Masked Rider EVOL 黒の宙   作:湧者ぽこヒコ

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葛城忍「あいつが居ないと暇なんだが」

葛城忍「私、誰とも関わらないしな」

葛城忍「あいつ居ないとぼっちだし」

葛城忍「……なんか切なくなってきたんですけど」



葛城忍「お!To witterからメッセ来たぞ」

葛城忍「……《理解されない孤独》さんからだ!」

葛城忍「最近フォロワーになってくれたんだよな」

葛城忍「まぁ多分私のファンだろう」



葛城忍「なになに……【今度、飲みに行きませんか】」



葛城忍「……無理なんだって」

葛城忍「スルーしよ……」





phase,38 黄色い泣き虫

 

 

 

 

 

 

 

 

 

車に揺られ、首相官邸へと急ぐ帰り道。

少し打ち合わせをして、今日はそのまま帰れそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

美空は疲れてしまったのか、わたしの隣で気持ちよさそうに寝息をたてている。

 

 

 

無理もない。

あの癒しの力も多用しただろうし、何よりも動き回っていただろうから。

 

 

 

 

 

 

 

日が落ち、辺りは少しずつ暗くなってきた。

東都政府が確認した所、現在は北風による破壊活動も無いらしい。

 

 

 

それぞれが拠点に帰っていっている、との事だ。

 

 

 

北風の兵たちも疲労が溜まっているだろうし、恐らく今日はもう大丈夫だろう。

 

 

 

長い長い、永遠にすら感じた戦いの。守護の一日がようやく終わった。

 

 

 

 

 

 

 

……また明日からこの日々が続くのかと思うと、絶望しそうになる。

 

 

 

手が回らない避難誘導、救助活動。

傷付いた人々が多すぎて、不足する医療。

恐ろしい混乱の中、行方不明になってしまった人々。

 

 

 

 

 

 

 

それに……生物兵器。

 

 

 

 

 

 

 

わたしの脳が、今日の事を改めて整理しようと活動する。

 

 

 

北都の兵器、自我を持つスマッシュ。

それに……仮面ライダー。

 

 

 

 

 

 

 

事前にスタークから聞いてはいたけど……

相対すると、想像の以上の強さだった。

 

 

 

自ら制御出来るスマッシュ、あの三馬鹿。

確か北都……三馬鹿カラス、だったかな。

 

 

 

 

 

 

 

……まさかスパークリングでも倒されるなんて。

 

 

 

 

 

 

確かに万丈戦でかなりダメージが残ってたし、あのバカさえ手加減してくれてれば恐らく倒される事はなかったと思う。

 

それでも……最後のあの攻撃はまずい。

多分、全快でも……かなりきついかも。

 

 

 

しかもあの見事なまでの連携がえぐいし……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……わたし以外に東都に仮面ライダーは居ない。

 

普通の兵士じゃ立ち向かう事が許されない程、アレは強かった。

 

 

 

 

 

 

 

そして。前もって聞いていた仮面ライダーの2人。

 

今日、初めて対峙した仮面ライダークローズ。

そして。猿渡 一海の仮面ライダーグリス。

 

 

 

まあ万丈は……大丈夫だとしても、問題は猿渡だ。

 

仮面ライダーグリス、未知の力。未知の能力。

未知の仮面ライダー。

 

 

 

その強さがどれほどのモノなのかわからないけど……きっと万丈並、もしかしたら万丈よりも強いのかもしれない。

 

 

 

……間違いなく言えるのは、あの三馬鹿よりも強いんだろうな、って事だな。

 

 

 

 

 

 

 

でも……なんか不思議な連中だった。

 

三馬鹿も確かに首相官邸を狙おうとしてたり、わたしを攻撃してきたけど、政府から入ってきた情報にはスマッシュが襲撃してきたなんてなかった。

 

 

それに……仮面ライダーも。

 

 

 

 

 

 

 

あいつらは何をしてたんだろう……

それに、美空たちが逃げる暇をくれたりとか。

 

 

 

猿渡、ってやつも……確かに危ない考え方だとは思うけど、悪いやつには思えなかった。感じなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【お前らが何と言おうと、俺らにも護るべきモノがある。護りたいモノがある……だから、俺らも退くわけにはいかねえ】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【だから、戦うんだ。自分自身のモノのために。……他がどうなっても、な】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの時の、あの冷たい顔をしていた男の言葉を思い出す。

 

非情な言葉を吐いてたけど、その中にはどこか切なそうな感情が含まれてた気がする。

 

 

 

 

 

 

 

あの時感じた違和感。綻び。

 

東都が襲いかかってきたからと勘違いして、北都を護るためにしょうがなく戦ってるからなのだろうか。

 

 

 

それとも万丈みたいに、何かあるのかな……

 

 

 

 

 

 

 

……どちらにしても、脅威には変わりはない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日が暮れる。太陽が沈む。

果てしなく長かった1日目が、ようやく終わる――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な!やっぱりあの子はみーたんだよな!?」

 

 

 

 

 

 

 

さっきのあの子にずーっと夢中のカシラ。

さっきからずーっと惚気ちゃってる。ムカつく。

 

 

 

 

 

 

 

「いやー……勘違いじゃねえですかい?」

 

 

 

 

 

 

 

こうなっちゃったカシラはもう止まらない。

さっきから青羽や赤羽が違う、って言ってもこの有様。

 

 

 

 

 

 

 

……多分。あたしも本物だと思うけど。

 

 

 

 

 

 

 

「何言ってんだ……あの人は……あの方は……本物のみーたんだよおおお……♡」

 

 

 

 

 

 

 

まーたヘンな世界に入っちゃってる。

本当にムカつく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あたしたちはあのおねーさんたちが帰ってくのを見送ったあと、アジトの《バーバー桐生》に帰ってきた。

 

ここのおじさんは最初はびっくりしてたけど、今は仲良し。多分。

 

 

 

もちろん北都が拠点を用意してあったんだけど、そこは兵士たちの雰囲気が嫌だ、って事でここをアジトにする事になった。

 

 

 

 

あたしもあそこは嫌だったし。

あそこに居るとなんか、気持ち悪くなる。

 

 

 

まあちょっと汚いし狭いし住み心地は悪いけど……我慢しよう。しょーがない。

 

 

 

 

 

 

 

多分今頃、第1師団の兵士たちは血眼であたし達の事を探し回ってんだろーなあ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……とゆーか。それにしてもだよ。

 

 

 

さっきからほんっとにカシラはみーたんの事ばっっかり!

 

そりゃあさ?あたしよりも少ーーーしだけ可愛いかもしんないし。

 

 

 

 

 

 

 

……あたしみたいな薄汚れた戦士じゃないけど。

 

 

 

 

 

 

 

でもムカつく。

あたしの方がカシラとずっとずっとずっと長く居るのに!!

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、お前もそう思うだろ――」

 

 

 

「知らない!!興味無いもん!!」

 

 

 

 

 

 

 

あたしの言葉が場に響く。

結構大きな声だったみたい。

 

 

 

 

 

 

 

「おぉう?どうした黄羽ぁ?」

 

 

 

「なんでもないよっ!!ふん!!」

 

 

 

 

 

 

 

みーたんの事を幸せそうに話すカシラは嫌い。

みーたんの事ばっかり見てるカシラは嫌い。

 

 

 

 

 

 

 

……そんなみーたんが、嫌いだ。

 

 

 

 

 

 

 

「……なんだよ。……めんどくせーな」

 

 

 

 

 

 

 

冷たい顔で冷たく言ってくる、カシラ。

あたしが知ってる昔のカシラじゃ、ない。

 

 

 

 

 

 

 

「ちょ、ちょっとカシラ……そんな風に言わんでも」

 

 

 

 

 

 

 

青羽がフォローしてくれても、心の痛みは取れない。

 

 

 

……泣きそうになっちゃう。

 

 

 

 

 

 

 

「知らねーよ……大体俺に纒わりつくんじゃねぇ。……うぜぇから」

 

 

 

 

 

 

 

カシラの顔を見ちゃうと泣きそうになっちゃうから、見ない。

 

 

 

……あの日。赤羽と青羽と一緒に約束したから――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――カシラがお金のために北都の軍に行ったのは、少し前の事だった。

 

 

 

カシラのお家は大地主で、すっごいお金持ちだったみたい。

ひろーい土地があって、そこを《俺たちの猿渡ファーム》って名前の農場にしてた。

 

元々貧しい人たちが多い所で、カシラは自分の所でたくさんの人を養ってたみたい。

 

 

 

今いる赤羽や青羽もそうだ。

 

 

 

 

 

でもスカイウォールの惨劇で、全てが変わっちゃった。

土地は痩せ、作物は全く実らなくなった。

 

明日のご飯を食べるのにも精一杯。そんな状況。

 

 

 

 

 

 

 

そんな中、あたしはカシラや赤羽や青羽、そこに居るみんなと出会った。

 

 

 

スカイウォールの惨劇のせいで、農家だったあたしの家もお金無くて。

ちっちゃい頃に捨てられちゃった。

 

 

 

お母さんやお父さんに連れられて。

 

ここで少し待っててって言われて。

 

もう二度と。戻ってこなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今でも覚えてる。

あの時のあたしの心の中みたいな、大雨の日。

 

 

 

 

 

 

 

猿渡ファームの近くの所で捨てられてたあたしは、カシラと出会った。

 

 

 

……あんまり思い出したくないけど、気持ち悪い男に襲われそうになってた所を、カシラが助けてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カシラは、ぐちゃぐちゃな泣き顔のあたしの話を聞いて、

 

 

 

 

 

 

 

「今日からお前は俺の家族だ」

 

 

 

「今日からお前の家はここだ」

 

 

 

「今日から、俺がお前のお父さんだ」

 

 

 

 

 

 

 

まだ10代だったカシラはあたしに、そう言ってくれた。

 

 

 

自分たちも凄い貧乏なのに。

あたしなんて養うの大変なのに。

 

 

 

でも。カシラだけじゃなくて赤羽も、青羽も、みんなも。

凄い喜んで迎えてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

その日からあたしの毎日は輝いてた。

お金も無いし、ご飯もあんまり食べれなかったけど、カシラたちと遊んだり、農作業するのはすっごい楽しかった。

 

それにカシラたちは自分のご飯を削って、あたしに出来るだけいっぱいくれてた。本当はそんなことしなくていーのに。

 

 

 

何回もだいじょぶって言っても「お前が1番末っ子だから」、って。

 

 

 

 

 

 

 

そんな優しくて、暖かくて、幸せな毎日が壊れたのは。

 

 

 

 

 

 

 

……もう本格的にお金が無くなっちゃってどうしようか、って時に北都政府からカシラにとあるスカウトが来た。

 

 

 

お金をあげるから、軍で働け、って。

 

 

 

 

 

 

 

どうやら他にも貧しい人たちをスカウトしてたみたい。

しかもお金も凄いたくさん貰える、って。

 

 

 

カシラは大喜びしちゃって。

これでみんな貧しい思いしなくて済む、って。

 

 

 

でもみんな不安だった。

特に青羽は、怪しいからやめて、って。そんな美味しい話があるわけない、って。

 

 

 

……あたしは喜んじゃってた。

軍っていうのがよくわかんなかったし、お金貧しいから国がお金をくれるんだって思ってた。

 

 

 

 

 

 

 

でもカシラは耳を傾ける事なく行っちゃった。

すぐに帰ってくるから安心して待ってろ、って。

 

 

 

帰ってきたらみんなで焼肉食べよ、って。

 

 

 

 

 

 

 

あたしは待った。

いっぱいいっぱいいーっぱい待った。

 

 

 

 

 

 

 

でも、カシラは帰って来なかった。

政府の人がお金だけ持ってきて、カシラは来なかった。

 

 

 

その後もずっとずっと帰って来なくて。

お金だけ政府の人が渡しに来て。

その人に聞いても教えられない、って。

 

 

 

泣きながらカシラを返して、って言っても無視された。

 

 

 

 

 

 

 

……だから。あたしと赤羽と青羽は軍の基地に行った。

 

カシラを返してもらうために。

カシラに帰ってきてもらうために。

 

 

 

 

 

 

 

その基地に行っても、カシラには会わせらんない、って怒られた。

そんな中ギャーギャー喚いてたら、会いたかった人が来てくれた。

 

 

 

あたしを助けてくれた人。

あたしを家族だって言ってくれた人。

あたしの……大切な人。

 

 

 

 

 

 

 

「……誰だお前ら?」

 

 

 

 

 

 

 

やっと会えた人が、一目散に抱き着いたあたしに言った言葉。

記憶に無い、他人への言葉。

 

その言葉は、とっても冷たかった。

 

 

 

そのままカシラはあたしを振り払って、赤羽や青羽も無視して行っちゃった。

泣き叫ぶあたしや、大声で名前を呼ぶ2人を無視して。

 

 

 

 

 

 

 

……その後すぐ、首相官邸に赴いて直談判しに行った。

 

カシラは一体どうなってるんだ、って。

何をしたんだ、って。

 

 

 

最初は取り合って貰えなかったけど。

多分あたしたちがうるさかったからなのか、なんと首相の多治見、って人がわざわざ来て、直接話を聞いてもらえる事になった。

 

 

 

 

 

 

 

そこで聞いたのは、カシラがあたしたちのために、人体実験を受けた、って事。

 

あたしたちが少しでも豊かに暮らせるように。

お金のために、身体を投げ売ったって事。

 

 

 

その副作用かなんかで、記憶が無いらしい。

 

 

 

 

 

 

 

呆然とするあたしたちに多治見首相が言ったのは、あなたたちも実験を受けて特別な兵士になれば、カシラの隣で戦える、って事だった。

 

 

 

カシラを護れる、って事だった。

 

 

 

もし望むなら、カシラが率いる部隊に配属もさせてあげる、って。

 

 

 

 

 

 

 

だからあたしたちは迷う事無く、あの人体実験を受けた。

あの、地獄のような人体実験を――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【痛い!!痛いよおお!!カシラあぁぁあ!!!】

 

 

 

 

 

 

 

【聖ぃ!!我慢しろぉ!!カシラの……ぐああああ!!!】

 

 

 

 

 

 

 

【隣に立つためだよい!!!がっ!がああああ!!!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――思い出す度に、身体中にあの恐ろしい激痛が引き起こされる。

 

 

 

怪物となったあの日。

あたしたちはまさか怪物にされるなんて思ってもみなかった。

 

 

 

でも、カシラだけに重みを背負わすわけにはいかない。

カシラの力になれるなら構わない。

 

……カシラの隣に立てるならそれでいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……そうして、カシラの部隊に配属されたあたしたち。

 

記憶の無いカシラは……最初はツンツンしてあたしたちと距離を置いてたな。

 

てめーらは本当にバカだ、なんでこんな所に来た、早く帰れ、てめーらの顔なんて知らないし早く消えろ、とか。

 

 

 

いっぱい言われた。

でも、構わないから。

 

 

 

 

 

 

 

そうしてようやくここまで来れた。

最初はずーっと無視されてたけど、今はこうやって傍に居れる。

 

 

 

あたしたちの事を……あたしの事を忘れちゃってても、傍に居られる。

 

 

 

カシラを隣で、護れる。

あの大雨の日、あたしを護ってくれたカシラを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……あたしはもう汚れちゃった女。

 

みーたんみたいに清らかな女じゃない。

 

 

 

わかってるよ……カシラの隣で支える人は清らかな、綺麗な人じゃなきゃダメだって事ぐらい。

 

 

 

 

 

 

 

あたしは汚い穢れた女だから。

カシラの隣で支える女性にはなれない。

 

 

 

 

 

 

 

……わかってるけど、辛いや。

 

 

 

 

 

 

 

みーたんは嫌い。

カシラをデレデレさせるみーたんなんて嫌い。

 

 

 

……羨ましい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……そして、赤羽と青羽と約束した。

 

カシラに記憶が無くても、あたしたちは変わらない。

カシラが変わっちゃっても、あたしたちは忘れない。

 

 

 

だから、名前も捨てた。

新しく生まれ変わるために。

 

今までのあたしたちの知ってるカシラじゃない、新しいカシラの傍に居るために。

 

 

 

そして、カシラの前で泣かないって。

あたしは泣き虫だから。赤羽と青羽が我慢するよーにって。

 

 

 

もうカシラの記憶の事で、カシラの前で泣いちゃダメ、って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……それに、赤羽も青羽も優しいから。

 

 

 

 

 

 

 

あたしが泣くと困っちゃうから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから、あたしは独りで泣く。

誰にも見つからないように、独りぼっちで泣く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……本当は泣いてる場合じゃないのはわかってる。

 

カシラの記憶が無くなったのも、あたし達のため。

だから、泣いてる暇なんて無い。

 

 

 

 

 

 

 

……わかってるけど。やっぱり寂しいんだよね。

 

 

 

 

 

 

 

だからあたしは独りで泣く。

 

 

 

……違う事ではしょっちゅう泣いちゃうけど。

 

 

 

それは大目に見てほしいな――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カシラぁ……もうちっとこう――」

 

 

 

「んんん!だいじょぶだいじょぶ!!……あたしちょっと、風に当たってくるね!」

 

 

 

 

 

 

 

目から雫が落ちそうになるのをぐっと我慢して、外へと逃げ込む。

ここで泣いちゃったら、赤羽や青羽を困らせちゃうから。

 

 

 

 

 

 

 

カシラに、うざったいと思われちゃうから。

 

 

 

 

 

 

 

「ちょ!?おぉい!!黄羽ぁ!?」

 

 

 

 

 

 

 

後ろから聞こえる赤羽や青羽の声を無視して、夜の街を駆け抜ける。

 

 

 

我慢してた涙が溢れ出す。

想いが雫となって、止まらなくなる。

 

 

 

あたしはもう弱い女じゃない。

力を持った、汚れた怪物。

 

 

 

 

 

 

 

……でも、心までは強くしてもらえなかった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふぇ……ふぇ……」

 

 

 

 

 

 

 

どれだけ走ったのだろう。

気がついたら、高台の公園に来ていた。

 

 

 

宙には満点の星々が輝いてる。

まるであたしを慰めてくれてるような。そんな気がする。

 

 

 

 

 

 

 

「……ふぇ……ふえぇーん!!!カシラのばかぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

周りを気にせずに泣き声をあげる。

あたしの服装は軍服じゃないし、別に見られても気にしない。

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっとくらいわかってよおお!!!うわああぁぁん!!!」

 

 

 

 

 

 

 

感情が爆発する。

あたしの何かが止まらずに湧き出る。

 

 

 

弱くて脆くて、惨めなあたしの所。

 

 

 

 

 

 

 

「あぁーん!!!ふえぇーん!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ね、ねえ、どしたの……?大丈夫……?」

 

 

 

 

 

 

 

あたしに慰めの言葉を優しくかけてくれた人に視線を注ぐと、暗いのと涙でよく見えないけど、きっと若めな女の人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひっぐ……ありがと、ちょっと……って、あれ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤の他人であるあたしを慰めてくれた人に、改めてちゃんと謝ろうとしたら、少しずつ顔がわかってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、何?……って、もしかしてあんたさっきの!?」

 

 

 

 

 

 

 

どうやらおねーさんも理解したらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その人は、あたしたちの国を襲った東の兵士。

その人は、あたしたちの敵。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも、さっきあたしにかけてくれた言葉の音色は。

とても暖かくて、優しくて。

 

 

 

 

 

 

 

あの大雨の日にカシラがかけてくれた音に、そっくりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんでビルドのおねーさんがここに!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……To be continued

 

 

 

 

 








赤羽「おぉい。また黄羽がいねぇのかぁ?」

青羽「……どっかで泣いてやがんな、多分よう」

赤羽「あいつぁすぐ泣いちまうからなぁ」

青羽「……しょうがねぇさ。まだ、子供だしよう」




赤羽「……俺らが護ってやんなきゃな!おぉい!!」

青羽「あぁ。末っ子だからねぃ」



赤羽「……あいつの好きなモンでも買ってやるかぁ。しょうがねぇ」

青羽「世話のかかる妹だい、本当に」






黄羽「ふぇーん!!わあぁーん!!!」



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