Masked Rider EVOL 黒の宙   作:湧者ぽこヒコ

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初めまして。湧者ぽこヒコです。初めて小説を書くので、文章が拙く読みづらいとは思いますが…


この物語は、地球外生命体エボルトがとある一人の人間との出逢いにより、苦悩と人間への想いと彼の志した壮大な計画のお話。もう一つの【仮面ライダービルド】です。
様々な惑星を喰らい続けてきたコーヒー好きの地球外生命体。彼の生き様をご覧下さい。






ひとつの終わり
プロローグ


 

 

 

 

 

 

心地よくも少しツンとした匂いのする、小気味のよい音を奏でる雨が降り注ぐ。もうこの1ヶ月近くずっとだ。いつだかテレビで見たニュースでは気象庁がなんたら警報を発生させたらしい。更には何かの記録更新をしたそうだ。

 

 

 

 

――まあ、俺には関係無いけど。雨は嫌いじゃない。むしろ好きだ。ありきたりな言葉で言うと自分の感情を泥と一緒に流してくれる、そんな気分にさせてくれるから。

 

 

 

 

 

 

「はあ……」

 

 

 

 

 

これで何度目か。ここ最近は溜息の数が増えた気がする。なんで、こんな風になってしまったんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何をしに俺は生まれてきたんだろう……」

 

 

 

 

 

 

この言葉も今まで何度繰り返した事か。ほんっとうに最悪だよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……もう、いいだろ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は親が居なかった。いや、正確に言うと居るには居るんだろうが生まれてすぐに捨てられたというのが正しいか。

 

 

産婦人科にそのまま置き去りにされていた俺を、迎え引き取りに来たのは父親の姉らしく、産婦人科の先生からの叱責のお電話で発覚したらしい。迎えに行った時もとんでもなくお説教されたそうだ。

 

 

 

 

俺はそんな伯母に引き取られ、伯母、祖母、俺の3人での暮らしが始まった。貧乏だったけど、今思うと幸せな日々だった。

 

 

他愛のないことで笑い合い、他人を傷付けてしまった時は本気で叱ってくれて、俺の事を自分の事のように泣いてくれた。俺はそんな伯母と祖母が大好きだったし、俺にとって本当のおふくろだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも、幸せな日々は続かない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

祖母は俺が小学5年の時に無くなった。末期ガンだ。

 

気付いた時にはもう既に手の施しようがなかった。80を過ぎぼろぼろになっている体では手術に耐えられる訳も無く、なんとか少しでも長く存命させている状態だった。

 

 

痛み止めと延命のためのモルヒネの投与。この副作用は本当に辛いものだったんだと思う。今まで辛い顔など見せたことのない祖母が、「もう嫌だ。死にたい」と言っていたのだから。

 

 

でも最後、本人と俺たち家族の願いで自宅療養になり眠るように亡くなった彼女は、とても綺麗な顔をしていたっけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いくつかの歳月が経ってようやく祖母の死の事を肚に落とし、少しずつ前に進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

時の流れは早い。(友達出来るかな?)なんて思いながら中学に入学し、そんなに頭の出来がよろしくない俺は二次募集でなんとか高校に入学。偏差値はまあ……うん。忘れよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

華やかとは言い難いが、人並みよりちょっと下くらいに充実していた高校生活を送っていた日々。そんな日々も音を立てて崩れ落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おふくろが、轢き逃げにあった。

 

 

うだるような暑さの中、もうすぐと迫った夏休みの予定を考えながら俺はアルバイト先のびっ○りド○キーから帰宅し、TVを観てたっけ。

 

 

玄関で靴を脱いでいた時おふくろから電話があり、その時につい喧嘩っぽくなって言ってしまった言葉を謝んないとな、とか考えてた。

 

 

 

 

 

 

でも、いくら待っても帰ってこない。あの電話から1時間も経ってる

のに帰ってこなかった。

 

 

おふくろの仕事先は徒歩で15分くらいの場所にあり、そんなに時間がかかるはずもないのにな、とか考え少し不安になっていた時、固定電話に勢いよく着信が来た。

 

 

 

 

 

 

 

悪い予感とはよく当たるものだ。考えたくないこと、回避したいこと、“そうであってほしくない”と思うこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――あなたの御家族の方が人身事故にあわれました。今すぐ救急病院に来て下さい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

周りがサイレンの音で随分やかましい通話の中、慌ただしく話す救急隊員の、俺が唯一理解出来た言葉だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人とは脆いものだ。あんなにも強く、どんな時も俺を支えてくれたおふくろは、もう二度と目を覚まさなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――おそらく横断歩道を渡っている途中、信号無視で突っ込んできた車に跳ねられたのだろう。

 

 

人の良さそうな刑事がそう言っていた。ブレーキ痕からして一度気付いているはずなのに、そのまま逃走した、と。

 

 

 

 

おふくろが轢き逃げされ亡くなってから……あれはどのくらい経ってたのだろう。2週間くらいだったろうか。

 

 

刑事は証拠が不十分で、とか変な気を起こさないで下さい、とか色々言っていた気がするが、何も考える余裕はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

今思いだして考えると、うだるような暑さだったな、って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後は抜け殻のような日々だった。

 

親戚をたらい回しにされ、高校も中退する事になった。一人暮らしをするまでは苦々しい日々だったなあ。

 

 

元々親戚付き合いも皆無だったし、なにより父親はろくでなしだ。ろくに働きもせずいわゆるヒモみたいな奴だと聞いていたし、おふくろも一族では浮いた存在だったらしい。

 

 

 

まあ、あんな父親のDNAが組み込まれている俺なんて誰も好き好んで受け入れないわな。そりゃボロクソにされても当然か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高校を中退した後建築業に務めながら金を貯め、すぐに一人暮らしをし始めた。早く逃げたかったんだよな。最後に俺を回された親戚の連中は凄い喜んでたっけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1人暮らしを始め、特に何が楽しい事もなく20代も半ばかという時、彼女と出会った。

 

 

 

 

 

 

 

 

仕草が綺麗な人だな、これが第一印象。

意外とゲラゲラと笑う人だな、これが第二印象。

美味しそうにご飯を食べるな、これが第三印象。

 

 

一緒に居て心が安らぐ。これが俺にとって彼女の一番の印象だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

凄い幸せだった。彼女と過ごす日々は、おふくろを亡くしてから感情が欠如したような俺にとって凄い色鮮やかな世界だった。

 

 

そんな彼女に惹かれていくのは当然の事なのだろう。自分の容姿にもあまり自信が無い俺は、せめて雰囲気だけはと思い結構背伸びしてお高めのレストランを予約したっけ。

 

 

 

服装も雑誌を大量に購入して研究・試行錯誤して準備し、髪型も有名らしい美容院で整えてもらったな。

 

 

 

 

 

そんな俺を見て彼女は“七五三?”って爆笑してた。今思い出しても恥ずかしい。

 

 

 

結局レストランでも告白する勇気が出ず、自分の情けなさに悲しくなっていた時、彼女から告白されたんだよな。あの時のあいつ、カチカチで噛み噛みで。随分経ってからこの事を笑ったら“あんたがさっさと告白してこないからでしょ!!”って顔を真っ赤にして怒ってたっけ。

 

 

 

 

 

 

 

彼女の両親とも会い、結婚を前提に付き合ってる事を話したらとても喜んでくれた。俺の事を息子のように思ってくれる人たちだった。

 

 

彼女と彼女の両親は俺にとっての家族だった。本当に、大好きな家族だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1週間前。彼女と10日近く連絡が取れず、彼女の両親に連絡してもずっと連絡が取れなくなった。彼女は実家住みだったし、こんな事初めてだった。

特に喧嘩をした訳でも無い。というか彼女は喧嘩をしても5分もせずに“早く謝れ”と催促の電話をするような人だ。俺はいつもそこでクシャッ、と笑い謝ってしまう。

 

 

嫌な気持ちになった。恐ろしくなった。あってはならない事が脳裏をよぎった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自宅で彼女と、彼女の両親は目を背けてしまうほど変わり果てた姿で発見された。

 

同時に別の男の自殺死体も発見された。

 

 

警察の調べによると、死体の状態や状況、指紋や体液などの証拠からこの男が俺の大切な家族を惨殺したらしいとのことだ。

 

 

この男は彼女の高校時代の同級生で、当時の他の同級生に聞き込みしてもなんの接点もないとの事だ。

 

 

 

 

 

 

俯く刑事に「見られない方がいいです」と忠告された俺の大切な家族の遺体は、凄惨なものだった。

 

 

 

 

顔など原型を留めておらず、汚れを知らないような美しい自慢の彼女と、年相応ながらも凛とした端正な顔立ちをしたお母さん、いつもにこにことしていて、目尻に優しそうなシワをいつもつくるお父さん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その俺の大切な愛すべき人たちが、切り刻まれた肉塊と化していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「変な気を起こさないで下さい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ。この言葉、いつかどこかで聞いたっけ。

刑事が言ったこの言葉が、俺の脳内でずっとリフレインする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……今回のは……死ぬな、って事か」

 

 

 

流れ作業のようにタバコに火をつける。いつもは美味い煙も、今はただの日常動作に過ぎない。

 

 

くゆる紫煙が、まるで協奏曲のように奏でる雨の音しか聞こえない部屋に充満する。

 

 

 

 

 

 

「そういやあいつ……タバコ嫌いだったな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

思いだす彼女との事。脳を彷徨うのは彼女との記憶ばかりだ。

 

 

 

 

 

 

 

煙が目にしみるからタバコは嫌い、そう言っていた彼女。

 

明るく手を繋いで出かけられないから雨は嫌い、そう言っていた彼女。

 

楽しい気分にならないから静かなのが嫌い、そう言っていた彼女。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺にとって、まさに太陽のような人だった。

かけがえのない、大切な存在だった。

 

 

 

 

 

 

もう一本吸おうと手を伸ばし、タバコが空なのに気付いた。

 

 

……しょうがない。明るくならないが買いに行くか。

そう思い、近くのコンビニに行くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あざーしたぁ」

 

 

 

 

 

 

タバコの銘柄を10回以上聞き直すやたらと軽い店員から愛煙を購入し、家路に着く。

 

 

振り分けられている番号を言っても、何度も銘柄を聞いてくる店員に少しくすっとなる。こういった人は嫌いじゃない。

 

 

 

 

 

――雨は止みそうにない。まるで俺の心と同じ、ずっとずっと泣き叫んでるみたいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……少しセンチメンタル過ぎんだろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雨のおかげで笑っているのか、泣いているのかわからない表情になる。自分でもわからない程に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「きゃああああああ!!!!!」

「そこの人!!!危ない!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

突然、滅多に日常生活で耳にしないようなとんでもない大音量の女性の悲鳴や男性の声がし、素っ頓狂な恥ずかしい声が出た。身体より先に脳が反応した気がした。

 

 

 

滅多に日常で起きないような事に遭遇すると、人間固まってしまうものなんだな、とか変な声がでるって本当なんだな、とかそんな事を考えてしまう自分が少し面白くもあり、少し好きになれた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あっ……」

 

 

 

そしてふと気がつく。変な事を色々考えていながら歩いていたら、赤信号の横断歩道の真ん中に居たみたいだ。

 

自分でも褒めてやりたいくらいに超スピードで脳が駆け巡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女性の悲鳴。男性の怒号にも似たような声。赤信号。横断歩道。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あー……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全てがスローモーションになる。これは比喩ではなく、本当にスローモーションだったのだ。

 

 

 

 

 

横に視線を移すと大きなトラックがもう目の前にまで来ている。

 

 

運転席を見ると、どうやら仕事で疲れているんだろう。こくりこくりと赤べこのように頭を振らしている。お疲れ様ですと思う。

あぁ、そうか。俺の物語は、やっと終わるのか。

 

 

 

 

 

 

 

この状況でも尚ふざけた事が脳を駆け巡る、そんな最期は悪くないと思ってしまう自分の事を俺は大好きなのかもしれないと想い、多分、クシャッと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぐしゃっ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「きゃああああああああああ!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このお話は、世界に絶望した人間と、世界を絶望に陥れようとする地球外生命体のお話。

 

 

出逢い、考え、どう行動するのか。

【仮面ライダービルド】の元々の史実通りに地球を滅ぼすのか。

 

 

 

 

それは、遠くない未来のお話で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……To be continued

 

 

 

 

 

 

 

 









いかがでしたでしょうか。【Masked Rider EVOL 黒の宙】の前日譚となる序章です。
ここから話が少しずつ進んでいきます。

果たしてっ!未だ名前の登場していない彼は一体何者なのか?もしや死んでしまったのか?というか実はもう退場決定なのか?彼の彼女や両親の名前は果たして今後出るのか?

様々な事を踏まえ、ご堪能下さい♪


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