Masked Rider EVOL 黒の宙   作:湧者ぽこヒコ

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戦兎「あ、美空。顔に泥んこついとる……ほれ」

美空「へ?……ありがと♪」

戦兎「全身泥だらけで傷だらけでまあ……帰ったらスグナオリマース使わないとね」

美空「えー!嫌だしー!お姉ちゃんも嫌がるじゃん!あれ!」

戦兎「ふっふっふ……わたしの地獄を思い知るがよい」



美空「……ふふふ」

戦兎「……えへへ」

美空「……帰ったら、グラタン創るね」

戦兎「……うん。わたしも手伝う」

戦兎・美空「……♪」




野兎兵達 (……微笑ましいなあ)





phase,31 じゃがいも野郎とエビフライ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――騒がしく人々が動き出す。

まるでこの世の終わりかのように。

まるで国が滅んだかのように。

 

 

 

 

 

 

 

ここ、寒さに震える者が数多く住む北都は。

別の脅威に震え、呆然としていた――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――被害状況は!?連絡はどうなってるの!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

なぜこんな……こんな事に……

 

 

 

まさか……

まさか東都がミサイルを打って来るなど……!

 

 

 

 

 

 

 

あの爺からはミサイルがあるなんて聞いてなかった……

聞いていたのは新設の東都軍、野兎。

その野兎が兵器として使用する、仮面ライダービルド。

 

そしてその変身者の桐生 戦兎……

 

 

 

 

 

 

 

まさか、難波の知らない所で……?

いや、まさか。そんなはずはない。

 

 

 

あの醜い爺が知らないはずなど――

 

 

 

 

 

 

 

「――多治見首相!!……現在確認されている被害状況なのですが、ここ以外の北都の各主要都市部は、ほぼ全滅……全ての機能が停止しております!……犠牲者は、少なく見積もっても500万人以上かと……」

 

 

 

 

 

 

 

呆然とした顔をしている側近の呼びかけで、意識が戻る。

 

 

 

主要都市部が……全滅……?

それに、犠牲者が500万人、って……

 

 

 

 

 

 

 

途方も無い数字に、脳の理解出来る範疇を超えてしまったよう。

つい先程まで、他の国に比べれば貧しいが、しかしそれでもただただ普通の幸せがあった我が国が……

 

 

 

 

 

 

 

たった一瞬で……地獄と、化した。

 

 

 

 

 

 

 

……おのれ……東都……!!!

 

 

 

 

 

 

 

「おい!首相、こいつは一体どうなってんだ!?」

 

 

 

 

 

 

 

抑える側近たちを押しのけ私に詰め寄る男、猿渡 一海。

我が最強の軍、北風の第1師団 団長の男。

 

 

 

 

 

 

 

……貴様らがその気ならこちらも黙ってはいない。

 

 

 

 

 

 

 

我が国に住む多くの人々を虫けらのように殺され、黙ってるはずがないだろう、東都のクズ共……!

 

 

 

 

 

 

 

「猿渡 一海……戦争の準備をしなさい。……現在、東都からの攻撃で我が北都の都市は壊滅状態だわ……まぁ、安心する事ね。貴方の故郷は恐らく大丈夫だとは思うわよ」

 

 

 

 

 

 

 

この男の故郷はとてつもない田舎。

……攻撃されたのは主要都市部のみ、としか報告は届いてないし……

他の地域は大丈夫だとは思うのだけど……

 

 

 

 

 

 

 

「東都が……?どういう事だよ!?あの国は平和主義だったんじゃねえのか!?」

 

 

 

 

 

 

 

耳を劈く声が頭に響く。

……本当にやめてほしいわ。

 

 

 

今はそんな事を考えている場合じゃないの。

 

 

 

 

 

 

 

早く、もっと早急に手を打たなければ――

 

 

 

 

 

 

 

「今は急を要する事態。説明は後よ。……すぐに北風の全軍に命をだすわ。……そして、北風 第1師団 団長、猿渡 一海。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《仮面ライダーグリス》の使用を命ずるわ」

 

 

 

 

 

 

 

仮面ライダーグリス、そう呼ばれた男の顔は。

困惑と憤怒に満ちていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――多治見首相!!東都の氷室 泰山首相から連絡が来ています!!」

 

 

 

 

 

 

 

……氷室 泰山?

あの男は確か伏せていたはずでは……?

 

 

 

まぁしかしどちらでも構わない。

元々、氷室 幻徳の一件を皮切りにしようと思っていた所だったし、丁度良いわ。

 

 

 

 

 

 

 

忌まわしき東都よ。

お前らの全てを滅ぼしてやる。

 

 

 

そして……あの箱を――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――多治見首相ですか、私です。東都首相、氷室 泰山です」

 

 

 

 

 

 

 

言葉が震えてしまう。

身体が受け入れ難い現実に震えてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

なんということだ……

まさか、まさか北都にミサイルなどと……

 

 

 

幻徳のやつ、まさかミサイルまで……

しかし……全ての侵攻を禁止したはず。

 

 

 

 

 

 

 

なぜ北都にミサイルが……?

まさか、既に間に合ってなかったのか……

 

 

 

 

 

 

 

「――氷室首相。お伏せになられたと聞いておりましたので安心しましたわ……所で、これは一体どういうおつもりなのでしょうか?」

 

 

 

 

 

 

 

通話先の女性、北都の首相多治見 喜子。

丁寧だが、その声に怒りを隠し切れていない。

 

 

 

 

……当たり前だ。

自身の大切な、護るべき国が、人が、無惨にも殺されたのだ。

 

彼女が憤怒せずに誰がするのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

「多治見首相、現在我々もどうなっているのか調査中でありまして……」

 

 

 

「そんな言い訳を聞く気は無い!!北都の……北都の善良な都民が一体何人殺されたのかわかっているんですか!?あなたは!?」

 

 

 

 

 

 

 

……言葉が無い。

今は何を言っても言い訳にしかならない。

 

 

 

当たり前だ。

私が同じ立場でも彼女と同じだろう。

 

 

 

 

 

 

 

……しかし、戦争を起こす訳にはいかない。

今は、お互いが平和的に解決が出来る道を探さなければ……

 

 

 

 

 

 

 

「多治見首相、大変申し訳ない。……恐らく、首相代理である氷室 幻徳が単独でやっていた行為です。しかし、お互いの平和のために――」

 

 

 

「そうですわね。貴方の息子は人殺しですものね!?」

 

 

 

 

 

 

 

怒りで絶叫する彼女の言葉で痛感する。

……私の息子は、人殺しなのだと。

 

 

 

 

 

 

 

……しかし、なぜ多治見首相が?

なぜ幻徳が人を殺めてしまったことを――

 

 

 

 

 

 

 

「――それに。いきなりミサイルを打ち込んでくるような国にあの、パンドラボックスをお任せするわけにはいかないわ」

 

 

 

 

 

 

 

パンドラ、ボックス。

この国が、幻徳がおかしくなってしまった諸悪の根源。

 

 

 

 

 

 

 

……本当は私だってあんなものは必要無い。

しかしあれには恐ろしい力が秘められてるやもしれない。

 

 

 

戦争を起こさないためにも。

本来あんなものは、あってはならないもの。

 

 

 

 

 

 

 

「……パンドラボックスの件については、三都首相会談で今後どうするか決めましょう。それに……東都が所有権を放棄しても、構わないです。なので、ここは平和的に――」

 

 

 

「いきなり攻撃してきた相手と平和的に解決をと!?ふざけるな!!教えてあげましょう、氷室首相。北都の都民は……500万人以上の犠牲者が出ているのよ。確認出来る範囲、で。貴方ならこれがどういう意味を持つかわかるでしょう!?」

 

 

 

 

 

 

 

500万、人。

途方も無い数字に思考が停止してしまう。

 

 

 

人を1人殺めてしまうだけでも重罪だ。大罪だ。

故に幻徳も……。

 

 

 

それが……500万人。

わたしは……わたしの国は……

 

 

 

 

 

 

 

それだけの人を傷つけ、殺してしまった……

 

 

 

 

 

 

 

もう、償いようがないように思える。

解決の道は残されていない、と。

 

 

 

 

 

 

 

しかし、しかし戦争だけはだめだ。

東都だけではない。

それを行う北都にも痛みが残ってしまう。

 

 

 

それだけはなんとしても――

 

 

 

 

 

 

 

「多治見首相、東都に出来る事なら何でも致します……ですから、ですからどうか考えを見誤らないでください!……戦争を起こしてはいけない!!そんな事をすれば善良な人々が――」

 

 

 

「よくもぬけぬけと!!善良な人々を殺し尽くしたのはあなたがた東都でしょう!!!……平行線ですわね。……それに。もう既に西都にも伝えてあります」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我が北都は、東都に対し……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全面的に報復する事をお約束致します」

 

 

 

 

 

 

 

滅びの鐘の音が、始まりを告げ終えた。

これから迎えるは、果てしない争いの交響曲。

 

 

 

それは。絶望が奏でる歓喜の歌。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――は……?東都が、北都に……ミサイルを……?」

 

 

 

 

 

 

 

俺の目の前に居る、猿渡の言葉がよくわからない。

そもそもミサイルとは一体何なのかすらわからなくなるぐらいに意味がわからない。

 

 

 

東都が、北都に戦争を……?

 

 

 

 

 

 

 

まさか、まさかそんなはずはねえ。

 

 

 

バカな俺でも知ってる。

東都の首相、氷室 泰山は平和的な人間で有名だ。

最近倒れたらしいけど……確か、息子の幻徳ってやつが跡を継いだだかなんだか。

 

 

 

 

 

 

 

でも、いくらもしそいつが親父ほど平和的じゃないにしろ、まさかいきなりミサイルをぶっぱなすなんて真似は――

 

 

 

 

 

 

 

「おい、エビフライ頭。こいつは全部、大真面目な話だ……あいつらはな、俺の住む……俺たちの住む大切な場所に攻撃してきやがった」

 

 

 

 

 

 

「何人死んだと思う?……わかってるだけで500万人以上は死んでるって話だよ!これがどういうことかわかんだろ!?あぁ!?」

 

 

 

 

 

 

 

まるで俺に対して怒り狂うような猿渡の言葉に、俺の心が震えてしまう。

 

 

 

500万人の人たちが死んだ……

一瞬で、さっきまで平和だったこの北都が……

 

 

 

一瞬で、壊滅した……

 

 

 

 

 

 

 

「……でも、東都と、戦争なんて――」

 

 

 

「てめえ!!何甘え腐った事抜かしてやがる!?こっちはな、罪の無い人たちが何百万人も殺されてんだ!!!わかってんのかてめえは!?」

 

 

 

 

 

 

 

「それにな……もしこのまま指をくわえて見ててみろ……連中がまた襲いかかってくるかもしれない……その時には遅せぇんだぞ、こら」

 

 

 

 

 

 

 

思い切り胸ぐらを掴んでくる猿渡の顔は、怒りと悲しみに満たされていた。

 

 

 

……そりゃそうだよな。

自分の故郷の国が、壊されてんだ。

 

 

 

 

 

 

 

でも……

 

 

 

 

 

 

「……俺は、やっぱり東都の人たちを殺すなんて――」

 

 

 

「てめえは元々東都の人間だしな。北都の人間がどうなろうが知ったこっちゃねえってか」

 

 

 

 

 

 

 

違う、そんな事無い……!

東都だ北都なんか関係ねえし、もちろん俺も殺されてった人たちの事を思うと悔しいけど……

 

 

 

 

 

 

 

でも、あいつらが居る東都を……

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいエビフライ頭。よく聞け……俺はな。俺たちはな。これから東都に攻撃しに行く……もちろん善良な人を殺そうなんざ考えてはねえ」

 

 

 

 

 

猿渡の目に、憎悪の火が映る。

それはとても恐ろしく見えた。

 

 

 

 

 

 

 

「俺は……戦争屋だ。戦いでしか何も出来ねえ……だから、俺らの北都を護るために。俺の大切なモノを護り抜くために。連中と……東都と戦う」

 

 

 

 

 

 

 

「護る気もねえ腑抜けには用はねえんだよ。とっとと荷物纏めてあの腐った東都に帰りやがれ。……ちっ」

 

 

 

 

 

 

 

……何も、反論出来ない。

俺は……確かに何も……

 

 

 

力が欲しかった。強さが欲しかった。

……だから。ここ、北都に来た。

 

 

 

 

 

 

 

だが、ここで得た力を、俺は何のために使えばいい?

結局東都と北都は、戦争になっちまった。

 

 

 

 

 

 

 

俺は……何をすれば――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――入りなさい」

 

 

 

 

 

 

 

騒然とした空間。

皆が絶望に染まった顔で動いている。

 

 

 

 

 

 

 

俺は、何をすればいいのかわからなくて。

ただ呆然としていた時に、呼ばれた。

 

 

 

俺を飼い殺しにする女。

北都首相、多治見 喜子――

 

 

 

 

 

 

 

「――話は聞いた。東都が……北都にミサイルをぶっぱなしてきたって……」

 

 

 

 

 

 

 

未だに信じられない。

あの東都が。戦兎や美空やマスターのの住むあの東都が。

 

 

 

まさか戦争を仕掛けてくるなんて……

 

 

 

 

 

 

 

「……呼ばれた理由はわかるでしょう。……東都を、仮面ライダークローズの力を以て、殲滅しなさい」

 

 

 

 

 

 

 

多治見の視線が俺を貫く。

懇願ではなく、命令。

 

 

 

……逆らう事など出来ない、命令。

 

 

 

 

 

 

 

「……戦兎や美空、それにマスター……俺の大切な人たちは大丈夫なんだな」

 

 

 

 

 

 

 

呆然としていても、俺の心が送る。

 

あいつらを護れと。

あいつらを護れんのは、てめえしか居ないと。

 

 

 

 

 

 

 

「……約束、ですからね?それは。……貴方の大切な人たちを脅かす事は絶対に無いと、約束するわ」

 

 

 

 

 

 

 

多治見の気持ち悪い笑が俺を襲う。

この笑いを見る度に、俺は恐怖する。

 

 

 

 

 

 

 

……香澄。聞こえるか?

俺は間違ってねえよな。これでいいんだよな。

 

 

 

頼むから、返事をしてくれよ……

 

 

 

 

 

 

 

「……わかった、行ってやる……だがな、やんのは兵士の連中だけだ……それに、罪の無い人は殺さねえと誓え」

 

 

 

 

 

 

 

俺の心が黒く滾る。

きっとそいつは汚くて、醜いモノ。

 

 

 

 

 

 

 

……今の俺は、誰にも負けねえ。

 

 

 

あいつらのために、俺は負けねえ。

……自分の気持ちには絶対負けねえんだ。

 

 

 

 

 

 

 

「……もちろん。なるべくそうするようにするわ……では行きなさい、万丈 龍我。仮面ライダークローズの力を以て、怨敵東都を滅ぼすのよ」

 

 

 

 

 

 

 

俺の顔が冷たく凍っていく。

きっともう、あいつらと交わる事は無い。

 

 

 

 

 

 

 

それでもいい。俺が汚れりゃいい。

……あいつらの希望と笑顔を守るために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――カシラ!?どういう事ですかぁ!?」

 

 

 

 

 

 

 

いちいち声がでけえっつうの。

 

リーゼントに赤い迷彩柄のバンダナを巻いてるこいつ。名前は《赤羽》。

 

毎回毎回大げさだし、本当にうるせえ。

やたらとボディタッチしてくるし。気持ち悪いっつぅの。

 

 

エビフライ頭並に単細胞のバカだしな。

 

 

 

 

 

 

 

「カシラ……それじゃあ、戦争ですかい?」

 

 

 

 

 

 

 

青い迷彩柄のバンダナをジャケットの胸ポケットにいれてるこいつは《青羽》。

 

 

 

こいつらの中でも一番最年長だし、しっかりしてるやつだ。

……それに、他人のために涙を流せる、仲間想いのいい男だ。

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ……多治見首相も準備しろっつってたしな。もうすぐだろ」

 

 

 

 

 

 

 

この仲良し三人組みたいな連中の顔をいつも通りに確認しながら、ぼそっと呟く。

 

 

 

 

 

 

 

……あのバカには、ああは言ったけど。

やっぱり、気乗りはしねえ。

 

 

 

 

 

 

 

……でもしょうがねえ事だ。

 

 

 

大切な北都を護るため。

俺の大切な場所を護るため。

 

俺の大切な……連中を護るためだ。

 

 

 

 

 

 

 

「ふーん……でもさ、攻撃してくるなんて思わなかったね」

 

 

 

 

 

 

 

この子供っぽいというか、無邪気な笑い方が特徴のこいつは《黄羽》。

いつもジャケットの左腕に黄色い迷彩柄のバンダナを巻いてる。

 

 

 

……この三馬鹿の紅一点だ。

すげーうるさい女。こいつもすぐ引っ付くし。

 

 

 

 

 

 

こいつらは《北都の三羽ガラス》とか呼ばれてるらしい。

 

 

 

……誰に呼ばれてんだろう。

むしろ自分たちで言ってるだけじゃねえのか?

 

どっちかと言えば《北都の三馬鹿アホウドリ》じゃねーのかな。

 

 

 

 

 

 

 

……こんな深刻な状況にも関わらず、こんな感情にさせてくるこいつらが面白くて、つい笑ってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

……本当にバカな野郎だ。こいつらは。

 

 

 

 

 

 

 

「何笑ってんのー?カシラぁ?」

 

 

 

「……お前らの面見てたら面白くてよ。それより、おい!そろそろ行くぞ」

 

 

 

 

 

 

 

子供みてえな黄羽をいなし、北風が揃う場へと急ぐ。

……本当はこいつらなんか来なくていいんだけどな。

 

 

 

 

 

 

 

……歩きながら、ふと思う。

あのバカの事。エビフライ頭の事。

別にどうでもいいんだけどな、あんなやつ。

 

 

 

 

 

 

 

……でも、あいつの気持ちはわからないでもない。

あんな感情になるぐらいなら、来なきゃいい。

 

自分の気持ちに嘘つくぐらいだったら、ハナからやらなきゃいいんだ。

 

 

 

 

 

 

 

……人の事言えるかよ、ってな。

 

 

 

 

 

 

 

「――カシラ?どうしたんですかい?何か変ですぜ?今日のカシラ?」

 

 

 

「なぁなぁなぁ!!お前らもそう思うよなぁ!?何か変だぜ!?カシラ!?」

 

 

 

「ねー!たしかにー!いつものカシラじゃなあーい!」

 

 

 

 

 

 

 

本当に賑やかな連中だよ、全く。

……まあ、それで俺もよ――

 

 

 

 

 

 

 

「本当にうるせえなお前らは。……ほら、行くぞ」

 

 

 

 

 

 

 

未だにぎゃあぎゃあ言ってるこの三馬鹿を無視し、前へと進む。

きっとそれは修羅の道。

 

 

 

……でも、それでも構わない。

俺は俺のやり方がある。

 

俺の成すべき事がある。

 

 

 

 

 

 

 

だから、心火を燃やして尽き進むんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

……まぁあのエビフライ頭は、まだ引き返せるしな。

とっととお家に戻ればいいんだよ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――で。なんでてめえがまだここに居るんだ」

 

 

 

 

 

 

 

また突っかかってくる猿渡。

 

一体こいつはなんなんだ。

もしかしてこいつは俺の事が好きなのか?

 

 

 

 

 

 

 

「……あはははは!!」

 

 

 

「なんだてめえ気持ち悪いな」

 

 

 

 

 

 

 

悪態をついてくるこいつはやっぱり嫌いだな、とか思いながら笑う俺。

 

 

 

なんかわかんねーけど、こいつの事を考えたら笑ってしまった。

こんな状況なのに、救われた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

「うるせー!……ここに居るのは俺の意思だ。……もううだうだするつもりはねーよ」

 

 

 

 

 

 

 

そう。もう、決めたから。

覚悟を決めたから。

 

あの日決めた事を再確認したから。

 

 

 

 

 

 

 

北風の戦士たちが集うこの広い空間。

無機質で、冷たい場所。

 

 

 

もうすぐ東都への侵攻が始まる。

北都に牙を向け襲いかかってきた連中への、絶対的な報復。

 

完全的な、破壊。

 

 

 

……でも、多治見は約束した。

 

戦兎や美空、マスター。

それに東都の善良な人々は殺さないと。

 

 

 

 

 

 

 

……ならばやろう。

香澄が託し、戦兎が創り、鍛えた俺が身に纏い。

 

 

 

俺が……東都を滅ぼそう。

 

 

 

 

 

 

 

……お願いだから戦兎。お前は来るなよ。

 

 

 

お前とは戦いたくない。

……傷付けたくない。

 

 

 

 

 

 

 

お願いだから、戦わないでくれ……

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、猿渡」

 

 

 

「あ?何だよエビフライ」

 

 

 

 

 

 

 

遂にこいつ頭を飛ばしやがった。

本当にむかつくなこのポテト野郎。

 

 

 

 

 

 

 

「戦兎に……いや、東都の仮面ライダービルドに会ったらよ、殺さないでくれるか?」

 

 

 

 

 

 

 

嫌いなやつへの心からの懇願。

もしこいつが戦兎と戦ったら……戦兎は殺されるかもしれない。

 

 

 

多分戦兎じゃ、勝てない。

 

 

 

 

 

 

 

「……戦兎ってやつ、お前が前に言ってたやつか……仮面ライダービルド、ねえ?……ま。善処しといてやる」

 

 

 

 

 

 

 

俺に軽く笑みを浮かべ、答える男、仮面ライダーグリス。

 

 

 

多分こいつは、ローグよりも遥かに強い。

もしかしたらスタークよりも……

 

 

 

 

 

 

 

北都最強の軍、北風。

北風最強の兵器、仮面ライダーグリス。

 

 

その北風 最強の男、猿渡 一海。

 

 

 

まだ仮面ライダークローズの力を完璧に引き出せて無い俺と違い、こいつは仮面ライダーグリスの力を完璧に扱えるらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……戦兎、お願いだからこいつとだけは出会うなよ。

もし、もしそうなったら――

 

 

 

 

 

 

 

「――北都最強の軍、北風よ!これより!!東都への侵攻を開始する!!!各々気を引き締め淘汰せよ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

女帝の声が響き渡る時、最強の男は静かに笑を浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――入りなさい」

 

 

 

 

 

 

 

報復の宣言を轟かせた女帝の声を受け、ある男が入る。

この空間には誰も。この2人しか居ない。

 

 

 

 

 

 

 

「……何の御用でしょうか」

 

 

 

 

 

 

 

呼ばれた男の表情は、凍りついている。

その目は静かに、死んでいる。

 

 

 

 

 

 

 

「猿渡 一樹。あなたに任務を与えるわ」

 

 

 

 

 

 

 

女帝の口元には、穢れた笑が浮かぶ。

災いを喚ぶ、汚れた微笑。

 

 

 

 

 

 

 

「貴方にガーディアンを何体か渡すわ。……そこで北風とは別行動を取り、東都で破壊行為をしなさい。……万丈 龍我、及び仮面ライダークローズに擬態して、ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もちろん、一般市民を巻き込んで構わないわ……憎き東都の人など気にする事は無い……すべからく殺しなさい」

 

 

 

 

 

 

 

女帝の顔が歪む。

まるで玩具を強奪した子供のように嗤う。

 

 

 

 

 

 

 

「……畏まりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

猿渡 一樹は、静かに死んでいる。

その心に、火など燃えはしない。

 

 

 

 

 

 

 

この男にあるのは、ただ忠実に使命を全うするだけ。

一樹の顔は、死に満ちていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……To be continued

 

 

 

 








一海「やっと俺が活躍すんのか」

一海「遅すぎんだろ。俺のファンが何人居ると思ってんだ」



一海「あとみーたん!もっと出せよみーたんを」

一海「みーたんのファンが何億人いると思ってんだ」


一海「愛情!我慢!尊敬!!これがファンの鉄則だよな」

一海「そもそもやはりみーたんと言うのはだな――」




赤羽「まぁた始まったぜぇ?カシラのみーたん談義がよぉ」

青羽「まぁカシラはみーたん大好きだからなぁ……」

黄羽「……別にあたしは好きじゃないけどね!あんなの!」

赤羽・青羽「?」




一海「だからな?みーたんの素晴らしさの奥底にあるのは――」




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