた歴史の流れが少しだが、確実に変わるはずだ。

 ──コンコン

 扉がノックされた。

「入れ」

 若い男が書類を持って駆け込んでくる。その顔色はひどく悪く、やけに緊張していた。

「どうした?」

 エルトが尋ねると、男は息を整えるように大きく深呼吸し、ゆっくりと話す。

「今回のフェン王国の戦いに際し、観戦武官の派遣の有無を列強に調査いたしました。神聖ミリシアル帝国については、今回も派遣をしないとの回答でした」

「いつものことですね。ムーはいつ派遣してくるのですか?」

 男は口ごもり、書類に目を落とした。

「……? どうしました?」

「その……ムーは皇国への観戦武官の派遣はしないと回答してきました」

「珍しいですね、ムーが派遣をして来ないとは。戦闘情報の収集癖がなくなったのでしょうか?」

「…………」

 男が言葉を選び、目を泳がせている。

 エルトが書類をよこすように手を差し出した。

「何がありましたか?」

「ムーは……日本に観戦武官を派遣したことが判明いたしました……」

「……え? ええ!?」

 そうだった。このときムーは既に日本と国交を結んでいたんだった。……ムーか、何とか利用できないだろうか?

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