Masked Rider EVOL 黒の宙   作:湧者ぽこヒコ

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幻徳「うん。暇だ」

幻徳「今日も今日とて暇だ」

幻徳「誘うやつ居ないし」

幻徳「全く誘われないし」

幻徳「白衣の外道さんからはメッセージ来ないし」

幻徳「忙しいのかな……?」

幻徳「あ!それか実は届いてないとか!」

幻徳「有り得るな、うん。きっとそうだな」





幻徳「……もう1回送ってみよ」




phase,44 強者の余裕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうした?ほら、早く来いよ」

 

 

 

 

 

 

 

黄金の鎧を纏いし戦士、仮面ライダーグリス。

ハザードレベル4.0の男。

 

 

 

どう考えても圧倒的にわたしより強いはず……

 

 

 

 

 

 

 

……勝利の法則が、見えない。

 

 

 

 

 

 

 

猿渡……いやグリスはその実力差を鑑みて余裕なのか、挑発的な態度を崩さない。

きっとそれだけわたしの事を格下と思っているのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

だけど、ここでやられるわけにはいかない。

わたしの大切なモノを護るために。

 

 

 

ここで死ぬわけにはいかない。

 

 

 

 

 

 

 

ハザードレベルと言っても……低ければ絶対に勝てないなんて事は無いはず。

 

 

 

 

 

 

 

きっとどこか、勝機が視えるはず。

 

 

 

 

 

 

 

「余裕ぶっこいてんのも今の内だけだよ――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――わたしの渾身の拳が、グリスの顔面を襲う。

 

 

 

助走までつけた一撃。手応えあり、だ。

 

 

 

 

 

 

 

「で……?」

 

 

 

 

 

 

 

……おいおいまじっすか。かなり自信あったんですけど。

 

 

 

 

 

 

 

グリスはその一撃を受けても微動だにせず、まるで蚊が止まったかのような反応を見せている。

その攻撃が、児戯にも等しいかのように。

 

 

 

 

 

 

 

その後もわたしは一撃一撃が全力の攻撃をグリスに加えるが、その全てがまるで幼児の悪戯を受けているかのような反応しか与えられない。

 

 

 

拳撃も、蹴りも、全てをいなされるわけでも防御されるわけでもなく、ただその実力を見定められるかのように。

 

 

 

 

 

 

 

まるでわたしの攻撃が、全く通じていないかのように。

グリスはただ、わたしの攻撃を受け続けた。

 

 

 

 

 

 

 

「……なんだ、こんなモンかよ」

 

 

 

 

 

 

 

顔面を狙ったわたしの回し蹴りを、簡単に止められる。

わたしの、全力の攻撃を。

 

 

 

さっきから繰り出している拳撃も、蹴りも、すべからく全力の一撃。

 

 

 

身体は全快と言わずとも黄羽ちゃんたちと戦った時に比べればかなり良好だ。

 

しかも万丈と戦った時よりも……遥かに力を込めて放っている。

 

 

 

 

 

 

 

それを防御もせずに全て受けきり、尚且つ全力の攻撃を簡単に受け止められた。

まるで最初から何事も無かったかのように。

 

 

 

 

 

 

 

わたしの全てが、通用しない。

 

 

 

 

 

 

 

現状最強の力である、スパークリングが。

 

 

 

 

 

 

 

全く……効かない……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……まだ。まだだから」

 

 

 

 

 

 

 

わたしの足を掴んでいるグリスを払い、若干距離を取り思案する。

どうすれば……このさいっあくな状況を打破出来る?

 

 

 

 

 

 

 

スパークリング以上の力などわたしは持っていない。

そのスパークリングの攻撃がまるで効かない。

 

全力の攻撃が、まるで通用しない。

 

 

 

 

 

 

 

どれだけ脳で考え、練って、イメージして、導き出しても。

 

 

 

 

 

 

 

どう足掻いても勝利の法則が見えないどころか、皆目見当もつかない。

 

 

 

 

 

 

 

……このままじゃ、全部失ってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんなわけあるはずない……!!」

 

 

 

 

 

 

 

唯一残されたわたしの手段。

最後の最後。とっておき。

 

 

 

これさえも効かないとしたら、もう本当に打つ手が無い。

 

 

 

 

 

 

 

……でも、恐らく油断している今なら。

 

 

 

 

 

 

 

まだ、勝てる見込みはゼロじゃない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あん?次は何してくれんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

天高く飛んだわたしにもう興味が無くなったかのように呟くグリスはやはり、まだ油断しているみたいだ。

 

 

 

 

 

 

 

やるなら、今しかない……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【Ready go!】

 

 

 

 

 

 

 

ビルドドライバーのレバーを回すと、いつも通りの音を奏でる。

それは、わたしのとっておきの証。

 

 

 

今のわたしの、最強の技。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お?なんだなんだ?面白ぇな、これ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とっておきの音を奏でると、グリスはワームホールに似た図形のような物体に捕縛、拘束される。

 

わたしの渾身の、正真正銘全力で最強の一撃を浴びせるために生まれた、この存在に。

 

 

 

 

 

 

 

逃げられはしない、防御する事も出来ない。

 

 

 

恐らく油断していなかったら負けてたと思う。

最初から全力でこられたら、多分本当にやばかった。

 

想像したくはないけど……ほぼ100%に近い確率で負けてたと思う。

 

 

 

 

 

 

 

でも、これで終わり。

大丈夫。殺す事なんてしないから――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【スパークリングフィニッシュ!!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わたしの一撃を待っているかのような、その図形の入口部分とも思えるところからわたしの全力の飛び蹴りをお見舞いする。

 

 

 

その一撃は、まるで無数の炭酸の泡のようなモノと共に。

拘束された相手の全身に衝撃を与える。

 

 

 

 

 

 

 

今のわたしの、最強の技。

恐らく三羽烏や、あのクローズさえも倒せるであろう技。

 

 

 

……決まればあのスタークにだって。多分――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――カシラぁ!?カシラぁー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

痛烈な衝撃で辺りは埃で塗れ、視界が失われる。

あの一撃を見ていた赤羽が動揺しているけど。

 

大丈夫。急所は外してあるから。

 

 

 

 

 

 

 

それにあれほどの実力を持っているなら死ぬ事は無いだろうし、万が一何かあれば美空に――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー?なんだよ。まるで俺がやられたみてえな声出しやがって」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勝った、と言う感情に包まれていたわたしの目には。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先程と同じ、まるで何事も無かったかのようにこちらを向く、グリスが居た。

 

変身解除もされていない、猿渡ではなくグリスが。

 

 

 

 

 

 

 

「カシラぁ。ビビるからやめてくださいよう」

 

 

 

 

 

 

 

青羽が安堵したかのように言っているが、今一番驚いてるのはあんたたちじゃない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わたしの全力の、最強の、最後の一撃を。

防御もせず、回避もせず、全て受けきって。

 

 

 

 

 

 

 

平然と立っているグリスに、わたしは恐怖と驚愕が入り交じっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いてて……まぁ最後のこいつは中々、面白かったぜ?」

 

 

 

 

 

 

 

わたしの最後の……最強の一撃が……

 

 

 

 

 

 

 

面白、かった……?

 

 

 

 

 

 

 

呆然としてしまう、呆気にとられてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わたしの全部が……通用しない……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと。そしたら次は俺の番だな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今の出来事を処理しきれていない脳が猿渡のその一言を理解するよりも先に、わたしが視認出来ない速さで、黄金の戦士が懐に入ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐうぅぅっ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

鳩尾の近くを、恐らく殴られたのであろうわたしは。

今まで経験した事が無い衝撃に襲われた。

 

 

 

鮮血の蛇よりも、漆黒の蝙蝠よりも。

三羽の烏よりも、蒼き炎の龍よりも。

 

 

 

 

 

 

 

先程の甘い考えを粉々にするような、わたしが戦ってきたその全てのモノたちの攻撃を遥かに超える一撃だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいおい。もう終わりとか言うなよ?」

 

 

 

 

 

 

 

たった一撃でかなりの後方まで追いやられ崩れ落ちるわたしには、今の状況が未だに把握出来ていないかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

圧倒的な強さ。最早次元が違うのではとまで思える程の実力差。

 

 

 

 

 

 

 

絶望的な、力の違い。

 

 

 

そもそも強さの本質が違うとまで思えてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

「慄いてる所悪ぃけど。待ってやるほど気は長くなくてな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ツインブレイカー!】

 

 

 

 

 

 

 

黄金の戦士の左腕に、篭手のような武具が現れる。

きっとそれはわたしを破壊するためのモノ。

 

 

 

 

 

 

 

「ほぉら、寝てる場合じゃねえっての」

 

 

 

 

 

 

 

【ヘリコプター……!】

 

 

 

 

 

 

 

【ディスチャージボトル……!】

 

 

 

 

 

 

 

グリスはまたパック状のモノを取り出し、変身するために使った先程のモノと取り替えた。

 

わたしや万丈でいう所のボルテックフィニッシュなのだろうか……?

 

 

 

少しずつわたしの脳が働き始める。

固まってしまっていた脳が、活動を始める。

 

 

 

 

 

 

 

これは勝てない、と。早く逃げろ、と。

今のお前では勝つどころか死んでしまうぞ、と。

 

 

 

 

 

 

 

身体にそう指令を下している気がしてならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【潰レナァーイ……】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ディスチャージクラッシュ!!】

 

 

 

 

 

 

 

先程と同じようにレンチ型のレバーを押すと、黒い液体のようなモノがグリスの右腕に収束し、プロペラのようなモノへと姿を変えた。

 

 

 

多分空を飛ぶためのモノで、攻撃用ではないのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

「いつまでもぼーっとしてんじゃねえぞ」

 

 

 

 

 

 

 

顕現したプロペラのようなモノで滑空するグリスが、ツインブレイカーだとかいう篭手をあたしに向け、エネルギー状の弾丸の雨を降り注がせる。

 

 

 

 

 

 

 

その一発一発も、今までに経験した事の無い、あまりにも強過ぎる衝撃だった。

 

 

 

 

 

 

 

「……くっ、ぐああ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

弾丸の雨がわたしの全身を襲う。

あまりにも多く、あまりにも早く。

 

 

 

更に先程殴られた衝撃で身体も上手く言う事を聞いてくれず、回避する事も防御する事もままならないで、その雨をただただ喰らい続けてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

恐らくただの、勝負を決める攻撃でも無いはずのこの弾丸の雨が。

わたしには一発一発が壊滅的な攻撃だ。

 

 

 

 

 

 

 

少しずつ意識が途絶えそうになる。

全身が痛過ぎて、どこが痛いのか分からないほどの激痛を感じる。

 

 

 

 

 

 

 

黄羽ちゃんも……こんな風に痛かったのかな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも……倒れるわけにはいかない。

ここでわたしが死んだら、東都は滅んでしまう。

 

しかも、勘違いによって。

 

 

 

 

 

 

 

そうしたら裏で暗躍する黒幕がほくそ笑んでしまう。

きっと北都も東都の二の舞になってしまうかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

だから……倒れるわけには――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――もう、飽きたぜ。お前」

 

 

 

 

 

 

 

空からの攻撃を止め、地へと戻りながらやつの姿を見ると、何だか弱いモノ虐めをしているかのような気分になってしまう。

 

 

 

どんなモンかと思ってたけどよ。

まさかこれ程までに弱いとは。

 

 

 

あのバカが言ってたモンだからどれほど強いのかと思っていたが。

正直、全く大した事ねえな。

 

 

 

まぁ、あのバカもまだまだだし……

 

 

 

 

 

 

 

「弱過ぎんだろ、お前」

 

 

 

 

 

 

 

這いつくばっている仇を見下ろすと、凄くやるせない想いに駆られる。

 

 

 

 

 

 

 

こんなやつに……こんなやつに聖は……

 

 

 

こんなやつに俺が負けるわけねえのに。

こんなやつに俺が殺されるわけねえのに。

 

 

 

なんでお前は……

 

 

 

 

 

 

 

「うる……さい、まだ……まだ……」

 

 

 

 

 

 

 

既にボロボロの仮面ライダービルド。

もう何か出来る程の力は残されてねえだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

……だが。容赦はしねえ。

 

 

 

 

 

 

 

「ほーう。まだやる気はあんのか……じゃあまだ大丈夫だよな?」

 

 

 

 

 

 

 

その全てを刈り取ってやる。

 

 

 

聖をあんなボロボロにしやがった、お前を。

命を刈り取ろうとした、お前を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【スクラップフィニッシュ!!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ……これで終いだ――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――あー。やっぱりスクラップだったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

この超危機的状況の中、こんな事を考えてしまうわたしの脳はやっぱり落ち着いているようだ。

 

 

 

でも、打開策は何も見えない。

身体も言う事を聞いてくれない。

きっと回避も出来ない。

 

 

 

 

 

 

 

やっば……詰んだかも……

 

 

 

 

 

 

 

スクラップとクラッシュを併せた造語……スクラッシュドライバーの中央部分に、恐らく変身に使ったであろうパック状のモノを改めて鎮座させたあの黄金の戦士は。

 

 

 

多分わたしのボルテックフィニッシュと同じ事をするために、そのレンチ型のレバーを真下に叩いた。

 

 

 

 

 

 

 

多分さっきのディスチャージなんたらとは違う。

わたしを刈り取ろうとする攻撃。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは……ほんっとにどうしよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グリスの肩当のような防具が後方に位置を変え、ゼリー状のようなものを噴出し、凄まじい勢いでわたしに向かってくる。

 

 

 

 

 

 

 

何とか身体を動かして片膝立ちでいるわたしに、これ以上動く余力は無い。

 

 

 

 

 

 

 

くそ、やば――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――はぁ……はぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

その勢いのまま蹴りを喰らわされたわたしは、遥か後方まで吹き飛ばされ変身を強制解除させられてしまった。

 

 

 

当たる寸前に少しだけ構えたのが功を奏したのかどうかはわからないけど、なんとか生きている。

 

 

 

 

 

 

 

正直。マスターの顔ばっかり浮かんできてもう死ぬかと思った。

まだ死にたくないよ、会いたいよマスター、って。

 

 

 

 

 

 

 

「……なんだ。しぶといじゃねえか」

 

 

 

 

 

 

 

ゆっくりと近付いてくる黄金の戦士を見て、わたしは予感した。

これ多分、殺されるのかな、って。

 

 

 

 

 

 

 

わたしには護るべきモノがある。

大切で、大事で、愛するモノが。

 

 

 

 

 

 

 

……こんな所で死ぬわけにはいかないのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺はお前を許すことは絶対に出来ない」

 

 

 

 

 

 

 

グリスが発するその言葉は、憤怒よりも殺意に感じるモノ。

わたしの命を奪おうとする、そういったモノ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あいつも……やられた時に同じ事を考えていただろうよ」

 

 

 

 

 

 

 

美空や万丈、紗羽嬢。

黄羽ちゃんに佳奈ちゃん。

それに、今まで会ってきたみんな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして……マスター。

あなたの顔が一番浮かぶよ。

 

 

 

今何してるのかなあ……

わたし、死んじゃいそうなんだけどなあ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「恐怖……戦慄……絶望。きっとそういった感情に襲われていたはずだ、あの泣き虫は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まだ……死にたくないなあ……

マスター、会いたい……

 

 

 

 

 

 

 

この状況の中、脳を過るのは。

東都を護らなければいけない事、わたしが死んだら大変になる事。

 

 

 

もちろんそういった事も考えるけど。

 

 

 

 

 

 

 

わたしが一番思ってしまうのはやっぱり美空や万丈の事。

 

 

 

 

 

 

 

それに……やっぱりマスター。

 

 

 

 

 

 

 

ただ会いたくて、ただ話したくて。

まだ……死にたくない……

 

 

 

 

 

 

 

平和や何やらもあるけど。

ただあの人たちに会えなくなってしまう事が一番の恐怖と悲しみだと思ってしまうわたしは。

 

 

 

 

 

 

 

もしかしたら正義のヒーロー失格なのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……悪ぃが。お前を生かしておくわけにはいかない」

 

 

 

 

 

 

 

グリスが、生身のわたしの顔面にツインブレイカーとかいう篭手を向ける。

先程の、エネルギー状の弾丸を撃ったモノ。

 

 

 

 

 

 

 

恐らく、生身で受けたら即死だろう。

首から上は木っ端微塵になり、痛みすら感じないと思う。

 

 

 

……こいつなりの、優しさなのかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あいつの仇、取らせてもらうぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わたしの脳に、マスターや美空、万丈や紗羽嬢の笑顔が溢れる。

それに佳奈ちゃんやたーさん。ナリさんも。

 

 

 

 

 

 

 

それに……黄羽ちゃんも。

 

 

 

 

 

 

 

やだなあ。死にたくないなあ。

まだもっともっと生きて、笑っていたかったなあ。

 

 

 

涙が途方もなく溢れる。

 

死を受け入れられる程わたしは強くないみたいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

しかも、正義のヒーローとしてあるまじき事を考えてるのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わたしは……やっぱりただの無力な女だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ますたぁ……会いたい……」

 

 

 

 

 

 

 

恐らく最期の言葉であろうモノは、やっぱりマスターの事。

 

あの人が今何をしているのかが気になる。

会いたくて会いたくて仕方がない。

 

 

 

 

 

 

 

わたし……もう終わっちゃうのかな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……死ね、桐生 戦兎。あのバカには悪いがさよならだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バカ……万丈か……

 

 

 

わたしが死んだら、あんたが支えるんだよ。

東都を……マスターを、美空を、みんなを護ってね。

 

 

 

 

 

 

 

最期に……万丈にも会いたかったな……

 

 

 

ごめんね。連れ戻せなくて。

ごめんね。頼りないお姉ちゃんで。

 

 

 

 

 

 

 

もう……限界だあ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――おい。何やってんだてめぇ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死を覚悟したわたしの耳に。

よく聞き慣れた声がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なんだ、お前かエビフライ頭」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声は凄く懐かしい感じがして。

わたしがずっと取り戻そうとしていたモノの気がして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そいつに触れんじゃねえ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

涙で視界がぼやけても、その姿はハッキリとわかって。

きっと、正義のヒーローならこうやって登場するんだろうな、とかも考えたりして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そいつに近付くんじゃねぇ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなかっこよく登場したあいつは。

まるで本物の正義のヒーローのように思えるあのバカは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

想いを炎に変えたような。

そんな熱き心の蒼い龍の姿をして、仁王立ちしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戦兎に……俺の姉貴に何してくれてんだ、コラ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……To be continued

 

 

 








赤羽「おぉい!?俺ら空気じゃねぇか!?」

青羽「しょうがねぇだろう」

青羽「変に出張ったらカシラが機嫌悪くなるだろうが」

赤羽「おぉい……確かにそうだな、うん」

青羽「ほら。静かにしねえとキレるぞ、カシラ」

赤羽「お、おぉう。見守っとくか」



青羽「……それにしても。容赦ねぇなぁ」

赤羽「やっぱりつえぇなぁ!カシラはよ!」



赤羽「……頑張れー!カシラぁー!!!」

青羽「そこですぜい!カシラ!!そうそう!!」




一海「……恥ずかしいんですけど」

戦兎「気にすんな。がんば」

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