Masked Rider EVOL 黒の宙   作:湧者ぽこヒコ

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万丈「だめだ。北都の食いもんは口に合わねえ」

万丈「美空のグラタン食いてーよー」

万丈「……東都に1回戻ろうかな」

万丈「うーん。グラタン食いてえしなあ」




兵士「団長!グラタン!作りましたよ!」

万丈「違うんだよなぁ……」

兵士「……?」




phase,22 せーぎのヒーロー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戦兎ちゃん!?佳奈ちゃんが居なくなってるって!!買い物してる時に、奥様がちょっと目を離してるうちに居なくなったって――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スタークが消えてすぐ、地図の場所に向かいつつ紗羽嬢に確認したら、佳奈ちゃんが居なくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

くそ、なんで関係のない人ばかり……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【――昨夜未明、男性の惨殺された遺体が発見され――】

 

 

 

 

 

 

 

【――内藤 太郎さん 49歳だと判明致しております。尚――】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

脳裏にあの悲劇が蘇る。

わたしの手で救えなかった尊い命。

 

 

 

 

 

 

 

……何が笑顔と希望を護るだ。

 

 

 

何が正義のヒーローなんだよ!!!

 

 

 

 

 

 

 

わたしはこんなにも無力だ。

ただただ大切な人が蹂躙されていく、無力なヒーロー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お願い、お願いだから間に合って……!

あの子の笑顔を、あの子を救えなかったらわたしは――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――あった……あったあったあった!!ここだ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

肺が潰れそうになるほど苦しくなるのを無視し、生まれて初めてこんなに全速力で走って、やっと見つけた建物。古いぼろぼろのアパート。

 

 

 

スタークが投げ捨てた地図に記されていた印。

やつが言っていた場所。

 

 

 

 

 

 

 

間違いない、ここだ。

 

急がないと、あの子が……

早く、もっと早く。早く早く早く。

 

 

 

肺なんて潰れてもいい。

心臓なんて壊れてもいい。

 

 

 

 

 

 

 

あの子の命を護れるなら――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――佳奈ちゃん!?居るの!?」

 

 

 

 

 

 

 

あちこちに身体をぶつけるのを無視し、急いで解錠した部屋。

中は狭いワンルームだ、どこなの佳奈ちゃん……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んー!!んー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

……男性の呻き声?

 

声がする場所を確認すると、そこは恐らく浴室。

多分、若くはない低く太い声。

 

 

 

……つまり佳奈ちゃんじゃ、ない。

 

 

 

 

 

 

 

ということは隣の部屋。

203号室に佳奈ちゃんが……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……でも、この人も助けないと。

 

見捨てるわけにはいかない。

 

 

 

ここでこの人を見捨てたら、連中と、ファウストと同じだ。

わたしの正義が消えてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【……なんか正義のヒーローみたい】

 

 

 

 

 

 

 

【そうだよ戦兎。皆のヒーローさ】

 

 

 

 

 

 

 

【えへへ。じゃあわたしはヒーローだ――】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

みんなの笑顔と希望を護る。

わたしは弱くても無力でも、正義のヒーローなんだから!

 

 

 

マスターが言ってくれたヒーローなんだから!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫!?今助けるから――!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

浴室のドアを開けると、そこには拘束され浴槽に座らされたよく知る男が居た。

 

ずっと探し続けたあの人。

あの小さい女の子のために探し続けていた人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鍋島……さん……?

 

 

 

 

 

 

 

わたしの脳細胞が動き出す。疑問が浮かぶ。思索する。

 

 

 

なぜ鍋島さんが?

なぜスタークが?

なぜ完全に隠蔽してたのに?

 

 

 

 

 

 

 

……考えている場合じゃない。

 

 

 

早く助けて佳奈ちゃんを……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ぷはぁ!助かった!!誰だかわからないがありがとう、気がついたらこんな所に居て――」

 

 

 

「喋ってる暇無いの!佳奈ちゃんを、佳奈ちゃんを助けないと!!!」

 

 

 

 

 

 

 

叫ばないように口に貼られたガムテープを勢いよく剥がし、拘束を解いてあげた鍋島に咆哮する。

 

 

 

ぐだぐたしてる暇はない。

手遅れになる前に佳奈ちゃんを――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――佳奈ちゃん!?居るんでしょ!?ど……こ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鍋島さんを助けた反対の部屋、203号室のドアを壊す勢いで開けると、そこには大量のおもちゃで遊ぶ、佳奈ちゃんが居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あ!せんとおねーちゃん!またあえたね!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少女の笑顔は、さいっこうに輝いていた。

 

 

 

 

 

 

 

「佳奈、ちゃん……佳奈ちゃん……無事……だった……」

 

 

 

 

 

 

 

目元が熱くなる。涙が零れる。

悲しみじゃなく、喜びの涙。

 

 

 

心がほわっとする、暖かい涙。

 

 

 

 

 

 

 

「なんでせんとおねーちゃんないてるの?かなしいの?だいじょうぶ?……ほら!よしよし!」

 

 

 

 

 

 

 

わたしの涙に気付いた小さな天使は、勢いよく近付きわたしの頭を優しく撫でる。

 

 

 

 

 

 

 

どこかで感じた事がある、と想う。

きっとそれは、マスターが頭を撫でてくれる時の優しさに似ていたからかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとね……佳奈ちゃん……」

 

 

 

 

 

 

 

でも、悠長にしてる暇はない。

今すぐに逃げないと――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――あ!おとーさん!!」

 

 

 

「……佳奈?……佳奈、佳奈!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人共何事も無く助け出せた後、少女とちょっと怖い顔をした父親はきつくきつく、でも愛に溢れた抱擁をしていた。

 

 

 

その光景は、わたしの心を暖かい光で満たしてくれるような。

多分そういう表現が一番良く似合う、そんな感じがした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「佳奈!佳奈!!寂しかったな、ごめんな。お父さん傍に居てあげられなくてごめんな。辛かったな。ごめんな」

 

 

 

「ううん!だいじょうぶ!せんとおねーちゃんがちょっとねればおとーさんかえってくるっていってたから!がまんした!」

 

 

 

 

 

 

 

人目を憚らず泣く父と、とびきりの満面の笑顔の娘。

なんだかいいな。凄く、綺麗。

 

 

 

 

 

 

 

羨ましいというか。微笑ましいというか。

わたしもマスターに会いたいな。

 

 

 

多分、今の状況の反対で。

マスターが笑って。わたしが泣いちゃって。

 

そんな事を考えてみたら、くしゃっ、と笑が零れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんだか久しぶりに心から笑えた気がする。

そんな風に思ってしまったわたしは多分きっと。

 

 

 

凄く暖かな気持ちに包まれてるんだと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――本当にありがとうございます!本当にありがとうございます!!なんてお礼を申し上げたらよいか……」

 

 

 

 

 

 

 

万丈の顔を倍以上強面にした鍋島さんが頭を下げてきた。

 

 

 

……傍から見たらわたし何者なんだろ。

 

 

 

 

 

 

 

「いーんですよ!正義のヒーローですから……それよりも、聞きたい事があるんですよね」

 

 

 

 

 

 

 

そう。やっと、やっとやっと見つけた鍋島さん。

わたしと万丈が探し求めた答えを持つかもしれない人。

 

 

 

悪の親玉、ファウストの情報を持っている可能性が一番高い人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……まあ一番嬉しいのは佳奈ちゃんの笑顔を護れた事だけどね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……わかりました。私がわかることなら全てお話しましょう」

 

 

 

 

 

 

 

彼の目は真っ直ぐ、清らかな気がした。

 

 

 

……良かった。悪い人じゃなさそう。

 

 

 

 

 

 

 

「とりあえず場所を変えましょ!奥さんも無事です!したら奥さんが今住んでる所に行きますか――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――その後すぐに紗羽嬢に連絡したら、どっかのお巡りさんもびっくりのスピードで車をかっ飛ばしてきた。

 

 

 

狭い路地なのに凄かったな。映画かと思ったわ。

そのぐらい紗羽嬢も心配してたって事だね。

 

 

 

 

 

 

 

さてと。やっと真相が見えてくるかな――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――辿り着いたのは鍋島さんの奥さんたちが住んでる家。安住の場所。

 

 

 

……外出中に誘拐されたのならここは安全か、な。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奥さんと佳奈ちゃんには席を外してもらい、鍋島さんから色々と話を聞いた。

 

 

 

……こんな話は、家族は知らなくていい。

 

 

 

 

 

 

 

鍋島さんの話を要約すると、結局大まかな事はわからないらしい。

 

ある男から家族を拉致監禁している、言うことを聞かなければ家族を殺す、と脅迫されたみたい。

 

 

 

誰かに言うのは構わないが、その時は二度と家族に会えないと思え、とも言われたらしい。

 

 

 

 

 

 

そうしてその男の指示するがままに香澄さんに接触し、万丈を嵌め、自身が勤める刑務所に収容された万丈を襲い、身柄を引き渡したそうだ。

 

 

 

……月乃さんとも面識は無いらしい。

 

 

 

万丈を渡した場所も刑務所の敷地内だったらしく、ファウストに繋がる事もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

そして全てが終わった後、そのまま血塗れの蛇の怪物……スタークに襲われ監禁されていたらしい。

 

 

 

外出は出来ないにしろ、暮らしに不便があったり、拷問の様な事はされなかったそうだ。

 

 

 

……意外と良い部屋だったらしい。まじかよ。

 

 

 

 

 

 

 

そうしてまたスタークに意識を飛ばされた後、気付いたらあの部屋の浴槽に居たみたいだ。

 

 

 

 

 

 

 

ファウストに繋がる情報は、皆無。

唯一の手がかりとなるその男も……思い出せないらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

顔が、思い出せない。

彼はそう言った。

 

 

 

顔の部分だけが黒く塗り潰したみたいになっている。

男なのは間違いない。それに、やたらと軽い口調の男だった。

 

 

まるで狂ったピエロのような男。

 

 

 

 

 

 

 

彼は、鍋島さんはわたしにそう告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……間違いない。スタークだ。

 

 

 

スターク。鮮血の蛇。

狂気の道化。絶望そのもの。

 

 

 

そんな奴はスタークしか居ない。

鍋島さんに接触したその男は、わたしの仇敵。

 

 

 

 

 

 

 

やっと少し輪郭を見せてきたな、スターク。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……鍋島さんがその男の事を話す時の感じは、たーさんが月乃さんの事を話していた時に似ている。

 

同じように顔だけが思い出せない状況。

 

 

 

……スタークの持つ力の何かなのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

スタークと月乃さん。

この2人の接点か……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あ。後、帽子……帽子がよく似合ってたような気がします」

 

 

 

 

 

 

 

少しずつ落ち着いてきたように見える鍋島さんが、何かを思い出したように呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

「あと……服装がかなりお洒落というか、似合って居ましたね」

 

 

 

「それと、いつもコーヒーの香りをほのかに漂わせていました……すみません、こんな情報しかなくて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鍋島さんのこの情報を聞いて、すぐに浮かび上がる人が居る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……マスター。わたしの、大好きな人。

 

 

 

帽子がよく似合う人。

いつもかっこよくて、お洒落な人。

コーヒーの匂いをほのかに香らせる人。

 

 

 

 

 

 

 

全て、当てはまってしまう。

 

 

 

 

 

 

そしてわたしは、なぜかスタークにマスターの姿を重ねてしまう時がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてマスターは。帰ってこない。

わたしたちの家に、わたしたちが待ってる家に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わたしの隣に、帰ってきてくれない……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……そんな自分が嫌だ。

 

 

 

あの人と、外道を重ねてしまうなんて。

 

 

 

 

 

 

 

マスターはわたしに、名前をくれた人。

マスターはわたしに、正義をくれた人。

マスターはわたしに、力をくれた人。

マスターはわたしに、愛をくれた人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……惣一さんは、わたしに全てをくれた人。

 

 

 

 

 

 

 

あの人がそんな、そんな事するはずない。

家族を傷付けるような人じゃない。

 

わたしを裏切るような人じゃない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【え、ごめんマスター……ほんと、わたしの勘違いだから!ごめん、ち、違うの!わたし、わたしマスター信じてるから……】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……そう。そうだ。

 

 

 

わたしはマスターを信じてる。

あの人の全てを信じてる。

 

 

 

 

 

 

 

あの人に涙を流させてしまった時に、改めて決めたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

わたしはマスターの全てを信じる、って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……だいじょぶです!きちょーな情報ありがとうございます!」

 

 

 

 

 

 

 

わたしのほんの少しの疑惑をかき消すように喋る。

 

 

 

 

 

 

 

……よし。もうだいじょぶ。いつものわたしだ。

 

 

 

 

 

 

 

「……あと、香澄さんと万丈さんに直接謝りたいです!……謝って済む問題では無いのですが……」

 

 

 

 

 

 

 

目を伏せ、肩を震わせる鍋島さん。

握った拳も、震えている。

 

 

 

 

 

 

 

「万丈は今……少し遠出してて。帰ってきたら……会わせます」

 

 

 

 

 

 

 

あの日の映像がわたしを襲う。

決別した、あの日。

 

 

 

……でも理由がある。

 

北都に忠誠を誓わざるを得なかった、何か。

 

 

 

 

 

 

 

多分。きっと何かあったんだ。

待ってろよ、万丈。今度こそ連れて帰るからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとは……香澄さん、か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……香澄さんは……亡くなられました」

 

 

 

 

 

 

 

わたしも見た彼女の最後の瞬間。

愛する人に抱かれながら消えていった香澄さん。

 

 

 

もう死ぬとわかっていながら、自分の事よりも万丈の事を心配していた香澄さん。

 

 

 

最後の最期に、笑っていた香澄さん。

綺麗な笑顔で光の粒になり、空に舞っていった香澄さん。

 

 

 

 

 

 

 

「……そうでしたか」

 

 

 

 

 

 

 

静かに目を瞑る鍋島さんに、なんて声をかけていいかわからない。

 

 

 

きっと答えはないのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

……こんな事もわからないのに、何が天才なのかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう思うと、桜の花びらが舞った気がした――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――本当に、本当にありがとうございます!主人を……それに佳奈も助けて頂いて……」

 

 

 

 

 

 

 

先程の鍋島さんみたいに、綺麗な涙を流す奥さん。

夫婦って似るのかな。やっぱ。

 

 

 

 

 

 

 

「いえいえ!このくらい朝飯前です!!……良かったです。本当に」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふとたーさんの顔が脳に過る。

 

 

 

その顔はなぜか笑っていて、「さすが戦兎ちゃん!」といつもみたいに笑って言ってくれてる気がした。

 

 

 

 

 

 

 

たーさん。なんとかやっと1つ、護れたよ。

あなたを護れなかったこんなわたしだけど、ようやく1つの家族の、笑顔と希望を護れた。

 

 

 

 

 

 

 

天国でいつもみたいに応援してね。たーさん。

 

 

 

 

 

 

 

「本当にありがとうございました。これからは……私が妻と娘をしっかりと護っていきます」

 

 

 

 

 

 

 

鍋島さんの顔がとてもかっこよく見えた。

家族を護るお父さん。ヒーローだ。

 

 

 

佳奈ちゃんの、ヒーローだね。

 

 

 

 

 

 

 

「せんとおねーちゃん!ありがとね!おとーさんたすけてくれたの、せんとおねーちゃんなんでしょ?ありがとうございます!」

 

 

 

 

 

 

 

ちっちゃな天使は、頭がもげるのではないかと思う勢いでお礼を言ってくれた。

 

 

 

……ううん。わたしも佳奈ちゃんに救われたから。ありがとう。

 

 

 

 

 

 

「当たり前の事だよ。わたしは、みんなの笑った顔が好きなの」

 

 

 

「それに……佳奈ちゃんの笑顔が護れて本当に良かった」

 

 

 

 

 

 

 

本当に。本当に護れてよかった。

鍋島さんやこの子を救えなかったら、きっとわたしはもう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふふ!せんとおねーちゃんはわたしのヒーローだよ!せーぎのヒーロー!ありがとう!だいすき!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……正義のヒーロー、か。

 

 

 

そうだ。わたしは正義のヒーローなんだ。

 

悩んでる場合じゃない!

わたしは正義のヒーローなのだからね!

 

 

 

 

 

 

 

「……うん!お姉ちゃんも佳奈ちゃん大好き!!」

 

 

 

 

 

 

 

この純粋な笑顔が。これから先もずっと失われないように。

わたしはずっと護り続けるよ。

 

 

 

わたしは、戦い続けるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そういえばきょうはメイドさんじゃないね?なんでー?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局そうなるんかああい!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――あ、そうだ。わたしね、せんとおねーちゃんにおてがみわたさなきゃ」

 

 

 

 

 

 

 

なんでメイドじゃないの?発言で奥さんは気まずそうな顔をし、鍋島さんが頭上にクエスチョンマークを出してる姿に本当にすんませんでしたと心で告げていると、佳奈ちゃんがある一枚の封筒を渡してくれた。

 

 

 

真っ白の封筒。中身はあるようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのおもちゃのおへやにつれてってくれたおじさんが、わたしてって。せんとおねーちゃんにって」

 

 

 

 

 

 

 

え……佳奈ちゃんが……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すっごいやさしいおじさんだった!かっこよかった!あとね、おもちゃもぜんぶあげるって。おかしもかってもらったの!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……佳奈ちゃん、そいつは悪いやつだよ。

 

 

 

人の皮を被った、悪そのものなんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……佳奈ちゃん。もしかしてだけど、そのおじさんの……顔、覚えてる?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……へんなこときくね?せんとおねーちゃん?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おぼえてるよ!かっこよかったもん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……To be continued

 

 








幻徳「あー疲れた。酒飲みたいな」

幻徳「おい内海ー!内海ー!!」

幻徳「……あっ」

幻徳「そういえば……居ないのか」



幻徳「……あ、内藤さん!!」

幻徳「は、そっか……」



幻徳「スターク、誘ってみるかな……」



幻徳「あ、もしもしスターク?あのさ――」

スターク『忙しい無理。Ciao♪』



幻徳「……うん」






氷室幻「カラオケにでも……行こうかな」


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