Masked Rider EVOL 黒の宙   作:湧者ぽこヒコ

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香澄『あらあらまあまあ』

香澄『まさか戦兎ちゃんが。ふふふ。』

香澄『私的にはお似合いだと思うんだけどなぁ』



香澄『それにしても。龍我ったら見守ってくれだなんて』

香澄『……ずぅーっと見守ってるよ。ちゃんと』

香澄『龍我は周りがすぐ見えなくなるからなー』



香澄『無理しないといいんだけど……』




香澄『あら?そろそろお時間?はいはい。そうしたらまた今度――』






phase,10 笑顔の決別

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……うっ、うっ。ひっ……」

 

 

 

 

 

 

 

やっと落ち着いてきた戦兎。ほんとに一体どうしたのかな。

 

紗羽さんが来てからずっとおかしかったし、お父さんたちが出て行ってから急に泣き出しちゃうし……

 

 

 

 

こんな戦兎……初めて。

 

 

 

 

 

 

 

「少し落ち着いた?……ほら。これ飲んで」

 

 

 

 

 

 

 

出来たてのホットミルクを泣き顔でぼろぼろの戦兎に。

せっかくの美人さんが台無しだし。

 

 

 

普段あれだけぶっ飛んでるから、余計に心配だよ。

 

 

 

 

 

 

 

「……うっ、うっ。ありがどお゛みぞら……」

 

 

 

 

 

 

 

鼻水塗れのお姉ちゃん。私の自慢のお姉ちゃん。

本当にもう。これじゃあどっちがお姉ちゃんなんだか。

 

 

 

 

 

 

 

「とりあえず、ほら。涙と鼻水拭きなよ。自慢のお顔がぐちゃぐちゃだよ?」

 

 

 

 

 

 

 

出来れば写メとって後で見せたいくらい。

ふふ。そんな事したら追いかけ回されそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

「うん……」

 

 

 

 

 

 

 

勢いよく鼻をかむ戦兎を見て思う。これは彼氏出来ないなと。

ぶふー!!って凄い音だし。

 

 

 

 

……私も出来たことないけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……どうしたの?急にさ」

 

 

 

 

 

 

 

出来るだけおおらかに。戦兎が落ち着ける声で。

 

 

 

 

 

 

 

「……紗羽さん嫌い」

 

 

 

 

 

 

 

……ん?どういう事?

紗羽さんと何か揉めたの?

 

 

 

 

 

 

 

「どういう事?紗羽さんと何かあった?」

 

 

 

「……誰にも言わないでね」

 

 

 

 

 

 

 

 

なんだか子供のような戦兎。

まあ。産まれて間もないみたいなものだもんね。

 

 

 

私は母親かな?あははは。

 

 

 

 

 

 

 

「うん。女と女の約束」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マスター……取られちゃう気がした」

 

 

 

 

 

 

 

……ん?お父さん?

 

なんでそこでお父さんが出現した?

紗羽さんとお父さん何かあったっけ。

 

 

 

 

 

 

 

……あー。なんかデートとか言ってたし。あのエロ親父。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もしかして……?

もしかして戦兎――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お父さんを盗られちゃう気がしたの?」

 

 

 

「……うん。そう」

 

 

 

 

 

 

 

あー、そっか。そういう事か。よかった。

やっぱり万丈を追い出して正解だったね。

 

 

 

戦兎も聞かれたくなかっただろうし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦兎、お父さんが居なくなっちゃうと思ったんだね。

 

 

 

 

 

 

 

そうだよ。戦兎は自分の記憶が無い――

やっと思い出せたのは人体実験をされたおぞましい記憶。

 

 

 

そんな戦兎にとってお父さんは、戦兎のマスターは。

戦兎にとって本当のお父さんだし。

 

 

 

 

 

 

 

それに戦兎は、お父さんにさ。

こんな言い方は違うかもしれないけど、めちゃめちゃ懐いてたもんね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

名前を付けたのもお父さん。

兎って言うよりも子犬みたいだけど、ぴょんぴょん飛び跳ねる所なんてまさに兎。

 

 

 

お父さんが付けたそんな名前を、戦兎は誇りに思ってたもんね。

 

 

 

 

 

 

 

そんな戦兎にとって大事なお父さんが、訳の分からない女に連れてかれた。戦兎はそう思っちゃったんだ。

 

 

 

自分の大切な家族が。

自分にとって大切な居場所を与えてくれた人が、居なくなっちゃう気がしたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

お父さんを盗られちゃうと思ったんだね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……大丈夫。お父さんは戦兎を独りぼっちになんかしないよ」

 

 

 

 

 

 

 

絶対に。お父さんが家族を置いてきぼりになんか絶対しない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みしょら……?」

 

 

 

 

 

 

 

それに、お姉ちゃんには私もついてる。万丈も。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お父さんはそんな人じゃない。戦兎を……お姉ちゃんを置き去りにするような人じゃない」

 

 

 

「それは、お姉ちゃんが一番よくわかってるでしょ?ね?」

 

 

 

 

 

 

 

そうだし。何よりも家族を大切にして、愛してるお父さん。

 

 

 

 

 

 

 

……私の事も助けてくれた、私のもう1人のヒーロー。

 

 

 

 

 

 

 

「そうだよね……うん、うんっ……」

 

 

 

 

 

 

 

また涙が零れるお姉ちゃん。

でもその涙は、悲しいモノじゃない気がする。

 

 

 

 

 

 

 

ほんっとにしょうがないなあ!

私が居なきゃこの家族はだめなんだから!!

 

 

 

 

 

 

 

お父さん、戦兎お姉ちゃん。

万丈……は弟かな。あはは。

 

 

 

 

 

 

 

私がしっかり家族みんなを支えないとだし!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ほらほら。ミルク飲んで元気出して!お姉ちゃん!」

 

 

 

 

 

 

 

うぅ……みしょらぁ……

 

 

 

 

 

 

 

ありがとね。そうだよね。

マスターがわたしを置き去りにするわけない。

 

 

 

美空に言われると、なんだか心がほわほわする。

さすがだなあ美空は……

 

 

 

 

わたしの自慢の妹だ。ふふふ。

 

 

 

 

 

 

 

「うん。……美味し」

 

 

 

 

 

 

 

 

美空のホットミルク。

甘くて、優しくて、心が蕩ける。

 

わたしはこのホットミルクが大好きだ。

わたしの全部が心地良い何かに包まれる気がする。

 

 

 

 

 

 

 

わたしが悲しい時、辛い時、苦しい時。

美空はこのホットミルクを創って。

そっと、ふわりとくれる。

 

 

 

さいっこうの笑顔になれる、そんな気がする味。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごちそうさま。……ありがとね美空。色々と。」

 

 

 

 

 

 

 

いつもいつも美空には支えてもらいっぱなしだ。

たまにはわたしがしっかりしないといけないのにな。

 

 

 

 

 

 

 

「いーの!家族だし。そんなの気にすんなしー!」

 

 

 

「……まあどうしても、って言うなら初めてのお給料でパティスリー鴻上のショートケーキ。よろしくだしっ」

 

 

 

 

 

 

 

美空はとびきりの、天使のような笑顔でわたしに微笑む。

その笑顔でわたしの心はぽかぽかする。

 

 

 

……ふふ。わたしか男だったらイチコロで惚れちゃうな。

 

 

 

 

 

 

 

初任給でプレゼントしなきゃいけない人、増えちゃった。

えへへ。美空が喜ぶ顔、楽しみだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……このてぇん!さぁい!物理学者の桐生 戦兎にお任せあれえ!!」

 

 

 

 

 

 

 

ほんとにありがとうね美空。大好きだよ。

 

 

 

 

 

 

 

「やーーーっと!いつもの戦兎に戻ったしぃ!!」

 

 

 

「……それに。お姉ちゃんはやっぱりその調子じゃなきゃ狂っちゃうし」

 

 

 

 

 

 

 

「ふっふっふ。美空のホットミルクで大!復!活!なのだ!!戦兎さん元気100倍!しゃー!!」

 

 

 

 

 

 

 

もう大丈夫だから。

心配かけてごめんね美空。

 

 

 

 

 

 

 

マスターは……きっと何かあったんだ。

大体おかしいのさ!マスターはもっとこう……グラマラス?ダイナマイトぼでぃ?みたいなのが好きなはず!

 

 

 

そう!わたしのような!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……それに。わたしはマスターの傍にいる。

 

 

 

やっぱり諦めるなんて無理だもん。

マスターの事が大好き。

 

自分の正直な心に、嘘はつきたくない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もうくよくよしない。

わたしは、わたしのやり方でマスターの傍に居るんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふっふっふ。っていうか!

わたしが誰よりも魅力的だもんねー!!

 

戦兎さんが本気を出せばこの超絶圧倒的な魅力でマスターなんて、一!撃!ボルテックフィニッシュだもん!

 

 

 

 

 

 

 

あんな色香を振り撒くだけの雌には負けはせん……負けはせんぞおおぉ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぬわぁっはっはっは!どこからでもかかってくるがよい!捻り潰してくれるわ!!」

 

 

 

「oh......勢い余ってメーター振り切っちゃったのかな……完全に魔王サイドなんですけど……」

 

 

 

 

 

 

 

ふっふっふ。恋する乙女は最強なのだよワトソン君!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……ん。待てよ。

わたし、美空にマスターへの想いとか色々喋っちゃったけどさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これバレてね!?思いっきりバレてね!?

 

 

 

いやまじかどうしようバレてんのかな?いやでもそんな感じでもなかったし。

 

いやしかしバレてるとしたらこれは禁断の愛とか?いやでも血は繋がってないから問題ないかも。

 

 

 

ってなっても歳の差離れ過ぎてね?とか美空気まずくなっちゃうとか!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……やっべ。やらかしたかもしれないぞこれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのー……美空さん?あのですね、さっきわたしが言ってたことなんだけど……」

 

 

 

 

 

 

 

心拍数がフルスロットルだよ美空さん!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……大丈夫。みんなにはもちろん内緒だし」

 

 

 

「子供からしたら親が盗られちゃうのはやっぱり嫌だもん。だから、戦兎の気持ちわかる。子供はそういうもんでしょ!」

 

 

 

 

 

 

 

「だから!これはお姉ちゃんと妹だけの秘密!だし!」

 

 

 

 

 

 

 

弾けるような笑顔の美空さん。

 

 

 

……あー。これあれだ。

思いっきり間違ったベクトルに解釈してる。

 

 

 

 

 

 

 

よかった。恐ろしい勘違いを起こしてくれてて……助かった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あ。そう言えば万丈を野に放ったまんまだったし!……3人でご飯にしよっか!」

 

 

 

 

 

 

 

……あ。そーいやばんじょー見当たらないなあ。

なんか色々あってお腹も減ったしね。

 

 

 

 

 

 

 

「うーい。そしたらわたしは新武器の調整してるー。出来たら呼んでー」

 

 

 

 

 

 

 

……ふっふっふ。今なら更に新しい強化を!

インスピレーションが止まりませんねえええ!!

 

 

 

 

 

 

 

「もう!……それでこそ、だね!そしたら万丈呼んでくるー」

 

 

 

 

 

 

 

足早に過ぎ去る美空はわたしよりも兎っぽい気がする。

……あー。万丈にもなんかプレゼントしてあげよっかな。

 

 

 

せっかくだし。家族になった記念日、って事で。

うーん。万丈は何がいいかなあ……?

やっぱりダンベルとかプロテインとかそっち系の……

 

 

 

 

 

 

 

いやでもなあ。うむむむむ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ。あいつ確か香澄さんの写真持ってたよね。

……そしたらロケットペンダントとか、喜ぶかな。

 

 

 

 

 

 

 

ひひひ。ついでにわたしのも買っちゃおうかな!

丁度マスターと2人で撮った写真があるし――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――戦兎!!大変!!!!」

 

 

 

「おぉう!?何!どした!?」

 

 

 

 

 

 

急に駆け下りてきたからめちゃ焦ったわ。

何?もしかしてばんじょーが急に頭良くなってたとか?

 

 

……あはは。そしたら腹太鼓しながら街中闊歩してやるわい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ!万丈が!!万丈がどこにも居ないの!!!」

 

 

 

 

 

 

 

……え?万丈が?

 

 

 

 

 

 

 

どこにも、って?

 

 

 

 

 

 

 

「ちょ、ちょっと待って美空。どういう事?」

 

 

 

「居ないの!どこにも居ないの!!」

 

 

 

 

 

 

 

うーん。何してんだあのバカ……

指名手配されてんの忘れて散歩にでも行ったのかなあいつ……

 

 

 

でもそこまで心配しなくても――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見て!これ!!手紙が置いてあったの!!」

 

 

 

 

 

 

 

え……?手紙?

 

そーいや確かにずっと美空と一緒に文字とか教えてたけど。

まだまだ怪しかったしなー。

 

 

 

 

 

 

 

お。でもちゃんと書けてるみたいだね。

えーと。なになに……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【わるい。おれ、じぶんのもんだい、かたずける。

 

 

おれの、たいせつなかぞくを、

 

 

かんけいないことには、まきこみたくない。

 

 

おまえらに、めいわくならないように、すぐかえる。

 

 

かえってくるまでに、せんとは、げんきになれ。

 

 

 

りゆうが】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ね!?多分あいつさっき紗羽さんが話してた所に行っちゃったんだよ!!どうしよう……どうしよう戦兎!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

何これ……あいつ……

何もわかってないじゃんか……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【お前は。さっきマスターが言った言葉を忘れたのか?お前は、もう家族だ。わたしたちの家族】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【一緒に居る期間が長いとか、短いとか関係無い。……記憶が無いわたしにとってはそんなもの意味は無い】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【万丈。お前はもうわたしの、わたしたちの家族だ。それを……お前は関係無いって言うのか?】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【……悪い】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【……もう、二度と言うな。関係無いとか。約束】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【……おう】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

約束したじゃんか。関係ないって言うなって。

一緒に強くなろうって約束したじゃんか。

 

 

 

 

 

 

 

字書くのも一苦労のくせに、一生懸命こんな手紙残しやがって……

 

 

 

 

 

 

 

あいつからの初めての手紙がこんなのなんて、絶対許せない。

 

 

 

なんで家族に頼らないんだよ。

なんで家族を頼ろうとしないんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

わたしにとって、万丈も大切な家族の1人なのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ぶっとばす」

 

 

 

 

 

 

 

見つけて、思いっきりげんこつかまして。

首根っこ掴んで連れ戻す。

 

 

 

それが、お姉ちゃんとして弟にできる愛情の形だ。

 

 

 

 

 

 

 

「え……?」

 

 

 

 

 

 

 

早くあの愚弟に愛の鉄拳かまさないとね。

 

 

 

 

 

 

 

「とりあえず美空は!いつもので情報を集めてわたしに送って!わたしはとりあえずさっき紗羽さんが行ってた場所に向かう!!」

 

 

 

 

 

 

 

徒歩だし、そんなに遠くへは行ってないはず。

早く見つけ出して説教しないと……!!

 

 

 

 

 

 

 

「う、うん!わかった――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――みーんなのアイドルっ!みーたんだよっ♡』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『今日は生放送なのっ!喜んでくれるかな?♡』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『実はね、今日はみんなにお願いがあるの……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『この写真の人を探してほしいの!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『みーたんはよくわかんないんだけどぉ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『脱獄犯のそっくりさんなんだって!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『見つけてくれたら……ふふふっ♡』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『みーたんきゅんきゅんしちゃうなっ♡』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『みんな、よろしくねっ♡』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――う"ぅんっ。きっついわぁ。

これめちゃくちゃ疲れるし。あ"ぁんっ。

 

 

 

でも、これで万丈が見つかれば……

 

 

 

 

 

 

 

お願い万丈。どうか無事で居て――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――くそっ!

 

 

 

やられた。万丈おおお!!

あいつ停めておいたバイク盗んで行きやがった。

 

ロックフルボトルどっかいっちゃったんだもんなあ……もお!

 

 

 

 

 

 

 

美空からの情報もまだか……早くしないと!

もしスタークやローグが居たら、あのバカ殺されちゃう!!

 

 

 

もっと早く……急がなきゃ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ここか。秘密の抜け穴っての。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人を寄せ付けないような森の中。

その中に一匹の龍がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「勝手に戦兎のバイク乗って来ちゃったからな……ちゃんと後で謝んねえと」

 

 

 

 

 

 

 

ホント、キーもわかりやすいとこにあったしな。

戦兎がずぼらなやつで助かったぜ。

 

 

 

それと手紙……読めたかな?

我ながら結構自信あんだけどよ!へっへっへ。

帰ったらあいつらびっくりすんじゃねーかな。

 

 

 

 

 

 

 

そうだ。もうちょっと上手く書けるようになったら香澄にも手紙書くかな。

 

 

 

 

 

 

 

あいつ、喜ぶぞきっと――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――戦兎!戦兎!!」

 

 

 

 

 

 

 

よしきた!さすが美空たん!!

相変わらず仕事が早いねん!!

 

 

 

 

 

 

 

「きたよ!目撃情報!!今そっちに転送するから!」

 

 

 

 

 

 

 

マシンライドビルダーに情報が転送される。

我ながらさいっこうの発明品だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「C12地区の森周辺……あぁ、《惑わしの森》とかって呼ばれてる場所か。おっけ!すぐ向かう!!」

 

 

 

「戦兎……万丈の事、頼んだよ……」

 

 

 

 

 

 

 

大丈夫。絶対大丈夫。

あの愚弟はお姉ちゃんがひっぱたいて連れ戻すからね。

 

 

 

んでもって一緒にお説教しよう、美空!

 

 

 

 

 

 

 

「任せて!絶対にわたしが引きずり回して連れて帰る!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ひゃー。相変わらず真っ暗だな。

 

 

 

森ん中を進んでくと、確かに穴みてーなのがあった。

そこを進んでったら……あの、記憶にある逃げ出した場所。

 

 

 

嫌な思い出しかねえ場所だけど、俺の全てを取り返すためだ。

 

 

 

 

 

 

 

香澄と約束した事を果たすため。

そして、あいつらみんなと堂々と生きるために!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さーて!負ける気がしねぇな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――何?……そうか。わかった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モニターの灯りのみが色めく空間。

そこはきっと。死の住処。

悪に縋る灯火。闇に映る幻想。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何かありましたか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

感情の無い言霊。冷たく、無機質なモノ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……いや。ネズミが一匹迷い込んだだけだ」

 

 

 

「ネズミ、ですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

訝しむ目には闇が映る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どちらかと言うと龍の落とし子、か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……まぁ気にするな。こちらの話だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪いが戻らねばならん。スクラッシュドライバーのデータは以上だ。……有意義に、な」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒く黒く、未だ貪欲に塗り潰す。

その闇には光すら届かない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はい。確かに」

 

 

 

「では以上だ。送ろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

毒々しい煙と共に、闇となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――うーん。ここはどこだろうか。

どうすっか。思いっきり道に迷っちまった。

 

 

 

ていうか広すぎんだっつうの!

よくこんなとこで働けんなー。

 

 

 

 

 

 

 

長い下水道みてーなのを歩き続けると、新しい場所が出てきた。

でもなー……人っ子一人いねーし。夜だからか?

 

 

 

こんな時間までふつーは働かねえよなー。うーん。

いやでも受刑者はいるよなー。うーん。

 

 

 

 

 

 

 

やっぱり戦兎と来た方が……

 

 

 

いやいや!あいつも色々大変そうだしよ。

あんまり迷惑かけちゃいけねえよな。

 

 

 

 

 

 

 

あいつは俺のこと弟扱いすっけどよ。

俺の方が兄貴にむいてんな!はっはっは。

 

 

 

 

 

 

 

ま、先に進んでみるか――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ここだね。見っけたぞ愚弟よ。

 

 

 

惑わしの森の先に進むと、行き止まりに穴みたいなのがある場所に開けた。

あのバカが盗んでったバイクもあるし、間違いない。

 

 

 

 

 

 

 

っていうか《みーたんネット》凄いな……

なんでわかるんだこんなの……

 

 

 

 

 

 

 

……まあいいや。先に進も――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――穴の中に入った先に進むと、開けた空間に出た。

 

 

 

灯りは点々とある蛍光灯のみで、薄暗い。

肉体的にも精神的にも気持ち悪い場所だ。

 

 

 

 

 

 

 

「こんな事ならバカにGPSでも埋め込んどくべきだったね……」

 

 

 

 

 

 

 

連れ戻したらまじで埋め込んでやろうかな。

 

 

 

ていうか本当に気持ち悪いんですけど……

早くあのバカ見つけ出して帰ろ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――進んだ先には、機械と思しき大量の兵士が待ち構えていた。

 

 

 

その兵士は、明らかな殺意と敵意を剥き出しに。

わたしに冷たい武器を向けてきた。

 

 

 

 

 

 

 

「こいつら……確か《ガーディアン》とかいうやつらじゃなかったっけ?なんでここに?」

 

 

 

 

 

 

 

確か……《難波重工》が生産してる警備用の自律型武装機械兵士、だったかな。

 

 

 

なんでこんな所に?ここ刑務所なんだけどな。

……もしかして刑務所でも警備してんの?

 

 

 

 

 

 

 

というか。刑務官が居ないどころか受刑者も居ないんだけど。

なんなんだろーかここは……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まあそんな事考えてる場合じゃない、か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……うし。攻撃してくんならしょうがない。

さっさと終わらすしかないよね……!!

 

 

 

さ!ぱぱっと行くよ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【タカ! ガトリング!】

 

 

 

【ベストマッチ!】

 

 

 

【Are you Ready?】

 

 

 

 

 

 

 

「変身!!」

 

 

 

 

 

 

 

【天空の暴れん坊!!】

 

 

 

 

 

 

 

【ホークガトリング!! yeah!!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪いけど付き合ってる暇ないんだ……行くよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大量のガーディアンたちが一気に襲いかかってきたが、戦兎はそれを背中に搭載された《ソレスタルウイング》を解放し、空を飛び躱す。

 

 

 

その姿は、まるで天空を優雅に舞う鷹のよう。

 

 

 

 

 

 

 

天空を舞いながら機械兵たちの銃撃を躱し。

獲物を狩るかのように的確に破壊してゆく。

 

空を飛ぶ術を持たない雑兵には、為す術もない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやーしかし。きりないなこれ」

 

 

 

 

 

 

 

いくら制空権を手にしたとはいえ、数が多すぎる。

くそっ、ぶっつけ本番だけど新武器を試そうかな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゴオオォォォ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え……嘘じゃん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

個々の力があまりにも弱い雑多が、1つの巨大な個に形成されてゆく。

 

 

 

それは、まさに巨大な力を持つソルジャー。

もちろん、ビルドを遥かに超える化身だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「聞いてないいぃいぃ!!」

 

 

 

 

 

 

 

でかいっ!デカすぎるってば!

いやっ、むり!むりむりあんなの!!

 

歩く事がすでに兵器なんてずるくない!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――あ。でも。1つにまとまったら楽じゃね。

 

 

 

それに、見た所そんなに頑丈そうではない。

いうなれば継ぎ接ぎだらけ、って感じ。

 

とゆーことは頑丈ではないはず。

 

 

 

 

 

 

 

という事は強力な衝撃を与えれば――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦兎の強さの本質はその類まれなる“頭脳”。

 

 

 

現在、自身の持つ手札をどのように組み合わせ、どれが一番効果的で有用なのかを瞬時に思案・計算・行動出来る所にある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「勝利の法則は……決まった!!」

 

 

 

 

 

 

 

超スピードでガーディアンの集合体を置き去りにし、急旋回する。

しかしその巨大兵はこちら目掛けて破壊の突進を止めない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぶっつけ本番だけど……なんとかなるでしょ!」

 

 

 

 

 

 

 

「お披露目だよ!【ホークガトリンガー】!!」

 

 

 

 

 

 

 

そう放つ戦兎の手に、黒と橙をした機関銃型の兵器が顕現する。

ただただ目の前のモノを破壊し尽くす、兵器。

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、いっくよおー!!」

 

 

 

 

 

 

 

まるで子供が玩具で遊ぶかのように言う戦兎は、中央に搭載されている《リボルマガジン》と呼ばれるマガジン部分を回し始める。

 

 

 

 

 

 

 

その音は破壊の足音。

 

 

 

 

 

 

 

【ten! twenty!

 

thirty! fourty!

 

fifty! sixty!

 

seventy! eighty!

 

ninety! HUNDRED!!】

 

 

 

 

 

 

 

【Ready go!】

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、竜巻が巨大な機械の塊を襲う。

更にその目から鷹が機関銃を構え、獲物を狙う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ボルテックフィニッシュ!! yeah!!!】

 

 

 

 

 

 

 

そしてその竜巻の包まれる機械の塊に、機関銃を解放する。

その場に居ることを許さない弾丸の雨が、兵士を屑鉄と変えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぃー。よかったよかった。ちゃんと使えたわ」

 

 

 

 

 

 

 

獲物を根絶したビルドは、人へと戻る。

役目を終えし鷹が巣へと戻るように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うっし。止まってる暇は無い。

急いで万丈の元へ行かないと――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――うーん。おかしい。

 

 

 

もう結構歩いてんだけどな。

だーれもいないし。鍋島どこだ?

 

 

 

……ここ本当は違うんじゃねーか?

 

 

 

 

 

 

 

やっぱり戦兎と一緒に来た方がよかったかな――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――よお。こんな所で何してんだ?【愚かな龍】?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

煌めく、蛇。全てを壊す愚かな蛇。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……居やがったか。もしかしてと思ったけどよ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スタークウウゥゥゥ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『よお。元気にしてたかァ?』

 

 

 

 

 

 

 

よくもぬけぬけと……!

てめぇは俺がぶっ飛ばしてやる……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

万丈の身体が人間の限界点を超える。

凄まじい速度でスタークの懐に近付き、その鳩尾を抉ろうと拳を握る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……しかし、鮮血の蛇には届かない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『遅ェ遅ェ。遅すぎて欠伸が止まらねェよ。なんだ?目覚めの体操ってかおい?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬時に万丈の背後をとったスタークはその背に強烈な回し蹴りを見舞う。

 

 

力の差は、あまりにも歴然過ぎた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「がっ……はぁ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この全身の細胞が壊れるかのような感覚……まただ、またこれだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

この日のために毎日筋トレをした。

毎日ボコボコにされながら戦兎と組手をした。

 

 

 

でも、でも、勝てねえのかよ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……んなことあってたまるか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺には、俺には香澄から託された想いがあンだ。

あいつが消えてゆく姿を見ながら、決めたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「力ぁ貸してくれ……香澄」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一緒に、あの蛇野郎を倒そう。

お前が託した、この龍のボトルの力で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ほう……それが龍の力、か』

 

 

 

 

 

 

 

優しく諭すような声色で呟く蛇。

まるで、息子の成長を楽しむ父のよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……来い。相手になってやる』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうスタークが呟いた瞬間、万丈は既に懐に居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『早いな!やるじゃねえか万丈!!』

 

 

 

 

 

 

 

心から楽しんでいる、その表現が一番似合うのかもしれない。

息子と玩具で遊ぶかのような。

 

 

 

 

 

 

 

「余裕ぶっこいてんのも今だけだぞこらあぁぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

万丈の拳が蛇の脇腹を貫く。

あの蛇が、反応出来ない速さで。

 

 

 

 

 

 

 

『ぐっ……!!!』

 

 

 

 

 

 

 

吹き飛ばされる蛇。

生身の人間に殴り飛ばされたのは恐らく龍が初めての事。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おいおいハザードレベル3.9かよお!?やるじゃねえか!!』

 

 

 

 

 

 

 

瞬時に起き上がる蛇。

狂い哭く蛇はゲラゲラと嗤う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんなもんなわけねぇだろうがあぁ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

また瞬時にスタークの懐へと入り、もう片方の脇腹に回し蹴りを放つ。

蛇が避ける事は出来ず、宙を舞う。

 

 

 

 

 

 

 

『ぐっ……はぁ。やるなぁ万丈?いってーぜ全くよォ……』

 

 

 

 

 

 

 

すぐにまた甦る蛇。

その攻撃を全て吸収するかのような。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだまだぁ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更に追撃を狙う龍。

しかし、強かな蛇は甘くない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あぁ。もうそろそろ遊びはいい』

 

 

 

 

 

 

 

そう呟いたスタークの腕から《スティングヴァイパー》と呼ばれる蛇の尾のような毒針が、万丈の身体に深く刺さる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後すぐ、龍は天から地へと崩れ落ちる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ゛……あ゛ぁ?」

 

 

 

 

 

 

 

身体が……うごか……ない?

なん……だ……これ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『毒だよ毒。神経毒だよ。身体の自由を奪い、徐々に死に至らしめる猛毒だ。どうだ?美味いだろう。俺のディナーは』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

く……そ……ちく……しょ……う

 

 

 

 

 

 

 

こんな……とこ……ろで……死ぬ……のか……

 

 

 

 

 

 

 

ご……めんな……かす……み……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……はァ。おい。いんだろ蒼いの。さっさと何とかしてやれ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ……?なんだ……あお……いのっ……て……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【〜♪ヾ(*`⌒´*)ノ】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クロ……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スタークの呼びかけに答えるが如くクローズドラゴンが現れると、小さな蒼き龍は患部から毒を吸い取り、主を救った。

 

 

 

まるで自身の同胞を護るかのように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クロ……サンキューな。助かったぜ」

 

 

 

 

 

 

 

死ぬとこだった……クロに感謝だ。

……クロを創ってくれた戦兎にも、な。

 

 

 

また救われちまったよ、あいつに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――なぁ万丈。お前は、強くなりたいか』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……舐めてんのかよ」

 

 

 

 

 

 

 

馬鹿にしやがって……くそっ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……強くなりてえに決まってんだろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……お前は。どうしようもなく弱い』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うるせえ。うるせえうるせえ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなのは俺自身が一番よくわかってんだよ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もっと強かったら香澄を助けられたかもしれない。

もっと強かったらあの大切な居場所を俺も護れる。

もっと強かったらマスターや、美空や、戦兎を護れる。

 

 

 

 

 

 

 

俺がもっと強かったら、俺を救ってくれた戦兎の後ろを護ってやれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちくしょう……強く……なりてえ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……共に来い。お前が強くなれる場所に連れてってやる』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふざけんじゃねえ!てめえは……てめえらは!香澄の命を奪った俺の敵だ!!倒すべき相手だ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄の命を奪ったファウストの連中の力なんざいらねえ。

信用も出来ねえし、それに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それはあいつらへの裏切りだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ファウストは関係ない。……俺個人の、だ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ファウストが関係ない……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……信用できるかよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……これを見ろ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは……戦兎が持ってる《ビルドドライバー》!?

なぜ……なぜこいつがそれを……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『これは元々俺たちのモノだ。……共に来るならくれてやる』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんだ、どういうことだ?

ビルドドライバーが元々ファウストのもの?

 

は……?じゃあなんで……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんで戦兎がビルドドライバーを持ってんだ……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わけが……わからねえ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……だったら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そいつをてめぇから奪いとりゃいい話だ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……遅ェよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬時に龍の懐に入り、蛇がその顎で腹を喰らう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ぐっ……はぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さっきまでは……押してたのに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『言っただろう。お前は……“どうしようもなく弱い”』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蛇野郎の言葉が俺の何かを貫き壊していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『今のままでは、お前は何も“護れない”』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やめてくれ、言わないでくれ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『その先に待つのは……死の“絶望”だ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁぁぁぁああああ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わかってる……俺が弱い事なんて……

俺がいくら鍛えても、誰も護れない……

 

戦兎と共に戦うことなんて……

 

 

 

 

 

 

 

戦兎の後ろどころか、隣で一緒に戦う事さえも……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『選べ万丈ォ!!力を持たずにお前の大切なモノが惨殺される様をただ指を咥え見ることしか出来ないままで死ぬのか!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それとも力を手にしお前の大切なモノを共に護るのかァ!!!さァ!!選べ!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は……俺は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

強くなりたい……

 

 

 

 

 

 

 

あいつらを助けられる、護ってやれる男でありたい。

大切な家族を、この手で護りたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから……だから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……俺は、強くなりてぇ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから、てめぇに着いていく」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……あぁ。ならば力をくれてやる。力の使い方をくれてやる。力の源をくれてやる』

 

 

 

 

 

 

 

『……まァ安心しろ。ファウストに入れだ何だのなんて言わん。ファウストは関係無いからな』

 

 

 

 

 

 

 

そして龍と蛇は、天の道を重ねる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺を……強くしてくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――早く行かないと。早く掴まえないと!!

 

 

 

 

 

 

 

居た。居た居た居た!!

ほんっとに世話の焼ける弟なんだから!!!

 

 

 

 

 

 

 

「万丈!!あんた勝手に……って、スターク……?」

 

 

 

 

 

 

 

万丈の隣に何でスタークが……?

 

それに、スタークが持ってるのって……

わたしが持ってる、ビルドドライバー……?

 

 

 

 

 

 

 

いや、そんなのは後でいい!

今は万丈を助けなきゃ!!

 

 

 

 

 

 

 

「スターク!!万丈に手出すんじゃ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

え……?

 

 

 

 

 

 

 

なんで……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんでスタークの隣に万丈が立ってるの……?

 

 

 

 

 

 

 

「わりぃな、戦兎。俺……こいつんとこ行ってくる」

 

 

 

 

 

 

 

……は?何言ってんの?

そいつはわたしたちの敵だよ?

 

 

 

 

 

 

 

まさか……操られてる!?

 

 

 

 

 

 

 

「スターク……万丈に何をした!?」

 

 

 

『何も……?ただ、強くしてやる、と言っただけだ』

 

 

 

 

 

 

何言ってんの!?

そんなの罠に決まってんじゃん!!

 

万丈バカだからそんな事にも気付かないんだから!

あーほんと世話の焼ける愚弟だよ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫、戦兎。俺、大丈夫だからよ」

 

 

 

 

 

 

 

やめてよ、そんな顔しないでよ。

 

 

なんでそんな事言うの?

あんた、そいつがなんなのか知ってんじゃんよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そいつらは香澄さんの命を奪った屑なんだよ!?

 

 

 

 

 

 

 

ねえ、やめてよ……

あんたはわたしたちの家族でしょ……?

 

 

 

 

 

 

 

なんで……なんで……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わかってんの……?そいつらは、香澄さんの命を……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……じゃあな!戦兎!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……今までありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんで、なんでよ!?

なんでわたしたちの所じゃなくてそいつらの所なの!?

 

 

 

なんで、さよならみたいな――

 

 

 

 

 

 

 

なんで、そんなに綺麗な笑顔で――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……さらばだ戦兎。これが、現実だ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言い残し、龍と蛇は消えた。

綺麗な笑顔を置き土産に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ばんじょおおぉぉぉ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

兎の絶叫は、龍には届かない。

 

龍は天に、兎は地に。

その道は、交わる事が――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――戦兎!戦兎!?万丈はどうだったの!?大丈夫!?」

 

 

 

 

 

 

 

美空、ごめんね。

お姉ちゃん、何も出来なかったよ。

 

 

 

 

 

 

 

大切な家族を、大事な弟を護れなかった。

 

 

 

何がげんこつだよ。

何が首根っこ掴んで帰るだよ。

 

 

 

 

 

 

 

わたしは、無力だな……

大事な家族1人護れない、無力なヒーローだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【……さらばだ戦兎。これが、現実だ】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わたし、何やってんだろうね。お姉ちゃんなのに」

 

 

 

「どういうこと!?何があったの!?ねえ――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――深く深く揺らめく煙。

 

 

 

 

 

 

 

ここは、また異なる闇……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ここはどこだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『すぐにわかる……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

龍と蛇が降り立つ地。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『本当にいいのか?……あいつらを裏切る事になっても』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……今ならまだ、引き返せるぞ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

龍は何を想い、喰らうのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ。ここに来たのは。俺の意思だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……ならば強くなる事だな』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

龍が舞うのは、如何の地か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……To be continued

 

 

 

 








香澄『あらあらまあまあ……』

香澄『龍我ったらやっぱりこうなっちゃうのね……』

香澄『心配だなぁ……特に戦兎ちゃん』



香澄『……龍我には天罰を与えた方がいいね。えいっ!』



香澄『あ……犬のう○こ踏んじゃったわ。あらまあ』

香澄『なんかこう、転ぶー!とか頭痛ー!とか』

香澄『そういう感じだと思ったんだけどな』



香澄『あら?もう終わり?……次回もお楽しみに♡』



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