Masked Rider EVOL 黒の宙 作:湧者ぽこヒコ
全員一同
「あけまして!おめでとうございます!!」
惣一「無事に正月を迎えられましたな」
戦兎「ですのー。ほほ!伊達巻美味し」
万丈「まさかなー。エビうまっ」
一海「やっとだな。お、この数の子もうめーぞ」
紗羽「嬉しいわよね。この栗金団も美味しいわ」
香澄「ですね♪龍我、この黒豆もおいしーよ?」
幻徳「良い事だな!おっ、このなますも旨いな」
黄羽「だーねー。んんん!かまぼこおいし♡」
佳奈「おぞーにうまし!」
惣一「お前ら食ってばかりだなおい……」
惣一「そーいや美空どこ行った?」
美空「ひっく!甘酒んまーい!ひっく!」
葛城忍「イケる口だなお嬢さん?ひっく」
惣一「……カオス」
惣一「えー。という事でね」
惣一「ちょっとみんなアレなんでね」
惣一「俺1人なんですけども」
惣一「今年もどうぞ!」
惣一「よろしくお願いします!!」
戦兎「もぐもぐ……あ。よろしこ!」
冷たい風が吹く国。
その風は痛みを伴う。
身体にも、心にも。
その国を統べるは貪欲な女帝。
欲深きその者は、何を望む――
「――それで。首尾はどう?」
通話先の相手の声は冷たい。
まるで感情の無い機械のような。
「はい……無事に終了致しました」
この男の言葉でつい笑を浮かべてしまう。
先を想像してしまうからかしら。
ふふふ……全て……全て私の思い通り……
後もう少しでアレが、私のモノに……
「それで?……しっかりと始末はしたの?」
種を遺しておくと厄介かもしれないもの。
露見したら元も子も無いわ。
「いえ、殺す程ではないと判断致しましたので……ですが意識不明の状態ですし、問題は無いかと」
冷たく淡々と答えるこの男。
私の忠実なる下僕。重要な駒。
そのはずの駒が私に意見するなんて珍しいわね。
こんな事一度も……
……まぁ。殺せとも言ってなかったからかしら。
「そう……でももし勘づかれてたら問題だわ。そのまま殺しなさい」
目覚めて変な事を喋られては困るのよ。
コレの存在は明るみに出ては問題だから。
それに東都に変な口実を作らせてはいけない。
叩くなら今。大義名分があるうちに滅ぼさないと。
もしバレてしまって……西都が入ってきたら面倒なのよ。
今の状況のまま進めなければだめなの。
「……しかし、よろしいのですか?……一応、我が――」
「私の言う事だけに従えばいいの。意見は聞いてないわ」
通話越しの下僕は何かおかしいと感じとれる。
こうなってから今まで、こんな事無かったんだけど。
……改めてやっといた方がいいかしら。
「申し訳ございません……畏まりました」
有能な駒の口調はいつも通り。
冷酷で。淡々と。
感じとれた雰囲気も一瞬だったし……
とりあえずはまだ大丈夫みたいね。
「以上よ。すぐに取り掛かりなさい……無事に殺したら、また連絡を頂戴」
私の言葉を受け取るとその者は通話を終わらせた。
まるで機械が任務を遂行しに行くように。
これで万が一は無くなった。
全ては闇に葬り去られる。
後は……東都を滅ぼし手に入れるだけ。
あの禁忌の箱を、我が手にするだけ。
そうすればあの忌々しい西都にも有利に運べる。
こちらにはアレもいるし……種には事欠かないわ。
……それにしても。
本当に東都はミサイルを撃ってないのかしら……?
東都のあの感じ。嘘をついているようにも思えない。
でもミサイルは間違いなく東都から飛来したものだった。
という事は……誰が……?
……まぁいいわ。
全ては計画通り。
後は吉報を待つのみ、ね……
「ふふふふ……あはははははは!!!!」
欲に塗れた部屋に、欲深い女帝の嗤いが響く。
その音は、人の道を外れた音。
それはきっと救われない、人間の本質。
人と人外。どちらが悪か――
――わたしの目の前に対峙する、北の風。
その雰囲気は、異質なモノ。
きっとあの、絶望的な勘違いのせい。
北風 第1師団が首相官邸に進軍中という事を聞いたわたしは、すぐさま連中と鉢合わせになる場所へと向かった。
もし戦いになったとしても、なるべく離れた場所で行わないと万が一がある。
そう思い向かい、北風と出くわした。
幸運……と呼べるかはわからないけど、ここならまだ安心出来る。
既に避難済みのこの場所。
民間人はここには居ない。
ひとまずは安心だ……
それにしても第1師団が進軍中と聞いていたから、もっと多いかと思っていた。
目の前の風は、よく知る人間の顔ぶればかりだ。
「もっと……大勢で来てるのかと思ったよ」
わたしの目の前に塞がるは、あの三羽の烏。
愛おしくも思ってしまう、あの一羽が居ないけど……
それと冷たい軍服を着た、数人の兵士。
そして、それを率いる頭。
仮面ライダーグリス……猿渡 一海。
「こんなもんで充分だからだ……お前ら如きを潰すなんてな」
「本当なら、俺1人で構わないんだけどよ」
あの日の男とはまるで違う雰囲気、口調。
その目には憎悪しか感じられない。
きっとわたしが、黄羽ちゃんを傷付けたと思っているから。
「ねえ!!あの子は……黄羽ちゃんは無事なの!?」
本当はもっと話したい事がある。
ミサイルなんて東都は飛ばしていない事。
東都は宣戦布告など本当にしていない事。
裏でほくそ笑む黒幕がいる事。
黄羽ちゃんを、襲ってなんていない事。
でもそれよりも先に……黄羽ちゃんが心配。
あの子は無事なんだろうか。
一体どんな怪我をしているのだろうか。
それに……命に別状は、無いのだろうか。
……本当はお見舞いにも行きたい。
「……てめえ。どこまで俺をバカにすりゃ気が済むんだ?」
猿渡のこの顔を見ると確信する。
きっとこの男は、わたしの事を殺したくて仕方がないのだと。
「わたしは何もやってない!!黄羽ちゃんを襲ったのはまた別の――」
「舐めんじゃねえ!!!」
死を運ぶかのような音色が、わたしと北風の空間に響き渡る。
それは決してわたしを許さない、そんな意思が含まれてる気がするような。
「あいつはな……こんな場所に居ちゃいけないやつだった。来てはいけないやつだった」
「だから……俺が護ると決めていたんだ」
わたしを睨みつける男の表情は、とても切なく見えた。
わたしにも……経験があるからわかる。
「だから、俺の責任だ。あいつを護れなかった……俺の」
……やっぱり、この男はわたしに似ている。
独りで抱え込んで、底の無い闇へと堕ちていったわたしと。
「だから……俺がしっかりとケリをつける。おまえらを……完膚無きまでに叩き潰す事でな」
きっと猿渡には安らげる場所が無かったんだ。
ずっと孤独で戦わなきゃいけない、何かがあった。
……それは、破滅しか待ってない。
「わたしは何もやってない!黄羽ちゃんとわたしは、東都と北都が平和になる事を望んで話してた!!」
「あなたにそれを伝えようとしてた!!間違っちゃだめ!!これには黒幕がいるの!!!」
わたしの脳に蔓延る想い。
黄羽ちゃんが繋げようとした、平和への襷。
それを失くすわけにはいかない。
黄羽ちゃんのためにも……
諦めるわけには、いかない……
「誰がそんな言い訳を信じる!?そんな事を信じて俺はどうすればいい!?」
「……これで話は終わりだ。俺はお前らを許さねえ。許す事なんて出来ねえ」
……でも黄羽ちゃん。
どうすればいいのかな。
貴女が繋ごうとした平和への架け橋。
わたしには、そこへ向かう道に大きくて深い溝が見えるよ。
もう先へは進めないような谷底があるよ。
わたしは、どうやって繋げれば……
「わたしは……わたしは戦うつもりなんてない!!黄羽ちゃんを傷付けたやつだって他にいるの!!信じて!!」
こんな事しか言えない自分が無性に悔しい。
何も真実を掴めない、無力なわたしが悔しい。
黄羽ちゃんの無念を晴らせない、自分自身が悔しい。
「信じるなんて無理だ……俺にはお前が憎い敵にしか見えない。だからよ。悪ぃけど」
「……死ね、桐生 戦兎」
その時の猿渡の表情は、まるで修羅のようだった。
全てに憤怒するような。茨の道を行く修羅。
諦めてはいけない。
彼女が駆けたあの道を閉ざしてはいけない。
でもわたしには。
その道の先が全く見えない……
巨大過ぎる奈落が、わたしを絶望させる――
あた……し……は……?
ここ……は……ど、こ……?
あれ……?あたし……確か戦兎……ねえと……
少しずつ意識がはっきりとしてくる。
そして少しずつわかってくる。
ここは、病室。
どこの病室かはわからないけど、あたしに色んな点滴みたいなのが刺さってるから、多分間違いない。
そして記憶が蘇ってくる。
あの日、優しいお姉ちゃんと出逢った事。
昔のカシラによく似た、あのお姉ちゃん。
あたしは戦兎ねえのお家に行った。
そこで優しく暖めてもらった。
そしてある話を聞いた。
本当は東都は何もしてない、って事。
本当は仲良くしたいって事。
それを聞いたあたしはカシラに言わなきゃ、って戻った。
みんなで仲良くすればいいんだよ、って。
そしたら戦兎ねえが……ビルドになってて……
あたしに、襲いかかってきた……?
でもあの戦兎ねえおかしかったよね……?
いきなり襲いかかってくるなんて。
それに、意識が無くなる前になんだか男の人になってたような――
「……目を、覚ましてしまっていたか」
声のした先にゆっくりと視線を移すと、そこには知らない人が。
あたしの事知ってるみたいだけど、見た事無い……人?
……なんとなく、カシラに似てる気がする。
それにこの人……
あの時の男の人に似てるような……?
「ん……んん?だ……れ……?」
怪我のせいなのか上手く喋れない。
いてて。身体中めちゃ痛いからかな。
てゆーかあたし生きてたんだなー。
てっきり死んじゃったかと思った。
死ななくて良かった……
戦兎ねえやみーたんとお友達になりたかったもん……
……みーたんはついでだけど。
「すまない……君には死んでもらうよ」
「……え……?」
この人の言葉の意味が理解出来ない。
あたしの頭にクエスチョンマークがいっぱい出てくる。
そして意味がわかって。
言葉じゃ現せない程の恐怖が襲ってくる。
あたしを……殺すの……?
「や……だ……たすけ……て……」
悲鳴を出したくても上手く声が出せない。
怖い、怖いよ。死にたくないよ。
せっかく生きてたのに。
戦兎ねえやみーたんとお友達になれそうだったのに。
まだまだやりたいこといっぱいあるのに。
戦兎ねえと、みーたんと。
たくさん遊びに行きたかったのに……
それに、カシラと……
死にたくない……やだ、いやだ!!
助けて赤羽!!青羽!!どこいるの!?
「せめて痛み無く、すぐに逝かせる。心配するな」
怖い、怖いよ!!
やだ、やだやだやだ死にたくない!!!
助けて……戦兎お姉ちゃん……
死にたくないよ……
「たすけ……て……カシ……ラ……」
カシラ……
あたしは、あなたが……
「すまない……死んでくれ」
その人の持つナイフが見えて、あたしは色んな事が頭を過ぎった。
猿渡ファームのみんなの事、赤羽や青羽の事、あの優しい戦兎お姉ちゃんやみーたんの事。
そして、カシラの事。
昔と今のカシラ。
ちょっと今は違うけど、でもたまに昔のカシラみたいになったりする。
あたしのワガママを聞いてくれる時とか。
たまに優しく微笑む、暖かいカシラとか。
あたしはカシラが大好きだな、やっぱ……
また、会いたかったな……
死ぬ前に……カシラに褒めて欲しかったなあ……
目が熱くなってくる。
身体中痛いからなのかもしれないけど、涙がいっぱい出てくる。
でも多分それは。
もう赤羽たちや、猿渡ファームのみんなや。
あの優しい……お友達とか。
カシラに、もう会えないんだって知っちゃったからだと思う。
まだ……生きてたかったなあ……
「バイ……バイ……みん、な……カシ……ラ……」
また、もし生まれ変われたら……
その時は……あなたと……
「さようなら、罪無き少女よ」
その人が大きくて怖いナイフを振り上げた時。
あたしはなんだかちょっと怖くなくなった。
あの日のカシラが微笑んでるような。
見守ってくれてるような。
抱きしめてくれてるような。
暖かい、そんな感じがしたから。
だからもう、大丈夫。
「だあい……好き……カ……シラ……」
『なんだよ。随分と面白ェ事してんなァ、おい?』
……To be continued
戦兎「えー!!お着物あんの!?」
惣一「おう。女子全員分あんぞ」
惣一「おかげで俺は財政破綻だ」
戦兎「ほわわわ!かっわいー!」
美空「おぉ!綺麗だしー!」
紗羽「あら、私の分まで!?」
香澄「ひゃあああ♡可愛い♡」
黄羽「あたし初めてー!着物!」
佳奈「わたしのもあるの?」
惣一「もちろん!ちゃんとあるよ!」
惣一「ほれ、佳奈ちゃんの分」
佳奈「わーい!やったあ!」
月乃「まさか私のお着物もあるとは」
惣一「まあまあ。正月だし」
月乃「……ありがとうございます」
月乃 (……可愛い)
多治見「あら?私のは?」
惣一「……需要無いと思いますが、はい」
多治見「需要?……ありがとう♪」
惣一 (……逆に需要あったらこえーな)