Masked Rider EVOL 黒の宙   作:湧者ぽこヒコ

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幻徳「暇だ」

幻徳「誰も構ってくれん」

幻徳「内藤さんはもういないし内海ももういないしスタークは冷たいし」

幻徳「あれ?俺って友達少なくね」

幻徳「というか……内藤さんは会社の部下だし」

幻徳「内海は側近だし」

幻徳「スタークはそもそも誰だか知らないし」





幻徳「……またヒトカラ行くか」



幻徳「ん?To witterからメッセージが……」

幻徳「あっ!《白衣の外道》さんからだ!」



幻徳「……今度誘ってみようかな」




phase,34 忍と龍の遊園

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいいいい!!ちょっとは手加減しなさいよ!わたし女の子なんですけど!?」

 

 

 

 

 

 

 

物凄い勢いで蹴りを見舞ってくる蒼い龍に、お姉ちゃんからの心からのお願いをする。

 

 

 

……当然、聞いちゃもらえないが。

 

 

 

 

 

 

 

「知るかそんなの!俺は急いでんだ!!やる気ねーならとっとと帰れ!」

 

 

 

 

 

 

 

悪態を付きながら容赦なく怒涛の連撃を放つ龍。

その一撃一撃は、組手をしていたあの日の弟とは比べ物にならない。

 

 

 

 

 

 

 

……強いなあ。かなりやばいかも。

想像していた以上にキレも、重さも、スピードもある。

もしかしてハザードレベルが違い過ぎるのかな……

 

 

 

 

 

 

 

元々、クロちゃんことクローズドラゴンは、仮面ライダークローズとして万丈に力を与える目的で創り、生んだ。

ビルドドライバーを解析・創造して、新しく渡そうと思ってたんだけど……

 

 

 

それをあの憎きファウストの甘言によって。

万丈は黒い力を選んでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

わたしが描いていた本来のクローズに、こんなバカみたいに強い出力が出るはずが無い。

 

 

 

万丈への身体の負担も大きいし。

多分ファウストの連中、クロちゃんを改造しやがったな……

 

 

 

 

 

 

 

「くそぉ!!したらわたしだって!!!」

 

 

 

 

 

 

 

わたしが取り出すは《忍者フルボトル》と《コミックフルボトル》。

……万丈が導いてくれた、ベストマッチだ。

 

 

 

 

 

 

 

【忍者!コミック!】

 

 

 

【ベストマッチ!!】

 

 

 

【Are you Ready?】

 

 

 

 

 

 

 

「ビルドアップ!!」

 

 

 

 

 

 

 

【忍のエンターテイナー!!】

 

 

 

【ニンニンコミック!!yeah!!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ニンニンコミック。

その姿は紫と黄色を基調とし、複眼には手裏剣、そして漫画のページとなっている。

 

忍者の装いをし、片側にはペン先やコミックス型のアーマー。

 

 

 

 

……全く忍べてはいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「忍者だかマンガだか知らねーけど、俺に勝てると思うんじゃねーぞ!!」

 

 

 

 

 

 

 

どこか楽しんでるようにも想える蒼き炎が、全てを威嚇するような龍の咆哮をあげながら突き進む。

 

 

 

 

 

 

 

……あんたに負けるわけにはいかない。

絶対に連れ戻すんだから!!!

 

 

 

 

 

 

 

「よゆーではっ倒してやるから!……おいで!《4コマ忍法刀》!!」

 

 

 

 

 

 

 

わたしが創りあげた新武器、4コマ忍法刀。

刀身に刻まれた4つのコマに絵が書かれていて、その絵に合った力が秘められている出来る子。

 

 

 

もちろんわたしの自信作だ。

これでぶっ倒したるからな!!!

 

 

 

 

 

 

 

「へへっ……お前だけが剣を持ってると思うなよ?……来い!ビートクローザー!!」

 

 

 

 

 

 

 

対峙する龍が顕現したのは、かつての剣。

万丈が香澄さんを……苦痛から解放した、あの日の刃。

 

 

 

 

 

 

 

……無くなってると思ったら。

お前が隠し持ってたか!!!

 

 

 

 

 

 

 

確かにあの剣は最高傑作に近いけど……

わたしの新武器を舐めんなよ!!

 

 

 

 

 

 

 

「かかってこい!!万丈ぉぉ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

忍と龍が鍔迫り合う。

静寂の場に、剣戟の調べが鳴る。

 

 

 

 

まるで闇に潜む者が刈り取るように。

まるで蒼龍が天空を舞うように。

 

 

 

 

 

 

 

どこかその姿は、歓喜の舞踊にも見える――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――やるねえばんじょー……だったら。1コマ目!影分身の術!!だってーばよぅ!」

 

 

 

【分身の術!】

 

 

 

 

 

 

 

剣に搭載されているトリガーを1回押すと、忍が増殖した。

まるで漫画の世界の忍のように。

 

 

 

 

 

 

 

「戦兎!お前、それずるくねぇか!?……ったく、負ける気はしねーけどな!!」

 

 

 

 

 

 

 

増殖した忍から、代わる代わる放たれる連撃をことごとくいなし、龍はその剣を構える。

想いを乗せた、あの日の剣に鍵を込めて。

 

 

 

 

 

 

 

【スペシャルチューン!】

 

 

 

 

 

 

 

 

「……こいつは少し重いぜ?」

 

 

 

【ヒッパレェー!ヒッパレェー!】

 

 

 

 

 

 

 

鍔の中央にロックフルボトルを鎮座し、グリップエンドを引くと、剣が奏でる。

まるで眼前の者に、灰燼を言い渡すかのように。

 

 

 

 

 

 

 

「……くそっ。やっぱ知ってたか……てゆーかロックフルボトル持ってってたのやっぱりおめーかばんじょー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

どこか喜びを感じる忍。

その口調には、暖かな想いが乗せられる。

 

 

 

 

 

 

 

「うざってーんだよ!!!」

 

 

 

【ミリオンスラッシュ!!】

 

 

 

 

 

 

 

蒼龍が振るう剣から放たれた蒼き炎が、忍の傀儡たちを燃やし尽くす。

まるでその蒼炎は、彼の想いを具現化したよう――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――戦兎。1つ、変な事言っていいか」

 

 

 

 

 

 

 

傀儡が焼失し、場に残るは忍と龍の2匹。

先程まで子供のように遊び舞っていた2体。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんか、さ……毎日やってた組手、みてーだな」

 

 

 

 

 

 

 

お互いに剣を掴みながら、放つ言葉。

本来はその場に似つかわしく無い、言葉。

 

 

 

 

 

 

 

「……うん。わたしもそう、想ってた」

 

 

 

 

 

 

 

対峙する忍。

その言葉の中には、過去の面影が宿る――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――もうさ、いいじゃん。帰って、きなよ」

 

 

 

 

 

 

 

戦兎の言葉が心に刺さる。

俺の売り捌いていない、大切なモノに。

 

 

 

 

 

 

 

「……何度言えばわかんだよ。俺は、もう……北都の人間だ」

 

 

 

 

 

 

 

己の心に嘘をつく。

 

 

 

本当は帰りたい。戦兎たちの場所に帰りたい。

俺の本当の居場所は、そこなのだから。

 

 

 

 

 

 

 

「……わたし、知ってるよ。あんたなんか弱味握られてんでしょ」

 

 

 

 

 

 

 

いつもの俺がよく知ってる声。

普段はふざけてるけど、大切な時に放つ真剣な音。

 

 

 

 

 

 

 

……やっぱ適わねーな。姉貴には。

なんでもお見通し、ってやつか。

 

 

 

でも、それでも帰れない。

俺には護らなきゃいけない、大切なモノがあるから――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ねーよ、そんなの。ただ強くなりたいから北都に行った。それだけだ」

 

 

 

 

 

 

 

苦しみが言葉に乗りそうになる。

辛いと叫びたくなる。

 

 

 

 

 

 

 

でも、だめだ。

大切な家族を巻き込むわけにはいかない。

 

 

 

大切な姉貴や妹、親父を巻き込むわけにはいかない。

 

 

 

 

 

 

 

俺が護らなきゃならねーんだ。

 

 

 

だから、俺は。

俺の滾る心に嘘を吐く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……お前らを裏切ったんだよ。お前らには関係無いだろ。だからこうしてここに来てる。北都の最強の兵士として――」

 

 

 

「ふざけんな!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

俺の吐いた事を描き消す轟音。

 

 

 

 

 

 

 

……どこかその声には、涙が溢れてる気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんたは……万丈はいつもそう!!そういう風に誤魔化して!!関係無いとか、迷惑がかかるだとか!!そんな事言うなって前に言ったでしょ!?」

 

 

 

 

 

 

 

姉貴の声が、言葉が。

俺の嘘で固めた心に辛く響く。

 

 

 

 

 

 

 

……そんな事わかってる。本当に、わかってんだ。

でも、こうするしかねーんだよ……

 

 

 

 

 

 

 

姉貴は何も、知らないんだ。

そのまま知らなくていいからよ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……その力は平和の力。正義の力。何があろうとこんな争いのために使っちゃだめなんだよ……?」

 

 

 

 

 

 

 

感情が噴き出しそうになる。

全部話して楽になりたくなってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

……前に戦兎から教えて貰った事がある。

 

 

 

仮面ライダーは正義のヒーロー。

その力は護れる力なのだと。

 

 

 

 

 

 

 

正義のための力。平和のための力。

笑顔と希望を、護れる力。

 

 

 

 

 

 

 

……わかってる。全部わかってんだ。

でも……こうすることでしか俺の正義は――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――万丈。正義は、正義のヒーローは……その力を奮うのに、見返りを求めちゃだめなんだよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見返り……

正義のヒーローは見返りを求めちゃだめ、か……

 

 

 

 

 

 

 

確かに、確かにそうだよな……

この力は……本当は……

 

 

 

 

 

 

 

でも、どうすりゃいい?

もし俺がここで辞めたらどうなる?

 

 

 

 

 

 

 

……でも。でももしかして戦兎なら――

 

 

 

 

 

 

 

「桐生総隊長!!……北、風!?」

 

 

 

 

 

 

 

野太い声がした先に、東都の兵士が居た。

総隊長、って呼ばれてんだな。本当に。

 

 

 

 

 

 

 

「……大丈夫だから。それで、どうしたの?」

 

 

 

「あ、はい……それが、美空さんが居る周辺に、北風の襲撃があるとの情報が……」

 

 

 

 

 

 

 

聞き覚えのある名前。すぐに浮かびあがる顔。

昨日の事のように思い出す、あの声。

 

 

 

 

 

 

 

美空も……あの妹もこんな戦場に来てんのか……

 

 

 

 

 

 

 

「美空の所に!?……万丈、あんたは――」

 

 

 

「行けよ、さっさと。……俺もボロボロで疲れたし帰るから……早く、行ってやれ」

 

 

 

 

 

 

 

こちらに強い視線を注ぐ姉に、決別の言葉を送る。

もう多分、治せないほどの言葉。

 

 

 

 

 

 

 

「……絶対にあんたを連れ戻すから。……忘れないでよ。あんたはわたしの弟。家族なんだから」

 

 

 

 

 

 

 

最後まで俺を心配する言葉を残し、姉はすぐに姿を消した。

大切な、妹の元に。

 

 

 

俺らの大切な、妹のために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――万丈団長!?野兎の総隊長を……逃がしてしまってよろしいんですか!?」

 

 

 

 

 

 

 

部下の怒号のような訴えが、俺の耳に轟く。

敵の軍のトップであるはずの、姉を逃がした俺を責めるように。

 

 

 

 

 

 

 

「……いーんだよ。俺もきついし。……それにお前らが戦っても無駄死にだ。意味無く散ってもしょーがねーだろ」

 

 

 

 

 

 

 

本当の本当の真実は違うけど。

でもこいつらを想う気持ちに嘘は無い。

本当に死んでほしくない。

 

 

 

 

 

 

 

「っ!……しかし――」

 

 

 

「うるせえ!!!……帰るぞ、全員に言っとけ」

 

 

 

 

 

 

 

縋りつく兵士をいなし、帰路に着く。

本当の居場所じゃない、偽りの場所へ。

 

 

 

 

 

 

 

戦兎から言われたさっきの言葉が、俺の何かを刺激する。

嘘がまとわりついた、汚れた心に。

 

 

 

 

 

 

 

「正義に……見返りを求めちゃいけない、か……」

 

 

 

 

 

 

 

呟く事で、その言葉の意味を改めて確認する。

……きっとその通りなんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

でも、だめだ。俺は、出来ねえ。

 

 

 

 

 

 

 

さっき聞いた話。美空が危ないかもしれない、と。

でもきっと、戦兎が駆けつければ大丈夫。

 

それに多治見のばあさんと約束もしてあるし。

 

 

 

 

 

 

 

……本当は、あの時に戦兎に話そうと思った。

全部話して、一緒に何とかしようと思った。

 

 

 

正義には、見返りを求めちゃいけねーからな。

 

 

 

 

 

 

 

でも、美空が危ないって聞いて。

……想像したらやっぱ、だめだ。

 

 

 

姉貴や、妹や、親父は知らない。

連中がその気になれば。俺の大切な居場所や、大切なモノを簡単に壊す事が出来る。

 

 

 

 

 

 

 

……だから、俺は嘘をつく。嘘を吐く。

嘘で塗り固めた心に、更に嘘を纏わせる。

 

 

 

 

 

 

 

俺の大切なモノを護るために。

この護れる力を、奮うんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

独りぼっちで、守るんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰りながら見た空は、赤く紅く朱く、血のような空。

まるでこの争いのような。この惨劇のような。

 

 

 

罪の無い人が大勢死んだと思う。

綺麗事じゃない、戦争の現実。

 

 

 

 

 

 

 

本当の正義のヒーローなら、一目散に助けに行くべきだ。

それがこの力の本来あるべき姿。

 

 

 

でも、俺は出来ない。

守らなきゃいけないモノのために、正義のヒーローにはなれない。

 

 

 

 

 

 

 

見返りを求める俺は、正義じゃない。

きっと悪、なのかもしれない。

 

 

 

香澄を死に追いやった、ローグ。

あの狂った蛇、スターク。

 

そしてそいつらの源、ファウスト。

 

 

 

 

 

 

 

俺はこいつらと変わらないのかもしれない。

……いや、同じだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

……なぁ、戦兎。

 

 

 

お前だったら、どうするのかな。

俺とは違う答えを見つけて、走ってくのかな。

 

 

 

あいつは頭が良いから。

あいつはすげー正義のヒーローだから。

俺なんかよりももっともっとすげーやつだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……なぁ、姉貴。

 

 

 

 

 

 

 

助けてくんねーかな、俺の事も。

俺の事も救ってくれよ、正義のヒーロー……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……To be continued

 

 

 

 








万丈「いやあ!強い!強過ぎる仮面ライダークローズ!!」

戦兎「はいはい。よかったねえ」

万丈「いやー。でももっとこうあれだな、必殺技出したかったな」

美空「はいはい。そうですねえ」

万丈「ほんとよ!バシュン!ドガーン!ズドドーン!、って感じだよな!!」

戦兎・美空「はいはい。そんな感じだねえ」


万丈「はっはっは!!さすが俺だよな!!」

戦兎・美空「はいはいはいはい」





惣一「それでいいのか万丈……!」

葛城忍「本当にこいつは末っ子じゃないのか……?」




万丈「はっはっは!はーっはっは!!」

戦兎・美空「はいはいはいはい……あー。だるっ」


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