Masked Rider EVOL 黒の宙   作:湧者ぽこヒコ

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惣一「いやっはっは。今年も終わりですな」

戦兎「ねー!あっという間でした!」

美空「本編はまだまだ落ち着けないけどねー」

紗羽「早く解決しないかしらね?」

万丈「俺が大活躍中だもんなー」

一海「あ"?俺の間違いだろ?」

万丈「なんだとコラ」

一海「やんのかエビフライ頭」

美空「喧嘩はや・め・て?♡」

一海「はいわかりました。喧嘩ダメゼッタイ」

幻徳「はっはっは!まあまあ落ち着けって」

黄羽「ねーえー!早くおそばたべよーよー」

美空「お!そだねそだね!」





一海「おーい!器ー!」

多治見「あらやだ七味が無いわよ?」

御堂「一味なら……ほら」

一樹「……天かすも無い」

一海「ほれ、ここにあんぞ」

赤羽「おぉい!?器足んねぇぞ!?」

青羽「大丈夫だぃ。買ってきてあるよう」

佳奈「わたしもてつだう!」

幻徳「よーし!じゃあお兄さんと一緒にやろうか」

内藤「私も手伝いますよう!」






惣一「ずるるっ……という訳で!」

戦兎「ずぼぼっ……皆さん来年もっ」

葛城忍「ずる……本作を」

泰山「ずるる……ぜひぜひ」

内海「ぞぞっ……優しい目で」

香澄「つるるっ……私を忘れないように♡」




全員一同「よろしくお願いします!!!」







月乃「ちゅる……良いお年を」






phase,40 止まない風

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――カシラぁ、いくらなんでも遅すぎますぜぃ、黄羽のやつ」

 

 

 

 

 

 

 

あいつ……何やってんだ全く……

 

 

 

あいつがいきなり出ていっちまうのはよくある事。

 

 

 

 

 

 

 

……俺のせいなんだろうけどよ。

 

 

 

俺がこんなんだからな……

でも……こんな俺をもう……

 

 

 

 

 

 

 

……いや、よそう。こんな事は。

 

 

 

 

 

 

 

「……探し行くぞ」

 

 

 

 

 

 

 

いくらなんでも遅ぇ。

いつもならもう帰ってきてる頃だ。

 

 

 

あいつは俺が何か言うとすぐ居なくなっちまう。

本当は……いや。

 

 

 

 

 

 

 

……どうせまたどこかで泣いてんだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

「おぉいカシラぁ!!うっしゃ!!行きますかあ!!」

 

 

 

 

 

 

 

こいつらは本当にいいやつらだ。

仲間想いの、気持ちのいい連中。

 

 

 

……俺としてはさっさと帰ってほしいけどよ。

 

 

 

 

 

 

 

そんな事よりも今はあいつだ。

あいつは機嫌悪くなると大変だからなぁ……

 

 

 

早く見つけ出してあいつの好きなモンでも作ってやるか。

パフェでも作りゃ機嫌も治るだろうよ。

 

 

 

 

 

 

 

「よし!そしたらお前ら――」

 

 

 

 

 

 

 

世話の焼ける子供を連れ戻しに行こうかとしたその時、北都政府から渡されていた携帯用通信端末が鳴り響いた。

かかってくる連絡は、いつもろくでもねー事。

 

 

 

 

 

俺は、鳴り響くこの音が嫌いだ。

俺を俺じゃ無くする、この音が。

 

 

 

……それに、本当にろくでもねえから。

 

 

 

 

 

 

 

「あんだよ。あぁ。俺だ」

 

 

 

 

 

 

 

通信してきた兵士は聞き覚えのある声。

多分俺ん所の師団の兵士、恐らく部下。

 

 

 

焦ってやがんのか言葉がめちゃくちゃになってやがる。

何をそんなに急いでん――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――は……?お前、何言って……」

 

 

 

 

 

 

 

俺の頭に浮かぶあいつの顔。あいつの声。

 

 

 

やかましくて子供みてえに元気なあいつ。

俺の気待ちを暖かくする、笑った顔のあいつ。

すぐにワガママを言ってくるあいつ。

甘えん坊で寂しがり屋のあいつ。

本当は戦いなんて好きじゃないあいつ。

人を傷付けるなんて本当は嫌なあいつ。

 

 

 

 

 

 

 

戦争に連れてくるべきじゃなかった、あいつ。

 

 

 

 

 

 

 

あの……大雨の――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ちょっと、どうしたんですかぃカシラ……」

 

 

 

 

 

 

 

あいつの声が、あいつの顔が、少し悲しそうに笑う最近のあいつが。

 

 

 

 

 

 

 

俺の頭を埋めつくしていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぉい……?カシラ、一体どうし――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「てめえら!!今すぐ軍の拠点に行くぞ!!!早くしろ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

俺の頭はすぐ真っ白になった。

 

 

 

 

 

 

 

一番恐れていた事。

こうなるとわかってたからやってきた事。

 

 

 

だから……遠ざけた事……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょ!?カシラぁ!!おぉい!?」

 

 

 

 

 

 

 

俺は一体何をやってんだ。

何をしていたんだ。

 

 

 

こうなるとわかってたのに。

こうなるから戦いに身を投じたのに。

 

 

 

 

 

 

 

だからこそ……早くしなきゃいけなかったのに。

 

 

 

大切なモノを護るために、ここに居るのに――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――それは、どういう事だ……?」

 

 

 

 

 

 

 

今日は大雨。

大粒の雫が延々と零れ落ちる、冷たい日。

 

 

 

あの護りの日が終わり、次の日。

次の、護りの日。

 

 

 

 

 

 

 

なんだか切ない気持ちになる、そんな日な気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今言った通り……北風の師団長と近い、とある兵士と接触して確認したんで間違いないと思います」

 

 

 

 

 

 

 

昨日のあの子から聞いたあの話。

東都が宣戦布告をしてきたと、多治見首相がそう伝えたという話。

 

 

 

わたしはその事を泰山首相に伝えるため、夜が明けてまだ朝早いこの大雨の日に。この人に会いに。

 

 

 

 

 

 

 

泰山首相に伝えるために、わたしは首相官邸に来ている。

 

 

 

 

 

 

 

「それはミサイルの事を宣戦布告と……?いや、しかし……」

 

 

 

 

 

 

 

ぼそぼそと独り言のように呟く泰山首相は、かなり困惑している。

無理もない。まさかこちら側が宣戦布告をしているなどと。

 

 

 

こちら側が北都に宣戦布告をしているなんて北風の兵士に伝われば、侵攻が過激になるのは必然。

 

 

 

状況が悪化するのは当たり前だ……

 

 

 

 

 

 

 

「どちらにしろ、改めて多治見首相と連絡を取ろう。……もう一度しっかりと誤りを正さなければ我々の想像以上の事態に――」

 

 

 

「氷室首相!!北都の多治見首相から緊急のお電話が!!」

 

 

 

 

 

 

 

泰山首相の側近が急いで首相室に駆け込んで来たところを見ると、もしかしたらあまり喜ばしくない事なのかもしれない。

 

 

 

しかし、今の状況なら好都合だ。

宣戦布告なんてしていない事、裏で糸を引いている存在がいる事、その存在を急ピッチで探している事。

 

 

 

 

 

 

 

その事を改めてしっかりと話せば。

もしかしたら多治見首相も――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――多治見首相!!実は私もご連絡しようと思って……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……は……?一体、何を……?いや、そんなはずは!!多治見首相!!!多治見首……」

 

 

 

 

 

 

 

どうやら切られてしまったのだろうか。

 

それに、氷室首相の様子がおかしい。

顔には脂汗のようなモノが見て取れるし。

 

 

 

 

 

 

 

もしかして理解してもらえなかったか。

やっぱり、裏で動いていた連中を探し出さないと――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戦兎さん……いや、桐生総隊長」

 

 

 

 

 

 

 

わたしに視線を浴びせる泰山首相の目は、どことなく失望のような雰囲気を醸し出している気がした。

 

 

 

それに、その言葉には若干の怒気のようなものを感じる。

 

 

 

 

……何かあったのかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしたんです?泰山首――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君は……先程、北風の兵士と会ったと言っていたね……それは、昨日のいつの話だ……?」

 

 

 

 

 

 

 

泰山首相の言葉で更に脳が戸惑う。

この人が何を言いたいのかが理解出来ない。

 

 

 

もしかして黄羽ちゃんが何か変な事を……?

 

 

 

 

 

 

 

いや、黄羽ちゃんのあの様子じゃ何か変な事を言ったとは思えない。

むしろ状況が好転するはずだと思うんだけど……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「昨日の夜……首相官邸から家に戻り、ちょっとしてからですかね?……たまたま家の近くに居たもんで。そのまま仲良くなっちゃったもんで」

 

 

 

 

 

 

 

黄羽ちゃんのあの純粋な笑顔が脳を過る。

まだ16歳の、まだまだ子供のあの子。

 

 

 

美空が友達になりたがってたあの子。

わたしもなんだかとても愛おしくなっちゃうような、あの子。

 

 

 

 

 

 

 

……あんな子を戦争に巻き込んじゃいけない。

 

 

 

そのためにも早く、この戦争を終わらせないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……たった今、多治見首相から……ある事を聞かされた」

 

 

 

 

 

 

 

……本当にどうしたんだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

彼の顔は……どこか絶望しているような……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「北都は、改めて東都からの宣戦布告を受け取ったと……」

 

 

 

 

 

 

 

 

改めて宣戦布告を……!?

ちょっ、え?どういう事!?だって、え……?

 

 

 

 

 

 

 

もしかして黄羽ちゃんが何かを――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「昨夜……北都軍 北風、第1師団【GREASE】の女性兵士が襲撃された、と……」

 

 

 

 

 

 

 

え……?

第1師団、ってあの猿渡が率いる軍だよね……?

 

 

 

それにあの3人組の……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの……黄羽ちゃんがいる所、だよね……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女性兵士なんてほぼいなかった。

わたしが見た限り、女性なのは黄羽ちゃんしかいなかった……

 

 

 

しかも、その中でも第1師団の女性兵士って――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――しかも戦闘を拒否した無抵抗のその兵士を、だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦闘を、拒否した……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……間違いない、黄羽ちゃんだ!!

 

 

 

 

 

 

 

まさかあの後、出ていった後に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嘘だ、あんなまだ子供が……

あんな、あんな純粋な子が……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

笑顔が素敵だったあの子。

元気いっぱいで純粋だったあの子。

まだ子供の幼さが残る感情のあの子。

 

敵であるわたしを信じてくれた、あの子。

 

 

 

 

 

 

 

……美空と友達になれたかもしれない、あの子。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絶対に……絶対に許さない……!!!

 

 

 

 

 

 

 

「泰山首相!!今すぐに裏で糸を――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「犯行は東都軍のとある兵士だと確認が取れているそうだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

え……?どういう事?

東都の、兵士が……?

 

 

 

いやでも、東都にそんな事をするやつなんて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……東都と北都の争いを望む第3勢力か!!

 

 

 

 

 

 

 

「泰山首相!!きっとその兵士を襲撃したのは――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その東都の兵士が誰なのか。それも確認が出来ているそうだ……」

 

 

 

 

 

 

 

……そうすれば話は早い。

 

 

 

まずその人物を探し出して……というよりも実在しているのかどうかだな。

恐らく第3勢力。そいつらがやった事だろう。

 

 

 

 

 

 

 

くそ、黄羽ちゃんが……

あの子は……命に別状は無いのかな……

 

 

 

 

 

 

 

あの子の顔を、見に行きたい。

今どうなっているのかを知りたい。

 

 

 

……今のこの状況じゃ難しいけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そしたら泰山首相!!今すぐにその人物を――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それは、君だよ」

 

 

 

 

 

 

 

は……?

 

 

 

 

 

 

 

君?君って、わたし?

 

 

 

 

 

 

 

「襲撃を行った人物は、仮面ライダービルド」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなただ。野兎総隊長、桐生 戦兎」

 

 

 

 

 

 

 

わたしの脳が活動を辞める。

現状を全く理解する事が出来ない。

 

 

 

何がどうなってるのか。

この目の前の彼が何を言っているのか。

把握すら……する事が出来ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……しかし……よく考えるとあなたがそんな事をするようには思えない。だが、向こうには映像があるというのだよ、桐生総隊長」

 

 

 

 

 

 

 

泰山首相の懇願にも似たような口調で、わたしの脳細胞の軍団が少しずつ動き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【そしてこいつが想定外だ。……やつら、姿形を変えるスマッシュを有している。もちろん自我を持つ、な】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鮮血の蛇が吐いた、あの日の言葉。

姿形を自由に変えるスマッシュ。

 

 

 

わたしはもちろん黄羽ちゃんを襲ってなどいない。

無意識に人を襲うような病の持ち主でもない。

 

そもそも昨日はずっと美空と家に居た。

わたしの可能性は、ゼロだ。

 

 

 

 

 

 

 

そうすると考えられるのは。

もう1人の仮面ライダービルド。

 

 

 

 

 

 

 

……でもこれも現実的ではない。有り得ない、とも言えないけど。

 

 

 

 

 

 

 

そうなると、考えられるのは1つ。

狂気の蛇が言っていた、スマッシュ。

 

 

 

 

 

 

 

襲われた黄羽ちゃんが身を留める地、北都。

爆撃で大変な悲劇を被った、北都。

その惨劇は東都が招いたと信じている、北都。

 

 

 

 

 

 

 

その北都が有する、スマッシュ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「泰山首相……わたしは何もやっていません。確かに黄羽ちゃん……北都の女性兵士と会いましたが、彼女はそのまま帰って行きました」

 

 

 

「しかし北都は!!!……あなたがやったという証拠が――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「北都には……姿形を自由に変えるスマッシュが存在しています」

 

 

 

 

 

 

 

長年の疲れが現れた泰山首相の顔に視線を移すと、その顔は驚愕に満ちていた。

無理もない。わたしも信じたくはない。

 

 

 

でも……それしか考えられない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わたしの身の潔白は妹に……美空に聞いてもらえればわかります。信じられないかもしれませんが――」

 

 

 

「いや……君がそんな事をするはずがない。わたしはそれを充分にわかっているつもりだ……済まない、疑うような事を言ってしまって」

 

 

 

 

 

 

 

まさか泰山首相にここまであっさりと信じてもらえるとは。

 

 

 

……相当信頼してもらえてるんだな。わたし。

 

 

 

 

 

 

 

「しかし、そうだとしてもなぜ北都が……?」

 

 

 

 

 

 

 

泰山首相のお言葉はごもっとも。

なぜ北都がそんな事を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……もしかしたら、わたしたちが想像している以上に混沌としている何かが蠢いているのかもしれない。

 

 

 

考えを遥かに超えているような何かが。

おぞましく恐ろしく破滅的な何かが。

 

 

 

 

 

 

 

全てを掌の上で転がしながら嘲っているのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぜ北都が、というのはわかりません……でも北都政府がそういったスマッシュを有しているのは恐らく事実です」

 

 

 

 

 

 

 

「恐らく幻徳……息子さんの事件も、このスマッシュによるものかもしれないと、わたしは推測していましたし」

 

 

 

 

 

 

 

息子の過ちが無実だったのかもしれないと感じたのだろう。

泰山首相の顔は、呆然と悲哀に満ちていた。

 

 

 

 

 

 

 

「幻、徳が……?……いや……しかし、なぜ……なぜ北都が……?」

 

 

 

 

 

 

 

そこだ。そこだけだ。

 

 

 

なぜ北都が?なぜ戦争を起こすような事を?

しかもなぜ自分たちの軍の兵士を……?

 

 

 

 

 

 

 

……おい、嘘だ。

 

 

 

もしわたしのこの考えが当たっているならさいっあくだ。

 

 

 

 

 

 

 

まさか……まさかこのためだけに……

 

 

 

 

 

 

 

この事のためだけに自国の民を……!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「泰山首相!!これは……これはまずいかもしれません!!今すぐに――」

 

 

 

 

 

 

 

「首相!!大変です!!北都軍 北風第1師団が……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここ首相官邸に進軍を開始しているとの情報が入りました!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

破壊の音色は奏で続ける。

その音は、他の追随を許さない独裁的な音。

 

何者も抗えない、和を繋ぐ事は不可能とも思えるほどに。

 

 

 

 

 

 

 

わたしの脳には、昨日の彼女が浮かんでいた。

 

 

 

笑った顔が愛おしいあの子。

美空が創るわたしの大好きなホットミルクを、本当に美味しそうに飲んでいたあの子。

 

平和のために。和を繋ぐために駆けて行ったあの子。

 

 

 

 

 

 

 

思い浮かぶ黄羽ちゃんは、無邪気に笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――もう埋められないような溝がわたしたちを決別させる。

 

 

 

きっとそれは、もう手遅れなのかもしれない。

きっともう、通じ合う事は出来ないのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

冷たく刺さるような大雨の日。

 

心を流してしまうような今日この日は。

憤怒を纏わせた、死の風が吹き荒れる――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――俺は、絶対に許さない。

 

 

 

 

 

 

 

俺の大切なモノを傷付けたこの国を。

俺の大事なモノを脅かすこの国を。

俺の全てを賭し、護ると誓ったモノを蹂躙するこの国を。

 

 

 

 

 

 

 

……一瞬でも、あの女に心揺さぶられた俺自身が許せない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カシラ……大丈夫ですかぃ……?」

 

 

 

 

 

 

 

こいつも怒り狂いたいだろうに。

いつも俺の心配をしてくれる、良いやつだ。

 

 

 

本当はお前も、この国が憎くて憎くてしょうがないはずなのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぉい、カシラぁ……俺らがやりますから……カシラだけは危ねえマネしねえでくださいよ……」

 

 

 

 

 

 

 

こいつも……仲間想いのいいやつだ。

 

 

 

口は悪ぃしうるせえが、熱いやつ。

その目は……憎悪で埋めつくされている。

 

 

 

 

 

 

 

本当は俺1人でやるつもりだった。

もう……こんな想いは嫌だから。

 

 

 

もう、大切なモノが傷付くのは嫌だから。

 

 

 

 

 

 

 

でも、こいつらは無理矢理にでも着いてきやがる。

1人じゃ心配だから、と。

 

 

 

 

 

 

 

こいつらも怖ぇんだろうな。

……失う恐怖、が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……うるせえ。俺1人で充分だっつったろ……黙ってろ」

 

 

 

 

 

 

 

お前の想いは俺が引き継ぐ。

お前の無念は俺が担いでやる。

 

 

 

お前がなぜあいつにやられたのか……それはわからねえけど。

 

 

 

 

 

 

 

きっと……俺に無理をさせないように。危ない思いをさせないように。

 

 

 

あいつはバカだから、そんな事思ってたんだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お前の念は、俺が纏ってやる。

死の風と共に、宿らせてやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから安心して。平穏に。静かに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……寝てて、くれ。聖。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――この俺が東都を……仮面ライダービルドを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桐生 戦兎を。殺してやるからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……To be continued

 

 

 

 

 







死を纏う風。憤怒を宿す風。
北から吹く風は、心に火を灯す。



その火は冷たくも、全てを焼き尽くす業火。










「……死ね、桐生 戦兎」



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