Masked Rider EVOL 黒の宙 作:湧者ぽこヒコ
※本編とは関係ございません……多分。
このお話は、美空たちの幸せな日のお話です。
都合上によりクリスマスではなくイブに投稿となってしまいました……残念!
香澄『あら……いいな……』
香澄『……私も混ざりたいな』
香澄『気付かれなくても……いいもん』
香澄『ちょっと降りてみよ!えいっ!』
聖夜の鐘が鳴り響く。
今日は1年の中でも特別な日。
皆が胸高鳴らせ、祝福の狼煙をあげる日。
街中には皆、笑顔で歩いてく人々。
もちろん、平等に訪れる平和。
束の間の幸せな祭り。
今日だけは争いの無い、平和な1日――
――とあるパーティ会場の裏方。
いそいそと準備を始める、とある男が居た。
本来は世界を絶望に満たすはずのこの男。
今日だけは。今日の一日だけは。
幸せを運ぶ、どこかの運び屋へと生まれ変わる――
「――とりゃ!……葛城のおっさん!起きろって!おーい!」
葛城のおっさんの両頬を往復で叩き飛ばす。
この能力。便利だけど眠っちゃうんだよなぁ。
しかも身体までってなると……疲れるわ……
……だが。そんなん言ってる場合じゃない。
まぁとりあえず身なりは大丈夫。
前もってカンペも渡してある。
後は……怪しまれないように……と。
……早くー。早く起きろって!
おーい!おーいおーい!
「……あぁ。大丈夫だ」
「……違うでしょ」
そうじゃない。それバレるから。
カンペ渡したでしょ!!
その姿とその声でその口調やめろって。
バレたら全部台無しだから!!
『……あら?……そうでしたわ♡ごめんなさい♡』
やるじゃねえか葛城のおっさん!
……中身がおっさんだと思い出すと……うん。やめとこ。
「……おっけ。ばっちり」
――俺は石動 惣一。エボルトだ。
なんかおかしな説明だな。まあいいか。
今日はクリスマス。年に一度のとんでもないパーティだ。
本当なら戦兎たちにクリスマスプレゼントを送るだけの予定だったんだけど……とある事を閃いてな。
ふっふっふ……
『……大丈夫。準備完了よ♡』
よし!お祭りの始まりだ!!!
【Masked Rider EVOL 黒の宙】
どきどき!?聖夜祭編、始まるぞ!
……何言ってんだ俺?
疲れてんのかな……ま、いっか。
「――ん……寝ちゃっ、た……?」
確か……お父さんが居たような……
夢見てたのかな……
うーん。まだ寝惚けてる感じ……
なんだろ……それにおかしな感じもするし。
あ!そう言えばパーティの準備しなきゃ!!
……ん。あれ?
ここ……パーティ会場……?
えっ……?どゆこと!?
なに!?何なの!?
それに……
「せ、戦兎!?」
「むにゃ……マスター……えへへ」
何これ!?ここどこ!?
なんか広いパーティ会場に……ご馳走がいっぱいあるし。
それに……なんか人が倒れてるんだけど。
……あそこに居るのって万丈!?
「ますたぁ……ん?……あ、美空おはよお」
ちょ、ちょっと何これ!?
一体どうなってるの!?
まずここどこ!?
私はさっきまでnascitaに居たはずじゃ……
それに万丈が倒れてるんだけど……
万丈って北都に行ったんじゃ……
他にも……紗羽さん!?
紗羽さん仕事だったんじゃ……
え?なんでこんなとこに?
それに……見た事無い人たちも……
「……ふにゃ?みしょらぁ?……え゛」
あ、ああ。戦兎起きてたのね。
というか一体これは……
「何ここ!?……美味しそうなご馳走がいっぱい♡」
「そんな場合じゃないし!周り見て周り!!」
本当に食欲旺盛な牛!……お姉ちゃんだなあ!
「……え。万丈……?それに紗羽嬢?……なんだここ……何がどうなってんの?」
本当に……一体何これ!?
「よう!やっと起きたか!……戦兎、美空」
……え。
お父……さん?
――ほんとになんだここ!?
わたし確か……あれ。なんだっけ。
マスターに会ったような気が……
そこから真っ白な空が見えて……?
っていうか!万丈居るし、それに紗羽嬢も!
なんで佳奈ちゃんも!?
一体全体どうなっちゃってるんだこれ……
これは夢?夢なのこれ?
……あれ。氷室 幻徳がいる……え?
それに知らない人も……
な、なんなんだここ!?
「よう!やっと起きたか!……戦兎、美空」
……ん?
マスター!?え!?
「……マスター?」
何がどうなって……?
「ほら!今日はクリスマスパーティーをする日だぞ!しゃきっとしろしゃきっと!」
……は?
そう言えばクリスマスパーティ……あれ、そうだっけ?
なんか頭がふわふわするなあ――
「――あ?ここどこだ?」
「――ん?……俺は首相室に居たはずだが……?」
「――みーたん♡……はっ!?……ん?」
「――あら。寝ちゃってたのかしら……え?ここ、どこ?」
「――むにゃ……ん。あれ?なあにここ?わあ!ひっろーい!」
続々と目を覚ますパーティの参加者たち。
理解できていない者。
困惑する者。
喜ぶ者。
みんな少しずつこの場所がパーティ会場、とだけはわかってきたようで――
「――う"んっ……えー皆さん。お集まり頂いて誠にありがとうございます。さて!皆さんをお呼びしたのは他でもない!この俺、石動 惣一です!」
やたらと広いパーティの前にある豪華なステージ。
そのステージ中央でマイクを使い、場にその声を響かせる。
皆、理解は出来ていない。
頭上にクエスチョンマークが広がっている。
「皆さんね。日々お疲れでしょうから。ぱーっといきましょぱーっと!」
「さあ!パーティの始まりだよ!」
「「「「「「「えっ!?」」」」」」
皆、満場一致である事を考えた。
……あぁ。これは夢なのだと。
ある1人の幼女を除いて。
「わーい!やったあ!みんなでパーティだね!ごちそういっぱい!」
「――はい!というわけでね。早速ですがスペシャルゲストが来ています!」
な、なんだ!?マスター?
俺は北都に居たんじゃ……
……あれ?どうしたんだっけ?
確か……香澄が俺の事を迎えに……?
いや、なんだ?夢でも見てんのか俺……?
「さあ!どうぞー!!スペシャルゲストの登場でっす!」
それにしても、マスター変わってねえな。ははっ。
いやーでも夢にしては随分リア……ル?
え……?
『どうも皆さまお久しぶりです!初めましての方も多いですね。小倉 香澄と申します。……あっ!龍我!久しぶり!』
……嘘だろ。
香澄……香澄香澄……香澄!!!
「がずみいぃぃぃー!!!!」
俺は気付くとステージに上がって、香澄を抱きしめていた。
何も変わらない、香澄。
……神様ありがとう。さいっこうの夢だよ!
「――なぜ……あれ?」
小倉 香澄は俺がスマッシュにして……あれ。なんだ。
……スマッシュってなんだ。
っていうかなんなんだここ。こいつら誰?
俺は親父が倒れた代わりととして首相室で仕事してて……
んでもってちょっと酒飲みたいなーなんて思ってたりなんちゃったりして……
どうなってるんだ?ここどこ?
……夢なの?
って言うか知らない人ばっかりだなぁ……
ん?ん??お!あそこに居るのは!!
「おーい!戦兎君!戦兎君じゃないか!!」
はっはっは。よかった。知り合いが居て。
いやあ。誰も知らなかったらどうしようかと思ったよ――
――やべえ。やべえやべえやべえ。
なんだ。これは夢なのか!?
確か俺は非番でやる事ねえし、いつもの様にみーたんネットを見てて……
あれ。その後何があったんだっけ……?
思い出せねえな。いや、そんな事より……!!
目、目目目、目の前に、ほ、ほほほほ本物のみーたんが!?
いや、服装はいつもと違うし、そっくりさんという可能性も……
いやしかし!古参勢の俺にはわかる!!
推しの……推しの女性を間違えるはずはねえ……
あの人は……あのお方は本物のみーたんだ……♡
「……う"っ、うん……初めまして。みーたんですよね?」
「へっ!?……いや……あんた誰?」
みーたん……?
みーたんがこんな……いや、そんなはず……
「私は猿渡 一海……みーたんネットをこよなく愛する古参です。ファンです。大ファンです!!」
「あなたの様な素晴らしい天使、いや女神!に地上で出逢えた事に心から嬉しく思います。できればカズミンとお呼び下さい!!!!」
「……えっ……きもっ」
……みーたん……?みーたん……
こんな毒舌みーたんも大好きだああ!!!
毒舌路線、俺は応援するよおお!!!
「――あ、握手してもらえます?」
「ちょっと!美空ちゃんへの接触は私を通してもらえる?」
……なんだこの女。
もしかしてみーたんのマネージャーか?
「私は滝川 紗羽……握手は50,000ドルクよ♡」
……は?何だと?俺を舐めんなよ?
「……結構安いんですね。あ、はい。50,000ドルク丁度あります」
「……毎度あり♡」
「ちなみに倍払えばツーショットとかして貰えたりするんですかね?――」
「――え?香澄さん?」
……香澄さんが、なぜここに?
確か香澄さんはスマッシュに……あれ。スマッシュってなんだ?
でも香澄さんは亡くなって……たはず。
病気だっけ?
いやいや。それにしてもなんで……?
なんだこれ?本当に夢なのかな……?
「おーい!戦兎君!戦兎君じゃないか!!」
……っ!氷室、幻徳……!!
こいつよくもまあぬけぬけとこんなに明るく……ってあれ?
……わたしなんかあったっけ?げんさんと?
ふつーにただの上司だし。
最近お父さんが倒れたからって首相代理やってる、見た目によらずフレンドリーな人。
なんか変なの……まあいっか!
「おーうげんさん!なんか変なパーティだね、これ?げんさんが企画したんでしょー?どこでマスターと知り合ったん?」
「いやいや俺も知らんのよ。気付いたらここに居てさ。お、戦兎君!ほら、モンブランあるぞ!食べよ食べよ!」
「ほおおお!ほんとだ!……あ!げんさんあそこに肉あるよ肉!!お皿どこかな――」
――わあああ!
すごーい!ひろいし、おいしそうなのが、いっぱい!
でもしらないひとが、いっぱい。
せんとおねえちゃんと、みそらおねえちゃん?のふたりっていってたきがするのになあ……
まあいいや!たのしいし!
「佳奈ちゃん。何食べたい?」
だれだろ?このおじさん?
わたしのことしってるのかな?
「おじさんだーれー?」
うーん。どこかであったきする。
「んー?おじさんはね。戦兎お姉ちゃんや美空お姉ちゃんのお父さんだよ。ほら、せっかくだからパーティ楽しも?」
やさしそうなおじさん!
それにかっこいい……!!
「うん!わたし、ぱすたたべたい!」
「うんうん。そしたらおじさんや戦兎お姉ちゃんと一緒に食べようか」
「うん!たべる!おじさん、かっこいいね――」
思い思い、みな様々な人と幸せなひと時を過ごしている。
過去の笑い話や、今の自分についての話。
それにずっと話したかった事。
それは、争いや憎しみの無い愛に溢れた時間。
皆が例外なく喜びに満ちた笑顔で溢れる――
「――マ、マスター……お、おいしい?」
なんかめっちゃ緊張するんですけど。
夢だってわかってても久々のマスターだよ!?
しかもこんなにリアルだし……
ただいまわたしは佳奈ちゃんとマスターの3人で、会場の真ん中にあるテーブルを使いおいしいご飯を堪能中。
佳奈ちゃんもマスターを気に入っちゃったみたい。
べったりくっついちゃって離れないんだ。あはは。
……ちょっと羨ましいな。えへ。
……それにしても。
はあああ♡会いたかったよおお……♡
マスター!もう会えないと思ってたよお!
なんにも変わらないマスター。
優しい笑顔のマスター。
だめだ。夢だってわかってても蕩けちゃう……
「……どした戦兎?随分大人しいけど……もしかしてあんまり楽しくないか?」
ちょっと切ない表情のマスター。
違いますから。めちゃ楽しいですから。
こんなさいっこうな夢……♡
万丈は香澄さんと2人で幸せそうな空間に包まれてる。
わたしたちが見た事ない、優しい笑顔の万丈。
美空と紗羽嬢は、猿渡……?とかいう人とげんさんに絡まれてる。
ちょっと困惑してる美空だけど、普段家から出れないし初めての人と笑いに包まれてすっごい楽しそう。
紗羽嬢は……なんか美空使って商売してんな。何やってんだ。
……でも楽しそう。よかった。
「めっちゃめちゃ楽しいよ!!さいっこうに幸せ!!」
「……そうか。よかった」
「……ねえマスター。膝の上で……頭、撫でてよ」
……夢だもん。欲張らなきゃ。
「……ほら、こっちおいで。戦兎」
……幸せ♡
「あー!わたしにもなでなでしてー!」
「じゃあわたしと一緒にしてもらお!」
「うん!してもらう!」
「あははは!ほら、佳奈ちゃんもこっちにおいで――」
「――美味いか?香澄」
みんながそれぞれ楽しんでる中、2人きりの空間を楽しむ。
ずっと夢に見た、香澄との再会。
ずっとずっと会いたかった、香澄。
『うん!とっても美味しい!……ほら、龍我も食べて?』
いつもの香澄だ。
にこにこと優しく微笑む香澄。
俺にはもったいない最高の女性。
護れなかったあの日……
ずっと後悔の毎日だった。
やっと……やっと……
やっと香澄の声が聞けた……!
『ほらほら泣かないの。男前の顔が台無しよ?』
『……約束したでしょ?また会おうって……桜の樹を観に行こうって』
優しい涙が溢れる。
神様……本当にありがとう。
この会場の端の所には、大きく優雅な桜の樹が咲いていた。
12月なのに。綺麗な花弁を咲かした桜。
夢でも本当に嬉しい。
あの時の香澄との約束、果たせたよ。
本当に……最っ高のクリスマスプレゼントだ。
「……そうだな。そしたらよ!俺の家族を紹介するよ。香澄と一緒で、大切なやつらなんだ」
『そうなの?……龍我の家族なら会いたい!……でも私を放置してたら妬いちゃうぞ!』
「ばっ!そんなわけねーだろ!お前が一番だっつーの!」
『ふふふ。可愛いなあもう。龍我ったら』
「うっせ!――おい!戦兎!マスター!こいつが香澄っていってよ!戦兎は一度――」
――ふふふ。こんな事もあろうかと鞄にいれといてよかったわ。
しかし変な夢ね?すっごいリアル……鞄にこれもあるし。
私は……確か幻徳さんに取材しに行く所だったと思うのだけど。
で、それが終わった後に戦兎ちゃんたちとパーティだ!……って思ってたら寝ちゃったみたいなのよね。
疲れてたのかしら?
戦兎ちゃんたちのお店nascitaの取材記事も書いてたし……
まあ、そんな事はどうでもいいわよね!
それにしても……楽しみだわ……♡
万丈君の彼女さんも居るし!
綺麗な方……きっと……ふふ♡
「戦兎ちゃん!美空ちゃん!佳奈ちゃん!香澄ちゃん!ちょっとこっちに♡」
ステージの舞台袖に女子メンバーを呼び出す紗羽お姉さん。
その笑は邪なモノに溢れていた……!!
「なんだどした紗羽嬢」
「はーい!今行くしー!」
「……なんかこわい」
『紗羽さん、ですよね?今行きますよー!』
ふふふ。本当は私も着るつもりだったけど。
……香澄ちゃん。似合いそうだわ♡
「……おい嘘だろまたあ!?ていうかこれ露出多くない!?恥ずかしいんですけど!?って、おい!聞いてんのか紗羽嬢!ちょ、こら……やめっ……」
「紗羽さん!?何これ!?え、やだ、私着ない……って、ちょ……ちょっ……と!いやだしいいい!!」
「なあにこれ?……わあ!かわいい!おきがえするの?やったー!かわいいねーこれ!」
『え……いや、私は遠慮を……いやいや、大丈夫ですか、らっ!?あ!……ちょっと紗羽さん!?』
「――なんか向こうから悲鳴聞こえない?」
ヴィンテージワインの香りを弄びながらふと零れる。
……なんか色々悲鳴が聞こえた気がすんぞ。
そういえば滝川のやつが舞台袖から呼んでたよな……
しかもなんか邪悪な笑顔しながら。
……まぁ楽しんでるならいいか。
女性陣が姿を眩ませたので、万丈、猿渡、幻徳、そしてこの俺の男4人で酒を愉しむ。
すっげー謎なメンバーだけど。
たまにはいいだろ?な?
それにしてもこいつらめちゃくちゃ酒が強い。
猿渡と幻徳はなんとなくわかるが……万丈は意外だな。
むしろ一番の酒豪だと思うんだけど。ずっとテキーラ飲んでんだけど。永遠と。グラスで。
テキーラカクテルじゃないよ?そのまんまテキーラだよ?テキーラを普通のグラスで乾杯だよ?ショットじゃないからね?
すごい通り越して気持ち悪ぃなこいつ。
「ぷはぁ!うめーな!今日は楽しいなー!全くよー!」
「同感だなエビフライ頭……みーたんと握手どころかお喋りまでしてるしな……♡」
「またお前はエビフライとか言いやがって……!ま、今日はいいか」
「なあ、君たちはどういう知り合いなんだ?……仲良さそう、にも見えないけど」
「幻徳……だっけか?俺とこのエビフライ頭は同じ北都の奴だよ。まぁ、こいつは東都から出稼ぎに来てんだけどな――」
――なんだ。こいつらも案外楽しそうだ。
なんか面白いなこれ。
絶対有り得ない光景だもんなこれ。ムービーに残しちゃおうかな。
……記念だし。俺しか見ないし。
まぁでもよかったよ、楽しんでくれて。
苦労した甲斐があったってもんだな……
というか葛城のおっさんがすげーわ。
どうやってこの短期間でこれを用意したんだあのおっさん……
ま。みんな喜んでるしいいか。
幻徳もたまには、な。
そして葛城のおっさん。ごめん。ほんとに。
でもなんかおかしいんだよな。
俺が書いたカンペに無いことまで知ってるし……
自分で調べたのかね――
「――皆さん!!お待たせしました!!!」
ステージのど真ん中に、堂々とした姿でマイクを使い声を響かせる紗羽お姉さん。
やはりその笑は邪悪。本当に怖い。
……なんだ滝川。
やっぱりお前何か企んでやがったな。
「みなさま!眼♡福♡タイムよ!!刮目してご覧あれ!!!」
「さぁみんな出ておいで!私の天使たち!!」
……眼福?天使?何言ってんだこいつは――
「――え?……戦兎!?美空!?佳奈ちゃん……は物凄い似合ってるなおい」
「んあ?……香澄!?おっ、お前、なななな何してんの!?」
「あ……あ……みーたんが……みーたんが……!!……心火を燃やし過ぎてこれだめだ死ぬ本当にありがとう」
「……ありがとう神様。いや。滝川様……生きててよかった……」
紗羽お姉様の掛け声により舞台袖からゆっくりゆっくりと、そしてなぜか全てを諦めたように現れてきたのは、みんな大好き4人の乙女たち。
ただ1人、佳奈ちゃんだけは楽しそうだが……
普段と何も変わらない乙女たち。
服装以外、は……
「もう好きにして……わたしはもう、慣れたから……」
そう呟く天才物理学者の戦兎ちゃん。
その身にはかなり露出が激しめのサンタの衣装を纏っている。
超ミニのスカートに、面積が控えめの真っ赤な服を着させられた上半身。
……察してあげましょう。
「……お嫁に行けないし……もういい。もういいんだ……」
虚ろな目の美空ちゃん。
そんな彼女が身に纏うはナース服。
……かなり際どいナースさんですね。
そのお洋服はまるで彼女のために創られたかのようなデザイン。
スレンダーな彼女にフィットしており、やはり超ミニのスカートにへそ出しルックのお洋服。左手にはお注射を。
……どこにこんなナースさんがいるのかは知りません。
「えへへ!みてみて!すごいでしょ!」
唯一、満面の笑顔な佳奈ちゃん。
天使の衣を完璧に着こなし、見るもの全てを笑顔にさせてしまう、そんな表現が似合う天真爛漫な姿。
ひらひらしたスカートに、まるでそよ風を具現化したようなお洋服。
背中にはちっちゃな羽が生え、頭の上には天使の輪っか。
……佳奈ちゃんを見たみんなが笑顔になってますね。
『はは……どう……?似合う……?龍我……?』
恥ずかしそうに顔を真っ赤にさせちゃった香澄ちゃん。
彼女が纏うは小悪魔。
黒を基調としながらも所々に繊細なデザインが施されています。
大胆な服装ながらもどこか落ち着きを感じ、ゴシックデザインの短いスカートに、自己主張激しめの胸元が可愛くハートマークで覗いている。
背中にはちっちゃな羽。佳奈ちゃんとお揃いのようにも思える服装。
……万丈君。顔を真っ赤にしながらも鼻の下が伸びています。だらしないですね。
「せっかくのパーティなんだから!……楽しまないとね♡」
そう言った紗羽の顔は、幸せに満ち溢れていた。
――縁もたけなわ。幸せは永遠には続かない。
コスプレという名のファッションショーが終わり、乙女たちは着替えることを許されずそのままだったのだが、時間が経てば幸せな空間で忘れてしまったよう。
戦兎がマスターの前で恥ずかしそうに会話をしていたり。
香澄の胸元を凝視していた万丈が『やだ!ばか!もう!』とか言われながらアッパーカット喰らって宙を舞ったり。
美空はべた褒めしてくる一海を面倒くさそうにあしらいながらも、傍から見ると楽しい雰囲気に包まれていたり。
あ、ちなみにカズミンは5回ほど気絶しました。余程興奮してたのかな?
……あ、また気絶した。
佳奈ちゃんはみんなから可愛がられちゃって。特にマスターと幻徳がお気に入りな様子。
今も幻徳の膝の上で一緒にお絵描きをしていますね。
幸せなひと時。
絶望が齎した、1日の幸せ。
全ての敵がこの日運んできたのは、笑顔でした。
「――みなみなさま!いやあ。物凄く楽しく幸せなパーティでした!……残念ですが、この辺でお開きとなります!」
少し酔ってるのか、顔が赤いマスターがステージに立ち声を周りに震わせる。
えへへ。お酒いっぱい飲んでたしね。
わたしもちょっぴり酔ってるな。あはは。
もうだいぶサンタの衣装に慣れた戦兎の身体は赤く火照っている。
楽しい時間でお酒も進んだみたいだ。
その他のみんなもかなり酔っているご様子。
万丈は酔った香澄ちゃんにヘッドロックをかけられている。
その顔は幸せそのものだ。
猿渡さんとげんさん。それに紗羽は飲み比べをしていたようで、もうぐでんぐでん。
大きな笑い声が楽しい場を包んでいる。
美空は未成年なのでお酒は飲んでいない……
それに佳奈のために我慢したご様子だ。
2人仲良くカラオケで歌っている。
「本当にみなさま!お集まり頂いてありがとうございました!……メリークリスマス!」
そう言ったマスターの顔は笑顔でいっぱい。
楽しい夢だったなあ。
もう夢から覚めちゃうのかな。
……嫌だなあ。もうちょっとでいいからここに居たい。
マスターと一緒に居たいな……
ん……?なんだろ、これ……?
綺麗な、雪?それとも蜃気楼?
あ……なんだかねむく……
ああ……もう終わりなのかな……
夢が終わっちゃうのかな……
幸せで大好きな夢……
「戦兎!またな!……ずっとお前の事を――」
なんだかマスターがそんな事を言った気がして、わたしの意識は優しく無くなった。
「――あれ。ここは……」
目が覚めると、私はいつものnascitaに居た。
……ふふふ。幸せな夢だったな。
楽しかった夢。
幸せだった夢。
お父さんにも、万丈にも会えたし。
でも……不思議だ。
私たち以外にも誰か居たような……
お父さんと戦兎と万丈と紗羽さんと……
万丈に寄り添ってた女性……誰かな、知ってる気がしたんだけど。
それに氷室 幻徳に似た人が居たような。
あと、はぁ……みーたんのファンだっていう人。
……ちょっとキモかったけど、面白いやつだったし。
そう言えば小さい女の子も居たような……誰なんだろう。
一緒にカラオケしてた気がするんだけどな。
不思議な夢。幸せだったな。
でも顔が……思い出せないんだよね――
「――あ!!七面鳥!!!」
「やだ!!……あれ?電源切れてる……途中で消したっけ?」
幸せなひと時。夢か現か。
それは誰にもわからない。
ただ1つだけ言えるのは、パーティに参加した皆がある事に気付くのはもう間もなくの事。
24日のはずだったその日は。
既に日付が変わっていました。
今日は、聖なる夜の日。
……To be continued ……?
「――大変だったなあおい!しかも飲み過ぎたし!ありがとな?おっさん」
「……いや、構わんさ。これくらい贅沢してもいいだろう」
「さんきゅ……色々動いたりやら後始末したりして力使いまくって死にそうだ。ちょっと寝るわ」
「あぁ。相当無理しただろうからな。ゆっくり休め」
「おう。おやすみ……メリークリスマス」
「ふっ……メリークリスマス」
しかし。あれはなんだったのだろうか。
会場に着いてあいつに起こされて、すぐに意識が無くなったのだが……
「まさか、な……」
ふっ、と笑い見上げれば、白の宙が広がっていた。
……Ciao♪
香澄『ういー。ひっく。あー。どうもお』
香澄『ひっく。飲み過ぎちゃったあ。えへへ』
香澄『楽しかったなあ。ひっく』
香澄『ひっく……すぅ……すぅ……』
――これは。聖夜に起きた奇跡のお話。