Masked Rider EVOL 黒の宙 作:湧者ぽこヒコ
日本人「いやだから日本人ですってば」
おじさん「いやお前そもそも地球人じゃないだろう」
日本人「何わけわからん事言ってんすか。というか!本編始まりますから!」
おじさん「おぉ。確かにそうだな。ていうか左の名前適当すぎんか」
日本人「いやー……だってほら、まだ名前登場してませんし」
おじさん「でもなあ。もっとこう、あるだろ。天才科学者ーとか。天才研究者ーとかさぁ」
日本人「確かに……ってもうあらすじ終わり!?えぇ……では、本編どうぞ……」
「なるほどなあ……大体わかりましたよ」
だいぶ色々と状況が理解出来始めるようになってきた。最初エボルトとか言われた時は、頭湧いてんのかこのおっさんとか思ってしまったのだが、色々教えてもらい、納得出来るようなものまで見せてもらった。自分の順応性が恐ろしい。
まず、ここは日本である事。それは間違い無いらしい。
そしてこの国は火星帰還のオープンセレモニーの際、火星探査の時に発見・持ち帰ってきた《パンドラボックス》と呼ばれる不思議な箱から発光した光により出現した、天にも届くが如き巨大な壁《スカイウォール》により《東都》、《北都》、《西都》の3つに分断されたそうだ。
この壁の上空にもなにやら赤い光が伸びているらしく、触れると消滅してしまうらしい。光の他にも《ネビュラガス》という人体に有毒なガスを発生させているとのことだ。
この事は《スカイウォールの惨劇》と呼ばれているみたいだ。
更にはパンドラボックスの光を浴びた人間は好戦的な気質になるとの事で、このセレモニーに参加していた人達は全員影響を受けているらしい。
しかもこのセレモニーには、欠席していた東都の首相 《氷室 泰山》以外の現在の三都の首脳陣が出席していたんだと。そりゃ大変だわなぁ……
そして現在。この三都はいがみ合っているらしい。領土の利権、そしてパンドラボックスの奪い合いのための冷戦状態だそうだ。
やっぱりどこの世界でもあるんだな、争いは。
まず東都。首相は氷室 泰山。おじさん曰くこの国が一番まともらしい。
三都の中で唯一本気で平和主義を掲げているみたいだ。
まあ首相の氷室 泰山がパンドラボックスの光を浴びていないんだし、当然ちゃ当然か。
しかし首相補佐であり氷室 泰山の実の息子、《氷室 玄徳》ってのが問題児らしい。どうやら先の件のオープンセレモニーに代理として出席していたのがこの氷室 玄徳だったそうで、親父の代わりに好戦的になってしまったみたいだ。良かったのか悪かったのか……
そんなこんなでこの息子が、軍事増強を首相に推奨しまくってるみたいだ。
次に北都。首相は《多治見 善子》っていう女性の首相だ。こっちの世界じゃ、とっくにこの国は既に女性首相が生まれてんだなあ。あっちの世界の日本は遅れてんな。
そんな話は置いといて、スカイウォールにより分断された北都の領土のほとんどが畑などの農作物で財政を運営しており、三都の中でも一番壊滅的にダメージを食らっているとのことだ。
しかし【国民の生活と福利厚生の徹底を!】とかなんとか謳っておきながら、実際は財政のほとんどを軍事増強に充てているそうだ。どこの世界も変わらないってやつだな。
そして《西都》。首相は《御堂 正邦》。
この男も食えないやつらしい。表向きは若者の海外進出を推奨し、技術力で経済を復興させようと掲げているが、その実、裏でやっている事は海外の兵器や武器の関連企業からの密輸による軍事増強とやっていることは北都と変わらないどころか、北都よりも随分タチが悪いそうだ。
軍事力で言うと、西都、北都、東都の順で規模が大きいらしい。
今の所は何事も起きないみたいだが……身内でやってる場合かっての。
そして。俺の正体だ。
俺がさっきみてびっくりしたこの顔の正体。それは《石動 惣一》という男。
なんと火星探査にてパンドラボックスを発見・持ち帰ってきた宇宙飛行士その人。しかもこの石動 惣一がパンドラボックスにいきなり手を当て、光を生み出し壁を生み出したんだって……元凶じゃん。
しかしそれは自分の意思でやった訳ではなく、パンドラボックスを発見した時に石動 惣一に寄生した《エボルト》っていう地球外生命体、つまりはエイリアンが身体を乗っ取りやった事だそうだ。俺のいた世界じゃ映画に出来そうな話だ。
で、このパンドラボックスも元々はエボルトの持ち物だそうだ。
そしてどうやら……俺はそのエボルトに乗っ取られている石動 惣一の身体を乗っ取っている状態らしい。どんなエイリアンだよ俺。
つまり俺は元いた世界とは全く異なるパラレルワールドに来てしまった。しかも幽霊みたいに憑依のような形で。
最初は全く信じてなかったんだけども、おじさんが「自分の顔に手を当てて【なりたい顔をイメージ】してみろ」とか言うもんで試しにやってみたらどんな原理かわからないけれど、煙が吹き出してきて思いっきりむせたんだよ。これ身体に有毒だろ絶対。
で、おじさんが渡してきたさっきの鏡の破片を見たら……自分の顔が今目の前にいるおじさんの顔になってびっくりして腰抜かした。
まず手から煙が噴出したのも驚いたけれど、顔が……変わるって。どんなファンタジーだよ。既に色々なファンタジー聞いたけど。
そして何よりおじさんの顔って……おじさんもめちゃくちゃ冷たい目で見てたし。思い出して泣きたくなってきたんですけど。
まあでも原因はその後すぐにわかった。
俺には、記憶が全く無い。
いや、正確に言うと少し違うな。
人に関する記憶が全く無い。
自分が違う次元の世界に居たのを覚えてる。自分がさっきコンビニにタバコを買いに行った帰り道、トラックに轢かれる寸前だった事も覚えている。
自分の好物も覚えているし、大好きなマンガも覚えている。自分が住んでいた場所ももちろん覚えている。
でも、人に関する事が全く思い出せない。
例えば店員やテレビで見た事ある芸能人や著名人などの性別はわかる。何をやったとかもわかる。日本の政治家のスキャンダルとかね。
でも顔や名前が思い出せない。自分に関係のある人はその人との交流も全く思い出せない。というか、無いんだ。自分がどう生きてきたのかが分からない。だけど、通っていた学校の名前とか、小さい頃好きだったアニメの登場人物の名前は覚えている。
まずは自分の名前。自分の顔は覚えているのに名前が思い出せない。
芸能人やら友達やらご近所さんのことだってすべからくわからない。
家族の事も。というか俺に家族が居たのかすらもわからない。
恋人も……居たのだろうか。覚えている自分の顔は、とてもじゃないけど自信はないし……やっぱり居なかったのかな。
俺が存在していたはずの世界の、自分以外の人間の事は名前も、顔も、自分以外の人に関する記憶が全て無いんだ。
「きっと……何かあったのかもしれないな。思い出したくないような辛く険しい何かが」
おじさんは優しい音色でそう言った。なぜだかはわからないが、妙に納得出来た。きっと、おじさんの優しい声が心地よかったからかもしれない。
「なるほど……大体わかりましたよ。所で、えー……貴方は?私とどういったご関係なのでしょうか?」
危うくおじさんと言いかけてしまった。見た目はもうおじさんで中身は25手前。さすがにそんな無礼な行動はしないさ。
「ははは……今更だがいつものエボルトらしくなくて調子が狂うね。私の名前は《葛城 忍》。無理かもしれないが、なんというか。もっとこうラフに接してくれて構わない。むしろそっちの方がありがたい。そして、私と君との関係性か……なんと言えばよいかな……君の、エボルトの協力者とでも言えばよいかな」
「あ、そーです?そしたらいつも通りの俺でいきますね。実はこういう喋り方苦手で。実はさっきもね……」
ここまで言いかけて1つ、重要な事に気付いた。
エボルトというエイリアンは石動 惣一の身体を乗っ取り、この国を混乱と絶望に陥れた張本人なのだろう?そんな事をしでかすエボルトに協力しているというこの男、葛城 忍というのはエボルトと同じような思想、もしくは似通った事をしようとしている人物なのではないか?
うわ。やばい人なのかな。
背筋にじっとりとした嫌な汗が滴る。
――どうする。ここで聞くべきか。いやでもなんか怖そうだしなこの人。しかしそんな危ない思想の人をほっとくのも気が引けるしな……そもそもはぐらかすだろうし。
まあどっちにしろ、もし襲いかかってきたとしても幸い俺にはエボルトってやつの、衝撃波飛ばすだの超パワーとかのよくわからん超常現象は使えるみたいだしな。さっき教えてもらってよかった。そしてありがとう未だよくわからないエボルトとかいう危険生命体。
「どうかしたか?」
こっちの気なんて全く知らない葛城 忍とかいう危険人物が不思議そうに尋ねてくる。
なんかもうこの発言すらも怪しく思えてくるな。
「……いや。いきなりで不躾なんだけどさ……エボルトってのはとどのつまり地球を侵略してきたエイリアンだろ?この身体の本来の持ち主である石動 惣一の身体を乗っ取って日本に潜入してさ。まあそれだけならまだ悪い奴とは言えないけど、その火星からの帰還の式典をやってる最中に、パンドラボックスの力を使って日本を分断させたのもそいつだろ?その時にも犠牲になった人はたくさん居たみたいだし。……まさか自分の持ち物のパンドラボックスにそんな力があるとは思わなかったはないだろ?……つか制止を振り切ってまでパンドラボックスに触れたんだから確信犯だろうしな。……つまりそんなエボルトに協力している葛城さん。あんたは……一体何を考えてんだ?」
ずっと冷や汗が止まることなく滴っていたが、相手に答えさせる暇もなく矢継ぎ早に質問した。なるべく相手の目から視線を外さないように。
少しでもこちら側が弱味を見せたらやられる気がする。
アニメの見過ぎかもしれないが、こんな非現実的な状況がとめどなく押し寄せる今この場じゃ、そんなことも言ってられないだろう。
「……ふふ。確かに。そうか。そうだね。そう結論付けて間違い無い。それは大事な事だ。まず君にはそれに関する記憶が無いんだからな。君はエボルトでありエボルトではない。確かにそうだな。ふふふふ」
「な、なんだよ?何がおかしい?それとも図星でおかしくなったか!?あのな、こっちには人類がまだ到達出来ていない超常的な不思議パワーがあんだぞ!へ、変になにかしようとしたら衝撃波出すぞ!いいのか!?」
焦り過ぎて自分でも訳わかんなくなってしまった。不思議パワーってなんだ。
葛城 忍はそんなに面白かったのか、涙を流すほど笑っている。そんなに悪い人には見えないんだけどな……そうこうしてる内に彼はようやく口を開いた。
「そうだね。話そう。記憶が無いにしろ、君がパラレルワールドから来たエボルトではない別の存在だとしても、エボルトの力を有する君には知ってもらわねばならない。そして、やってもらわねばならないからね。」
「どういうことだ?」
「……まず。君はこの星と、エボルトという君自身とその種族に関して知らなくてはならない。それはね―――」
「―――という事だ。これで全てだよ。これがエボルトと私の計画の全容だ」
愕然のあまり思考停止した。さっきまでの話もだいぶ驚いたが、今回のは話の規模が違う。しかしそれは……
「本当……なのか……?」
頭では理解している。納得している。全てが事実なのだろうと。しかし、恐らく俺の理性がそれを受け入れたくないんだろう。
「……あぁ。先程全て見せただろう。それが全てだ」
……そうか。そうなんだな。どう足掻いても、真実か。
ふと自分の事とさっきの葛城が言っていた事を思い出す。
俺は記憶が無い。俺以外人に関する全ての。そして、葛城が言った「思い出したくない何か」。
今葛城から聞いた真実と、自分の事を当てはめると妙に納得が言った。俺がやらねばならないんだな、と。
そう思うとなぜかすっきりしたような気分になった。
「……ここまで言っておいてだが。頼めるか」
葛城はまっすぐに俺を見据えて問う。その眼に陰りは無い。
「……あぁ。そうだな。俺にしか出来ない事だ。
俺が、この世界に絶望と終焉を齎してやる」
俺はまっすぐに葛城を見据えた。この想いに陰りは無い。
葛城は、ゆっくりと薄汚れた天上を見上げた。
そして、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「……そうか。共に進もう。私も既に、魂は悪魔に売ったからな」
「それではもう一つお前に伝える事がある。我らの計画の根幹だ。名を……
《PROJECT BUILD》 という」
……To be continued
始まりだした新生エボルトと葛城 忍の壮大な計画。
そして動き出すPROJECT BUILD。
きっとそれは、悪のお話。
エボルト「いや悪じゃないだろ。俺は正義のヒーロー好きなんだぞ。というかこのエボルトってやめろよ。俺日本人だしせめて石動 惣一にしてくれ」
葛城 忍「いや悪だから。これ完全に悪だから」
石動 惣一「お!直ってる!よし!次回!いよいよ戦兎登場!?」
葛城 忍「おい。現実逃避すんな」
石動 惣一「Ciao♪」