Masked Rider EVOL 黒の宙 作:湧者ぽこヒコ
さあ!ようやく本編が進んでいきます。
一体どうなるのか?乞うご期待!
phase,1 白衣と中年と帽子と
――暗い暗い闇の中。何も見えない深淵の漆黒。
一体俺は誰だ?そしてここはなんだ?
……少しずつ思い出してきた。俺は、あの時トラックに……
「――おい!?聞いているのか!?……おい!」
……ん?なんだ?何かが聞こえる。……男?まるで誰かに問いかけているような……
「――おい!?どうした!?なぜ反応しない!?」
……さっきよりも明確に聞こえてくる。一体どうしたんだ、俺?
こいつは天国の使いの声か?それとも……
あれ?少しずつ光が指してくる。というか眩しいんですけど。
え?なんだこれ――
「――おい!?なんなんだ一体!?大丈夫か!?」
「ふぇ?」
なんだかついさっきも発したような素っ頓狂な声が出た。なんだかやたらと眩しくなったかと思ったら、目の前には見慣れない白衣のおじさんが。ん、なんだ。誰だ。というかここはどこだ。
周りを見渡すとこれも見慣れない場所だ。……研究所?なのか?
薄暗く見るからに怪しい場所だ。なんだかよくわからんものがわんさかとある。なんだこの四角い黒い箱は?
もしや俺、トラックに轢かれた後人体実験でもされたのか――
「おい!?聞こえてないのか!?」
目の前のおじさんがとんでもない大音量で唾を飛ばしてくる。いやいや、聞こえてますけど一体これはどういうことですかね。
「あのー……ええと、ここはどこ……というか、私はなんでこんな所に居るんですかね」
思いつく限りに冷静に応えようとした。何故か怒り心頭のおじさんを変に刺激してはいけないと俺の第六感が囁いていたし、何よりこの状況はちょっと怖いし……
「……貴様、ふざけているのか!?」
おじさんのボルテージをますます上昇させてしまったようだ。俺の第六感よ。もっと仕事してくれ。
「えっと……ごめんなさい。ふざけている訳では決してないのですが、なんと言いますか……事故の!事故の影響で記憶が?薄れているというか、事故直前の記憶しかないというか……ここへの記憶が一切無いんですよね」
なんで焦っているんだ俺。
「……本当にふざけないでくれるか。今はお前の冗談に付き合っている暇はない。それはお前もよく分かっているだろう!?」
いや、わかりません。全くわかりません。大体あんなでかいトラックに轢かれたのに何が冗談なん――
まてよ、というかどういうことだ?
そもそも、俺はなんであんな事故の後に平然と立っている?痛みも全く無い。見たところベッドは無いし、どう考えても不自然だ。
なぜ俺はこんなにも健康体なんだ?
「あのなぁ。お前が冗談を好むのはわか「ちょっと待ってください!!!」」
「一つ聞きたい事があるんです。なぜ……なぜあんな事故の後に
俺はこんなにも元気なんですか……?」
頭の先からつま先まで、全身に電撃が走るような感覚に陥る。なぜ。なぜだ。考えれば考えるほど分からない。わからないということがわからなくなってくる。脳から恐怖という伝達が身体中にほとばしる。
一体……俺はどうしたんだ……?
「……本気で言っているのか?」
「あ……えぇ。はい。」
白衣をきたおじさんが顎に手を当て何かを思索し始めた。「確かに……」やら「しかし……」やらボソボソと独り言をこぼしてもいる。
一体……なにが……
「ふぁ!?」
「おぉ!なんだ!?どうした!!!」
俺の更なる奇声で、目の前の白衣を着たスーツの良く似合う中年の男性があからさまに驚く。しかしそんな場合ではない。
今更だがなんだこの服は?こんな服持っていないし、そもそもこんなレベルの高いファッションは俺には……
帽子まで被ってる……俺は帽子なんで被るの小学生の紅白帽以来ないぞ……頭デカいから似合わないし。
なんだ。なんなんだ一体。訳がわからない。
誰かが着せたのか?……いやいやしかし帽子なんか普通被らせるか?
いやというかそもそもなぜ記憶が無い?記憶喪失ってこんな急激になるものなのか?
だって俺はさっき事故にあって……なんなんだ。何が起こってる。
一筋の冷たい水晶のような汗が額から頬へと滑り落ちる。全身に嫌な汗が生産されてゆく。
まさか……そんなはずは……
嫌な考えが脳を彷徨う。“あってはならないこと”がリフレインする。
いや、それはない。考えすぎだ。
いや。そうだ。きっとそうだ。これは夢なんだ――
「……痛い」
目の前のいかにも科学者や研究者っぽい男性が、一瞬訝しげな視線を送ってきたのを俺は見逃さなかった。恥ずかしい。
……夢ではないのか……くそっ。
とりあえず怪我の状態はどうなのだろうか。見たところ手に傷は見えない。後は顔とかか……
あれだけ大きなトラックにぶつかったんだ。それはもう酷い事だろう。
まあ元々自分の容姿には自信が無かったし、どうなろうが問題無い。まあとりあえず確認だけはしとくか……
「えー、あの。すみませんが鏡ってありますか?」
「……あぁ。ちょっと待て」
中年男性は随分と俺の事をまじまじと見ていたが、何かを諦めたかのように答え、奥からゴソゴソと物を探し、こちらに戻ってきた。
「鏡というには粗末なものだが……まあ自分の顔を確認するくらいはできるだろう」
彼はそう言い、鏡の破片の様なものを手渡してきた。
顔を確認するだけだし、このおじさんが言うようにこれで充分だ。
「ありがとうございます。充分ですよ。いやー。きっと傷だらけなんでしょうね。あは……は?」
自分の顔を確認して落ち込んでは、見ず知らずのおじさんにもなんだか悪いなと思い明るくしようとしたのだが……
「……いや……誰このおじさん。えっ?……あー……え?」
脳が思考を拒否しているかのようだ。今確認している顔は、洗顔している時によく見るいつもの顔じゃない。
……いや、誰だ。初めましてなんですけど。自分の顔なのに。
「恐らく……だが。あくまで推測なのだが」
何かを知っている雰囲気を醸し出しているおじさんが、顎を頻繁に擦りながらぼそり、ぼそりと言葉を紡いでいく。
その言葉に期待してしまう。もしかして俺の事を何か知っているのか?実は怪我の影響で整形してて、ついさっき記憶喪失になるような事があったとか……
「君は……もしかして……
エボルトではないのか?」
いや俺、日本人なんですけど。
……To be continued
さあどうなってしまうのでしょうか?
だいぶ短くなっちゃいました。なんだかきりがいいなーと思って。
果たしてこの白衣のおじさんは?そしてエボルトと呼ばれたこの男性の運命は?
次回からは登場人物に前書き・後書きを頼もうと思います。それではっ!