当然、日本は喜んで捕虜交換に応じた。
『フェン王国の戦い』の翌日、
「捕虜交換は皇女殿下のご提案だったとうかがっています」
「それは嫌味のつもりか?」
今の俺は体のコントロールを手放している。コントロールを握り続けるのは、精神的な消耗が激しいのだ。
「いいえ。きわめて賢明なご判断だと思います。あの提案があればこそ、両国の関係はまだ修復可能です」
「もともと存在しないものを、どうやって修復するのだ?」
「では両国の間に新たに建設的な関係を築くため、我が国から提案をさせていただきます」
〇 フェン王国に対し損害を与えたため、公式に謝罪し、賠償を行うこと。
なお、賠償については建物に与えた実被害額の二十倍を支払うこと。
〇 日本人の拘束に関し、公式に謝罪し、賠償を行うこと。
賠償額については、被害者一人につき百万パソ分を金に代え支払うこと。
〇 フェン王国の戦いに掛かった、フェン・日本連合軍の戦費を負担すること……
「──!! 何だこれは!?」
「我が国は民主国家であり、世論というものがございます。戦後処理としてこの程度はして頂かないと、国民が納得しません」
「皇国に賠償を要求するとは……列強にでもなったつもりかっ!?」
「『列強』の定義はよく存じませんが、我が国としては妥当な水準だと考えます」
「……そうか、やはりそうなのだな」
「やはり後ろにいるのはムーか? ひょっとして神聖ミリシアル帝国か?」
「……何のことでしょう?」
「文明圏外の蛮族が、局地戦とはいえ皇軍に勝ったり、皇国に要求などできるはずがない。日本の背後には他の列強がついているのであろう!」
それにしても相手に面と向かって切り出すとは……
「我が国は主権を持った独立国です。列強の属国ではありません」
「あくまでしらを切るつもりか」
外交ではそれが当たり前だし、そもそもしらなんか切っていない。
「これは本当のことです。何か勘違いをされておられるようだ」
ここで
「それでは日本に使節を派遣して頂けないでしょうか?」
「使節だと?」
「はい。信頼できる人物を日本に派遣して頂きたいのです。その人物にじかに日本を見て頂くのです。私どもの言葉は信用できなくても、その人物の言葉なら信用できるでしょう」
よし、ここで横取りだ。このままだと「文明圏外になど行けるか!」なんて言いかねないからな。
「……よかろう。私が直接出向いてやろう」
「皇女殿下が、ですか!?」
「そうだ。私が直々に化けの皮を剥いでやる。詳しい日程は文官に決めさせる。どうせ日本の船や飛行機械なら、数日で着くのであろう。……それとも使節が私では不満か?」
「……いいえ、日本は皇女殿下を歓迎いたします」
これはリップサービスだな。