Masked Rider EVOL 黒の宙   作:湧者ぽこヒコ

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紗羽「お正月はやっぱり食べ過ぎちゃうわね」

紗羽「だって猿渡君のご飯が美味しいんですもの」

紗羽「美空ちゃんのご飯も美味しいし」

紗羽「正月も無休のパティスリー鴻上のケーキもあるんだもの」




紗羽「私は止まらないわ!貪欲なっ!食欲っ!」

戦兎「強欲なっ!食欲っっ!!」

香澄「胴欲なっ!食欲っっっ!!!」







惣一「……君たちさ、今年入ってさ」

万丈「何となく……いや絶対」

美空「お肉つきまくってない?」




紗羽「……え?」

戦兎「……う、嘘だあ」

香澄「……そそそそんな事ないですよ?」





――乙女の体重計タイム――






紗羽「ちょっと……走ってくる」

戦兎「あ……わたしも……」

香澄「……燃焼系サプリ飲んでから行きましょ」






惣一「相当やばかったのね」

万丈「ノリで言ってみただけなんだけどな」

美空「乙女は……大変なの」




紗羽・戦兎・香澄
「「「燃えろぉぉ!!我が脂肪ぉぉ!!!」」」




phase,43 燃ゆる黄金

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わたしの目の前に広がる死の風。

もう相容れないのかもしれないと痛感してしまうほどの、冷たい風。

 

 

 

 

 

 

 

わたしは……どうすればいい……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さっさと変身しろよ桐生……流石に生身の女をいたぶる趣味はねえ」

 

 

 

 

 

 

 

猿渡の突き刺さるような言葉が、わたしを更に惑わせてしまう。

変身したら、それは戦いの合図。

 

 

 

 

 

 

 

それはもう、引き返せない号令。

決別の狼煙をあげる事になってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わたしは……戦うなんて……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黄羽ちゃんの笑顔が脳裏から離れない。

わたしの事をお姉さんと言ったあの少女。

 

 

 

彼女なら……この男になんて言うのだろう。

どうやって止めるのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

わたしには、その答えの火が見つからない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前がやる気ねえなら。俺らはこのまま進む。そして……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これからお前らの大切なモノ全てを、壊し尽くしてやる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

多分その言葉がトリガーだったのかもしれない。

わたしの脳に渦巻いていた平和への執着。

 

 

 

この男と戦いたくない。

東都と北都が友好的になってほしい。

 

黄羽ちゃんが繋ごうとした道を諦めちゃいけない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その想いが、猿渡の言葉1つで崩れてしまう。

大切なモノが蹂躙されてしまう、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なら……もうしょうがないよね……黄羽ちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あなたのきっと大切な仲間だけど。

あなたの事を想う人だけれど。

あなたが頭と慕う人なのかもしれないけれど。

 

 

 

 

 

 

 

わたしの大切なモノを奪われるわけにはいかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……やっと、やる気になったか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わたしは、無力だ。

 

 

 

結局力でしか解決の出来ない、野蛮な女。

間違った想いを正すことの出来ない、ただの人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これの何が、正義のヒーローなのだろうか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ラビットタンクスパークリング!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【Are you Ready?】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビルドドライバーが始まりの音を奏でる。

いつもは高揚とも思える気持ちになるこの音が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今は……ただただ虚しい気持ちなだけ。

 

 

 

 

 

 

 

わたしは戦いに取り憑かれた悪魔なのかもしれないな。

そんな風に感じると、笑ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

それはきっと。

とても切なく愚かな笑だったと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……変、身」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【シュワっと弾ける!!】

 

 

 

 

 

 

 

【ラビットタンクスパークリング!!】

 

 

 

 

 

 

 

【yeah!!yeah!!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……もう、止まれないや。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぉい!!ぶち殺してやりましょうぜえ!!!カシラぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

きっとあの赤羽ってやつもわたしが憎いに違いない。

それは本当に勘違いなのだけど。誰かの策略なのだけれど。

 

 

 

彼らにはもう、関係無い。

 

 

 

 

 

 

 

この国が憎くて憎くてどうしようもないはず。

それを止められるのは……力だけ、か。

 

 

 

 

 

 

 

戦いだけ……か。

 

 

 

 

 

 

 

「いや……俺1人でいい。お前らは下がってろ」

 

 

 

 

 

 

 

相当自信があるのだろうか。

彼の顔からは緊張や迷いが感じられない。

 

 

 

ただ目の前の敵を殲滅する戦士にしか、見えない。

 

 

 

 

 

 

 

……わたしも。負けるわけにはいかないんだ。

 

 

 

 

 

 

 

「ですがカシラ!俺らだって黄羽の仇をとりてぇ――」

 

 

 

「悪ぃな、頼むよ……お前らは、待っててくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのバカ野郎との約束を破るんだ……せめて、俺だけにやらせてくれ」

 

 

 

 

 

 

 

こんな状況なのにも関わらず、わたしの脳はどうも落ち着いているらしい。

心は騒然としているのに、脳は冷徹なのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

「バカ……やろー……」

 

 

 

 

 

 

 

口に出す事で改めて思考に入る。

 

 

 

北都の人。北風。団長。バカやろー。

そして、約束。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……きっと。恐らく多分、万丈かな。

 

 

 

多分東都の人を……きっとわたしと戦うなとでも言ってたのだろうか。

あいつはわたしの身を案じていたのだろうか。

 

 

 

北都に行っても、やっぱり心配してくれてたんだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

やっぱりあいつは……昔の弟のままなんだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

わたしの知ってる、あの優しいバカのままなんだな。

 

 

 

 

 

 

 

早く……連れ戻すからね、万丈。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……カシラ、無理だけはしねぇで下せぇ」

 

 

 

「カシラまであんなんなっちまったら……俺らは!!」

 

 

 

 

 

 

 

本当に、この人たちは仲間想いだな。

道が違わなければ、もしかしたら仲良くなれたかもしれない。

 

 

 

ちょっとリーゼントは万丈と被ってるし、冷静なおっさんはアクの強い喋り方だけど。

 

 

 

 

 

 

 

なんだか、気持ちの良い人たちだ。

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、任せろ……桐生、わざわざ待ってくれてありがとよ。まるで無抵抗の戦いを拒否した女の子をやったやつだとは思えねーな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

違うんだよ、猿渡。

わたしは何もやってない。

 

 

 

むしろ……あの女の子がとても大切だと想える。

敵なんかには全く思えない。

 

 

 

黄羽ちゃんも勘違いして、わたしを敵だと再認識してしまったかもしれないけど。

黄羽ちゃんもわたしが嫌いになったかもしれないけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

多分わたしは、あの純粋な少女が大好きだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だからこそ俺はお前が許せねえ……なぜあんな弱虫を……俺でなくあいつを襲ったお前を!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

きっともう届かない。

わたしの想いはこの人たちには伝わらない。

 

 

 

ならばせめて、真実がしっかりと明らかになるまでは。

 

 

 

 

 

 

 

わたしは力を奮う。

護らなければならないモノのために。

 

きっともう、取り返しがつかないとしても。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……俺の強さは、お前が体験した事の無いモンだろうよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう静かに呟く猿渡が煌めかせたモノは、見た事のないモノ。

わたしとは異なる、別の何か。

 

 

 

きっと仮面ライダーに変身するモノなのだろう。

でも、根本的に何かが違う。

 

 

 

ビルドドライバーは、レバーを回転させボトルの内容物を化学反応させる仕組みなのに対し、あれは……

 

 

 

 

 

 

 

ビルドドライバーでいうレバー部分が、レンチのようなモノにも見える。

何かを押し潰すように見える気もする。

 

 

 

それにレンチ型のレバーの反対側には……試験管のようなモノが搭載されている。

 

 

 

 

 

 

 

あそこに何かを蓄えて使う……?

 

 

 

 

 

 

 

なんだこれ。何なんだこれ。

形状が、仕組みが異なるモノに見える。

 

 

 

 

 

 

 

「このスクラッシュドライバーはな。お前やあのエビフライ野郎とは全く違う、いわゆる最新版だ……そもそもが違う」

 

 

 

 

 

 

 

エビフライ野郎?

 

 

 

……あー。あのバカの事か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それに……スクラッシュドライバー?

 

 

 

壊す、のクラッシュと……

なんだろう。スクイーズ?スクラップ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まず第一に。ハザードレベル4.0以上じゃなきゃ扱えねえシロモノだ……この言葉の意味が、わかるか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

猿渡の言葉で脳が戦慄する。

今まで聞いた事の無い数値に、脳が危険信号を送る。

 

 

 

 

 

 

 

ハザードレベル、4.0……!?

 

 

 

 

 

 

 

それは、未踏の場所。遥か先に想える地。

 

 

 

 

 

 

 

ちょっと前に開発した、簡易的なモノだけどハザードレベルを確認する装置、《ハザードでござーるくん》で、少し前にわたしのハザードレベルを計測した時は確か……3.6とかだった。

 

 

 

既にボロボロだったわたしが負けた……全快ならきっと勝てたであろう、あの三羽の烏でさえハザードレベル3.0以上と言っていた気がする。

 

 

 

でも4.0などというふざけた数値に達しているわけが無い。

 

 

 

 

 

 

 

万丈もきっと……戦った感じ、わたしと同じか少しだけ上だと思う。

 

 

 

 

 

 

 

あの狂った連中ですら、そこまででは無いと感じる。

スタークは少しわかんないけど……

 

 

 

 

 

 

 

……その領域に巣食うモノを遥かに超える、4.0。

 

 

 

 

 

 

 

まるで天から見下ろす絶対的なモノのような。

蟻を見下す愚かな人のような。

 

 

 

 

 

 

 

それほどまでの差にわたしの身体が反応し、汗が止まらなくなる。

 

 

 

 

 

 

 

これは……かなりやばいかも。

それどころか簡単に殺されてしまうかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

「……俺を飽きさせんじゃねえぞ、仮面ライダービルド!!」

 

 

 

 

 

 

 

吠える猿渡の手に、パック状の何かが見えた。

わたしや万丈、それに黄羽ちゃんたちが使っているボトルとは、全く違う何か。

 

 

 

 

 

 

 

あれで……まさか変身を?

どうみてもフルボトルには見えないけど……?

 

 

 

 

 

 

 

中身に入っているのは、多分ゼリー状の何か。

もしかして、わたしたちが操るボトルの内容物をゼリー状に変質させた……?

 

 

 

 

 

 

 

「これが俺の……護れる力だ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

マスターから教えられた事を、恐らく猿渡もどこかでその力を、そんな風に感じていたのだろうか。

 

 

 

わたしたちの力の本質を叫びながら猿渡は、その妖しく光るスクラッシュドライバーの中央部分にその、パック状の何かを装填させる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ロボットジェリィー……!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スクラッシュドライバーから発するその音は、どこか恐怖を与えるような音。

 

わたしや万丈のビルドドライバーとはまるで違う、全く別の何かに思えてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

それにやっぱり、あれはゼリーだったのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「変、身……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

猿渡がレンチ型のレバーを真下に押すと、中央部分に鎮座していたパック状の何かが、両側から万力のようなモノで押し潰される。

 

そうすると反対側の試験管のようなモノに、恐らくあのパック状の内容物であろう金色の成分が蓄えられていく。

 

 

 

 

 

その後すぐに、彼の周りに巨大なビーカーと装置が顕現する。

それはわたしや万丈のとは違う、異質な何か。

 

 

 

猿渡が中に入っているそのビーカーの中に、黒く禍々しいような液体が湧き出し、彼を包み込む。

 

その後、まるで液体が凝縮し彼に纏う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その姿は紛れもなく、仮面ライダーだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【潰レルゥ……!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更に頭上から金の液体をまるで、噴水のように天に溢れ出し。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【流レルゥ……!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その金色の液体を身に纏わせ、姿を更に強固なモノへと変えてゆく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【溢レ出ルゥ!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ロボットイィングリスゥゥゥ!!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ブゥゥラァァァァ!!!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その姿は、鉄壁とも見える黄金の鎧を纏いし戦士。

わたしや万丈、スタークやローグとも異なる、別の何か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その見とれてしまうほどの金を纏うその戦士からは。

 

 

 

 

 

 

 

絶望的な殺意しか感じ取れなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「心火を燃やして……ぶっ潰す!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……To be continued

 

 

 

 








一海「ついに来たぞおお!!!」

一海「俺の……俺の……!!」

一海「仮面ライダーグリ――」

万丈「あ"ー!俺の出番まだかよー」

一海「……ちっ」



一海「俺のぉ!仮面ライダーグ――」

戦兎「わたしのしゅわしゅわの活躍まだ?」

一海「……ちっ!!」



一海「俺の最強!仮面ライ――」

黄羽「あ、カシラあ!パフェ食べたい!」




一海「……」

一海「……次回。多分活躍します」






惣一「頑張れ。これが本作の洗礼だ」

美空「何言ってんの?」

惣一「気にするな娘よ。社会は厳しいのだ」

美空「……?」




一海「……頑張れ、俺」


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