Masked Rider EVOL 黒の宙   作:湧者ぽこヒコ

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スターク『あー。だりぃ。めんどい』

ローグ『……しっかりしろ。さっさと終わらすぞ』

スターク『いやこれやったのお前じゃん。首相室』

ローグ『ばっ!お前!バカ!ほとんどやったの戦兎!』

スターク『……なんで壁の修理なんてしてんだろ』

ローグ『一杯奢るから。もうちょい頑張ろうよ』

スターク『お前、キャラ変わってんぞ』



ローグ『……さあ。絶望の本編!刮目しろ!』

スターク『もう無理だって』




phase,19 船酔いメイドの大冒険

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕焼けの赤い空。まるで映画の一部分かのような景。

しかし、地下深く黒が広がる世界には訪れない。

 

 

真意を知るは2人だけ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうした?エボルト」

 

 

 

 

 

 

 

黒く黒い世界で唯一痛みを分かち合える者。

そんな彼を俺は心から信頼している。

 

 

 

 

 

 

 

「……色々疲れるもんだな。葛城のおっさんよ」

 

 

 

 

 

 

 

白衣を来た厳格そうなこのおっさん。

唯一、俺が創らなくていい存在。

 

俺のオアシスだ。

 

 

 

 

 

 

 

……おっさんがオアシスって。俺大丈夫か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……辛いか」

 

 

 

 

 

 

 

作業していた葛城のおっさんが手を止める。

……きっとそれは碌でもない、世界に仇なすモノだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……人間ってのはどうしてこうも弱いもんかね」

 

 

 

 

 

 

 

タバコの毒煙が目に染みる。

……いってぇな、くそ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「人間とは脆く儚いもの……あまりにも残酷で、あまりにも慈しい。私はそう思うよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……そうだな。あまりにも残酷だよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「心が無かったら、もっと楽なのにな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たゆたう紫煙を弄び、耳をすませば聞こえてくる。

鳴り響く絶望の鐘の音が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……すまんな。本当にすまん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黙れくそじじい。

あんたは俺のさいっこうの相棒だよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よせよ、やめてくれ……あんたの方こそ大丈夫なのかよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人類の敵たる科学者に問う。

あんたは。葛城 忍は、もういいのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……既に魂は悪魔に売り捌いてしまったからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の目には、闇が映る。

奥底に視える暖かい地獄は何色だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……残念ながら俺は悪魔そのものだからなあ。はははは!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……問題無い。俺も覚悟は決まってるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

運命のあの日、あんたと出逢ったあの日から。

 

 

 

 

 

 

 

もう10年か、早いな。

 

 

 

 

 

 

 

「……辛くなったらまたいつでも来い」

 

 

 

 

 

 

 

人類の敵が、暖かく笑った。

……やめろよ。泣いちゃうぜ?

 

 

 

 

 

 

 

「ははは。またすぐ遊びに来るよ」

 

 

 

 

 

 

 

運命共同体だからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!!……ちっ」

 

 

 

 

 

 

 

脳を抉られるような激しい頭痛が襲いかかる。

ここ最近ずっと。死にそうだよ。

 

 

 

 

 

 

 

「……まだ、痛むのか」

 

 

 

 

 

 

 

あぁ。狂うほど痛てーよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【――!ほら、早く!こっちこっち!】

 

 

 

 

 

 

 

【もう。――は本当にいっつもそう!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……またか。

 

 

 

ここ最近、頭痛と一緒にこの映像が流れる。

顔の無い、恐らく女。

 

 

 

 

 

 

 

なぜか優しい気持ちになる俺。

きっと昔見た映画か何かなのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あっちの世界、での事なのかはわからない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫か!?おい、おい!」

 

 

 

 

 

 

 

葛城のおっさんは意外と心配性だ。

おっさん特製の健康診断を月に1度やるくらいに。

 

 

 

 

 

 

 

「……ああ。大丈夫。例のあれだよ」

 

 

 

 

 

 

 

懐かしい、映画の一幕だ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――太陽が顔を出し始めた頃。

わたしは今、北都行きの船に乗っていた。

 

 

 

物凄く揺れる船。めちゃ揺れる船。

 

揺れる、揺れる揺れる。

揺れる揺れる揺れる揺れる揺れる……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぎ、ぎもぢわるい゛……」

 

 

 

 

 

 

 

あーこれだめだ。

乙女がやっちゃいけない何かをやっちゃいそうな今だわたし。

初めて知った。わたし船アウトだわ……

 

 

 

あ、やばい。やばいやばい気持ち悪い……

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫戦兎ちゃん……?」

 

 

 

 

 

 

 

紗羽嬢は全く平気なのか、涼しい顔でわたしの背中をさする。

ちょ、酔い止めないですかね。

 

 

 

 

 

 

 

てゆーかなんでさっきからわたしのお尻をちょいちょい触ってんだ?あ、やばい気持ちわるっ……

 

 

 

 

 

 

 

「あー。船弱いんだねえ?薬あるから、ほらっ!飲みな!」

 

 

 

「さ、さんきゅーでっす……」

 

 

 

 

 

 

 

この豪快な女性はこの船の船長の奥さんの巻さん。

 

 

 

何の偶然か、前にスマッシュから助けた親子がまさかこの船の船長の奥さんだったとは……あ、だいぶ楽になってきた――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――はー。よしよし。

乙女の大事なとこは護られたよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実はこの船、密航船である。

本来、各都を行き来するには役所で様々な手続きが必要で、最短でも1ヶ月かかってしまう。

 

 

 

それを密航船なら金さえ払えばいつでも、というやつだ。

しかも巻さんが取り計らってくれてタダで乗せてもらえる事になったのだ。らっきー!

 

 

 

初めてのお給料まだなんで助かりましたよ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わたしは車の免許を持ってないから、唯一持ってる紗羽嬢が一緒に行くことに。

 

 

 

……美空1人じゃ心配だなあ。早く帰らないと。

 

 

 

 

 

 

 

よし!さっさと救出して帰るぞ!!

 

 

 

 

 

 

 

あ。帰りも船か……はぁ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――着いたわね。とりあえずどこかでレンタカー借りましょ」

 

 

 

 

 

 

 

元気ぴんぴんの紗羽嬢。

ちょっとわけてくれないかな。

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに巻さんに事情を説明したら、帰りも快く引き受けてくれた。

これで東都に帰るのは問題無い。

 

あとはファウストの連中にばれないよーに船まで辿り着けばミッションクリアだ。

 

 

 

よし、行きますか――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ここのマンションよ」

 

 

 

 

 

 

 

結構な築年数を感じるマンション。

ここに鍋島家族が監禁されてるらしい。

 

周りにはなぜかガーディアンがいる。

 

 

 

 

 

 

 

……難波重工、やっぱり黒いな。

いくら販売してるとは言え、その他にも色々と怪しいし。

 

 

 

色々埃が出てきそうなんだよね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ていうかさ。これ怪しくね?」

 

 

 

 

 

 

 

事前に紗羽嬢が用意した変装服に着替えたのだけども……

めちゃくちゃ怪しくね?2人して怪しすぎね?

 

大丈夫なのかコレ。

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫!似合ってるから!……それよりも、見て戦兎ちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……まさか北都政府の兵士が居るとはね。

ファウストと繋がってるのか、やっぱり。

 

 

 

 

 

 

 

スタークが万丈を北都に連れていってるから怪しいとは思ったけど、やっぱりか。

 

 

 

 

 

 

 

東都、北都。

残るは西都……こうなると怪しいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

って言うかさ。入った瞬間ズドン!とかないよね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――はい。どちら様ですか?」

 

 

 

 

 

 

 

幸薄そうだけど綺麗な女性が顔を出す。

表情は曇っている。そりゃそうだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だってわたしたち訳わかんないコスプレしてるもん。

紗羽嬢チョイスどうなってんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メイドて。メイド服て。

めちゃくちゃ怪しくない?

 

 

 

ていうかなんでばれないの!?

思いっきり不釣り合いだと思うんですけど……

 

 

 

 

 

 

 

やたら紗羽嬢がニヤニヤしてたから変だとは思ったけど……

そんなにメイド服着たかったんかね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つーか普通に恥ずかしいんですけど!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鍋島さんの奥様ですよね?……助けに参りました。中、大丈夫ですか?」

 

 

 

 

 

 

 

完全に服装と発言がマッチしてない。

助けに来る人がメイドて。どこの殺し屋だよ全く……

 

 

 

 

 

 

 

「え?あ、えーと。……主人のお知り合いですか?」

 

 

 

 

 

 

 

困惑する夫人。当たり前だっ!

 

やばいでしょこれ!

完全に奥さん怪しんでるよ!?

 

 

 

とゆーか主人のお知り合いて。どんなお知り合いなんだと思うだろこれ。メイド服来たお知り合いて。

 

 

 

 

完全に変な方向のお知り合いだと思われてるよこれ!?

 

 

 

 

 

 

 

ああ……再会したらまず詰められそうだね、鍋島さん……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えぇ。ご主人から頼まれて来ました。さあ、早く!見つかる前に支度して逃げましょう」

 

 

 

 

 

 

 

ご主人誰に依頼してんだ。メイドだぞおい。

 

 

 

 

 

 

 

「え?あ……はい!わかりました」

 

 

 

 

 

 

 

わかっちゃうんだ。そこわかっちゃうんだ。

すげーな鍋島妻。適応能力早すぎない!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――おねーちゃんたちなんでメイドさんのおようふくきてるの?」

 

 

 

 

 

 

 

ちっちゃな可愛い娘さんがわたしたちに純粋な疑問をぶつけてきた。

 

 

 

……そうだね。おねーちゃんも聞きたい。

 

 

 

 

 

 

 

「そ、それはね――」

 

 

 

「それはね、お姉ちゃんたちがメイドだからよ♡」

 

 

 

 

 

 

 

おい話をややこしくするな。

奥さんが完全に挙動不審になってんぞ。

 

 

 

どうするつもりだお前。

これ収拾つかないぞおい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……安心して下さい奥さん。ただのコスプレなんで……」

 

 

 

 

 

 

 

言うしかないだろ。離婚の危機だぞこんなの。

なんでわたしがこんな目に……

 

 

 

 

 

 

 

「あ、えと、怪しまれないように、ですもんね!しかも、可愛いですし!似合ってますよ!」

 

 

 

 

 

 

 

奥さん優しいかよ。怪しいだろ。

どう見ても怪しすぎるよこれ。めちゃくちゃ気遣ってるじゃん。

 

 

 

意味不明なフォロー入ってるもん。

救出するのに可愛いの必要ねーだろ。こんな服来て救出に来たとか言われてもわたしなら追い返すわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おとーさんのところにかえれるのー?」

 

 

 

 

 

 

 

……うん。もう大丈夫。

 

 

 

わたしたちがついてるから。ちゃんと帰れるよ。

 

 

 

 

 

 

 

「うん。もうだいじょぶだよ!お姉ちゃんたちがお父さんが帰ってくるお家に送ってあげるから」

 

 

 

 

 

 

 

そう言うと少女は、純粋過ぎる笑顔をくれた。

わたしの心まで清らかにしてくれそうな、そんな笑顔。

 

 

 

 

 

 

 

「……お父さん、お仕事忙しいから。すぐには帰ってこれないけど、ちょこっと寝たらちゃーんと帰ってくるから、ね?」

 

 

 

 

 

 

 

……ちゃんとお父さんは、わたしが助けるから。

 

なるべくすぐに会わせてあげるからね。大丈夫。

 

 

 

 

 

 

 

「うん!ありがとうメイドのおねーちゃん!」

 

 

 

 

 

 

 

メイドの……ははは。はぁぁぁ。

 

 

 

 

 

 

 

……まあこんな報酬をもらったから、紗羽嬢に詰めるのは勘弁しといてやるか。

 

 

 

 

 

 

 

こんなとびきりの笑顔を貰っちゃったら……ねえ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの……主人は、主人は何かに巻き込まれてるんでしょうか……私達は無理矢理ここに連れてこられて、主人と一切連絡が取れなくて……心配で……」

 

 

 

 

 

 

 

娘さんに聞こえないよう小声で話す奥さんは、泣くのを我慢してるように見えた。

 

 

 

多分、娘さんが心配するからなんだと思う。

娘さんが不安にならないように。

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫です。ちゃんと生きてます。……すぐに助けますから、安心して下さい」

 

 

 

 

 

 

 

こんなありきたりな事しか言えないわたしに、彼女は精一杯の微笑みをくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凄いな。お母さんって強いな。

 

愛する人がどうなってるのか、今生きてるのかすらわからなくて、全く知らない場所に連れてこられてるのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わたしだったら……

もしマスターがそんな目にあったら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マスターが、ご主人様?旦那様?

 

 

 

 

 

 

 

マスターと……結婚……?

あは、あはあは、あはあはあは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おねーちゃんおかおがまっかだよ?」

 

 

 

 

 

 

 

あはあは……ってあぶねえあぶねえ。

意識持ってかれるところだったよ。

 

 

 

 

 

 

 

「あー、えっと、あれ!最近なんか暑いなーみたいな……」

 

 

 

「いまふゆだよおねーちゃん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――これで全部です!」

 

 

 

 

 

 

 

荷物は思っていたよりも少なかった。

まあほぼ誘拐だしね。そんなものだろう。

 

 

 

 

 

 

 

「そしたらわたしたちがまず車に荷物を持って行きます。で、最後に――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――名付けて!ダンボール大作戦!!

 

 

 

ぎゅうぎゅうに詰められた2人はちょっと苦しそうだけど……すぐ終わるから大目に見てね!

 

 

 

 

 

 

 

先に車で紗羽嬢が待ってる。

なんかよくわからんけど怪しまれないし。行くぞおお!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――おい、そこの怪しいお前!何をしてる!!」

 

 

 

 

 

 

 

なんでえええ!?

なんでわたしだけええ!?

 

 

 

 

 

 

 

やっば。どうすっか倒す?倒しちゃう?変身しちゃう?

まさかメイド服着て変身する事になるとは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?……戦兎?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

懐かしい声がした先に。

懐かしい顔をした、あいつが居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……To be continued

 

 

 

 








戦兎「つーかこれいつ用意したの」

紗羽「……救出作戦が決まった時から♡」

戦兎「完全に怪しいでしょ。怪しくないわけないでしょ」

紗羽「大丈夫!完璧に似合ってるわ!!」

戦兎「……そういう問題なのか……」

紗羽 (はあ……眼福……♡)

紗羽 (次は何がいいかしらね……?)

戦兎「ほら!行くよー」

紗羽「あ、はーい!」

紗羽 (次はナース服……いや待ってうーん……)


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